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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 ミゾタユキ × 富士フイルム X-E5

写真・文:ミゾタユキ/編集:合同会社PCT

入門機としてもおすすめできる、小型軽量のレンズ交換式レンジファインダー機

富士フイルムの人気シリーズ最新機X-E5が登場しました。前機種から待っていたという方も多いのではないでしょうか。初心者から本格的な撮影まで対応する本機の魅力を、写真家のミゾタユキさんにレビューいただきました。ぜひ導入、撮影の参考にしてください。

ミゾタユキ
フォトグラファー・写真家 猫や日常、旅先でみつけた情景を作品として撮り続け、近年では2023年Nikon THE Galleryで「Pastel~夢をめぐる」、2024年FUJIFILMのメタバース HoP Galleryで「Time to cross」個展を開催。カメラ誌やWEBでの執筆、カメラメーカーのセミナー講師、フォトコンテストの審査などを通じて写真の楽しさを伝える活動にも携わる。 撮影会&web講評「フォトプラネッタ」主宰、ニコンカレッジ講師、FUJIFILMメタバースHouse of Photographyアンバサダー、日本作例写真家協会会員【JSPA】、著書「カメラでパチリ へやねこ そとねこ」、共著「美しいボケの教科書」など多数。
ミゾタユキ litlink

はじめに

富士フイルムのXシリーズの中でも人気の高いレンジファインダースタイルのミラーレスカメラ「FUJIFILM X-E5」が8月28日に発売されました。前機種のX-E4から約4年半が経ち、往年のフィルムカメラにインスパイアされたクラシックなスタイルに加えて操作感にいたるまでデザイン性の高いディテールと最新機能を搭載し、さらに魅力的なカメラになりました。

X-E5(ブラック)+キットレンズXF23mmF2.8 R WR

約445gの軽量ボディに、キットレンズのXF23mmF2.8 R WRは薄いパンケーキレンズで重さ約90g。カメラにレンズをつけると、まるで一体型のような印象でスタイリッシュ。バッテリーは予備にもう1本を持ちたくなりますが、スローな撮影スタイルには充分。モバイルバッテリーで給電もできます。

X-E5の特徴は?(外観&アクセサリー)

レザー部分にFUJIFILMのロゴが型押しされていてオシャレ

ボディのカラーはブラックとシルバーの2色。どちらの色も品のある佇まいで、手にとったときの持ちやすさ、ダイヤルの質感、動かしたときの音や感触に撮る前から気持ちが上がります。

付属品のカメラストラップはロープ式でトータルコーデも最初から仕上がり完璧。ストラップを手首に巻いたり、ハンドストラップを使う方も、首からかけて使いたくなる雰囲気です。

上質なアルマイト加工で品があって美しいです。

軍艦部はシリーズ初のアルミ削り出し。トッププレートは金属の塊から削り出しのみで成形しているのが驚きです。プレートの前と後ろを指で沿わせてみると、滑らかさに微妙な違いがあってこだわりを感じます。新たにデザインされた窓付きのフィルムシミュレーションも美しいです。新鮮な感覚でフィルムシミュレーションを選ぶことができて、撮る楽しさにもつながります。

ファインダー、視度補正ダイヤルの凹凸が極限まで抑えられたフォルムはどこをみてもシュッとしています。バリアングルを動かすツマミ部分も閉じるとフィットしますが、引き出しやすく操作感もよく使いやすいです。

スペックと新機能をチェック!

■高画素4020万画素センサーと最新画像処理エンジン
X-E5はAPS-CサイズのカメラでX-TRANS CMOS 5HR 裏面照射型4020万画素のCOMSセンサーと最新画像処理エンジンX-Processor5を搭載しています。前機種のX-E4は2610万画像でエンジンも一世代前なので数字上でもスペック的な進化が感じられます。動画では6.2K/30P 4:2:2 10bitでのカメラ内カード記録に対応しました。4K/60Pや1080/240Pで、静止画だけではなく高品質な動画を撮ることもできます。

■5軸手ブレ補正が搭載
4020万画素の高画素になったうえ、ついに手ブレ補正がつきました!センサーシフト方式の5軸補正です。ISO感度(標準出力感度)の低感度はISO125まで拡張しましたが、高感度はISO12800までなので、撮影する場所が暗いシーンで三脚を使わずにスナップする場合に頼れるのがれうれしいです。

