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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 「ゲキ推し交換レンズ選び2025」キヤノン編×田村拓也

写真・文:田村拓也/編集:合同会社PCT

写真家 田村拓也 × キヤノンRFレンズ

交換レンズ選び2025、キヤノンRFレンズ編です。今回は写真家の田村拓也さんに、お手持ちのレンズより5本選んでいただき、解説いただきました。田村さんでも5本選定するのは難しかったよう。みなさんも迷える交換レンズ導入の参考にしてみてください。

田村拓也
日本写真家協会会員(JPS) 日本旅行写真家協会会員(JTPA) 撮影ジャンルは、風景・祭り・スナップなど多岐に渡り、長年ライフワークとしてサーフィンの撮影も行っている。撮影からの画像処理やカーマネジメントを経てプリントに至るまで、入力から出力までの幅広い知識が強みでもある。作家活動としては和紙やアート紙への出力にて作品作りを行い発表している。また、近年は年間800名を超えるほどの人気講師として各所で写真教室や撮影会を実施するなど写真文化の発展にも貢献した充実感のある写真活動を送っている。
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はじめに

今回はキヤノンRFレンズ、私自身も数多くRFレンズを所有し使用しているがその中で5本を選ぶのは非常に困難であった。なぜならその撮影シーンによってベストなレンズが変わるからである。キヤノンレンズに限らず過去のレンズでは描写が甘かったり動作が遅いなど性能差が見受けられたのだろうが、ことキヤノンRFレンズになってからはラインナップどれを取って見てもそう不満になるようなレンズは存在しない。また巷でレンズ比較と言うと計測器などを持ち出して勝ち負けを決める類のものもあるが実用上それほどの違いはなく意味のないものに感じている。

今回は機能や数値データ的なものはメーカーホームページ等に譲るとしてユーザーの立場で使用してみての印象や使い勝手をもとにお気に入りレンズをセレクトし解説をしたいと思う。

RF70-200mm F2.8 L IS USM Z

RF70-200mm F2.8 L IS USMに新型が出たと言う事で早速導入したレンズ。後ろに「Z」が付いただけでレンズ名称も間違いやすいが見た目と機能は大違いである。

私はそれまでRF70-200mm F2.8 L IS USMを使用しており画質や取り回しには不便は感じていなかった。唯一残念だったのがEXTENDER RF1.4×およびRF2×が使用できないという点であった、その引き換えに小型化を図ったのだろう。以前はEFレンズとして70-200mmを歴代使用してきたがEXTENDERは全てのモデルで使用出来ていたので、今回の「Z」でその感覚が戻ってきた。サイズもまた元に戻った形だがEF時代から使用している私にとっては気になるほどではなかった。

さて実際の描写の方だがファインダーを覗いた瞬間に「良い写真が撮れる」実感が一気に湧き上がってくる、撮影した画像は抜けが良くリアリティ溢れた描写が素晴らしい。このレンズは一度手にしたら手放せなくなるだろう。

最短撮影距離は200mm側で68cm(0.3倍)とマクロ撮影にも都合が良い。花壇などでは柵の外からの撮影になるので200mm位が丁度よい。その際にもレンズ鏡筒が伸びない分ズームリングも軽く全体の重量バランスも崩れず使い勝手がとても良い。アップでの撮影が容易に出来るので昨今はマクロレンズの出番が減ってしまうほどである。

被写体をメインにしっかり表現するにはこの焦点距離が良い。足りない時にはEXTENDERが使用できるが接写の時にはクロップも積極的に利用している。価格は少々お高いがそれに見合う撮影環境と結果をもたらせてくれるお気に入りの1本だ。

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF2.8・1/320秒・ISO6400

キヤノンEOS R1・絞りF2.8・1/1000秒・ISO6400

RF24-105mm F2.8 L IS USM Z

標準ズームは肝心要のレンズであるから最高の物をチョイスしたい。このあたりの焦点距離は24mm、35mm、50mm、80mm、100mmと出来れば画質の良い単焦点レンズで揃えたいところだが、実際には荷物重量なども含めて現実的ではない。しかしこのレンズならではの高い描写力により画質的にも単焦点レンズが数本詰まった1本と言っても良いだろう。

