カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 「ゲキ推し交換レンズ選び2025」ニコン編×上田晃司
写真・文:上田晃司/編集:合同会社PCT
写真家 上田晃司 × ニコンレンズ
交換レンズ選び2025、ニコンレンズ編です。今回は写真家の上田晃司さんに、お手持ちのレンズより5本選んでいただき、解説いただきました。上田さんは今回の5本選定でこれまでの旅の記憶が呼び起こされた様子。その中で選ばれた5本、みなさんもぜひ迷える交換レンズ導入の参考にしてください。
- 上田晃司(うえだこうじ)
- フォトグラファー/映像作家 米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー、映像作家として活動開始。現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。最新カメラも使いこなすが、4×5の大判や様々なフィルムカメラでも作品を撮影している。講演や執筆活動も行っている。YouTubeチャンネル「写真家上田晃司の旅とカメラ」でカメラや旅について情報を発信中。 ニッコールクラブ アドバイザー、ニコンカレッジ講師、LUMIXアカデミー講師、Hasselbladアンバサダー2015、プロフォトトレーナー、日本写真家協会正会員。
目次
はじめに
筆者が愛用しているニコンのZレンズは、登場以来様々なレンズを発売しており現在では46本とバリエーションもかなり豊富になった。価格帯も幅広く最高の画質を実現するSライン、そしてコスパと画質を両立した非Sラインの2種類を展開しており、用途に合わせて選択が可能になっている。Zレンズの魅力はなんと言っても画質の良さだ。圧倒的な対逆光性能に加えて、クリアで抜けの良い表現力はZレンズを使ってよかったと思えるポイントでもある。都市風景などを撮影する際は光源が様々な場所にあるので、フレアやゴーストを避けるために構図を犠牲にすることもあったが、Zレンズであれば性能が非常に良いので構図優先で撮影できる点も魅力だ。今回は現在発売されているZレンズから筆者がストリートフォトグラフィーや旅でよく使っているレンズを紹介していきたいと思う。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIは2025年9月26日発売の標準ズームレンズ。初期型のNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sも非常に性能が良いので買い換えは悩んだが、テスト撮影させていただき購入を即決めたレンズだ。
24-70mmという画角は仕事で使うメインレンズで、時間が限られた現場など短時間でバリエーションを表現できるため、使いやすい、無くてはならないレンズだ。初期型から買い換えを決めた理由は大きく分けると3つあり、1つ目は軽量さだ。質量は約675gと前機種から130g軽くなった。たった130gと思われるかもしれないが圧倒的に軽量に感じる。また、インナーズームを採用することによりズーム時のサイズも変わらず、バランスの変化がほとんどないのもポイント。
2つ目のポイントは、圧倒的な画質だ。初期型も正直画質は申し分なかったが、II型は別物な印象だ。特に対逆光性能は類を見ないほど優秀で、逆光撮影も恐れることなくトライできる。レンズコーティングはニコン史上最強であるメソアモルファスコートに加え、アルネオコートを採用している。太陽を直接画角に入れてもフレアやゴーストが気になることはほとんどなかった。これほどまでに逆光に強いレンズはあまり見たこと無い。
3つ目はAFの速度が改善している点。シルキースウィフトVCM(SSVCM)をAF駆動用アクチュエーターに採用したマルチフォーカス方式で、AFの合焦速度は前機種比で約5倍とかなり高速に感じられる。半押しした瞬間の高速さは別次元のレンズと言っても過言ではないだろう。とても高価なレンズではあるが、頻繁に使う画角を幅広くカバーできていて、F2.8の明るさはF4のレンズに比べ大きなボケ感を体感でき、時にはISO感度一段分下げることができるので、かなり使い勝手の良いレンズなので、良い買い物だったと思っている。
ニコン ZR・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II・絞りF3.2・1/1250秒・ISO100
絞り開放近辺で撮影。公園の人工池を使ってリフレクションを活かして、紅葉している銀杏の木を撮影した。緻密な描写力は群を抜いており、遠く離れた銀杏の葉をしっかりと描写していることが分かるだろう。
ニコン ZR・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II・絞りF2.8・1/2000秒・ISO100
ディープトーンモノクロでみなとみらいの街灯を撮影。繊細なトーンも求められるモノクロ撮影においても本レンズはしっかりと階調豊かな表現ができている。ピント位置のシャープさと背景のボケ感の両立が本当に美しい
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
