カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー コムロミホ ✕ ニコン Z5II
写真・文:コムロミホ/編集:合同会社PCT
ニコン Z5IIを片手に、チェコのプラハの旅へ!

- コムロミホ
- 文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。 撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。 アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。カメラや写真が好きな人が集まる本屋「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。日本写真家協会正会員。
目次
はじめに
Z5第二世代目となる、ニコンZ5IIの魅力をご紹介していきたい。前機種Z5は肩液晶を省いたモデルとなり、ニコンZシリーズではフルサイズのエントリーモデルに位置する。すでにZ5IIを持って、倉敷へ行ったり、京都へ行ったり、さまざまなロケーションで撮影を行なっているが、Z5IIを使った私のファーストインプレッションは「今あるニコンの技術を凝縮したカメラ」だ。

ニコンZ5

ニコンZ5
前機種のニコンZ5との比較
上位機種であるZ8やZ9、そしてZfやZ50IIの最新機能や性能を一台に盛り込んでいるが、他のニコンのフルサイズのミラーレスカメラと価格を比較してみると、安価となり、コスパに優れたカメラといえる。Z5IIが進化した点に触れながら、本機種の魅力をご紹介していきたい。
まずは外観から見ていきたい。前機種のニコンZ5と比較してみると、前面はロゴの位置が変わったくらいで、あまり大きな変化はない。

ニコンZ5

ニコンZ5Ⅱ
ボディの大きさに関してはZ5が約134×100.5×69.5mm、Z5IIが134×100.5×72mmになる。横幅と高さは同様だが、厚みが増している。それによりグリップに深みが増し、安定してカメラをホールドすることができる。
便利なピクチャーコントロールボタンを搭載
上面に関しては前機種同様に肩液晶を省略し、マイクがあった位置にピクチャーコントロールボタンを配置している。これはZ50IIから搭載されたボタンになるが、ダイレクトにピクチャーコントロールにアクセスすることができ、絵作りを瞬時に変えられるようになっている。

ニコンZ5Ⅱ上面。↑がピクチャーコントロールボタン。
ピクチャーコントロールにはクリエイティブピクチャーコントロールも合わせると、数多くの絵作りが搭載されているが、種類が多いため使いたい効果に辿り着くまでに時間がかかる場合がある。そういうときは使わない効果を表示しないように設定することができるようになっている。それによりピクチャーコントロールから効果を選択しやすくなる。
背面は液晶がバリアングルになり、横位置に限らず、縦位置でもアングルを変えた撮影がしやすい。また動画撮影時もバリアングルの方が便利になる。ファインダーは上位機種と同等の0.5型約369万ドッドのファインダーを搭載。ファインダー倍率は約0.8倍となり、最大3000cd/㎡の明るさに設定することができる。
低照度時や動体へのAF性能も上がった
同じ立ち位置にある他社製のカメラと比較してみてみると、圧倒的にファインダーの性能が高い。ストリートスナップを撮影しているときは両目を開けたままファインダーを覗くことが多いが、ファインダーの性能が高いと両目を開けたままでも違和感がなく、疲れにくい。
前機種であるZ5も愛用していたが、ユーザーの不満点としては連写と低照度時のピント合わせだろう。Z5IIになり、苦手とされていた部分がかなり払拭されている。まずは連写に関してはZ5は約4.5コマ/秒だったのに対して、Z5IIは約14コマ/秒での撮影が可能になっている。ハイスピードフレームキャプチャーを使用すれば、約30コマ/秒の設定が可能だ。それによって、動く被写体の瞬間を細かく記録することが可能になっている。
動く被写体を撮影するときはAF性能もポイントになるだろう。Z5IIは9種類の被写体検出が可能になっている。上位機種であるZ6IIIにはない鳥認識の項目が追加されている。ハイスピードフレームキャプチャーと鳥認識を使用することで、より精度高く撮影することが可能。下記の写真は鳥の顔が見えなかったり、前ボケが鳥に重なっているシーンもしっかりと認識してくれている。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR・200mmで撮影・絞りF7.1・1/2000秒・ISO2200・−0.33EV補正・WBオート
また、被写体検出でオートを選べるのもZシリーズの良い点だろう。被写体を見分けて適切に認識してくれるため、被写体に合わせて設定をし直す必要がない。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR・200mmで撮影・絞りF6.3・1/500秒・ISO100・+0.33EV補正・WBオート

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR・400mmで撮影・絞りF8.0・1/500秒・ISO400・−0.67EV補正・WBオート
カメラ側で被写体検出をしてくれる
下記のシーン(3点)は、被写体検出をオートにしながら撮影している。猫を撮影していたら、釣り人に声をかけられたので、その釣り人を撮影させてもらった。猫を撮影しているときは猫を認識し、人物を優先してピント合わせを行ってくれる。いちいち設定を変えるとなると、シャッターチャンスを逃してしまうが、オートに設定しておけば、スムーズなピント合わせが可能になる。こちらの写真のように完全にシルエットになるようなシーンでもしっかりと瞳にピントを合わせ続けてくれている。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/500秒・ISO100・−0.67EV補正・WBオート