レンズサイズや形状は先述のRF70-200mm F2.8 L IS USM Zと全く同じということも、使用する上でとてもバランスが良い。メーカーのHPを見ると動画ユーザー向けに配慮した設計らしいが動画を撮らない私にとってもフィルター径が同じであったりと恩恵は大きい。

実際の画質も、同じ焦点距離のRF24-105mm F4 L IS USMと比較しても数段上の絵が撮れる印象である。撮影してみて開放1段の差は大きいと感じた。標準域は望遠レンズと比べ背景がボケづらく作画時の画面整理が難しくなるのだが、このレンズでは比較的近距離に背景があったとしても主題が明確に浮かび上がってくる。主題分離に優れた描写そんな印象を感じた。

このレンズを使用する際は単体もしくはRF70-200mm F2.8 L IS USM Zとのセットで撮影に出ることが多い。若干広角側が足りなそうな時には、後述するが16mm単焦点をバッグに忍ばせておく。RF15-35mm F2.8 L IS USMと組み合わせるのが正統だろうがこのクラスのズームレンズ3本の運搬は私にとってはちょっと荷物が重すぎる。

キヤノンEOS R6 MarkII・絞りF2.8・1/1250秒・ISO6400

キヤノンEOS R6 MarkII・絞りF2.8・1/1250秒・ISO800

RF28-70mm F2.8 IS STM

もう1本常用の標準ズームをご紹介しておく。標準ズームは先述のRF24-105mm F2.8 L IS USM Zがお気に入りの最高画質だがサイズが大きい、こちらは電車移動などで荷物を軽くし軽快に動き回りたい時に持ち出すレンズだ。若干焦点距離の幅は狭くなるものの、開放F値は2.8通しで使用出来るのが何よりありがたい、Lレンズでは無いが肝心の画質も申し分ない。日常のスナップから近場での撮影散歩にはとてもお勧めのレンズである。

私のEOS Rシリーズのカメラのボタン設定について軽く触れておこう。私は動画は撮影しない(動画撮影は別のカメラで行う)のでシャッターボタン脇の録画開始ボタンに「クロップ」を割り当てている。1回押すと1.6倍のクロップした画角になり、もう一度押すとフルサイズに戻るという仕組みだ(フルサイズのEOSのみ)。

以前はクロップはあまり好きではなかったのだが最近の機種では画質が良くなったのと画素数も十分すぎるので積極的に使用するようになった。

このレンズで言えば、70mmの状態でクロップONにすると112mm相当となる。この焦点距離で開放 F2.8は変わらず 、最短撮影距離が0.24mまで寄れるとなるとマクロなど撮影出来る被写体はグンと増えてくるだろう。望遠側での撮影も70mmだとちょっと足りないシーンが良くあるのでこれは助かる。

ちょっとした撮影会などではこのレンズと小型のRF70-200mm F4 L IS USMを組み合わせればクロップをON/OFFしながら一日楽しい撮影が出来るだろう。さらにバッグに余裕があるなら後述のRF16mm F2.8 STMを追加すれば完璧である。

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF8.0・1/5000秒・ISO3200

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF2.8・1/1000秒・ISO800

RF16mm F2.8 STM

ここまでズームレンズを紹介して来たが、ここで単焦点レンズに触れておきたい。単焦点レンズにはガチな高級路線のシリーズもあるが今回は軽量で比較的安価な単焦点レンズを紹介する。F値の明るいRF50mm F1.8 STMもお勧めだが、後述するのでこの項では画角の観点から広角16mmを取り上げる。

これ1本でスナップして歩くのも楽しいが、今まで紹介してきたズームレンズとセットで活用するメリットをお伝えしたい。RF24-105mm F2.8 L IS USM Zの項でも記載したが標準ズームまでだとどうしても作画的に単調になるので、時には広角で迫って大きく捉えたくなる。そこで広角側を補完する意味でこの軽いこのレンズを用意しておく。

作例の様に16mmならではのパースペクティブの効いた画作りが楽しい。開放F値は2.8で最短撮影距離はなんと0.13mと寄れるので、デフォルメした表現も可能だ。

寄れない広角レンズは広く撮るだけしか出来ないので注意が必要だが、ここまで寄れるとなると楽しい。被写体にぐっと寄って広角ならではの歪んだ描写を楽しむことが出来るからだ。

