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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 太田克則 × 城撮影

写真・文:太田克則/編集:合同会社PCT

太田克則の城郭撮影に挑戦しよう

日本の全国各地に点在する城郭。お城の魅力を撮影するにはどうしたらいいか。この記事では、城郭撮影のポイントから城写真の表現について、おすすめ名城まで、これまで長年にわたって城撮影を続けていた、写真家 太田克則氏による徹底解説をお届けします。

太田克則(おおた・かつのり)
1962年、神奈川生まれ。2008年に城巡りを始め、デジタルカメラで城を撮り始める。これまで巡った城は282城(2025年4月17日現在)。2022年4月 日本100名城制覇。2024年7月、都内で城をテーマにした写真展を開催。日本城郭協会会員

はじめに

四季折々の風景に溶け込む日本の城。戦いの歴史と独自の建築美が融合した城は神社仏閣など他の旧跡とはひと味違った趣を持つ、魅力ある被写体です。そんな城に魅了され、これまで17年にわたり280以上の城を巡りながら写真を撮り続けてきました。今回は私の城の撮り方をご紹介しながら、城撮影の魅力をお伝えできればと思います。

城撮影のポイント

城は小高い丘や山中に築かれているものが多いので、歩きやすい服装でお出かけください。
季節は春の桜、秋の紅葉シーズンがベストですが、観光客が多くなるため撮影時は周囲の人の邪魔にならないよう配慮しながら撮るようにしましょう。特に山城の場合、夏場は虫や蛇などに注意が必要なためお勧めしません。私は山城の撮影は晩秋~初冬に行うようにしています。

大給城(愛知県豊田市)
松平宗家(徳川家康の本家)の親戚にあたる大給松平家の居城。自然石を積み上げた古風な石積みが戦国後期の山城の雰囲気を醸し出している。

【撮影データ】ソニーα6000・ソニー Vario-Tessar E F4 16-70mm ZA OSS(24mmで撮影)・絞りF8・1/125秒・ISO100

赤木城(三重県熊野市)。
豊臣秀吉が築城の名手・藤堂高虎に命じて築かせた山城。古代遺跡を思わせる素朴な石垣の味わいが悠久の時の流れを感じさせる。続日本100名城

【撮影データ】ソニーα6000・ソニー Vario-Tessar E F4 16-70mm ZA OSS(24mmで撮影)・絞りF8・1/320秒・ISO100

撮影は早朝(天守などの建物が入場可能になる9時以前)がお勧めです。観光客が少いため撮りやすい上に、朝靄や斜めに差し込む光が城をドラマチックに演出してくれます。私は城から徒歩圏にあるホテルに前泊し、翌朝ホテルをチェックアウトする前に撮影することが多いです。

岡崎城(愛知県岡崎市)。
徳川家康生誕の城。日本100名城。登城の際は城と併せて『グレート家康公「葵」武将隊』による演武も撮り収めておきたい。

【撮影データ】ソニーα6000・ソニー Vario-Tessar E F4 16-70mm ZA OSS(58mmで撮影)・絞りF4・1/125秒・ISO100

小倉城(福岡県北九州市)。
続日本100名城。細川ガラシャ夫人の夫・細川忠興の居城として知られる。復興された天守は最上階が下層より大きい唐造り(南蛮造り)が特徴。

【撮影データ】リコーGRIIIx・絞りF5.6・1/320秒・ISO100

雨の城を撮る

青空に浮かび上がる白亜の天守の美しさは格別ですが、雨の城も日本ならではの情緒を感じさせてくれます。煙雨に佇む石垣が時代に取り残された城の寂寥感を醸し出してくれています。下の作例ではRAW現像で「かすみの除去」を使って煙雨の濃さを調整しています。

佐敷城(熊本県葦北郡)。
加藤清正により築かれた山城。石垣は廃城時に上部が崩されてしまっているが、その風情が打ち捨てられた城のもの悲しさを感じさせる。

【撮影データ】ライカM10-P・コシナ フォクトレンダー NOKTON 50mm F1.2・絞り F5.6・1/180秒・ISO800・Adobe Lightroomでモノクロ変換

角牟礼城(大分県玖珠郡)。
13世紀末に築かれたとされる長い歴史を持つ山城。続日本100名城。籠城戦で島津軍を撃退し、難攻不落の名を残す。

【撮影データ】ライカM10-P・コシナ フォクトレンダー NOKTON 50mm F1.2・絞り F2.8・1/125秒・ISO800

雪の城を撮る

雪の城撮影は明け方から除雪機が動き始める午前8時頃までが撮影に最適な時間帯です。城の近くに前泊して夜明け前に城に入るようにしましょう。前日夜から雪が降り続いていて、前日の除雪の跡を綺麗に埋めてくれるタイミングを狙うことも重要です。天気予報をこまめにチェックしましょう。しっかりした防寒と予備バッテリーの準備も忘れずに。

