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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 山本まりこ×旅スナップの撮り方 『旅スナップを「もっと」楽しむかんたんレシピ』

写真・文:山本まりこ/編集:合同会社PCT

『旅スナップを「もっと」楽しむかんたんレシピ』

コロナ禍を経て、外出を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。カメラを持ってお出かけ、旅に出てスナップ撮影をやっと楽しめます。今回は写真家の山本まりこさんに旅スナップ撮影がもっと楽しくなるポイントを解説いただきました。予習して、カメラを持って旅に出発しましょう!

山本まりこ
写真家。スパイスフーズ作家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。撮影、執筆、講演、講師など活動は多岐。写真集「AIRY COLORS」「熊野古道を歩いています。」、著書「エアリーフォトの撮り方レシピ」など11冊出版。好きな食べ物は、カレーとイカ。
HP:MARIKO YAMAMOTO OFFICIAL WEBSITE
Instagram:https://www.instagram.com/yamamarimo/

はじめに

空気がスッと澄み、木々の葉が秋色に変わり、ますますお出かけしたい季節になってきた最近。カメラを持って、国内へ、海外へと旅の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。最近カメラを買って、初めての旅に行く、そんな方もいらっしゃるかも知れません。

さあ。今日は、そんなカメラが大好きなみなさんに、旅で写真を撮る「旅スナップ」の楽しみ方のお話をしたいと思います。

でも。
カメラを持っていざ旅に出たら、何を撮ったらいいのか分からない。そんなことを思って悩む方も多いようです。

実際にフォトセミナーで講師をしていると一番多い質問は、「何を撮ったらいいのか分かりません。」という質問です。そして「どんな風に撮ったらいいのか教えて下さい。」という質問が続きます。

そんなときにはいつもこう答えています。「まずは、自分が興味があるものを撮っていきましょう。気になったものをどんどん見つけてシャッターボタンを押してみてください。」と。
そうです。写真は芸術。表現は自由。
自分が好きなものを好きなように撮ればいいのです。

例えば、自分が今見ている景色の中で、気になるとことを探していきましょう。
あのお花、美しいなあ。
あそこのお店の壁の色、鮮やかだなあ。
あの看板、面白いことが書いてあるなあ。
あそこにあるお木の影、きれいだなあ。
このマンホールの絵、何が描いてあるのかなあ。

そう、自分の心の中に浮かんだこと、どんな小さなことでもいいのです。
その自分の中の「心の気づき」を知って、シャッターボタンを押して、写真を撮っていきましょう。

さあ。
では。
世界の旅に一緒に行きましょう。
今回は、私が今年の3月に訪れたインドの旅の写真でお話したいと思います。

旅スナップを「もっと」楽しむとってもかんたんなレシピをお話します。

1:旅の空や車窓からの景色を撮る

飛行機や車、電車やバス。旅の移動はカメラと一緒だとさらに楽しいですよね。私は飛行機の移動の際は、大体窓際を予約します。だって、窓の外の景色は毎秒ワンダーランドだから。乗っている時間、刻々と変わる空の色、目下に見える景色を眺める時間は、全てシャッターチャンス。

まずは、トランジット先のシンガポールに向かう機内より。

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.5・1/3200秒・ISO100

窓の外を切り取るときのポイントは、窓の反射を考えること。
飛行機や電車やバスなどの中で、外の景色を撮ろうとすると、室内の照明や周辺が写りこむことがあります。そのまま撮影すると、外の景色があまり写らずに反射が大きく写ってしまうことがあります。特に、夜間で内部の照明が明るいときに撮影すると、写りこみが大きくなります。そんな時は、レンズの先を窓にぺったりとくっつけ、窓とレンズの設置するあたりをそっと手で覆います。すると、マジックのように反射を消して撮ることが出来ます。

シンガポールに近づくと、無数の船が浮かんでいました。同じ方向を向いてぷかぷかとたくさん。反射が写らないように撮影しました。

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.8・1/800秒・ISO100

シンガポールの空港でトランジット中、外を見ると夜が近づいていました。窓に貼られた空港の黄色い案内文字と空の青色が美しかったので撮影しました。文字にピントを合わせ、街灯を玉ボケにして撮影しました。