広角レンズの扱いは慣れないと最初は難しいかと思うが、非現実的で面白い写真が撮れるので、是非試して欲しいレンズ。165gと小型軽量なので持って来たのを忘れるくらいの存在感にも拘らず、積極的に活用している1本である。

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF22・1/500秒・ISO800

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF2.8・1/640秒・ISO1000

RF24-240mm F4-6.3 IS USM

最近人気の高倍率ズーム。24mmから240mmと10倍ズームになる。とにかくこれ1本持って行けば、なんでも撮影出来る便利ズームだ。

私は多くの写真教室をやっているので授業には大抵これ1本で対応している。授業では色々な構図や画角の写真を生徒にその場でお見せするのに非常に便利だからだ。同様に次の撮影のためのロケハン(下見)の際にも使用する。初めての場所だとどんな被写体がどんな距離感であるのかが分からないので、これ1本で感触を掴み本番は前述のレンズでラインナップを組んで挑む様にしている。また旅行や祭りなどのイベントではレンズ交換をする間が無く、しかもいろんな画角でたくさん撮影したいシーンでも活躍してくれる1本だ。

ただ高倍率ズームに慣れ自分が動かずズームリングだけで撮影する癖が付いてしまうと単調な記録写真ばかりになり、写真教室講師の立場から言わせて頂くと作品作りの面から注意が必要だ。広角側ならパースを意識し被写体に寄る、望遠側なら圧縮効果を活かし背景を整理するなどの立ち位置やカメラポジションに工夫が必要となる。

また開放F値は比較的暗いのでボケが作りづらい、暗所ではシャッタースピードが遅くなる(ISO感度が上がりすぎる)などの弱点が高倍率の恩恵の裏にはある事を理解し使いこなす必要がある。実は技量を試されるレンズでもあるのだ。

もしこのレンズで水族館や夜祭りなど暗い場所での撮影が想定される場合には、RF50mm F1.8 STMを保険の意味を込めてカバンに入れるようにしている。

キヤノンEOS R5 MarkII・絞りF6.3・1/1600秒・ISO800

キヤノキヤノンEOS R1・絞りF11・1/1600秒・ISO3200

まとめ

今回「ゲキ推し」RFレンズという事で5本を選び出し1本づつ淡々と箇条書きの様に解説するつもりであったが、実際には他のレンズとの組み合わせでさらに実力がアップするレンズ群であることに気づかされた。盤石の実力を持つサッカーチームのようだ。単体の実力は申し分なく、それだけの解説では片手落ちとなるため各項でも別のレンズがたびたび登場する事となった。

私が実際に撮影に向かう際にも、防湿庫の中からその日の撮影スタイルに合うレンズを考える。レンズ番長とも呼ぶべき高画質のレンズ群だけでなく軽量なレンズなども揃っていて、それらを横断的に組み合わせる事でキヤノンのレンズ選びは完結するのだろう。今までは大三元や小三元などとそのシリーズで組み合わせたものだが、これだけラインナップが充実してくると自分なりのチョイスが楽しい。もっと自由に自分の撮影スタイルに合う組み合わせを模索しレンズ選びを楽しみたい。

今回のカメラ・レンズ

EOS R1
◉発売=2024年11月29日 ◉希望小売価格=オープン(実売・980,100円税込)

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EOS R5 MarkII
◉発売=2024年8月30日 ◉希望小売価格=オープン(実売・589,050円税込)

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EOS R6 MarkII
◉発売=2022年12月15日 ◉希望小売価格=オープン(実売・287,100円税込)

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RF70-200mm F2.8 L IS USM Z
◉発売=2024年11月 ◉希望小売価格=オープン(実売・445,500円税込)

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RF24-105mm F2.8 L IS USM Z
◉発売=2023年12月8日 ◉希望小売価格=オープン(実売・445,500円税込)

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RF28-70mm F2.8 IS STM
◉発売=2024年9月27日 ◉希望小売価格=オープン(実売・169,290円税込)

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RF16mm F2.8 STM
◉発売=2021年10月 ◉希望小売価格=オープン(実売・37,620円税込)

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RF24-240mm F4-6.3 IS USM
◉発売=2019年8月29日 ◉希望小売価格=オープン(実売・133,650円税込)

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