■「被写体検出AF」AIで検出
最新のAF予測アルゴリズムで高精度なAFとなり、また被写体検出AFが搭載されました。検出できる被写体は「人物の顔・瞳、動物、鳥、車、バイク、自転車、飛行機、電車、昆虫、ドローン」です。どれもピントを合わせたまま撮り続けたい被写体に対応しているので、シーンに合わせて使いたい機能の一つです。

■コントロールレバーで変えるサラウンドビューモード
長引き、引きでアスペクト比やフレーム表示などを切り替えることができるコントロールレバーがカメラ正面につきました。サラウンドビューモードはアスペクト比を2:3から変更したときに、撮影範囲外を半透明やラインで表示させることができるのでとても便利。また「黒」or「ライン」の時、EVF(電子)ビューファインダー内で設定情報をシンプルに表示する「クラシック」モードで撮影に入り込むことができます。

*右に長引き→アスペクト比(写真の縦横の比率)、右に一回引き→フレーム表示(サラウンドビューモード)、左に長引き→FSレシピのON・OFF、左に一回引き→拡大表示に切り替えて使うことができます。

■窓付きのフィルムシミュレーションダイヤル
フィルムシミュレーションダイヤルを回して、フィルムを交換するようにFUJIFILMの色「フィルムシミュレーション」を全20種類も!変えられます。FS1、FS2、FS3ではお気に入りのフィルムシミュレーションを割り当てたり、レシピ(例えばカラークローム・ブルーなど)を設定して自分の好みにカスタムするとオリジナルフィルムのようになり、とても使いやすく感じます。

作例とともにX-E5の描写性能をチェック

X-E5のキットレンズXF23mmF2.8 R WRをメインにXF56mmF1.2 R WRとXF16-55mmF2.8 R LM WR IIで撮影しました。

キットレンズはとても小さくて軽く、街歩きにピッタリ。何気ない風景も明るいレンズのおかげで前ボケをいれると雰囲気のある一枚になります。建物の土台の石や植物を見ると素材感やグラデーションが緻密に描写できていると感じます。解像感があるので高画素に合うレンズで画角もスナップに向いていると思います。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF4・1/2500秒・ISO2000・WBオート・+1.3 フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
キットレンズXF23mmF2.8 R WRはAF速度が俊足でないのがちょうど良く、いいリズムで撮ることができます。ISO感度が高すぎる設定で撮ってしまいましたが、高感度画質の参考になると思います。

真夏の猛暑でも元気に咲くサルスベリは色鮮やかで、窓枠のフレームと葉の色が引き合い、少しだけ涼しげに感じました。この空気感と色合いを捉えるのに、いろいろなアングルのほかアスペクト比も変えて撮っていきました。コントロールレバーを右長引でアスペクト比を変えて、引きでフレーム表示を黒にすると明るい場所で見やすくなります。アスペクト比を気軽に変えられると自然と気分に合わせて使いたくなります。

FUJIFILM X-E5・XF56mmF1.2 R WR・絞りF2・1/680秒・ISO500・WBオート・+1.0 フィルムシミュレーション:REALA ACE
Instagramではいつもスクエアでポストしているので、そのイメージで1:1を選びました。

バスに乗り、向かう先を眺めていると次第にフロントガラスから西日が差し込みました。逆光でフレアを入れてみたところ、光のまわり方が優しい。ノスタルジックネガにしていてよかったと思う瞬間でした。フィルムシミュレーション次第で空気感やイメージを映し出すことができるので、自分の気持ちに近いものや写真を撮る場所に合わせて選ぶと楽しさが増すと思います。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/60秒・ISO2000・WBオート・+2.0 フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
サイドのガラスをみるとハイライトに粘りがあるのでダイナミックレンジの広さを感じます。自然な描写感でシネマティックに感じる色合いになりました。

水族館では変幻自在に泳ぐクラゲに合わせて、光の空間を漂う優雅な姿を狙ってみました。連写せずワンショットで連続しながら撮りましたが、暗い場所で透けている被写体でもAFを合わせることができたので、AFの進化を実感できました。

FUJIFILM X-E5・XF16-55mmF2.8 R LM WR II・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7 フィルムシミュレーション:ACROS
フィルムシミュレーションは豊かなシャドーディテールと高精細なシャープネスが特徴のACROSで。

暑すぎる日、照り返しのある屋根と雲を16:9のアスペクト比で対比するように捉えたところ、エッジが効いたソリッドな瓦にざらつきのような質感を見つけ、カラーでは気づかない緻密な描写性にハッとしました。ハイライトからシャドーまでの階調やカリカリにならないシャープネスによって誇張しすぎない自然な描写力です。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF16・1/420秒・ISO500・WBオート・+0.7 フィルムシミュレーション:ACROS
ACROSでそのまま撮っていますが、さらに「グレイン・エフェクト」でフィルムの粒状感を加えたり、「モノクロ―ム・カラー」で色のあるモノクロで表現することもできます。

