カメラの大林 オンラインマガジン

カテゴリー
カメラレンズアクセサリー風景星景航空写真/鉄道写真ポートレート動物スポーツ
分野
実写レビューハウツーライカ コラムその他
ブランド
NikonCanonSONYPanasonicFUJIFILMOM SYSTEMTAMRONLeicaHasselblad

カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 赤城耕一が深掘りする、「ライツミノルタCL」

写真・文:赤城耕一/編集:

第十二席 1973年に登場した、Mマウント互換のコンパクトレンジファインダーカメラ

ライカの不定期連載の第12弾。写真家の赤城耕一さんがライカの歴史を紐解きながら、ご自身の体験をもとに熱くお話いただきます。今回は「ライツミノルタCL」を取り上げます。

赤城耕一(あかぎ・こういち)
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)、『アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。』(インプレス)など多数。

はじめに

1973年に登場した「ライツミノルタCL(LEITZ minolta CL)」は、熱心な写真少年だった当時の筆者にとって、もっとも現実に近いところにある「ライカ」だったかもしれません。
中古でも廉価で入手できること、その名のとおり「コンパクト・ライカ」であったことから、携行性に優れていることで、現在も高い人気があります。
とはいえ、なぜミノルタ名が入っているのに純粋のライカといえるのか、と、ツッコミがありそうです。

原産国が日本であり、しかも製造はミノルタカメラ(当時)でしたから、単純にライツミノルタ名になったということでありましょう。それでは納得しない人も少なからずいたということです。

しかも日本国内ではミノルタが「ライツミノルタCL」として、日本以外の国では「ライカCL」として販売されたことはよく知られています。販売区域が分担されたわけですね。当時のライツの代理店のシュミットでの扱いはありませんでした。

ライツミノルタCL、ROKKOR 40mmF2。焦点距離40mmレンズは当時の認識では廉価なコンパクトカメラに搭載されていたレンズという印象ですが、最近になって、各社からラインアップされていますね。自然なパースペクティブと画角が見直されているのでしょう。専用フードはゴム製で経年変化に弱いのが残念です。

ライカユーザーの中にはライカCLとライツミノルタCLの使い心地や仕上げが異なるといわれる人もいますし、それぞれに用意されたレンズ名は焦点距離やレンズ構成が同じでも、M-ROKKORとSUMMICRONあるいはELMARという銘板の違いがありますから、写りが違うという人もいます。そうですね、もちろん後者のほうがよく写るのは当然です。

嘘です、そう思いたくなる気持ちもわからないでもありませんが、これは単純な妄想ですね。

ちなみに、海外のライカマニアの中には日本以外では売られなかった「ライツミノルタCL」のほうが、希少なコレクターズアイテムであると考える人もいるそうで、驚いたことがあります。日本国内での中古市場では逆に「ライカCL」のほうがありがたがられます。ええ、コレクターの皆様には重要な話なのでしょう。

原産国の重要性については現代のライカ社もよく理解しています。現在はライカ・ポルトガルの工場の内部は非公開ですし、あくまでポルトガルでは「部品レベル」の製造と言われても、本来は納得しづらいところがあります。そして、なによりも、いまなおライカ社自身が「Made in Germany」にこだわっていることも注目せねばなりません。

なぜ「ライツミノルタ」は「ライカミノルタ」ではないのかという疑問も出てきそうですが、これは当時の会社名同士を組み合わせたネーミングと考えていいのではないでしょうか。

「CL」は「コンパクトライカ」の略である

少し具体的に話を進めます。1972年にミノルタとライツが技術提携の協定を結んだことで、ライツがCLの生産をミノルタに委託し、本機の誕生が実現したわけですが、往時のコスト計算だと、当時ライツの工場のあった、ポルトガルと日本では違いがなかったというアナウンスが後になされています。さらに、ここでミノルタが選ばれたのはカメラ生産の技術力が認められていたことに他なりません。

CLはライカMマウント互換機ですが、あえて専用として交換レンズが用意されています。

スクリューマウント互換L39マウントのキヤノン25mmF3.5をM-LリングでCLに装着。北井一夫さんが「村へ」を撮影した時の機材です。昔のSF映画に出てくる宇宙服のヘルメットみたいな外付けのファインダーもデカくて好きですが、落としやすいのが難点です。北井さんもこのファインダーをつけて撮影していたのか、今度北井さんにお会いする機会があったら、確かめておきます。

「ライツミノルタCL」には「M-ROKKOR QF 40mm F2」と「M-ROKKOR 90mm F4」、「ライカCL」には「SUMMICRON C 40mm F2」と「ELMAR C 90mm F4」名にレンズ設計はライツが行い、製造は40mmはミノルタで、90mmがすべてライツで、ミノルタがライツから「M-ROKKOR 」の銘板が貼られたものを輸入し、販売を行っています。

