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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 赤城耕一×ライカフレックス SL2

写真・文:赤城耕一/編集:合同会社PCT

第十三席 ライカ一眼レフの3代目にして、「フレックス」名の一眼レフ最終機

ライカの不定期連載の第13弾。写真家の赤城耕一さんがライカの歴史を紐解きながら、ご自身の体験をもとに熱くお話いただきます。今回は「ライカフレックス SL2」を取り上げます。

赤城耕一(あかぎ・こういち)
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)、『アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。』(インプレス)など多数。

はじめに

ライカフレックス(LEICAFLEX)SL2は、ライカ一眼レフの3代目にして、「フレックス」名の一眼レフでは最終機となる。今回はこれを取り上げることにする。

現在はライカSL2というミラーレス機がある。ミラーがないからFLEX名をなくしたという理屈もあるのだろうが、年寄りには同名カメラではないかと思ってしまう。だから、時おり煩わしく、間違えて話してしまうことがあるので、とくに酒宴などでカメラのヨタ話をする時は機種の確認に気をつけなければならない。いや、余興としてはいいのかもしれないけれど。

エルマリートR 35mm F2.8のシルバータイプを装着してみるが、昨今はカメラはシルバーに限ると思っているので、全体のスタイリングとともにお気に入りである。

ライカフレックスSL2は日本であまり評価されていない。いや本機だけではなくて、ライカフレックスシリーズというか、後のRシリーズをふくめて、ライツの一眼レフ自体の評価が低いのは、機能的に日本の一眼レフカメラよりも遅れているというのがその理由となるらしい。

ご存じのように一部のライカフレックス、ライカRシリーズには当時提携をしていたミノルタの技術が応用されていなければ実現は難しかったはず。

けれど、少なくとも1970年代の一眼レフのスペックだけを比較してみると、カメラメーカー別の差異は言われるほど大きくはないのではないかと思う。

今回は使用していないけど、古いズミクロンR50mm F2の性能も、M用のそれと比べても負けない性能を誇る。

ライツの場合は長くレンジファインダーのM型を自社の主力商品として前面に押し出してきたわけだから、一眼レフに対して評価する人は少ない。

ただ、専用のRレンズの描写力を高く評価する人もいて、その存在は侮れなくなっているし、筆者も一部のレンズに関しては同感である。あのライカが作る一眼レフなのだから間違いがあるわけはなかろうという意識だ。

ライカフレックスは撮影制約を少なくした万能カメラ

筆者はレンジファインダーと一眼レフの差異を認識しつつも、最短撮影距離や撮影レンズを選択せねばならないという前時代的な制約の多いM型ライカからライカフレックスは撮影制約を少なくした万能カメラという認識が強いのである。

それでも、日本ではライカに耽溺するあまり一眼レフにまで手を出したもの好きなやつと思われかねないが、筆者はライカはあらゆる機種を使ってみないとその本質はわからないのではないかと開き直っているわけだ。

Rマウント。連動機能が増えた。マウントを止めてあるのはマイナスねじというのも泣かせる。

ライカフレックスSL2は、ミノルタとライツの提携後に生まれた1974年発売の製品だが、カメラ修理専門家に言わせると、ビルドクオリティとしては、SLよりも劣る箇所があるとかないとか。パーツの質が云々とかいう話がそれらしく聞こえてくることもある。

あ、まったくウラをとっていないのでSL2ユーザーのみなさんは本気にしないでください。そのパーツが常に悪さをするという意味でもないから念のため。

あくまでも、前機種、兄貴分のライカフレックスSLと比較すると、仕上げとか材質とかは違いがあるという意味なのであろうな。

兄貴分のライカフレックスSLと並べてみる。よく似ているので、兄弟機であることがわかる。ただ、SLとSL2は外観の違いよりもファインダーの見やすさの違いなどに注目したい。

ちなみに、うちにある2台のライカフレックスSL2はずっと好調だし、大きな故障は一度も起こしていないことは申し添えておこう。

現行のライカだって、製造中にコストを見直すことも珍しくないわけで、こうしたプロの修理人にはコストダウンした箇所が目についてしまう、ということなのかもしれない。

もちろん私たち一般のユーザーには、カメラの中身のこと、パーツレベルになれば、何が何のことやら、わからないことばかりだけれど、ライカの場合は常に前機種が優れているという結論になりやすい。新機種が出たからといって、舞い上がるのははしたないとする風潮があったのかもしれないのである。

シャッターダイヤルと同軸にあるフィルム巻き上げレバー。感触はいいけれど、なぜか分割、小刻み巻き上げができない。ただ、フィルムが高価になったいま、1枚1枚確かめるように撮影するのも良いかもしれない。

