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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 伊藤亮介×桜撮影テクニック&スポット紹介

写真・文:伊藤亮介/編集:合同会社PCT

桜の名所で撮影を楽しもう!「東北・関東編」

桜の季節がやってきます。今回は様々な桜の撮影スポットを、「東北・関東編」、「中部・北陸・関西編」に分けてご紹介します。写真家 伊藤亮介さんに、作例を交えて桜の名所、桜撮影のテクニックを解説いただきました。ぜひ参考にして桜撮影を楽しんでください。

伊藤亮介(いとう・りょうすけ)
1972年新潟県生まれ。東京電機大学卒。中学生の時に写真を始め、大学生の頃から本格的に自然風景を撮り始める。隔月刊『風景写真』編集部での勤務を経て、フリーの写真家となる。主に日本全国の水のある風景や、森の表情などを撮り続けている。写真雑誌の口絵での作品発表をはじめ、風景撮影の連載や撮影技法・製品などについて数多くの記事を手掛ける。クラブ「フォトR」主宰。他にも複数の写真クラブで講師を務めている。

はじめに

東北地方での桜名所といえば、まず初めに挙げられるのは青森県にある弘前公園だろう。天守閣や石垣と桜を組み合わせたり、濠に浮かぶ花筏の表情やライトアップされた幻想的な桜の姿などさまざまなシーンを撮れるのが弘前公園の魅力だ。また、福島県の中通り地域にも、花見山や三春滝桜などの撮影スポットが数多くある。東北地方の桜名所は、それぞれが比較的離れていて移動に時間がかかるのが難点だが、福島県は一本桜の大木が日本一多い県といわれるだけあって効率良く桜に巡り会える。

一方、関東地方では群馬県や埼玉県、神奈川県などにフォトジェニックな桜名所が多い。特に埼玉県の熊谷・秩父エリアは比較的コンパクトな範囲に纏まっており、一日で多様な桜の姿を写し止めることができる。

今回は実際に筆者が訪れた東北・関東エリアの桜名所を紹介しよう。メジャーな撮影場所から穴場的な桜までピックアップし、併せて桜の狙い方や撮影テクニックなどについても解説しているので、今春の桜撮影にぜひ役立ててほしい。

弘前公園[青森県弘前市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・241mmで撮影・絞りF14・AE(1/13秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター

園内には2600本もの桜が咲き、満開時は華やかな雰囲気に包まれる。満開のピークを少し過ぎると、内濠・外濠などでは桜の花びらが水面を覆い尽くし、周囲の桜と組み合わせたシーンを撮影できるのも城郭ならではといえるだろう。この写真は朝日に染まる桜を画面の2/3ほど入れて存在感を出しつつ、水面に散った花びらと上部の桜の映り込みも入れて画面を構成した。弘前公園で朝夕の光に染まる桜と水面の花びらを撮る場合は、朝は朝日が当たりやすい東側や南側の外濠、夕方は夕日が差し込む西側や北側の外濠へ行くのがお勧めだ。

榴岡公園[宮城県仙台市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5D MarkIII・EF16-35mm F4L IS USM・35mmで撮影・絞りF16・AE(1/160秒)・ISO200・WB太陽光・PLフィルター

仙台市の中心部にほど近い榴岡公園には、しだれ桜を中心に約350本の桜が植えられている。園内は広いものの満開の時期を迎えると花見客が多く訪れ、さらに周囲にはビルやマンションが立っていることから広い風景は撮りづらい。そのため望遠レンズで一部分を切り取るか、あるいは晴れていれば桜を見上げるようにして、青空を背景にして写すのがベターだ。ここではPLフィルターを最大に効かせて青空の濃度を高め、白い桜を浮かび上がらせて撮影しているが、単調な写真になるのを避けるために白い雲が画面の中心部に流れてきた時にシャッターを押している。

霞城公園[山形県山形市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5D MarkIII・EF70-200mm F4L IS USM・70mmで撮影・絞りF6.3・AE(0.4秒)・ISO800・WBオート

山形城跡として知られる霞城公園には桜の古木が数多く植えられている。公園の周囲には堀があり、水面に覆い被さるように咲く桜の姿をいたるところで見ることができる。園内に残された石垣と桜を組み合わせて城郭らしさを出すのもひとつの方法だが、最も城跡の雰囲気が感じられるのは二ノ丸東大手門付近だ。特に大手橋から望む桜が並ぶ風景は美しく、夜間にはライトアップも行われる。この時は駅前に聳える霞城セントラルを背景に取り入れ、古の城郭の桜と対比させて時の流れを表現した。