NIKKOR Z 35mm f/1.8 SはニコンZシリーズの一号機、Z7が出た時に同時発表された単焦点レンズの一本目になる。当時Z7にはFTZでFマウントレンズを付けて使うのが主流であったが、筆者はこのレンズを持って旅をしたことを鮮明に覚えている。
クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロを車で旅をして、当時こんなに良く写るF1.8のレンズはなかったので、驚いた記憶がある。35mmの画角はスナップでとても使いやすく小型のZシリーズとの相性もバッチリだ。F1.8のレンズは、基本的に画質はそこそこでコスパ重視のレンズが多いが、本レンズはSラインなので写りは別格だ。線は細く、ボケのなだらかさもSラインに相応しい。一般的なF1.8のレンズとは大きく違う思想のレンズと言えるだろう。このレンズは絞り開放がやはり美味しいポイント、絞らなくてもかなりシャープだ。質量も370gと軽量なので気軽に日常から旅まで持ち運びやすいレンズと言えるだろう。単焦点レンズ一本目で悩んでいる方は本レンズを検討してみてほしい。
ニコンZ 6・NIKKOR Z 35mm f/1.8 S・絞りF5・1/250秒・ISO100
少し前に撮影した写真ではあるが、ニューヨークで撮影した一枚。街に西日が入り歩いている人を照らした瞬間を狙って撮影。35mmの心地よい広さがスナップレンズとして使い易い。
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、一本持っておいて損のない万能レンズ。通常ズームレンズがメインという方もカメラバックに一本入れておけば様々な表現を堪能することができる。
本レンズもSラインになるので描写に抜かりはない。ナノクリスタルコートや2枚のEDレンズにより逆光性能はもちろんのこと色収差はほとんどないクリアな画を撮影が可能だ。絞り開放からしっかりとした描写で一段くらい絞ると周辺までシャープな表現が可能だ。作例にもある都市風景を撮影したが、ナノクリスタルコートのお陰で沢山の光源があっても不要な光が画に被ることなく撮影できていることが分かるだろう。
また、最短撮影距離も40cmなので花や料理などの撮影も得意とする。さらに、絞り羽根数も9枚の円形絞りなので、開放から少し絞った際の丸ボケが美しいのが特徴だ。ちなみにこのレンズは絞りをF5.6以上に絞ると、綺麗な光条を楽しむことができるのも魅力の1つだ。開放でのボケの繋がりの美しさと絞った際のクリアな描写両方を楽しめる、一本持っておいて損のないレンズと言えるだろう。
ニコンZ6III・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF1.8・1/200秒・ISO900
トルコで撮影した一枚。筆者オリジナルのイメージングレシピで柔らかなトーンで撮影。手前から奥に続くボケの美しさはさすが、Sラインレンズだ。ピント位置はしっかりと立っており立体感がある。旅には最適のレンズだ。
ニコンZ8NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF9・25秒・ISO64
香港の夜景をF9まで絞って撮影。絞り値を大きくした場合、光条が発生するが本レンズの光条もなかなか綺麗だ。ナノクリスタルコートで対逆光性能は非常に高く、高輝度の街灯を入れてもフレアやゴースもほとんど気にならない。
レンズ4 NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
皆さんは神レンズという言葉は聞いたことがあるだろうか。筆者が一本神レンズとして選ぶのであれば本レンズが相応しいと思う。
神レンズの定義は色々とあると思うが、驚くほど繊細に描写し、ボケ感にも一切妥協のないレンズのことで、写真を一見してこのレンズで撮ったということが写真から伝わるレンズが、神レンズと言えるだろう。
ニコン ZレンズにはF1.2シリーズ があり、どのレンズも正直神がかっている。ただ50mm f/1.2 Sは圧倒的な描写力で他に類を見ないほど美しい写りをしてくれる。F1.8のレンズも優秀ではあるが、F1.2で撮影した画像は圧倒的な立体感の違いがある。主題がボケの中から浮き立ち、手前と背景のボケに挟まれることで3Dに感じられるほどだ。ただ、妥協なく作られたレンズだけあり、質量はなんと1kgを超える1090gだ。サイズも驚くほど大きく、Z8やZ9との組み合わせがバランスよく感じられる。1kg 超えのレンズは持ち運びたくないという方も多いと思うが、その悩みを払拭するくらい本レンズの写りは別格なのだ。このレンズで撮影すれば、持って来てよかったと思わせてくれること間違いないだろう。本レンズはポートレートはもちろん、ペット、花、ストリートフォトグラフィーなど幅広い被写体に使える万能レンズだ。サイズと重さは深く考えず、是非手にしていただき、Zマウントが目指した最高の写りを堪能していただきたい。少し乱暴な言い方に聞こえるかもしれないが、本レンズは絞り開放で使っていただきたい。正直、絞る理由が見当たらないほど、開放での美しさに全振りしたレンズだということを付け加えておきたいと思う。