会津若松城(福島県会津若松市)。
東北の雄藩・会津藩の居城。日本100名城。復元天守は史実に忠実な外観で作られており、その雄姿は数ある城の中でも屈指。

【撮影データ】ソニーα7II・ソニー FE 20-70mm F4 G(29mmで撮影)・絞りF22・1.3秒・ISO80

シャッタースピードが遅過ぎると降っている雪が雨のように流れて写ってしまいます。1/125秒以上のシャッタースピードで撮ると雪の粒を写し止めることができます。

新発田城(新潟県新発田市)。
日本100名城。新潟県内唯一の現存建築(本丸表門、二の丸隅櫓)を持つ。広い濠に浮かぶ二の丸石垣と櫓は撮り応えあり。

【撮影データ】ライカM10-P・コシナ フォクトレンダー NOKTON 50mm F1.2・絞り F5.6・1/125秒・ISO800

城写真の表現について

撮影した写真はそのままでも楽しめますが、写真にひと手間加えて自分だけのオリジナルの作品に仕上げるのも写真の醍醐味ですね。私は城が「かつて戦いが行われ、幾多の生と死が交錯した“魂の舞台”である」をコンセプトに、カラー写真から緑色(=樹木)だけを残し、城や空の色をモノクロにすることで、すでに過去(=死)となった城に宿る魂を木々の緑(=生)で表現する作品作りをしています。皆さんも城写真を素材に独自の作品作りにチャレンジしてみてください。

角牟礼城(大分県玖珠郡)。
カラー写真から緑色(=樹木)だけを残し、城や空の色をモノクロにして「城に宿る魂」を表現。

【撮影データ】ライカM10-P・コシナ フォクトレンダー NOKTON 50mm F1.2・絞り F2.8・1/125秒・ISO800・Photoshopにて画像調整

機材について

城撮影は山の上り下りが多いので(山城では城の入り口に「登山道入口」の看板が立っていたりします)機動性重視でコンパクトデジカメやSONY機を中心に撮ってきましたが、1億画素の細密な描写力に惹かれて昨夏からメイン機をFUJIFILM GFX100Sに変更しました。

ボディサイズはSONY機に比べて大きくなりましたが、ギリギリ山中に持ち込めるサイズに1億画素のラージフォーマットセンサー、防塵防滴ボディ、3軸チルト液晶が実装されているのは魅力的です。

レンズはGF35-70mmF4.5-5.6 WRを使っています。私は広角~標準画角の利用が多いので、使いやすい28-55mm(35mm換算)の画角と軽量コンパクト(390g)なサイズ感が気に入っています。

郡上八幡城(岐阜県郡上市)。
続日本100名城。4層の天守は史実に基づかない模擬天守ながら木造であり、日本最古の木造再建城となっている。

【撮影データ】富士フイルム GFX100S・GF35-70mmF4.5-5.6 WR・44mm (35mm換算 35mm)で撮影・絞り F16・1/8秒・ISO100

甲府城(山梨県甲府市)。日本100名城。幕末の戊辰戦争で新政府軍に占領された歴史を持つ。関東近郊では数少ない本格的な石垣を持つ城であり石垣ファンには貴重な存在。

【撮影データ】富士フイルム GFX100S・GF35-70mmF4.5-5.6 WR・70mm(35mm換算 55mm)で撮影・絞り F8・1/320秒・ISO100

久保田城(秋田県秋田市)。
日本100名城。石垣はほとんど無く土塁と濠で築かれている。写真の本丸表門は木造で再建されている。

【撮影データ】富士フイルム GFX100S・GF35-70mmF4.5-5.6 WR・70mm(35mm換算 55mm)で撮影・絞り F11・1/125秒・ISO100

松前城(北海道松前町)。
日本100名城。北海道で唯一の日本式城郭。幕末の1855年に海防強化のため築城された。写真左側の本丸御門は国の重要文化財。

【撮影データ】富士フイルム GFX100S・GF35-70mmF4.5-5.6 WR・53mm(35mm換算 42mm)で撮影・絞り F8・1/320秒・ISO100

まとめ

簡単な城撮影のご紹介でしたが、本稿を通じて少しでも城の撮影に興味を持って頂けましたら幸いです。最後に、私の城撮影におすすめの城をご紹介して本稿を締めくくらせて頂きます。最後までお付き合い頂きありがとうございました。

おすすめの城

【姫路城(兵庫県姫路市)】
日本を代表する城。世界遺産。国宝。日本100名城。現存12天守。城の規模、櫓や門などの残存数、白亜の天守群の美しさなど他の城を圧倒する。観光客が多く撮りにくいのが難点。
姫路城公式サイト:トップページ

【備中松山城(岡山県高梁市)】
日本100名城。現存12天守。山中に突如現れる厩曲輪石垣は圧巻。狭隘な登城路に石垣や建物が次々に現れる。撮り応えあり。
備中松山城 - 高梁市公式ホームページ

【松山城(愛媛県松山市)】
日本100名城。現存12天守。広大な本丸に現存・復興合わせて72の建築物が連なっている様は壮観で撮影にも熱が入る。
四国・愛媛の松山城

【萩城(山口県萩市)】
日本100名城。関ヶ原の戦いに敗れた西軍の総大将・毛利輝元により1604年に築城された。指月山を借景にした石垣は美しくも物悲しい。高杉晋作など多くの長州藩士を育んだ城下町を含めて撮り処が多い。
観光スポット|萩市観光協会公式サイト|山口県萩市

【苗木城(岐阜県中津川市)】
続日本100名城。中津川沿いの急峻な山上に浮かぶ石垣はさながら「天空の城ラピュタ」を思わせる。天然の巨岩と石垣を組み合わせた本丸は迫力がありフォトジェニック。
国指定史跡 苗木城跡 | 中津川観光協会公式Webサイト