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・400mmで撮影・絞りF4.0・1/6400秒・ISO100・−0.67EV補正・WBオート

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF4.0・1/1250秒・ISO100・+0.33EV補正・WBオート
夜スナップに強い、AFモード自動切り替え
またZシリーズフルサイズ初となるAF-Fが搭載されている。AF-SとAF-Cを自動的に切り替えてくれるモードとなり、ストリートスナップのように動く被写体と静止したものを多様に撮影するシーンで活躍してくれる。
次に苦手とされていた低照度時のピント合わせだが、Z5は-4.5EVだったが、Z5IIは-10EVでの暗さでもピント合わせが可能になっている。実際にZ5で夜スナップをしていたときにピントが迷ってしまう時があったが、今回のZ5IIはかなり暗い環境でもピントをスムーズに合わせることができた。
写真で見ると明るく見えるが、下記のシーンは手前の木に一切光が当たっていない状態となり、肉眼で見ても真っ暗なシーンだ。どのくらいAF検出を行えるか実験するためにピント合わせを手助けするAF補助光をOFFに設定しているが、このようなシーンでもしっかりとピント合わせを行えた。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF4.0・1/6秒・ISO1600・−0.67EV補正・WBオート
ピントをどこに合わせるかで写真の雰囲気が大きく変わるため、スムーズなピント合わせを行えるのはかなりありがたい。こちらの写真はタイルにピント合わせを行なってるが、奥をぼかすことで奥行きのある写真に仕上がった。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/50秒・ISO720・−0.33EV補正・WBオート
ピント付近のブレを軽減する「フォーカスポイントVR」
手ブレ補正に関しては中央で7.5段、周辺で6.0段となり、Zfと同等となる。今回、手持ちで夜撮影を行ってみたが、1秒のスローシャッターでもブレずに撮影をすることができた。Zfでもスローシャッターの撮影を手持ちで行うことがあるが、明らかにZ5IIの方がブレにくいと感じた。それはグリップ力の高さのおかげだろう。カメラをしっかりとホールドすることができるため、安定した撮影が可能となる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF4.0・1秒・ISO100・−0.33EV補正・WBオート
またZf同様に「フォーカスポイントVR」という機能を搭載している。手ブレ補正を行う際は写真の中央付近がブレないように補正するのが本来だが、手ブレする際は写真の中央部分と周辺部分ではブレの方向や大きさが異なる。特に手ブレする際は回転ブレが多いが、回転ブレは中央よりも周辺のブレが大きくなる。「フォーカスポイントVR」を使用することで、被写体を写真の隅に配置した場合もフォーカスポイントを置いたところを優先してブレを補正する機能となる。この手ブレ補正は業界初となり、画期的な機能といえる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF6.3・1/8秒・ISO100・−0.33EV補正・WBオート
作例写真に見る、Z5IIの使いこなし
一通り進化ポイントを紹介したところで、Z5IIで撮影した写真を見ながら使いこなしを語っていきたい。やはりZシリーズのおもしろいところは撮って出しでさまざまな表現を楽しめる点だろう。
前述したピクチャーコントロールボタンを使用することで、シーンに合わせた絵作りを瞬時におこなることができる。
下記の写真は京都の伊根という場所で撮影した写真になる。空や海のグラデーションに深みを出したいと思ったので、「ビビッド」を選んだ。それにより、深みのある色に仕上げることができている。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・28mmで撮影・絞りF2.8・1/4000秒・ISO100・WBオート(ピクチャーコントロール:ビビッド)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 28-75mm f/2.8・75mmで撮影・絞りF2.8・1/1600秒・ISO100・WBオート(ピクチャーコントロール:ビビッド)
下記の写真は「モーニング」という効果を選び、適用度を30%に設定して撮影している。クリエイティブピクチャーコントロールの使いやすい点は適用度の変更ができる点だ。効果を使用して、被写体の色が変わり過ぎてしまう場合は適応度を下げることで、自然ながらもその効果の絵作りを生かした作品を撮ることができる。「モーニング」を使用すると、爽やかな印象で切り取ることができる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 28-75mm f/2.8・50mmで撮影・絞りF2.8・1/1000秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:モーニング)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 28-75mm f/2.8・50mmで撮影・絞りF2.8・1/1250秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:モーニング)
その後、舞鶴に移動し、給油しているシーンを撮影させてもらった。こちらの写真はクリエイティブピクチャーコントロールの「トイ」という効果で撮影している。私がもっとも好きな効果になる。独特な深みのある色表現を楽しめる効果となり、シネマティックな印象の写真に仕上がることができる。そのため、ストリートスナップを撮影しているときに映画のワンシーンのように切り取りたいときは「トイ」を使用することが多い。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR・24mmで撮影・絞りF4.0・1/1600秒・ISO100・+0.33EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:トイ)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR・24mmで撮影・絞りF4.0・1/1600秒・ISO100・+0.33EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:トイ)
下記の写真は実家のある福島へ帰った際に撮影した写真だ。ノスタルジックを感じる駅舎や農道を撮影するために「ドリーム」という効果を使用している。それによって、淡く懐かしい印象の写真に仕上げることができた。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/800秒・ISO100・−1EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:ドリーム)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/640秒・ISO100・WBオート(ピクチャーコントロール:ドリーム)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF4.0・1/2000秒・ISO100・WBオート(ピクチャーコントロール:ドリーム)
古い建物と車を見つけたので、重厚感のあるモノクロになる「グラファイト」を選択。先ほどの淡い雰囲気とは一変して、建物の質感や雲の力強さを感じさせる作品になった。被写体の雰囲気に合わせて絵作りを変えることで印象深い写真をその場で作り上げることができる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・47mmで撮影・絞りF6.0・1/640秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:グラファイト)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・47mmで撮影・絞りF6.0・1/320秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート(ピクチャーコントロール:グラファイト)
また下記の写真も舞鶴で撮影した写真にあるが、「カーボン」というモノクロの効果を選びながら、微調整で調色を「セピア」に設定している。それによって褐色がかったモノクロになり、ノスタルジックさを感じる作品になる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・24mmで撮影・絞りF2.8・1/1000秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S・20mmで撮影・絞りF2.8・1/1250秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート
自分好みの色味が作れる「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」
このようにピクチャーコントロールの設定をあれこれ変えながら撮影するだけでも十分に楽しむことができるが、Z6III同様に「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」という機能を搭載している。この機能はニコンイメージングクラウドを使用することで、さまざまな写真家のレシピ(絵作り)をダウンロードすることができる。
それをカメラに登録することによって、その絵作りを撮って出しで楽しめるようになる。またそのレシピから自分好みに絵作りを調整することもでき、また一から自分で作ることも可能。下記のように純正ソフトであるNX Studioで作成することができる。
下記の写真は岡山県の牛窓というところで撮影したものになる。天気の悪い日だったが、牛窓の雰囲気とその日の天気に合わせて、フレキシブルカラーピクチャーコントロールを自作した。それをその場でカメラに登録することで、オリジナリティーの作品を撮って出しで撮影することができる。
今回は彩度を低くして、ややコントラストを高くし、シャドー部分にシアンを加えたフレキシブルカラーピクチャーコントロールを作った。それにより、ノスタルジックさを感じさせる建物の雰囲気を引き出すことができている。
このように撮って出しで撮影するメリットとしては、ファインダーを覗けばその絵作りで被写体を見ることができるため、アイディアが浮かびやすくなる。

