カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 山本まりこ×旅スナップの撮り方 『旅スナップを「もっと」楽しむかんたんレシピ』その2
写真・文:山本まりこ/編集:合同会社PCT
コロナ禍を経て、外出を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。カメラを持ってお出かけ、旅に出てスナップ撮影をやっと楽しめます。今回は写真家の山本まりこさんに旅スナップ撮影がもっと楽しくなるかんたんレシピ、第二弾を紹介します。予習して、カメラを持って旅に出発しましょう!
- 山本まりこ
- 写真家。スパイスフーズ作家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。撮影、執筆、講演、講師など活動は多岐。写真集「AIRY COLORS」「熊野古道を歩いています。」、著書「エアリーフォトの撮り方レシピ」など11冊出版。好きな食べ物は、カレーとイカ。
- HP:MARIKO YAMAMOTO OFFICIAL WEBSITE
- Instagram:https://www.instagram.com/yamamarimo/
はじめに
こんにちは。
グッと寒さが増してきた最近。冬のスタート。
年末年始、どこかに旅の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。
前回の旅スナップを楽しむためかんたんレシピ第1回目では、とっても簡単なレシピ5つをご紹介しました。
ご紹介したのは、
1:旅の空や車窓からの景色を撮る
2:旅先の街の時間を撮る
3:ご飯を撮る
4:色を撮る
5:その日の光を撮る
の5つ。
こちらは、下記にて詳しく綴っています。
ぜひご覧ください。
https://camera-no-ohbayashi.com/blog/2023/12/11/column39/
さあ、今回は、前回に加え「さらに」楽しむレシピ5つをご紹介いたします。
初心者さんでも簡単に実践できる、とっても簡単なことばかり。
前回に引き続き、今年3月に訪れたインドの写真でお届けいたします。
さあ、インドの旅へGO!
6:逆光や半逆光で撮る
写真を撮るときにとても大切なこと、それは光を読むことです。
逆光(ぎゃっこう)、半逆光(はんぎゃっこう)、順光(じゅんこう)、そんな言葉を聞いたことがあるでしょうか。
それは、被写体に対する光の向きのことを言います。
例えばこの写真は、半逆光の光の中で撮影しています。
バナナを販売する商店の右奥の入口から明るい太陽の光が入り込んできています。
光が45度右斜め奥から撮影者の私の方に向かって光っている、この状態は半分逆光、そう、半逆光になります。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/80秒・ISO100
太陽が半逆光で右奥から差し込み、バナナを奥側から立体的に光り輝かせています。バナナをよく見てみてください。太陽に近い側の右奥がきらりと一番強く光っていますね。
でも、
「半逆光で撮ると被写体が真っ暗になる。」
そんな言葉を聞くことがあります。特に、観光地で夕日の時間に多く耳にします。
実際、半逆光で撮影してみると、被写体の人物が真っ暗に写ってしまったことがある人も多いのではないでしょうか。
そんな時は、露出補正をすれば大丈夫。真っ暗だった画面が一瞬で明るくなります。
カメラの中で「+/-」と書かれた場所があります。そこは露出補正を設定する場所。露出、明るさを設定する場所です。+側に数値を上げていけばどんどん明るくなります。自分が心地の良い明るさに設定しましょう。
半逆光で、全体の露出を明るめに設定して撮影すると、光が後ろ側から立体的に回り込み、結果、被写体をふんわりと柔らかく写してくれるのです。ふんわりと柔らかいトーンの写真が撮りたいときは、半逆光を意識して撮影してみてください。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/40秒・ISO250
これは宿泊していたホテルで、朝に飲むといいよとホテルのマネージャーさんがおすすめしてくれたターメリックのドリンク。ターメリックとは日本で言えばウコンのこと、肝臓によく効くスパイスです。
このときも、太陽の光が右奥から差し込んでいます。影の写り方を見ると分かりますね。
右奥から差し込んだ光が、右奥側から手前側にグラデーションを描くように優しく入り込んでいます。そして、ターメリックのドリンクを通過して、ドリンク自体も明るく写っています。このように、半逆光の状態で露出補正で明るく設定すると、このようなふんわりと優しい写真を撮影することが出来ます。
そう、光を読んで撮影するのです。
私は、柔らかいふんわりとした写真を撮ることが好きなので、逆光、半逆光の光を選んで、光を読んで撮影することがとても多いです。
でも実は、こんなことを書いている筆者ですが、光を読んで撮影するというところまでたどり着くまでは、遠い道のりでした。カメラを始めてから、そして、プロになってからも、あまり光を意識するということはなく、カメラの設定とレンズの使い方、そして覚えた技術でずっと撮影していました。