ニコンZ6III・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・絞りF1.2・1/2000秒・ISO100
ガンジス川では朝陽を見ながら沐浴する人が多く、サリーを着た方の後ろ姿がドラマチックだったのでF1.2で撮影した。前ボケ、後ボケ、ピント位置全てがパーフェクトだ。ボケ方には品があり本当に美しい。この立体感が神レンズの写りだ。
ニコンZ6III・NIKKOR Z 50mm f/1.2 S・絞りF1.2・1/16000秒・ISO100
インド、ムンバイにある世界最大の洗濯工場群で洗濯物とタワーマンションを撮影。スラム街のすぐそばまで開発が進んでいる。少し距離のある場所から撮影したが、しっかりと背景をぼかすことができるのも本レンズの魅力だろう。
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sは軽量でコンパクトな中望遠レンズだ。中望遠レンズはどうしてもサイズが大きくなりがちではあるが、本レンズは質量約470gで手の平サイズのコンパクトサイズが魅力だ。
85mmという画角はポートレート撮影がメインに感じると思うが、画角が合うのであればストリートフォトグラフィーや風景撮影でも幅広く使える。筆者は中望遠レンズを使った、シネマティックスナップを長年撮影しているが、本レンズはコンパクトなので世界中を一緒に旅している。本レンズもSラインのレンズなので、今回紹介している35mm、50mmと同じ思想で作られている。レンズコーティングにはナノクリスタルコートが施してあり夜スナップや逆光ポートレートなども難なくこなせるのがポイント。9枚の円形絞り採用でボケも美しいが、丸ボケはどうしても口径食の影響があるので、光源を丸く撮りたい場合は一段ほど絞ると良いだろう。マルチフォーカスを採用しているので、近接域の撮影から遠景まで画質の低下なく撮影できる点も本レンズの魅力だろう。35mm、50mm 、85mmの三本セットで使ってもらいたい万能な中望遠レンズなので、是非チェックしていただきたい。
ニコンZ8・NIKKOR Z 85mm f/1.8 S・絞りF1.8・1/125秒・ISO500
香港の上環にあるトラム乗り場で撮影。トラムにピントを合わせて街の灯りを丸ボケにして表現した。絞り開放では少し口径食の影響を受け、光源がレモン型になるが、一段くらい絞ることで安定する印象だ。
ニコンZ8・NIKKOR Z 85mm f/1.8 S・絞りF1.8・1/125秒・ISO1100
雨上がり、香港の上環にあるトラム乗り場にできた水たまりに反射するトラムを撮影した。絞り開放でもピント位置は驚くほどシャープだということが分かるだろう。中望遠レンズの立体感とF1.8の明るさで表現力がアップできる。
まとめ
改めて本記事を執筆するにあたってZレンズと共に旅をした写真を見返してみたが、Zレンズは旅の記憶を鮮明に写してくれているなと感じた。実際に肉眼で見た風景の一部やシーンを素直にそのまま写してくれている。そう感じさせてくれるのはやはり、肉眼では見えないフレアやゴーストといったレンズ特有の粗が極端に少ない点だろう。フレアやゴーストは表現として使うことはあるが、基本は出ない方が構図の自由度もあり、ストレスになりにくい。そして、描写した部分の線の細さとボケの繋がりの美しさはZレンズの魅力と言えるだろう。
Zマウントになりマウント径もフランジバックも別物になったことで、今までにない描写力を実現しているレンズも多いので、これからもZマウントのレンズが楽しみでしようがない。皆さんも是非Zマウントの素晴らしさを体験するために、様々なレンズを手にしてほしい。
今回のカメラ・レンズ
ニコン ZR
◉発売=2025年10月24日 ◉希望小売価格=オープン(実売・269,280円税込)
詳しくはこちら
ニコンZ8
◉発売=2023年5月26日 ◉希望小売価格=オープン(実売・539,550円税込)
詳しくはこちら
ニコンZ6III
◉発売=2024年7月12日 ◉希望小売価格=オープン(実売・356,400円税込)
詳しくはこちら
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
◉発売=2025年9月26日 ◉希望小売価格=オープン(実売・334,620円税込)
詳しくはこちら
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
◉発売=2018年9月28日 ◉希望小売価格=オープン(実売・112,860円税込)
詳しくはこちら
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
◉発売=2018年12月7日 ◉希望小売価格=オープン(実売・82,125円税込)
詳しくはこちら
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
◉発売=2020年12月11日 ◉希望小売価格=オープン(実売・268,200円税込)
詳しくはこちら
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S
◉発売=2019年9月5日 ◉希望小売価格=オープン(実売・104,670円税込)
詳しくはこちら