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/500秒・ISO100・WBオート(フレキシブルカラーピクチャーコントロール)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/1250秒・ISO100・+0.67EV補正・WBオート(フレキシブルカラーピクチャーコントロール)

【撮影データ】ニコン Z5II・NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・50mmで撮影・絞りF6.3・1/1250秒・ISO100・WBオート(フレキシブルカラーピクチャーコントロール)
まとめ
今回、Z5IIを使用しながらさまざまな被写体を撮影してみたが、前述した通り「今あるニコンの技術を凝縮したカメラ」に仕上がっている。またコスパの高いカメラと言えるだろう。苦手とされていた高速性能や低照度時のピント合わせを向上しており、上位機種同等の性能を搭載し、表現力の幅も広い。Z5はフルサイズのエントリーモデルに位置すると紹介したが、Z5IIはスタンダードモデルに位置し、スペック的には上位機種にも負けないカメラに仕上がっている。 そのため、これからフルサイズのミラーレスカメラを使用してみたいという方から、カメラ上級者の方まで満足できる内容になっている。私も引き続きZ5IIを使用しながらストリートスナップを撮影していきたいと思う。
■コムロミホさんの使用機材

ニコン Nikon Z5Ⅱ
◉発売=2025年4月25日発売予定
◉価格=オープンプライス(実売232,650円税込)
詳しくはこちら

ニコン Nikon NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR
◉発売=2020年7月3日発売
◉価格=オープンプライス(実売112,860円税込)
詳しくはこちら

ニコン Nikon NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR
◉発売=2024年4月19日
◉価格=オープンプライス(実売199,980円税込)
詳しくはこちら

ニコンNikon NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
◉発売=2022年1月28日
◉価格=オープンプライス(実売111,600円税込)
詳しくはこちら

ニコンNikon NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
◉発売=2020年8月28日
◉価格=オープンプライス(実売46,130円税込)
詳しくはこちら

ニコンNikon NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
◉発売=2020年10月30日
◉価格=オープンプライス(実売313,830円税込)
詳しくはこちら