カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 竹沢うるま×キヤノンEOS R6 MarkⅢ
写真・文:竹沢うるま/編集:合同会社PCT
どのような撮影スタイルにも適応してくれる一台
新発売となったキヤノンEOS R6 MarkⅢは、高い解像感と機動性を兼ね備え、撮影スタイルをひとつに定めることなく使える一台です。今回は、世界各地をフィールドに活動する写真家・竹沢うるまさんが、鎌倉の街や海岸沿いを撮り歩き、作例を通してキヤノンEOS R6 MarkⅢの実力を紹介します。
- 竹沢うるま(たけざわ・うるま)
- 1977年生まれ。写真家。出版社スタッフフォトグラファーを経て、2004年独立。主な作品に、1021日103カ国を巡る旅の記録をまとめた写真集「Walkabout」(小学館)、境界をテーマにアイスランドの大地を捉えた「Boundary|境界」(青幻舎)がある。2015年ニューヨーク・マンハッタンで開催された写真展「Land」は現地メディアに多く取り上げられ、評価を得る。世界各地を旅しながら写真を撮り、主なテーマは「大地」。そこには大地の一部として存在する「人間」も含まれる。第三回ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。「うるま」とは沖縄の言葉でサンゴの島を意味し、写真を始めたきっかけが沖縄の海との出会いだったことに由来する。
はじめに
鎌倉とキヤノンEOS R6 MarkⅢとの相性はとても良い。
冒頭から結論を言ってしまうが、このキヤノンEOS R6 MarkⅢの一番の特徴は、三脚を据えてしっかりとした解像感を求める撮影に対してしっかりと期待に応えてくれるのと同時に、携行性に優れているという点である。風景写真をしっかり撮ることもできるし、街歩きや旅などに持っていってスナップを気軽に撮るというスタイルにも適合性が高い。
今回はその機動性を意識してスナップで撮影をしてみた。先に鎌倉との相性が良いと言ったが、鎌倉という場所は海や森、そして寺社仏閣がコンパクトな範囲で点在している。そのため歩いて見て回るのに適している街である。EOS R6 MarkⅢの機動性という利点を活かすために、今回、鎌倉を歩いて撮影した。その写真をいくつか紹介していきたいと思う。
階調再現はどうか? さまざまな光の表情をとらえる
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF21・1/4000秒・ISO100
まずは昼の海辺へ。秋から冬にかけて風が北寄りになり、由比ケ浜海岸から眺める海は穏やかな表情を見せる。湿度も低く、空の透視度も高い。鎌倉で海を撮影するなら11月や12月が最適である。しかし、海や空の青は、なかなかうまく色を表現できないことが多い。今回はピクチャースタイルをスタンダードに設定して撮影。落ち着いた色調で、かなり自然に近い色味で記録された。また白く砕ける波の調子も白く飛んでおらず、結果的に、全体的に立体感と奥行きがある1枚になった。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF8・1/100秒・ISO800
次に柔らかい光を使って撮影をしてみた。夕方の強い光が丘の影になり、街中が影の中に入る。こういった柔らかい光のとき、のっぺりとした印象の一枚になることが多いが、壁面に垂れ下がる植物を、きちんとディテールとともに立体体に捉えることができた。これはこのカメラが持つダイナミックレンジの広さに起因していると言っていいだろう。他の写真でもその点は触れていくが、EOS R6シリーズのこれまでの機種と大きく進歩した点は、この階調の豊かさにあるということができる。青と同じく緑も表現するのは難しい色なのだが、深みのある色に仕上がった。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF2.8・1/1000秒・ISO200
工事現場に差し込む夕日。撮影時、実際に目で見ていると光と影のコントラストが強く、シャドー部のディテールがきちんと表現されるかどうか、また光があたっているところが飛んでしまわないか心配ではあったが、杞憂であった。ハイライト、シャドー部ともにかなりの情報が記録された。この一枚にも、このカメラが持つダイナミックレンジの広さが表れていると思う。
手持ち撮影で実感した、機動性と解像度の高さ
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF11・1/200秒・ISO1250
スナップを撮るように花を撮影した一枚。鎌倉の海辺を歩きながら、海を見下ろす丘の近くで咲いていた花を、ストロボを真正面やや左からあてて撮影した。このとき、右手でカメラを持ち、左手でストロボを持っている。それはボディ自体がある程度コンパクトであるからこそできる撮り方であり、そうやってスナップ的に花を取ることにより、かしこまった印象とはまた違う表現になった。ひとつ前の機種に比べてグリップ部分がやや厚くなっているが、それが逆に手で握ったときの安定感に繋がり、かつ軽量性により片手で扱うことができた。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞りF11・1/1250秒・ISO800