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.5・1/20秒・ISO400

このように、カメラに近い場所にある被写体にピントを当てて、背景に街灯を入れて撮影すると、丸く玉ボケとして写ります。街灯がボケることによって、丸く写るのです。いろいろな色の光があると、その色で写るのでとても可愛らしくなります。これからイルミネーションが美しい季節です。ぜひ、街灯を玉ボケにして撮影してみてください。

こちらは、インドの街中を車で移動中のシーン。インドでは街中に牛が歩いている姿をよく見かけます。後部座席から、思わず身を乗り出して前方の景色を撮りました。

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.8・1/640秒・ISO100

2:旅先の街の時間を撮る

南インドのコーチンに着いた次の日、朝起きると、ホテルの窓の外には南国の木々が茂り、鮮やかな花々が輝いて見えました。いてもたってもいられず、カメラを持ってホテルを飛び出し、街を歩きました。そして、シャッターを切りました。ヤシの木、ブーゲンビリア、インドの人々などいろいろ撮影してから、街角でチャイを飲みたいなと思ってチャイ屋さんを探しました。チャイは、インドのミルクティー。スパイスのシナモンやカルダモン、しょうがなどが効いている、インドで最もポピュラーなドリンクです。

チャイ屋さんの軒先では、フルーツが並んでいました。撮影していると、車や人やバイクなどがブーンと通過していくのが見えます。そこで、インドの移動手段、トゥクトゥクが通った瞬間にシャッターを切り、背景に入れながら撮影しました。トゥクトゥクは、バイクに乗車席がくっついたような乗り物です。インドで移動するときはいつも利用しています。トゥクトゥクが動いているので少しブレて写っていて臨場感が出ました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/40秒・ISO100

このように、そこにある景色も、動いているものと一緒に撮影すると、その場の空気感が増します。そして、その作品の中に「動き」が生まれます。町の中の何かを撮るときに、そこに動く、人・車・自転車・バイク・バス・電車など、動くものを一緒に撮影してみてください。

こちらは、インドで最も美食の街と言われるチェッティナードの街角にて。空が真っ暗になる少し前、まだ少し明るい青い色をしている時間に撮影しました。とても美しい青い色の空の夜の写真を撮ることが出来ました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/13秒・ISO100

空が真っ暗になってから撮影すると、やっぱり空は、黒に近い紺色で写ります。夜を柔らかく、優しく描きたいとき、真っ暗になる少し前の時間に撮影してみてください。夜を漆黒に撮りたいときは、真夜中に撮影してみて下さい。
こちらも、バイクが少しブレて写っているので、写真の中に「動き」が生まれていますね。

さあ、場所は変わって、こちらはインドの空港にて。
空港で搭乗待ちの間、人があまりいない空港のはじっこに座っていると、どこからかニャアと言う声が。ふと見ると、猫。こんなところに猫が、とびっくりしながら、夢中でシャッターを切りました。

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.8・1/50秒・ISO100

SONYα7 Ⅳ・FE 40mm F2.5 G・絞りF2.8・1/60秒・ISO100

動物を撮影するときは、カメラ内の機能で「被写体認識」を「動物」に設定しましょう。動物の瞳や顔、後ろ姿などを認識して、ファインダーや液晶の中に動物を入れた状態でシャッターを切れば、ピントがしっかりと合った撮影が出来ます。動物は動きが早いので撮ることがとても難しいですが、この被写体認識の機能を設定すれば、ピントを合わせるのが簡単。特に、最新のカメラはAIの認識力が高く、とても簡単に撮影することが出来ます。カメラによっては、入っていない機能になりますので、ご自身のカメラの機能をしっかりご確認下さい。

搭乗待ち時間、この猫ちゃんにたくさん遊んでもらいました。どうやら、空港のお店のスタッフさんたちに可愛がられているらしく、お店の人達が餌をやりにきていました。そして、搭乗待ちのインドの人たちも気づいてたくさんの餌をもらっていました。たくさんの人たちに可愛がられている猫ちゃん。きっと、グルメな猫ちゃんになりますね。

