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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 伊藤亮介×滝・清流の撮影テクニック

写真・文:伊藤亮介/編集:合同会社PCT

滝や清流の水風景撮影をもっと楽しもう!

風景写真を中心に、自然風景、水のある風景の作品を撮影されている伊藤亮介さんに、今回は滝や清流を撮影する際のポイントを解説いただきました。本記事でポイントをおさえて、ワンランク上の撮影を楽しみましょう。

伊藤亮介(いとう・りょうすけ)
1972年新潟県生まれ。東京電機大学卒。中学生の時に写真を始め、大学生の頃から本格的に自然風景を撮り始める。隔月刊『風景写真』編集部での勤務を経て、フリーの写真家となる。主に日本全国の水のある風景や、森の表情などを撮り続けている。写真雑誌の口絵での作品発表をはじめ、風景撮影の連載や撮影技法・製品などについて数多くの記事を手掛ける。クラブ「フォトR」主宰。他にも複数の写真クラブで講師を務めている。

はじめに

滝や清流の撮影では、晴れて光が当たっているとコントラストが強くなり、美しい写真に仕上げるのが難しいことが多い。そのため、できればフラットな光線になる曇天や雨天時などを狙って撮影するようにしたい。白い岩などが点在する渓流や渓谷で晴天時に撮影する時は、日中は極力避けて光が弱い朝夕の時間帯に狙うのがお勧めだ。

基本的に水風景は低速シャッターで捉えると、流れの優美な姿を引き出しやすくなる。そのため三脚とレリーズは必ず持って出かけよう。また、被写体の反射をコントロールできるPLフィルターだけでなく、シャッター速度を遅くするNDフィルターも準備しておくと撮影の幅を広げられる。

滝の撮影①〈魅力的な部分を切り取る〉

滝の撮影では落ち口から滝壺までの全景を写すと、説明的でどこかで見たような写真になりやすい。個性的な写真に仕上げるためには、最も印象的に感じられた部分に絞って撮ってみよう。その際には一枚撮って満足するのではなく、水の流れが一番美しく見える描写が得られるまで、同じフレーミングでシャッター速度を変えながら粘り強く撮影するのが佳作を生み出すコツだ。

このカットでは、岩盤の上を流れる水の形が一番変化に富んでいる部分をフレーミングして、滝の印象度を高めている。水流を美しく見せるためにNDフィルターを使用し、シャッター速度を変えながら何枚も写した。滝の撮影ではいきなり一部分を切り取るのではなく、全体を写したあとで徐々に範囲を狭めて撮っていくとさまざまなバリエーションを作り出しやすい。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・142mmで撮影・絞りF22・AE(0.4秒)・ISO250・WB太陽光・PL/NDフィルター(三重県熊野市・清滝)

滝の撮影②〈周りの風景を取り込んで作画する〉

滝そのものだけを撮っていると似たような印象の写真ばかりになってしまうので、周りの風景も取り入れて変化をつけて画面を構成してみよう。花や木々などを入れて作画することで写真に季節感や情緒が加わり、味わい深い作品になる。

滝前に到着して周囲を観察すると、滝の上部にツツジが咲いていることに気がついた。メインの流れを画面左側に、上部にツツジを取り入れ、右側上部には緑を配して季節感を強調した。土の斜面が目立つのを避けるために、PLフィルターは強めに効かせている。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・50mmで撮影・絞りF16・AE(0.8秒)・ISO320・WB太陽光・PLフィルター(山梨県北杜市・吐竜の滝)

日本三名瀑のひとつ、那智の滝。落差133メートルの滝は勇壮で、滝に至る参道の周囲には杉の巨木が立ち並び神聖な雰囲気が漂う。似通った写真にならないように、滝だけを捉えずに杉の幹や葉も取り入れて作画した。低速シャッターで撮影した後、同じフレーミングでISO感度を上げて水の落下する様子を高速シャッターで捉え、滝の持つエネルギーと迫力を表現した。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・124mmで撮影・絞りF11・AE(1/250秒)・ISO3200・WB太陽光・PLフィルター(和歌山県那智勝浦町・那智の滝)