鶴ヶ城[福島県会津若松市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM・35mmで撮影・絞りF8・AE(0.6秒)・ISO800・WBオート(ホワイト優先)

鶴ヶ城では約1000本の桜が咲き誇り、城と桜を組み合わせた日本らしい春のひとコマを収めることができる。夜間にはライトアップされて、赤瓦の天守閣が特徴的な鶴ヶ城が漆黒の闇に美しく浮かび上がる。画面手前に桜を配し、その奥に鶴ヶ城を入れて奥行き感が出るように構成した。城内の桜は光源(ライト)の当て方が上手く、桜が立体的に感じられる。ライトアップされた夜桜は、ホワイトバランスを太陽光(晴天)で撮ると赤みが強過ぎることが多く、その際はオートに切り替えて撮影しよう。

翠ケ丘公園[福島県須賀川市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5D MarkIII・EF70-200mm F4L IS USM・121mmで撮影・絞りF11・AE(1/30秒)・ISO400・WB太陽光・PLフィルター

数多くの名木がある福島県の中でも、穴場的な撮影地といえるのが翠ケ丘公園だ。園内を流れる須賀川の両岸には約180本の桜が咲き、朱い太鼓橋との調和の取れたシーンは一見の価値がある。訪れた時は満開のピークを過ぎて、水面を埋め尽くすように桜の花びらが散っていた。花びらだけを写すと単調な写真になってしまうので、偶然流れてきた三輪の椿の花をポイントにして移ろう春を表現した。PLフィルターは強めに効かせて、メリハリのある写真になるように仕上げている。

さくらの里[群馬県下仁田町]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS II USM・31mmで撮影・絞りF18・AE(1/25秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター

園内には4500本もの桜が植えられており、ソメイヨシノの他にもさまざまな品種があることから比較的長い期間桜を写せる。さくらの里の北側には特徴的な険しい岩峰が連なる妙義山が間近に聳え、桜と組み合わせればスケールの大きな風景を撮影できるのが魅力だ。写真は画面左側に桜の幹を配して力強さを出し、中央右寄りに目立つ桜を入れつつその間に妙義山の岩峰を覗かせて画面を構成している。PLフィルターは少し強めに効かせて、澄んだ青空を強調した。

上発知のシダレザクラ[群馬県沼田市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・220mmで撮影・絞りF16・AE(1/40秒)・ISO200・WB太陽光・PLフィルター

上発知町の小高い塚の上に咲く一本桜。木の下には赤い頭巾をまとったお地蔵様が祀られていて、絵になる桜として写真愛好家によく知られている。日中に順光で桜全体を入れて撮ると個性が感じられにくい写真になるので、朝夕の斜光を生かして印象的な部分に絞って作画したい。訪れた時には桜の周囲に夕方の光が当たっていたものの、すぐには撮らずに背景が暗くなるまで待って桜とお地蔵様を浮かび上がらせた。離れた位置から望遠レンズを使って撮影すると、桜の上部に空が写り込むのを防ぐことができる。

美の山公園[埼玉県皆野町]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・182mmで撮影・絞りF22・AE(1/15秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター

アジサイなどの名所として名高い美の山公園は、春になると約8000本もの桜が咲く。その中でも狙い目の場所は、山頂近くの駐車場から一番奥まった場所にある花の森だ。約250本の桜が咲き乱れ、観光客もそれほど多くないことから静かな撮影を楽しめる。写真は芽吹き始めたオレンジ色の葉の中に、一本だけ咲いていた桜を主役にして春らしい風情を表現した。このようなシーンでの桜撮影ではPLフィルターを使って葉の表面反射を取り除き、しっかりとその色合いを抽出しよう。

熊谷桜堤[埼玉県熊谷市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF16-35mm F4L IS USM・24mmで撮影・絞りF11・AE(1/40秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター

荒川の左岸に約500本のソメイヨシノが2キロにわたって咲き乱れる。桜の季節には菜の花も彩りを添えて、付近一体は華やかな雰囲気に包まれる。晴れて青空が広がる日が狙い目で、この時も桜の淡いピンク色と菜の花の鮮やかな黄色、空の青色を組み合わせて作画した。桜と菜の花が重なって煩雑さが出ないように、両者をしっかりと分離できる高さを選んでいる。一般的に晴れている日に順光で桜を写すと平板な印象の写真になってしまうため、常に光の向きを意識して撮影する癖をつけておこう。

元荒川の桜並木[埼玉県鴻巣市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS II USM・70mmで撮影・絞りF22・AE(2.5秒)・ISO400・WB太陽光・PLフィルター

元荒川の両岸に約500本のソメイヨシノが立ち並ぶ。特に桜橋の上流側は川沿いに歩道が整備されており、水際にも容易に近づける。広く撮るとコンクリートの護岸や付近の住宅などが写り込むため、狭い範囲を切り取るような撮影がお勧めだ。上流から流れてきた桜の花びらを2.5秒というスローシャッターで捉えているが、花びらを流し過ぎると動感が弱まるので、適度な長さの軌跡に留めて写すのがコツといえる。さらに静止しているものを一緒に入れて撮ると、流れている花びらの動きをより強調することができる。

小田原城址公園[神奈川県小田原市]

【撮影データ】キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM・35mmで撮影・絞りF8・AE(1/4秒)・ISO1600・WBオート(ホワイト優先)

ソメイヨシノやしだれ桜、ヤマザクラなど約300本が植えられている小田原城址公園。お勧めの撮影スポットは本丸広場、および園東側の学橋から馬出門土橋にかけてのエリアと南堀周辺だ。開花期間中にはライトアップも行われ、特に天守閣を間近に望む本丸広場では桜と城を組み合わせた写真をさまざまな角度から撮ることができる。このシーンは学橋と馬出門土橋の間で撮影したもので、桜の古木が堀にせり出すように咲いているのが印象的だった。メインとなる桜を画面の左側に配し、二の丸隅櫓や石垣も入れて城郭の雰囲気が漂う写真に仕上げている。

乙ヶ妻のしだれ桜[山梨県山梨市牧丘町]

【撮影データ】キヤノンEOS RP・RF24-105mm F4L IS USM・61mmで撮影・絞りF11・AE(1/4秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター

乙ヶ妻集落の小高い丘の上に聳える推定樹齢250~300年のしだれ桜の巨木で、丘の下部や上部などさまざまな場所から写せる。撮影時は丘の上部に登り、桜と富士山を組み合わせて作画した。枝の形状が一番美しい部分に狙いを絞り、黒々とした太い幹の一部を入れて画面を引き締めた。さらに桜と富士山が重ならないように注意を払い、スッキリとした印象の写真になるように撮影している。付近の道路は道幅が狭いため、路上駐車は避けて乙ヶ妻公民館などの駐車場を利用しよう。

まとめ

今回取り上げた桜以外にも、東北地方や関東地方には魅力的な桜が数多く咲いている。掲載した桜の周辺に他に桜名所がないか事前に調べたり、現地では車での移動中にも周りの風景に注意を払い、気になる桜が咲いていれば立ち寄ってみるのも桜撮影の面白さといえる。

撮影時には、桜そのものだけをフレーミングすると似たような印象の作品ばかりになってしまうので、周囲の風景を可能な限り取り入れて変化のある写真に仕上げよう。また、日中だけでなく早朝・夕方の青カブリを生かしたり、光がある時には斜光や逆光になるポジションを選んで立体感のある描写を意識したい。

夜桜の撮影ではPLフィルターを取り外し、不用意に花びらがブレないようにできるだけ速いシャッター速度を確保しよう。また有名な桜名所では、観光客が歩く砂埃によって細かい塵がびっしりとレンズ前面に付着することもあるので、保護フィルターを装着しておいた方が賢明だ。

今回のカメラ・レンズ

キヤノンEOS R6 MarkII
◉発売日=2022年12月15日 ◉価格=オープン(レンズキット実売:425,700円税込)

詳しくはこちら


キヤノンEOS 5Ds R
◉発売日=2015年6月 ◉価格=オープン


キヤノンEF16-35mm F4L IS USM
◉発売日=2014年6月 ◉価格=オープン


キヤノンEF24-105mm F4L IS II USM
◉発売日=2016年11月3日 ◉価格=オープン

詳しくはこちら


キヤノンEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
◉発売日=2014年12月19日 ◉価格=オープン