原産国はあくまでもドイツでなければならないと考える人には、この90mmはいずれの銘板のものでもありがたい存在かもしれません。

フィルム巻き上げ、すなわちシャッターチャージすると、収納されていたCdsがすっと出現します。レンズ後玉後に位置して測光します。したがって、レンズを通したナマの光を測光するのですから、本気のダイレクト測光です。

CLは1971年の登場したライカM5をコンパクトにしたものともいえます。「CL」は「コンパクトライカ」の略であるという解釈が一般的ですが、TTLメーターを内蔵したことで肥大化したM5をみてしまうとより説得力が増してきます。もともとライカというのはコンパクトなカメラであることが大きな特徴にもなっていましたから、反省もあったのかもしれませんね。

CLのTTLメーターはM5の方式のように、シャッター幕の前面に腕木の先につけたCds受光部を置く方式です。つまり、装着レンズの最後部に位置することになります。

そのままでは受光部が写り込んでしまいますから、シャッターを切ると同時にボディ内に受光部が退避する方式がとられています。このためにシャッターボタンには少し負荷がかかるようですね。またシャッター動作時に巻き上げレバーのあたりに微妙な振動が伝わるのが少し気になりますね。Cdsはフィルム巻き上げレバーと連動しており、巻き上げると再び出現します。

注意せねばならないのは、ライカM5のように、後玉が飛び出たスーパーアンギュロン21mm F3.4を装着すると、Cdsとの衝突を防ぐため、Cdsが自動退避するなどの機能はありませんので、使用レンズには注意が必要ですし、また沈胴式レンズも沈胴させることはできません。

動作音は他のM型ライカと比較しますと、少し大きい方です。独自の布幕の縦走りシャッター特性によるものかもしれません。

背面にエングレーブされているLICENSED BY LEITZ WETZLARの文字。日本製でありつつ、所有者にライカの仲間であることのステータスを感じさせようという意図がありそうです。

視野率はあまり高くない、実像式ファインダー

ライカの大きな特徴はファインダーにあることは明白ですね。とくにMシリーズのライカはどこにも真似のできない高い性能を誇ります。

ところがCLの基線長は、ボディサイズを小型化したために31.5mmとなります。ファインダー倍率も0.6倍と低くなります。このために有効基線長は18.9mmとなりました。

このため標準50mmレンズあたりまでは問題はなくても、90mm以上の焦点距離では撮影距離や設定F値によっては、精度は苦しくなってしまいます。

標準レンズを40mm、90mmの開放Fナンバーを4としたのも、サイズ感と同時に距離計の精度を考えてのものかもしれません。

ファインダーは実像式で、距離計の周囲は鮮明です。通常の二重像合致の他に、スプリットイメージのように、上下像合致方式としても使用することができます。後者のほうが精度は高いとライツはアナウンスしています。

先達の報道畑のカメラマンに話を聞くと、現場では「レンジファインダーカメラには広角レンズ・一眼レフカメラには望遠レンズ」という役割分担を担わせていて、筆者自身もそれに習い、撮影スタイルがベストと考えていたのですが、CLで90mmレンズを用意してきたことは意外に思えました。

また、少し気になるのは、40mmも90mmも距離計連動カムは傾斜カムを使用していることです。コストダウンのためと言われていますが、並行カムと比較すると、これらのレンズをM型ライカに使用した場合にインフが合わないことがあることです。40mmはまず問題はなさそうですが、90mmでは注意が必要でしょう。もちろん並行カムを採用しているMマウント互換レンズでは使用にあたっての問題はありません。

Mシリーズライカのアイピースは丸窓ですが、CLは四角いですね。スペースの関係でしょうか。視度補正レンズやマグニファイヤーは共用することはできませんね。ファインダー倍率は小さいです。このため有効基線長が短く、長焦点や大口径レンズでは精度的に不利です。

ちなみに40mmのレンズを装着したときのフレームは40mmのほかに50mmが出現します。90mmのレンズを装着したときは50mmのフレームが消えて、90mmが出現します。つまり、40mmフレームは常時出現したままです。

筆者の好きな35mmレンズではどうするのか。ファインダー視野全体が35mm画角相当といわれています。なんだか少しアバウトですから、筆者はCLに35mmレンズを使用する場合は、単独のファインダーを装着して使用しています。

ファインダーのフレームのパララックスは距離に応じて自動補正されますが視野率はあまり高くはなく、80パーセント台後半くらいでしょうか。

左から巻き戻しクランク、底蓋取り外しキー、リワインドボタン、フィルム種別窓ですが、機構的にも機能的にも、CLはライカM5のジュニアモデルという印象もあります。ただ、M5は頑丈そうですが、CLのカバーは肉薄で凹みやすいので取り扱いには注意が必要です。

CLは裏蓋は取り外し式を採用しており、どことなくM型のUIに似せているようですけど、ローライ35にも似ているように思えます。

バッテリー室はフィルム室の中にあるために、万が一撮影中にバッテリーがなくなると、フィルムを取り出す必要があります。とはいえ、CLはフルメカニカルですから、TTLメーターが使用できないだけで、撮影自体は支障なく行うことできます。