建物の中から外の風景を眺めて窓枠をいかしたフレーミングにしようと思い、16:9の横長で捉えるとキットレンズXF23mmF2.8 R WRでも実際の画角よりワイドに感じられるのがおもしろいです。セレクトレバーで構図のアイデアもふくらみます。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF16・1/100秒・ISO640・WBオート・-1.0 フィルムシミュレーション:ETERNA
室内と外では明るさの差が大きいですが絶妙なトーンでシャドーを描写でき、HDRとは違う自然な描写性が魅力です。

高感度性能を試すためISO高感度(標準出力感度)MAXのISO12800で夜景をスナップ。自転車にAFを合わせて桟橋と水面、空、建物など様々なものをいれました。液晶モニター上では色ノイズもなく、線が崩れてペタッとした感じもありません。

PCに取り込んで大きく表示するともちろん低感度との差はありますが、自転車とその下付近の光がまわっているあたりは立体感や色乗りもいい感じ。空やビルを見るとほどよくノイズリダクションが効いていることがわかります。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/27秒・ISO12800・WBオート・+0.7フィルムシミュレーション:クラシッククローム
一言で言うと、えっ?予想以上に高画質でキレイです。

展望台に上がるとアポロのような三角の山、360度見渡せる絶景が広がっていました。ここはもうパノラマしかない!ドライブモードからパノラマを選びました。ガイドに沿ってカメラを振って撮るだけなので簡単です。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF8・1/210秒・ISO160・WBオート・+1.0 フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
MとLサイズを選べますが、違いは写せる角度。広く撮りたいときはL。今回はとんがり山を大きく写したかったのでMサイズにしました。

フィルムシミュレーションでフィルムライクな描写で撮れるほかに、様々なフィルター効果もあります。トイカメラ、ミニチュア、ポップカラー、ハイキ―、ローキー、ダイナミックトーン、ソフトフォーカス、パートカラー(レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、パープル)から選べますが、個人的にはミニチュアが一推し。遠景でのスナップや俯瞰するアングルのときに使うのが効果的です。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF7.1・1/500秒・ISO500・WBオート・+1.3 ミニチュア
遠くに見つけた人をミニチュアで。スケール感がより感じられて可愛い雰囲気です。小さい被写体にもピントがしっかり合っています。

青い海、青空、夏の光景を印象的に、自分がイメージするトーンや色合いで表現できるフィルムシミュレーションとしてノスタルジックネガを選び、カラークローム・ブルーでより深みのある鮮やか青が記憶に残るように表現しました。

FUJIFILM X-E5・XF23mmF2.8 R WR・絞りF5.6・1/450秒・ISO125・WBオート・+0.7 フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ
フィルムシミュレーションにノスタルジックネガを割り当て、レシピでカラークローム・ブルー「弱」に設定しています。カラークロームを効かせたくないときは、コントロールレバーを左に長引き。

まとめ

本機は以下のようなユーザーにオススメです。
・色はイメージや記憶色と重なるため、表現として写真の色を大切にしている方や旅先で出会う光や空気を記録するだけでなく、感じたままの印象に残したい方。
・これからカメラを始めたい初心者の方
・小型軽量で気軽に持ち歩ける高画質のカメラを探している方。
・クラシックなレンジファイダ―のカメラが好きな方。

X-E5は、軽くて使いやすく、操作も簡単なので初心者にもやさしく、またレンズ交換もできるのでXユーザーの方も小型軽量のレンジファインダー機として欲しくなる1台になると思います。もちろんXユーザー以外の方も。フィルムシミュレーションダイヤルやコントロールレバーが、新鮮な気持ちで写真を撮る楽しさを感じさせてくれます。FUJIFILMの色、フィルムシミュレーションで空気感や感情を高画質で表現できるのも魅力で、クラシックでスタイリッシュなスタイルには特別感があり、長く使い続けていきたいカメラになると思います。

今回のカメラ・レンズ

富士フイルム X-E5
◉発売日=2025年8月28日 ◉希望小売価格=オープン(実売:221,760円税込)

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XF16-55mmF2.8 R LM WR II
◉発売日=2024年12月20日 ◉希望小売価格=オープン(実売:170,280円税込)

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