カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 桃井一至×ソニーα7 V実写レビュー
写真・文:桃井一至/編集:合同会社PCT
写真家 桃井一至 × ソニーα7 V実写レビュー 圧巻の仕上がり。最新「α7ベーシック機」
無印α7の第5世代目「ソニー α7 V」が登場しました。着実な改良を加えられていく外観と、目覚ましい進化を性能。α7シリーズのベーシック機として位置付けられる本機の真価を、写真家桃井一至さんにじっくり解説いただきました。
- 桃井一至(ももい・かずし)
- 1968年、京都生まれ。写真家アシスタントを経て、フリーランス。現在は撮影をはじめ、写真関係媒体の執筆やWebレポートなどを多数。イベント等への出演も多く、NHK「趣味悠々・デジタル一眼レフ撮影術入門」などでは講師を務めた。主な撮影ジャンルは人物・海外風景など。公益社団法人日本写真家協会会員(JPS)。
- Youtube:「gizmomofreaks」
目次
はじめに
ソニーがミラーレスカメラ市場に参入してから16年。世界初の35mmフルサイズミラーレス「α7」の衝撃的な登場からは13年が経過した。常にフルサイズミラーレスのパイオニアとして、時代の先陣を切ってきたソニー。 その中核を担う「α7」が、ついに第5世代へと進化した。「ベーシック」の概念を塗り替えるその進化の真価を、じっくりと紐解いていこう。
総合的なバランスに最も優れた無印の「α7」
カメラメーカーとしては後発ながら、電機メーカーとしてのDNAを武器に、イメージセンサーなどの基幹部品を自社グループ内で調達できる強みを活かして成長を遂げてきたソニー。
ミラーレス化という時代の転換点を経て、その勢いはさらに加速している。最近では、画期的なグローバルシャッターを搭載した「α9 III」を投入するなど、その技術力は目を見張るものがある。
ソニーのα7シリーズのラインナップは、高画素の「R」、超高感度の「S」、コンパクトな「C」と多角的に展開されている。
その中心に位置するのが、称号を持たない無印の「α7」だ。
総合的なバランスに最も優れた「αシリーズのど真ん中」であるからこそ、最新モデル「α7 V」への期待は極めて大きい。
左:α7 IV / 右:α7 V
前背面ともにグリップ形状がわずかに変更。特に背面は親指側の指掛かりが良くなっており、撮影中はもちろん、手持ちでの移動時にもその進化を実感できる。一見どれも同じに見えるαシリーズだが、細部まで見比べると着実に改良が積み重ねられていることが分かる。
左:α7 IV / 右:α7 V
α7 IVはUSB Type-Cとマルチ/マイクロUSB端子。α7 VではUSB Type-C端子を2つ備える構成に変更。時世に合わせたアップデートだが、これにより従来のケーブル式リモートコマンダーが使えなくなり、純正リモートコマンダーRMT-VP2ほか、スマホアプリCreator's Appでの対応になる。
最新エンジン「BIONZ XR2」を搭載。AIの活用でスピード、画質両面が進化
一見すると外観は先代のα7 IVから大きな変化はないように思える。しかし、その内部には最新デバイスである「部分積層型CMOSイメージセンサー」とAI処理機能に特化した「BIONZ XR2」エンジンを搭載。スピードと画質の両面で圧倒的な磨きがかけられた。
これにより、AI被写体認識オートフォーカスを併用しながらの最大約30コマ/秒というブラックアウトフリー高速連写を実現。さらに、最大約16ストップの広大なダイナミックレンジが、階調豊かな深みのある描写を可能にしている。
また、AIディープラーニングを活用したAWB(オートホワイトバランス)により、光源が複雑なシーンでも極めて安定した色再現が可能としている。
ソニーα7 V・FE 16mm F1.8 G・絞りF1.8・1/13秒・ISO800
蛍光灯や街灯など光源が混在するシーンでオートホワイトバランス(AWB)を試したが、全般的にα7 IVより好印象だ。濁りのないスッキリとした色再現が心地よい。ただし、業務などで新旧モデルを併用する場合は、色の統一感を出すために機種を揃えたくなるかもしれない。
α7 IVとの大きな違いは「シャッターフィーリング」
先代のα7 IVユーザーが手に取った際、最も大きな違いを感じるのは「シャッターフィーリング」だろう。α7 IVまでは、センサーの読み出し速度に限界があり、メカシャッターがメイン。
電子シャッターは静音撮影などの補助的な役割に留まっていたのが実情だ。
対してα7 Vは、高速読み出しが可能な部分積層型センサーの採用により、その立場を完全に逆転させた。フラッシュ撮影などの特殊なケースを除き、電子シャッターをメインに据える運用へとシフトしている。
秒間最高30コマの高速化に加え、上位機種譲りのブラックアウトフリー連写に対応したポテンシャルには、クラスを超えた驚きを隠せない。 一方でメカシャッターの感触も改良されており、角の取れた心地よいフィーリングへと進化している。
ちなみに高速連写を得意とするα9IIIの先代α9IIでは電子シャッターは最高20コマ/秒、メカシャッターは10コマ/秒。画素数はα9IIIが約2420万画素に対して、α7 Vは約3300万画素なので負荷も大きく、この一面だけ見れば一世代前の高速モデルを凌駕したことになる。
ソニーα7 V・FE 50-150mm F2 GM・絞りF2.0・1/12800秒・ISO200
被写体認識(車/列車)を使用。遠方で認識した瞬間から、正面がフレームアウトするまで約20コマ/秒の連写Hiで追い続けた。CFexpressカードを使用し、RAW+JPEGの約150コマを息継ぎなく記録。ピントの精度も全コマ完璧だ。
被写体認識作動時のファインダー
AIディープラーニングによるAWBの進化、手ブレ補正のブラッシュアップ