フィルム装填は面倒ではありませんが、スプール軸にあるフィルム先端を挟み込む白色のプラスチックが経年変化で脆くなった個体もあるので扱いには注意が必要です。

シャッターダイヤルはボディ前面にあります。スクリューマウントライカみたいですね。長年の使用で、手垢がエングレーブされた数字が埋まります。そのうち見えなくなるかもしれません。

シャッターダイヤルはボディ上部ではなく、右前面にあり、縦方向に回転します。M型ライカと共用したときに少しだけ気になりますが、単独での使用ではまず問題ありません。

個人的に少し気になるのは、小刻み巻き上げが不可能であることです。これもM型ライカと共用した場合には多少違和感を感じます。

また個体によってはコマ間に若干のバラつきがみられることがあります。全体のボディカバーは薄く、凹みやすいのでこれも不用意にブツけないように優しく取り扱う注意は必要です。外観でも華奢なイメージがあるのは否めないですよね。

着脱式の底蓋を外したところです。屋外でフィルム装填時にはこの底蓋はどこに収納するか筆者は常に問題になるのですが、基本的にはストラップをボディ側と同時に通して使用してぶら下がる感じになりますから問題はなく。ただし、少しだらしなくみえます。

ライツミノルタCLはライカであることを再認識

中古市場ではTTLメーター不動の個体も目につきますが、誕生から半世紀以上を経て、良好な個体はどんどん少なくなります。仮にメーターは動いていても、精度的にはアテになるとは限りません。このあたりは割り切って考える必要もあるでしょう。

冒頭に述べたように、CLはライカの仲間に入れてよいのか、ライカユーザーは悩むところであり、正直、筆者自身も当初はCLを軽んじて考えていたこともありました。

でも後にライツミノルタCLの生産を委託されたミノルタの技術者の話を聞いてみると、CLの生産には相当な労苦を伴ったということです。それはドイツ流のモノづくりと、日本のそれとは、大きな違いがあったからですね。CLも非効率な生産方法をとっていたところが多々あったということです。

効率のよい製造方法をミノルタ側が提案しても、ライツはその方法を頑なに採用しなかったという話も聞きました。距離計の組み上げにも相当な時間がかかったとのことです。ドイツ流のこだわり生産と、日本の生産技術の闘いだったのでしょうか。それを耐えた、ミノルタのエンジニアと工場で実務にあたったみなさまご苦労様でした。

ただ、CL誕生時には、すでに一眼レフの全盛期であり、しかも国産の一眼レフなみの価格がつけられていたからには、その売れ行きはおおむね想像できますね。

M ROKKOR 40mmF2(右)のカムとZONNAR40mmF2.8を後玉方向より並べました。ROKKORは距離計連動カムが傾斜していることがわかります。これで本当にコストを下げることができるのかと素人は思うのですが。

CLを見て、実際に使用して、それ以降、ミノルタとライツの技術協力関係によって生まれたライカRシリーズの一眼レフカメラたちをみてみると、それは一定の成功を収めたのではないかと考えるわけです。

ライカ使いの達人写真家、木村伊兵衛が「CLはライカだよ」と発言したことも十分に納得できるように感じました。

それからはライツミノルタCLはライカであることを再認識し、心して使用することにしました。筆者も単純ですよね。

ライツミノルタCLの作例

均質性の高い画質に嬉しくなりますね。M ROKKOR QF40mm F2はライツ設計の製造はミノルタということですが、とても優れた描写です。
ライツミノルタCL・M ROKKOR 40mm F2・絞りF5.6・1/250秒・コダックCOLOR PLUS 200

クリアな再現性、色の分類も確実で、見た目の雰囲気を少し盛ったかなという再現になりました。
ライツミノルタCL・M ROKKOR 40mm F2・絞りF8・1/250秒・コダックCOLOR PLUS 200

35mmでもない、50mmでもないという中庸さがよいですね。パースペクティブも自然な再現になります。
ライツミノルタCL・M ROKKOR 40mm F2・絞りF8・1/250秒・コダックCOLOR PLUS 200

至近距離でもM ROKKOR40mmの性能は変わらず。さらにもう一歩寄れればよいなと思うこともあるのですが、寄れないなりの背景処理などの工夫は必要になるわけです。
ライツミノルタCL・M ROKKOR 40mm F2・絞りF2.8・1/125秒・コダックCOLOR PLUS 200

フィルムやレンズのポテンシャルを可能な限り引き出すにはオペレーターさんの力に負うところが大きいですね。階調再現などは思い切り違いが出てきます。カラーネガフィルムはまだまだ潜在的に力を秘めています。
ライツミノルタCL・M ROKKOR 40mm F2・絞りF11・1/250秒・コダックCOLOR PLUS 200

今回のカメラ・レンズ

ライツミノルタCL
◉発売=1973年 ◉生産終了品