私たちが認識したいのは半世紀以上前のカメラで写真制作を行おうと考えるならば、それなりに手を入れておくのは当然のことだということだ。

筆者のヘソは他の人より少しズレた位置についているためだろうか、ライカも高く評価されている機種より、人気のないものが、好きなのである。

そういう意味では本機の立ち位置は登場時期は異なるけれど、ライカM4-2あたりの不人気さと似ているところがある。不憫なライカフレックスSL2だよなあ。実際に以前よりはかなり買いやすい価格をつけられていることも多い。

フィルムカウンター。黒地に白色というのは見やすい。数字も大きめなのは年寄りにやさしい。

カメラの各部を見ていこう

さて、初代ライカフレックス、SLと進化してきて、SL2は何が異なるのかと言われると困ってしまうが、ボディシェルの基本は初代からあまり変化がないようにみえる。ただ、舟底のようなボディ底部の曲線は美しいが、SLよりもふくらみは小さくなったようにみえる。

それでも、あいかわらずボディの厚みと重量はかなりのもので、華奢な女性には辛いかもしれない。外装の仕上げはシルバークロームとブラッククローム。ブラックペイント仕上げのボディがない。ちなみにこのブラッククローム仕上げは提携していたミノルタの一部のカメラボディにも採用され、摩耗に強い塗装として、「ネオブラック」と呼ばれた。

シャッターは横走りのメカニカルフォーカルプレーンシャッター。分割巻き上げは不可。これも初代ライカフレックスと同じ。

フィルム巻き戻しクランク。上部の黒い突起を右にずらして、クランクを引き上げると裏蓋が開く。周囲は装填フィルムの覚書用のアイコン。

最高速シャッタースピードは1/2000秒、ファインダースクリーンは固定式だが、スプリットマイクロプリズム距離計を内蔵。ライカフレックスSLよりも、視野は間違いなく見やすい。

また、ファインダー内には設定シャッタースピードとF値が表示されるが、昔流にいうと「情報集中ファインダー」ということになるが、筆者はファインダー内情報はあまり重視していないから、すごい改良点という印象は薄い。

シャッターダイヤルはシャッターボタン周囲にある。ライカM5と似た方式で、これも使いやすい。

ライカフレックス共通だが、シャッタースピードダイヤルとシャッターボタンが同軸なのは使いやすい。ただ、ライカM5のような厚みのないダイヤル形状のほうが使いやすいように思う。SL2でこの形式は終了する。

内蔵のTTLメーターは測光範囲が広くなったためか、低輝度の測光で役立つように、本機ではイルミネーターを装備し、ファインダー内の指針を照明するようにできている。このために専用のバッテリー室がボディ左前に設けられているが、なんだか大袈裟だ。

それにしてもイルミネーターが実用的に役立つシーンというのが自分の撮影ではまったく思い浮かばない。けれど、いちおう点灯するものが点灯しないと面白くはないから、筆者は自宅でSL2と戯れる時にはバッテリーを入れて点灯チェックするようにしている。

ファインダーイルミネーター用のバッテリー室はカメラ前面の目立ったところにある。実用というよりも、ときおりバッテリーを入れて、点灯するのを確認してみたり。

どういうわけか、ライカの一眼レフはすべて分割、小刻み巻き上げができず、本機も同様である。速写性は低い。もしモータードライブを使おうと考えるならば、専用のSL2 MOTボディを用意せねばならない。

仮にこのSL2 MOTにモータードライブを装着すると、その風情は二階建ての商店建築みたいになって、とんでもない重さになり、お気軽に街をスナップするという気にはならない。

レニ・リーフェンシュタールの有名な作品集、『Nuba』の撮影メイキングには、レニが首からライカフレックスSL2を首から下げて、足元の悪そうな未開拓地をガイドと歩いているカットが出てきたりするのだから興味深い。レニの体力がすごいのか、SL2が信頼されていたのか、ライカRレンズが気に入ったのか。これも謎のままにしておいたほうがよさそうだ。

撮影時の使い勝手はどうか?