画質面においても、高感度ノイズの低減とともに、ダイナミックレンジは15ステップから16ステップへと拡大(メカシャッター使用)。正直なところ、もともと広いダイナミックレンジの差を実感するのは難しいが、AIを活用したAWBの進化は一目瞭然だ。日陰の森や、複数の人工光源が混在する夜景シーンでは、新旧モデルの差が顕著に現れる。
ISO感度比較(ISO 51200)
左:α7 IV / 右:α7 V
画素数は同等ながら、センサー構造や画像処理エンジンが世代交代した新旧2モデル。常用最大ISO51200、拡張ISO204800というスペックは共通だが、比較するとその差は歴然だ。旧モデル単体では十分に見えても、並べると橋脚のノイズや金網のディテールに開きがある。ホワイトバランスの正確さも新型に軍配が上がる。
さらに「縁の下の力持ち」である手ブレ補正もブラッシュアップされた。中央最大7.5段、周辺最大6.5段を誇る光学式5軸ボディ内手ブレ補正は極めて強力。フラッグシップ機には一歩譲るものの、実写において不足を感じる場面はほぼないはずだ。
操作性における大きなトピックは、背面の4軸マルチアングル液晶モニターの採用だ。レンズの光軸上でモニターを上下に動かせるため、チルト使用時には構図決定やローアングル撮影がスムーズかつ直感的になった。
左:α7 IV / 右:α7 V
α7 Vでは4軸マルチアングル液晶モニターを採用し、チルトとバリアングル両方の利便性を兼ね備えた。上位モデルに続いてベーシックモデルにも導入されたのはうれしいポイントだが、その分ボディに若干の厚みが増している。
α7 Vの作例
ソニーα7 V・FE 50-150mm F2 GM・絞りF5.6・1/160秒・ISO160
眩しい夕陽から、それを捉えるスマートフォンの画面、そして手のひらの質感など暗部まで描き出す広いダイナミックレンジ。スマートフォンの多枚数合成による不自然な描写とは異なり、こちらはワンショットでリアリティのある絵を見せてくれる。
ソニーα7 V・FE 16mm F1.8 G・絞りF11・1/30秒・ISO1600
従来、日陰の森などでは青みがかりやすく、AWBが外れる傾向にあった。その都度、設定を切り替えるか後処理で補正する手間が必要だったが、本モデルはほとんどのシーンでイメージに近く、許容範囲内に収まる。
ソニーα7 V・FE 24-70mm F2.8 GM II・絞りF2.8・1/50秒・ISO12800
雪降る城下町を散歩。大口径レンズを活かし、街灯の玉ボケを活かした。ISO12800では多少ざらつきが見られるが、色は目視に近く、必要十分な美しさを維持している。ボディ・レンズ共に防塵・防滴に配慮した設計だ。
ソニーα7 V・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF5.6・1/1600秒・ISO100
動画機能の充実に伴い主流となった横開き式のバリアングル液晶は、自撮りには便利だが、光軸からずれるためスチル撮影では構図決定に難儀することがあった。その点、4軸マルチアングル液晶は光軸を維持したまま自由な角度に変えられるため、ローアングル撮影も極めてスムーズだ。
ソニーα7 V・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF5.6・1/1250秒・ISO100
古い倉庫の壁をクリエイティブルックの「FL(フィルム)」で撮影。デジタル特有の鮮やかさに慣れた目には、この落ち着いた色合いが心地よい。名称にとらわれず、その場の空気感に合わせて好みのルックを選ぶのも、ひとつの楽しみ方。
クリエイティブルックを比較(FL2 / FL3 / ST)
共通:ソニーα7 V・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF4.0・1/640秒・ISO100
新たに追加された「FL2」「FL3」と「ST(スタンダード)」を比較。FL2はコントラストがやや強めで落ち着いた発色、対するFL3はコントラストを抑えたクリアな発色を目指したという。それぞれの味がある風合いを使い分けたい。
まとめ
細部まで磨き上げられたα7 V。ソニーのヒエラルキー上は「ベーシック」に位置づけられるが、その中身はもはや「α1 ジュニア」と呼べるほどの充実ぶりだ。
実際、筆者も業務撮影に投入しているが、初心者からプロフェッショナルまでをカバーできる守備能力の広さには目を見張るものがある。
「ベーシッククラスの牙城を他社には譲らない」という、ソニーの強い執念と意気込みを感じさせる仕上がりだ。
今回のカメラ・レンズ
ソニーα7 V
◉発売日=2025年12月19日 ◉価格=オープン(実売:375,210円・税込)
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FE 16mm F1.8 G
◉発売日=2025年4月11日 ◉価格=オープン(実売:122,760円・税込)
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FE 16-35mm F2.8 GM II
◉発売日=2023年9月22日 ◉価格=オープン(実売:322,740円・税込)
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FE 24-70mm F2.8 GM II
◉発売日=2022年6月10日 ◉価格=オープン(実売:287,100円・税込)
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FE 24-105mm F4 G OSS
◉発売日=2017年11月25日 ◉価格=188,100円(実売:153,450円・税込)
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FE 50-150mm F2 GM
◉発売日=2025年5月23日 ◉価格=オープン(実売:537,570円・税込)
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