でも、ある雑誌の表紙の撮影で親子を撮影していたときのこと、被写体の後ろからキラキラと当たる夕日の光の中にいる姿がなんとも美しく、「ああこれだ、この光だ」と思ったのです。逆光、半逆光って、こんなにも被写体を美しく輝かせるんだ、と強く実感した瞬間でした。自分で実際に体感した記憶は忘れない。あの美しい光をいつもの撮影で選ぶことが出来るようにいつも意識し、逆光、半逆光の光を、常に意識しながらシャッターボタンを押しています。
もちろん、順光や斜光、サイド光など、それぞれの美しさがあります。
ここで考えなければならないのは、自分が選ぶ光によって写り方が変わるということ。光を選んで、自分が撮りたい風合いを作り上げていきます。
筆者は、柔らかい空気感の写真が好きなので、逆光や半逆光を選んで撮影しているのです。なぜ逆光や半逆光が柔らかい空気感を作るのかは前述したとおり。
写真は、英語で言えばphotograph(フォトグラフ)。
Photoは光、graphは図、という意味。
直訳すれば、光の図、という意味になります。
そう、光を描くこと、それが写真なのです。
ぜひ、光を、光の向きを意識し、光を読んで撮影に挑戦してみてください。
7:ググっと寄って背景をぼかす
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/160秒・ISO100
この写真は、南インドに咲くブーゲンビリアを撮影した写真です。
ピンク色にあまりにも美しく揺れていたので、ブーゲンビリアが主役になるようにズームレンズで、背景をふわりとぼかして撮影しました。
一眼カメラで写真を撮り始めたら撮ってみたいこと、それは、背景をぼかして撮ること。
主役をふわっと浮き立たせるように、背景をぼかして撮影が出来るようになると、みなさん「急に写真が上手くなったような気がする」「カメラを買ってよかった」と目を輝かして喜ばれます。
この時は、背景をぼかして撮影するために、ズームレンズを望遠側にぐるっと回し、そして、ググっと被写体のブーゲンビリアに近寄って撮影しました。すると、背景がふわりとぼけて撮影できました。そう、ズームレンズで撮影するときは、望遠側、そして、被写体にググっと近づいて撮影することが、背景をぼかして撮影するコツです。ちなみに、望遠側とは、FE 24-70mm F2.8 GMⅡレンズの場合70mm側のことを言います。
もう少し簡単に書くと、ズームレンズにおいて望遠側はアップで撮影できる側のことを言います。反対に、広く撮影できる側のことをワイド側(広角側)と言います。その、望遠側70mm側にして、ググっと寄って撮影したのです。
さらに、被写体に最短(さいたん)撮影(さつえい)距離(きょり)に近づいて撮影すると、背景を最大にぼかして撮影することが出来ます。最短撮影距離とは、ピントを合わせるときに被写体に寄れる最短の距離のことを言います。ちなみに、FE 24-70mm F2.8 GMⅡの最短撮影距離は、ワイド側で21cm、望遠側で30cmです。
まとめると、ズームレンズを使って背景をぼかして被写体を撮影したい場合は、最大望遠側、そして最短撮影距離で撮影すると、背景が大きくボケて写ります。AモードやP、S、Mモードなどで絞り(F値)を変えることが出来る場合は、絞りを一番小さい数値で撮影するとよいでしょう。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/640秒・ISO100
この写真は、ストリートに面したレストランでお昼にカレーを食べていた時、一緒に注文したドリンクを撮影したものです。被写体にググっと寄って撮影しているので、背景のストリートの様子が適度にボケて写り、柔らかい空気感で写っています。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/125秒・ISO100
こちらはインドのレストランのカウンターにて。
背景がトロリと溶けるようにボケて写っています。背景に写っている場所が被写体から遠いので、強くボケて写っています。
まとめてみましょう。
背景をぼかして撮影するには、
① 望遠ズームレンズの場合は、望遠側にする。
② できるだけ背景を遠い場所を選んで撮影する。
③ 被写体にググっと寄って撮影する。できれば最短撮影距離で。
この3ステップで、背景トロトロな写真を撮影することが出来ます。
ぜひ、挑戦してみてください。
8:光と影を撮る
晴れの日だけに撮れるもの、それは、太陽の光と影。
光と影が織りなす光景は、美しいものです。
でも、地球上において、太陽が輝いたり雨が降ったり曇ったりするそれは毎日すぐそこでおこることだから、当たり前の日常、と思われていることも多いでしょう。それを美しいと強く感じることが出来るのは、カメラを持っているからこそなのかも知れません。
SONY α7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.5・1/2000秒・ISO100
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/1600秒・ISO100
よく晴れた日、インドの道端で。
ただそこに、お花があって、光と影があって。
ああ、なんて美しいのでしょう。
カメラという機械があるからこそ撮れるもの。残せるもの。
カメラに出会えたことに、感謝ですね。