さて、ライカフレックスSL2の使い心地はどうか。もう最初から重たいという言葉が出てきてしまうけれど、アサインメントのために使うわけではないので、これは我慢できる。

フィルム装填はフツーだけど、裏蓋を開閉する時は、カメラ上部のロックレバーをずらしながら、巻き戻しクランクを上に引き上げる方式で少々凡庸な感じがする。

フィルム室。特徴はないけど、スプールは上からフィルムを挟んだほうがトラブルは少ない。ファインダーアイピースは独自の形状である。

シャッター機構はライカフレックスSLを踏襲しているようだけれど、動作音は“バサッ ” という独自の低い音がする。これは好みである。

やはり小刻み巻き上げができないのはライカMと共用していると気になることもあるけれど、フィルムがこれだけ高価になると、そう焦って撮影しなくてもよいのでは、という思いもしてくるわけで間合いがちょうど良いのである。

フルメカニカルカメラということもあり、筆者は本機にバッテリーを入れて撮影することはほとんどないのだけれど、TTLメーターはライカらしくスポット性がかなり強い。

上から、セルフタイマーレバー、プレビューボタン、レンズ着脱ボタン。SLとは若干位置関係が異なる。

ファインダー内では、マイクロプリズムの外周円と測光範囲は同様のようだ。したがって、被写体の色とか反射率を見極めて測光しないと思わぬ失敗をすることがあるが、逆にこのことをアタマに入れておくと、けっこう使いやすいかもしれない。TTLメーターを信頼して使いたい人は覚えておいて損はなかろう。

受光素子はCdsで、ミラーボックスの床下にあり、ハーフミラーで受光素子に導かれる方式で、逆入光の影響は受けづらいのはいい。Cdsは応答速度が遅いと言われるものの、実用にあたって問題になることはない。ただ、応答速度は素早いとは言わないが、的確なチューンが行われているようだ。

ファインダーイルミネーター用のボタン。ペンタプリズム部という奇妙なところにある。使用頻度が少ないからこの場所でもいいという判断なのか。

道具としての品格がある、必要な人には必要なカメラ

ライカのフルメカニカル一眼レフは、このSL2以降、1998年にR6が登場するまで出てこないので、インターバルタイムは長いほうだ。

シャッター形式はSL2は横走りフォーカルプレーンで、R6は縦走りのセイコーであるから、使用した時の印象がかなり異なる。シャッターのみの動作音や精度の厳密に評価をするのならば、時代的にR6のほうが優れているのかもしれないけれど、SL2のシャッター動作音や操作系のなめらかさなど写真を制作する上においての道具としての品格にはかなわない。

たしかにライカフレックスSL2は古いし、巨大で重量級だけど、一度だけでも使用してみると、内包された強い力を感じる人、将来を見つめるライカの少なからずいるはず。だから必要な人には必要なカメラなのである。

ライカフレックスSL2の作例

メーターの動きをみるために電池を入れてみた。背景が暗いなど主要被写体との明暗差が大きいばあいはスポット測光は有効である。SL2のTTLメーターのパフォーマンスを発揮させるにはRレンズも「2カム」あるいは「3カム」のタイプを選ぶ必要がある。

ライカフレックスSL2・エルマリートR35mm F2.8・絞りF5.6・1/500秒・コダックエクター100

旧型のライカRレンズは少々軟かい描写をするのでコントラストの高い条件ではエクターの調子と相性がよい感じがする。

ライカフレックスSL2・エルマリートR35mm F2.8・絞りF8・1/250秒・コダックエクター100

歪曲収差はわずかなタル型か。少しヌケの悪いような感じがするのは背景のハイライトの影響だろうか。

ライカフレックスSL2・エルマリートR35mm F2.8・絞りF8・1/ 250秒・コダックエクター100

スーパーアンギュロンはシュナイダー社の超広角レンズだから、ライカレンズの威厳が薄いという人もいるけど、安定的な描写性能はたまらないものがある。

ライカフレックスSL2・スーパーアンギュロン21mm F4・絞りF8・ 1/250秒・コダックエクター100

タギングと称する街中のいたずら書きを撮らされてしまうのは、思う壺に入った感があるので悔しいけれど、これも現代の都市のありようかと思うことにしている。

ライカフレックスSL2・スーパーアンギュロン21mm F4・絞りF8・1/250秒・コダックエクター100

わずかに温調の傾きがあるけれど、補正はしていない。レトロフォーカスタイプだけど歪曲収差が気にならないのは特筆すべき点だ。この時代のRマウントレンズは性能優先のためか大きいものが多いが本レンズは小型の部類に入るだろう。

ライカフレックスSL2・スーパーアンギュロン21mm F4・絞りF8・ 1/250秒・コダックエクター100

超広角レンズを使用して、きっちりフレーミングしようとすると、やはり一眼レフの優位性は揺らがないところがある。RマウントのスーパーアンギュロンはMマウントのそれと異なりレトロフォーカスタイプだが、侮れない写りをする。

ライカフレックスSL2・スーパーアンギュロン21mm F4・絞りF8・1/250秒・コダックエクター100

今回のカメラ・レンズ

ライカフレックスSL2
◉発売=1974年 ◉生産終了品