世界を旅していると、日本では当たり前なことが、当たり前でなかったりすることがたくさんあります。そんな時間、瞬間を撮ることが出来るのも、カメラだから。その時間を切り取ることが出来て、その後の時間に持っていくことが出来る。カメラって、写真って、素晴らしいなと思います。

3:ご飯を撮る

旅の楽しみの一つ、それは美味しいご飯を食べること。そして、撮ること。

南インドのチャイ屋さんにて。お店の中に、鮮やかなお菓子やドリンクが並んでいたので、それを背景にして撮影しました。いろいろな色が混ざり、インドらしい華やかな1枚になりました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF3.2 ・1/80秒・ISO100

写真を撮るときに、主役となる被写体はもちろん重要ですが、背景もとても重要な要素になります。鮮やかに、華やかに、シックに、ダークに、軽やかに…、自分のイメージに合わせて、背景を選びましょう。

こちらもチャイ屋さんにて。ショーケースにならんだお菓子がピンク色をしていてキュートだったので撮影しました。テーブルや、空いたグラスなどもあえて入れて、お店の風景が写りこむように撮影しました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/250秒・ISO100

ご飯や食べ物を撮るとき、ご飯だけ、食べ物だけの写真にどうしてもなりがちです。だって、食べたいという気持ちが強いから。どうしても、どーんと写してしまいがち。でも、その心をいったん落ち着けて、その場の風景と一緒に写すと、旅の情景が映り込み、しっとりとした旅の一枚になります。

インドの首都デリーでは、駅の近くの人通りが多い通りで宿泊しました。食堂や屋台が立ち並び、たくさんの人が行き来するみなさんが思い浮かべるザ・インドと言うような場所。牛も歩いています。ホテルからほど近いところにあるレストランに小ぎれいなレストランがあり、たまに足を運びました。注文したのは「ダルマカニ」。インドのお豆(ダル)を生クリームと煮込む、こってりとしたカレーです。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/125秒・ISO100

運ばれてきたときはアツアツ。お店に女性が入ってきたタイミングでシャッターを切りました。

熱いご飯を美味しく見せるポイント、それは、「湯気を入れて撮ること」。そして、湯気を撮るのには、コツがあります。それは、湯気が立ち上る背景は少し暗い場所にすることです。この写真も、左側の暗い部分に湯気が少し写っています。背景が黒いので、湯気が写っています。このように、湯気の立ちあがる背景に気を付けて撮影してみてください。

もう一つ、ご飯を美味しく見せるポイントがあります。それは、「キラリと光る部分を写すこと」です。カレーを救い上げたスプーンにのっているカレーが外の光を受けて光っています。キラリ。それがご飯を美味しそうに輝かせます。

ちなみにこの写真は、一人旅中だったので、セルフタイマーを設定し、左手でカメラを構えて、右手でスプーンを持ってカレーをすくいあげて、シャッターボタンを押して撮影しています。もし同じように撮るとすると少し難しいので、一緒にいるお友達などにお願いして救い上げてもらって撮影してみてください。ごはんがキラリ、と光る位置を見つけてシャッターを切りましょう。

もちろん、このダルマカニ、美味しくいただきました。

4:色を撮る

旅先の風景をより印象的に切り取るのならば、色、に注目してみましょう。インドはとても鮮やかな色に溢れています。サリーを着る女の人、街中の看板、建物の色など、カラフルな色に溢れていました。例えそれがインドでなくても、色がない国や場所はありません。その地域の特徴を生かしながら、色を探してみてください。

この写真は、デリーの街中をふらふらと歩いているときに撮影したものです。美味しいカレー屋さんがあると知り、探していた時に、ふと見ると工事現場がとても鮮やか。思わずシャッターを切りました。

フェンスの青い色と、工事車両の黄色が色鮮やかに対比していて、印象的な一枚になりました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/1000秒・ISO100

色を強調させて撮りたいときは、「切り取る」ことが大切です。そして、思い切ってズバッと切り取るのが大切。見えるものを全部入れて説明的に撮るのではなく、そこにある見せたい色をズバッと大胆に切り取ります。