スナップの楽しみは、一瞬で消えてしまう光を見つけて、それを拾い集めていくことにある。それは人物の一瞬の表情を捉えても良いし、街の表情でも構わないと思う。この一枚は、夕方に建物の間を抜けてきた光が、何気ない街角を照らした一瞬を捉えた一枚。光は持続することなく、ほんの数分で消えてしまう。カメラをぱっと取り出し、すかさず一枚。このような一瞬のスナップを高解像感とともに得られるところが、このカメラの一番の強みである。それを証明するような一枚だと思う。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF16・1/125秒・ISO800
機動性に優れているからと言って、解像感がないわけではない。このカメラは、機動性と解像感、そのどちらも高いレベルで撮影者に力を与えてくれる。前機種とのスペック上の違いで顕著なのが、画素数の大幅な増加である。前機種は2420万画素。新機種は3250万画素。この数字の違いは、大きく引き伸ばしたときに如実に現れる。この写真を大きなモニターで見るとき、岩のディテールがばっと全面に表れ、まるでそこにあるかのような存在感がある。それは間違いなく画素数の違いから来るものだろう。またプリントすることによって、その強みはよりはっきりと鑑賞者の前に立ち現れるはずである。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF2・1/3200秒・ISO200
稲村ヶ崎から江の島方面を夕暮れ時に撮影。三脚を立てて海越しに見える富士山を狙っているカメラマンたちがたくさんいたが、その列には加わらず、あたりを歩いて回りながら撮った。三脚を立てると、どうしても構図が決まりきってしまうので、仕上がりが退屈になりがちである。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF8・1/400秒・ISO400
秋の終わり。池に浮かぶもみじと鯉。この写真でわかるのはシャドー部の解像感の高さだろう。黒く潰れてしまえば雰囲気がなくなってしまうが、しっかりと黒く締まりつつも、グラデーションもある。そのため池の水の質感を表現することができている。また鯉の色も落ち着いた色調で表現されている。滑らかでありながら輪郭がはっきりした1枚。
夕暮れの難しい光源下で、カメラのポテンシャルを探る
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF2.8・1/60秒・ISO3200
太陽が水平線の彼方へと沈んだあと、昼でも夜でもないトワイライトタイムがしばらく続く。三脚を立てるわけではなく、高感度に設定して手持ちで撮影。この時間帯の光を、スナップ感覚で撮影できるということは、表現の幅が大きく広がる。写真は日没15分後に東に向かって撮影。空の光が海に反射し、その向こうで街の光が輝く。ISO3200に設定したが、ノイズもほとんどなく、滑らかな色調の一枚となった。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF35mm F1.8 MACRO IS STM・絞りF5.6・1/30秒・ISO1600
ストロボを使って夕暮れ時に日中シンクロ。空の淡い優しい背景に、ストロボで強い光をあてて、松の木が荒々しく浮かび上がるように撮影。背景と被写体とのアンバランスな感じが印象的な一枚に仕上がった。これもやはり三脚を使わずに撮影。そのため水平線が斜めに傾いているが、それが逆に写真に動きを与えて、良い効果になっている。このような崩した撮り方ができるのも、この機材の良いところだろう。
キヤノンEOS R6 MarkⅢ・RF50mm F1.4 L VCM・絞りF16・1/640秒・ISO200
光が反射する波打ち際を撮った一枚。暗部とハイライトの両極が写る一枚。このような一枚にこそ、カメラが持つポテンシャルを見て取れるのではないだろうかと思う。
まとめ
撮影を終え、PCに取り込んで大きなモニターで見た時、階調の豊富さやバランスの良さに大きな魅力を感じた。最新機種が発売されるたびにCMOSセンサーがアップデートされ、そこに記録される情報量が圧倒的に増えた。EFレンズからRFレンズに移行した時、大口径のレンズが一気に増えた。それはより多くの光を取り入れることができるようになったということだが、そのレンズの解像感を余す所なく、センサーが記録する。そのため、大きなモニターで確認すると、その実力がより如実に現れる。そして、その解像感はプリントしたときに大きな差を生むだろう。
本来ならば、解像感と機動性というのは反比例するものだが、キヤノンEOS R6 MarkⅢはその両立を絶妙なバランスで成立させている。そういった意味で、もし機材選びに迷うことがあれば、とにかくこの1台を選んでおけば、どのような撮影スタイルにも適応してくれることになるだろう。
旅しながら写真を撮るスタイルのわたしにとって、最適な一台だと感じた。