滝の撮影③〈光とその向きを意識する〉

滝の周囲を構成する岩壁は黒っぽいものが多く、渓流や渓谷に比べて晴天時も割と撮りやすい被写体といえる。ただ、他の風景と同じように順光では立体感に欠ける平面的な描写になりがちなので、その場合は訪れる時間帯を変えてみよう。一方、サイド光や斜光の状態であれば立体的な描写が得られ、コントラストが高く印象度の強い写真になる。

この滝は以前に何度も撮影し、午後の時間帯には横方向から光が差し込むことを知っていたので同じ時間帯を狙って訪れた。マルミ光機製の一体型のPL/NDフィルターを使用してシャッター速度を調整し、水の躍動感と優美さを引き出した。晴れている時は光量が多く、絞り込んでも低速のシャッター速度が得られないことも多いため、NDフィルターは必ず持っていこう。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・76mmで撮影・絞りF16・AE(1/4秒)・ISO160・WB太陽光・PL/NDフィルター(三重県熊野市・荒滝)

この滝は角度によって形状が変わり、下流側からは末広がりの美しい姿を見られる。滝上部の空が目立ちすぎないように、樹木で少し隠れる位置を選んで三脚をセットする。滝周辺の岩の余分な反射をPLフィルターで取り除き、滝の流れが美しく再現できるように低速シャッターで撮影した。曇天ではあったものの、暗い場所から明るい上方向へカメラを見上げて構えているため、弱い逆光状態となって立体感のある描写になった。

キヤノンEOS 5Ds R・EF24-105mm F4L IS II USM・24mmで撮影・絞りF11・AE(0.6秒)・ISO100・WB太陽光・PL/NDフィルター(奈良県川上村・御船の滝)

清流の撮影①〈雨のしっとりとした雰囲気を活かす〉

滝に比べて渓流や渓谷には白っぽい岩が点在していることが多く、晴れて強い光が当たっていると肉眼よりも再現域の狭い写真では美しく再現するのが難しくなる。このため渓流や渓谷では曇りや雨の日に撮影した方が良好な結果を得られやすく、特に雨の日は岩が濡れてしっとりとした趣のある写真に仕上げられる。

次の目的地への移動中、清流の美しさに思わず車を停めて撮影した一枚。雨が降っていたおかげで岩や草が濡れて、瑞々しい雰囲気で表現することができた。ここでは清流だけを切り取るのではなく、画面手前に木立を入れて奥行き感を出している。渓流などを撮る時には、目立つ岩や白濁した流れをポイントにして作画すると引き締まった写真になる。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・46mmで撮影・絞りF14・AE(0.8秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター(栃木県鹿沼市・東大芦川)

雨が降っている時には、渓谷の岩が濡れて美しい輝きを放つ。暗い場所から明るい方向へ目を向けると、濡れた岩が鈍く光っていた。このようなシーンで岩の反射を取り除くと面白味に欠ける写真になってしまうため、PLフィルターは反射の具合を微調整する目的で使用している。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・50mmで撮影・絞りF16・AE(1/5秒)・ISO200・WB太陽光・PLフィルター(高知県仁淀川町・安居川)

清流の撮影②〈気象条件に応じて狙いを変える〉

「曇りの日を狙って撮影に出かけたものの、天気予報が外れて晴れてきた」という経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。そんな時には広い風景を狙わずに、比較的狭い範囲の水面に着目して木々の映り込みの色などを狙ってみるのもひとつの手だ。また、夏の暑い時期になると、渓流では水と気温の温度差によって川霧が発生するシーンに巡り会えることがある。霧が湧くシーンでは、その部分だけを切り取ると眠たい写真になってしまうので、インパクトを出すためにコントラストの高い被写体と組み合わせて撮影しよう。

渓流や渓谷の撮影において晴れている時は岩などに光が当たり、白く飛んでしまって美しく再現できないことがある。そのような時には水面の映り込みに着目してみよう。ここでは緑の映り込みを多く取り入れながら、上部の流れをポイントにして作画した。ただし、映り込みが撮れるのは水面部分が日陰になっていて、画面外の奥の風景に光が当たっていることが前提条件となる。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・35mmで撮影・絞りF16・AE(0.6秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター(東京都日の出町・大久野)