晴れた日、光と影を見つけたら、ぜひ撮影してみてください。
それは、カメラを持っているあなただから撮ることが出来る特権です。
9:旅グッズを撮る
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/13秒・ISO250
インド、デリーのホテルにて。
長かった旅もこの日で終わり、もうすぐ空港に向かう、そんなときに記念に撮影しました。お気に入りのキャップと、ホテルのお部屋のカギを、スーツケースの上にのせて撮影しました。
お部屋のドアを開けて、廊下側の明るい光を入れて逆光になるようにして、廊下をちょうど人が歩いているタイミングでシャッターを切りました。
この写真を撮影したのは約半年前ですが、この写真を見て、ああそうだったなあと記憶がグググっと蘇ってきました。そういえばこの少し前に美味しいカレーを食べたなあとか、そのカレーは食べきれないほど量が多かったなあなど。
持ってきた旅グッズや、旅先で出会った旅の思い出を撮影してみましょう。
旅をしているその時は、その場にいて覚えているのでなんてことないものに感じるかもしれません。でも、人の記憶は儚いもの。旅から帰り、さらには数年後に写真を見返したときに、その記憶は忘れていたものであったりすることも多いです。でも、その忘れていた記憶をグググっと呼び起こしてくれるのが、旅グッズであったりします。
私は、旅先で、持参したスーツケースやバックパック、飛行機の搭乗券や電車のチケット、宿泊先の鍵などを撮影することが多いです。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/15秒・ISO200
こちらは、美食の街チェッティナードの老舗ホテルのお部屋の鍵を撮影した写真です。ホテルの一角にて撮影しました。見返しながら、このホテルは本当に素晴らしいホテルだったなあと思い出しました。そしてそこは、笑顔溢れるスタッフの方たちが常にお掃除をしていて、美しいホテルでした。
記憶の引き出しをより強く引き出してくれる旅グッズ。ぜひ、旅先で撮影してみてください。
10:自分を撮る
最近は、SNSで自撮りをした写真を掲載することが当たり前な時代になりました。
Instagramなどを開けば、世界中の方々の自撮りの写真が溢れています。
私も、旅先で自身を撮影することはとても好きです。でも、大げさではなくさりげなく。
例えば、窓ガラスやショーウィンドウに映った姿を撮影したり、お気に入りのスカートや靴を履いていたらそのシーンを撮影したり。
窓ガラスやショーウィンドウは、自撮りをする絶好のチャンス。この写真は、南インドコーチンの街中、朝のおさんぽのときに撮りました。インドの朝の風景が写っています。バイクに数人乗っていたり、トゥクトゥクが走っていたり。その時のその時間も一緒に写っています。
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF3.2・1/15秒・ISO200
SONY α7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/800秒・ISO320
こちらは、お気に入りのイエローのスカートと、イエローの花びらと。
SONY α7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.5・1/50秒・ISO250
こちらは、美食の街チェッティナードの老舗ホテルでスパイス料理修行中、エプロンをつけて裸足で授業を受けていたので思わず撮りました。裸足でレッスンを受けるというのも、南国ならでは。インドらしい一枚になりました。
自分を撮って旅の思い出を残す。
それも、カメラを持っているからこそ残せる思い出ですよね。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、旅先でスナップ写真を撮る楽しみ方をお話しました。
今回お話した内容を、第1回、第2回とまとめてみます。
1:旅の空や車窓からの景色を撮る
2:旅先の街の時間を撮る
3 :ご飯を撮る
4:色を撮る
5:その日の光を撮る
6:逆光や半逆光で撮る
7:ググっと寄って背景をぼかす
8:光と影を撮る
9:旅グッズを撮る
10:自分を撮る
カメラ初心者さんでも、誰でも簡単に撮ることが出来る内容で、10のレシピをお届けしてきました。
ぜひ挑戦してみてくださいね。
今までより「もっと」楽しんで撮影していただけたら嬉しいです。
それではみなさん、素敵なカメラライフ、素敵なカメラトリップを!
今回のカメラ・レンズ
ソニーα7 Ⅳ
◉発売=2021年12月17日 ◉価格=オープンプライス(実売327,760円・税込)
詳しくはこちら
FE 24-70mm F2.8 GMⅡ
◉発売=2022年6月10日 ◉希望小売価格280,500円(税込)(実売・277,200円税込)
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FE 40mm F2.5 G
◉発売=2021年4月23日 ◉オープンプライス(実売・85,140円税込)
詳しくはこちら
山本まりこさんの撮影機材
□カメラ
SONYα7 Ⅳ
□レンズ
FE24-70mmF2.8GMⅡ
FE40mmF2.5G