この写真も、この青い壁の隣には一般的な商店が建ち、黄色い車の下にはアスファルトがあります。あえて、そういう情報を入れずに、ズバッと切り取ることで、色が強調されて写ります。

こちらは市場にて。黄色い敷物の上に並ぶ濃いピンク李のビーツが色鮮やかで気になったのでシャッターを切りました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF3.2・1/640秒・ISO125

青と黄色、黄色とピンク。どちらも、色をメインに考えて撮影しています。
ポイントは、ズバッと大胆に。思い切って切り取ってみてください。

5:その日の光を撮る

旅先で太陽がキラキラと輝き、青い空が見えたら嬉しいもの。でも、日々の中では、曇りの日もあるし、雨の日もある。雪の日だって、霧の日もある。嵐の日だってあるでしょう。

「今日は曇ってるからあんまりよく写らないから写真はいいかな。」そんな言葉を聞くことも多いです。

確かに。晴れた日は、太陽の光が美しく輝き、光と影のコントラストを描き、写真を撮るには絶好のチャンス。写真を撮るのが楽しいですよね。

この写真は、晴れている日に、光と影が美しく揺れていたので、見とれながらシャッターを切りました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/2500秒・ISO320

でも、曇りの日や雨の日に写真を撮らない…なんて、それはもったいない。だって、曇りの日や雨の日は、それぞれの良さがあるから。

曇りの日は、太陽の光が雲でいったん遮られて拡散されて、柔らかい光として地上に落ちてきます。だから、全てが柔らかい光で撮ることが出来ます。だから、柔らかい写真を撮りたいときはチャンス、と考えたら写真を撮ることが楽しくなりますよね。

この写真は、曇りの日に撮影したもの。柔らかく、優しい光に包まれています。曇りの日は、光が柔らかいので、白飛びしがちな白い色を撮るのがとても簡単です。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/15秒・ISO200

雨の日は、傘を持って、さらにカメラを持つことになるので、撮影することが難しくなります。

でも、雨をまとった被写体は、雫を抱え、水のベールをまとい、光り輝いています。お花や、木々の葉は輝き出します。その美しさは、ため息が出てしまうくらい。私は、雨の日にお花を撮ることが大好きです。だから、雨の日に撮らないなんて、なんてもったいない選択をしているの、と思ってしまうのです。

この写真は、朝、ホテルのブーゲンビリアを撮影したもの。水やりの後だったので、しっとりと水のベールを纏っていました。雨の日ではないですが、雫をたくさん抱えていて、晴れた日とはまた違った美しさで撮ることができました。

SONYα7 Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GMⅡ・絞りF2.8・1/50秒・ISO200

晴れの日、曇りの日、雨の日、雪の日。嵐の日。
いろいろな天気を、その日の光を味方にして撮影する。それは、旅スナップを楽しくするとっても大きなポイントです。
みなさんも、その日の光を楽しみながら、撮影してみて下さい。

まとめ

いかがでしたか。 今回は、旅先でスナップ写真を撮る楽しみ方をお話しました。

今回お話した内容を、まとめてみます。

1:旅の空や車窓からの景色を撮る
2:旅先の街の時間を撮る
3:ご飯を撮る
4:色を撮る
5:その日の光を撮る

カメラ初心者さんでも、誰でも簡単に撮ることが出来る内容です。
ぜひ挑戦してみてくださいね。
今までより「もっと」楽しんで撮影していただけたら嬉しいです。

旅スナップをもっと楽しむレシピは、まだまだあります。
さらなるお話はまた今度。

それではみなさん、素敵なカメラライフ、素敵なカメラトリップを!

今回のカメラ・レンズ

ソニーα7 Ⅳ
◉発売=2021年12月17日 ◉価格=オープンプライス(実売327,760円・税込)
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FE 24-70mm F2.8 GMⅡ
◉発売=2022年6月10日 ◉希望小売価格280,500円(税込)(実売・277,200円税込)
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FE 40mm F2.5 G
◉発売=2021年4月23日 ◉オープンプライス(実売・85,140円税込)
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山本まりこさんの撮影機材

□カメラ
SONYα7 Ⅳ
□レンズ
FE24-70mmF2.8GMⅡ
FE40mmF2.5G