気温差によって発生した川霧。風が吹いていないことも川霧が発生する条件のひとつだ。このカットでは手前に岩を入れ、奥に川霧を配して写真的な強さを高めてフレーミングしている。手前の岩は画面内における重要な主役なので、その存在感が強調されるようにPLフィルターで岩のテカリを調整しながら数パターン撮影した。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・35mmで撮影・絞りF16・AE(0.5秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター(栃木県日光市・黒川)

清流の撮影③〈長秒露光で視覚を超えた表現にする〉

清流の撮影では1秒以下のシャッター速度で写すことにより、写真ならではの独特の描写が得られる。一般的に長秒露光で写した写真は優しい雰囲気になり、さらに朝夕の時間帯に撮影すると風景が青く染まって色彩的な変化を出すこともできる。光量が乏しいシーンでは闇雲にISO感度を上げて撮影するのではなく、画質を重視してできるだけ低いISO感度で長く露光するのがお勧めだ。

苔むす岩があるシーンでは、比較的狭い部分を撮っても絵になる。この場面ではいくつかの岩と小さな流れ、倒木を入れて作画している。ひとつひとつが画面を構成するうえでの重要な要素となるため、すべてをバランスよく配置することを心掛けた。少しだけ反射を残しつつ、白い流れが目立つようにPLフィルターは強めに効かせている。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・95mmで撮影・絞りF22・AE(2秒)・ISO100・WB太陽光・PLフィルター(栃木県日光市・奥日光)

日没後、渓谷の青カブリの表情を狙う。画面左下の水たまりの反射をポイントにしながら、全体的にメタリックな雰囲気が感じられるように、雨で濡れた岩のテカリを残して撮影している。30秒という長秒露光のおかげで、川の流れも滑らかに描写された。青カブリの風景は、ホワイトバランスを「太陽光(晴天)」、色の仕上がり設定を「風景」に設定すると青色を強調できる。

キヤノンEOS R6 MarkII・EF24-105mm F4L IS II USM+マウントアダプター EF-EOS R・56mmで撮影・絞りF16・AE(30秒)・ISO400・WB太陽光・PLフィルター(栃木県日光市・大谷川)

伊藤亮介さんの使用機材

現在のカメラは、キヤノンのEOS R6 Mark IIをメインに使用している。高画素機のEOS 5Ds Rも時折出動。レンズは16ミリから500ミリまでの焦点距離を、3本のレンズでシームレスにカバーしている。大口径レンズのシグマ135mm F1.8 DG HSMは、ボカして表現したい時の切り札的存在。

(左から)マルミ光機製のCREATION PL/NDフィルターは濃度の違う製品を3枚揃えている。可変タイプのNDフィルターに加え、高濃度のND500フィルターおよびND1000フィルターも常時携行する。高濃度のNDフィルターは、光量が充分にある日中にスローシャッターで撮りたい時に使用する。

まとめ

滝や清流といった水風景を撮影する時には、シャッター速度が作品の仕上がりを大きく左右する。一枚撮って満足するのではなく、同じフレーミングでもシャッター速度を変えながら何枚も撮影し、より完成度の高い作品を残すことを意識しよう。

滝の周囲では水の飛沫を浴びながら撮影することも珍しくなく、PLフィルターなどは撥水加工が施された製品を使用するのがお勧めだ。フィルター前面に水滴がついても、ブロアーで簡単に吹き飛ばせるので快適に撮影を進められる。また、滝や清流の撮影では当然のことながら水辺を歩くことが多くなるため、トレッキングシューズなど足元の装備も万全にして出かけたい。さらにフェルト底の長靴などを準備しておくと水の中にも入れるため、さまざまなポジションから撮影できる。最近は熊の出没も多いことから、熊よけの鈴だけでなく熊の撃退スプレーなども持っておくと安心だ。

今回のカメラ・レンズ

キヤノンEOS 5Ds R
◉発売日=2015年6月 ◉価格=オープン


キヤノンEOS R6 MarkII
◉発売日=2022年12月15日 ◉価格=オープン


キヤノンEF16-35mm F4L IS USM
◉発売日=2014年6月 ◉価格=オープン


キヤノンEF24-105mm F4L IS II USM
◉発売日=2016年11月3日 ◉価格=オープン

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キヤノンRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
◉発売日=2020年8月27日 ◉価格=オープン