カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 桃井一至 × OM SYSTEM OM-3実写レビュー
写真・文:桃井一至/編集:合同会社PCT
高品位なクラシックデザインと上位機譲りの高性能を備えたOM SYSTEM OM-3。その実力を写真家の桃井一至さんに解説いただきました。日常使いから作品づくりまでこなすOM-3の魅力を紹介します。

- 桃井一至(ももい・かずし)
- 1968年、京都生まれ。 写真家アシスタントを経て、フリーランス。現在は撮影をはじめ、写真関係媒体の執筆やWebレポートなどを多数。イベント等への出演も多く、NHK「趣味悠々・デジタル一眼レフ撮影術入門」などでは講師を務めた。主な撮影ジャンルは人物・海外風景など。公益社団法人日本写真家協会会員(JPS)。
- Youtube:「gizmomofreaks」
はじめに
オリンパスから独立して、自社で漸進するOMデジタルソリューションズ社(OMDS)。
独立以降、人気のPENシリーズ、E-P7(2021)を皮切りに、大幅な進化を果たしたフラグシップのOM-1(2022)。先々代のフラグシップ機をベースにコンパクト化したOM-5(2022)。そして足早にマイナーチェンジを施した最新フラグシップOM-1MarkII(2024)をリリース。さらに天体専用のE-M1MarkIII ASTRO(2024)と、付加価値の高い中高級モデルを中心に着実に基盤を固めている。
いずれも基本性能が高く、きわめて盤石なラインナップだが、カメラファンにしてみれば1ピース足りない気持ちでもやもやしていた人もいたのでは。
その穴を埋めてくれるのが、今春発売となったOM-3だ。

温故知新の操作性
OM-3の外装はオリンパスのフィルムカメラOM-1(1972)をモチーフとした、クラシックふうなデザイン。エンジンはフラッグシップOM-1MarkIIのパワーを受け継ぎ、そしてオリンパス時代にPENシリーズの上位モデルとして人気を博したPEN-F(2016)より、絵作りや色などを好みで仕立てられるクリエイティブダイヤルを継承。
見た目はレトロでも中身は最新、そして創造性を備えたモデルとしてデビューした。
ボディはマグネシウム合金で堅牢性を持たせ、定評ある防塵防滴性能はIP53をクリア。
有機的なデザインでボリューム感あるOM-1MarkIIと違い、シンプルなクラシックさを感じる佇まいで一見したところまったく異なる個性派だ。モードダイヤルのローレット加工の形状も違い、あえて面影を探るなら、正面のブランドロゴとそこからトップにつながる稜線、そして背面モニターとヒンジ廻りくらいだろうか。AF用のマルチセレクターもOM-3では割愛。一方で同社が近年推し進めるコンピュテーショナルフォト機能にアクセスしやすいCPボタンを新設。さらに再生ボタンとゴミ箱ボタンが白で統一されるなど、違った魅力で目移りすること必死。
実際手にすると往年のフィルムカメラを彷彿とさせる感触で不思議といつもよりも丁寧に撮ろうとする自分がいる。指先から感じるダイヤルの触感も心地いい。

上位機譲りの性能とクリエイティブダイヤルの搭載
ファインダーのドット数は約236万ドットとOM-5と同等(厳密には違う部材とのこと)。
見かけと裏腹に中身はフラグシップ機と肩を並べる性能のため、AFをはじめすべてがスムーズ。連続撮影コマ数はバッファメモリの都合、OM-1と同等程度になるが、本機にそこまで求めることはまれで、日常的に子どもやペット程度であれば、AI被写体認識AFにまかせれば、撮りこぼすこともない。
もちろん人気の鳥認識AFも搭載。超望遠レンズも手厚く用意されているが、高頻度で出かけたり、長時間持ち歩くのであれば、前面に大型グリップのあるOM-1MarkIIがベター。守備範囲の広い製品だが、自身の使い方で選びたい。
目玉となるクリエイティブダイヤルは、好みの色別に緻密な調整などのできるカラープロファイルコントロール、コントラストや粒状性、フィルター効果などをアレンジできるモノクロプロファイルコントロール、特定の色から画面全体の色傾向を設定可能なカラークリエイター、そして遊び心満載のアートフィルターの4種類が設けられている。
ここに来て「ルック」などと総称される色などを作り込む機能をメーカー各社注力しているが、10年近く前からクリエイティブダイヤルで好みの色づくりに着目。アートフィルターに至っては2008年のオリンパスE-30で初搭載だから恐れ入る。



画面内のこのサイズでも、AI被写体認識AFは白鳥の頭部を捉える。写真のイメージ以上に暗く、感度はISO20000。超高感度に弱いと言われがちなマイクロフォーサーズだが、必要にして十分な画質をキープする。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8II・絞りF1.8・1/25秒・ISO20000・1.30EV・仕上がり:Natural・WBオート

色相と彩度を好みで変化させ、画面全体の色を調整するのがカラークリエイター機能。ここではわかりやすいように緑と赤を強めに変化させて、あたかも季節が変わったかのような写真に仕上げた。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8・絞りF4.5・ 1/250秒・ISO200・仕上がり:カラークリエーター・WBオート

アートフィルターの「ネオノスタルジー」を選択。明るめの場所はマゼンタ、暗部はグリーンが強めの独特な風合いが楽しめる。懐かしさを感じるには、ジェントルセピアなどもあるのでイメージ合うものを楽しもう。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8・ISO200・-0.70EV・WBオート・アートフィルター:ネオノスタルジー
CPボタンとは?
新設されたCPボタンは、コンピュテーショナルフォトグラフィの略。これは同社のデジタル技術を用いて、本来パソコン用画像加工ソフトでテクニックを駆使して作り込まねばならなかった写真やレンズ前に取り付ける光学フィルターの効果を再現するというもの。
たとえばライブGNDは、画面内を任意場所で二分割。ND2.4.8の3つから、好みの段数の光量低減を境目のぼかし加減と合わせて、効果を得られるというものだ。本来はガラス製フィルターを専用アタッチメントとセットで用いるのだが、重くてかさばり、レンズによりアタッチメントが替わるなど煩わしいのが本音。それが払拭される優れモノだ。
ほかにも本来の画素数、約2000万画素から手ぶれ補正機能の応用などで約5000万画素と約8000万画素にアップできる、ハイレゾショット機能。打ち上げ花火や星空などがモニターで確認しながら簡単に撮れるライブコンポジット機能など、あって良かったと思える機能が満載だ。


CPボタンを押して、画面下部でグラーデションの濃度を3段階から選択。上部でグラデーションの境目の強弱を3段階から選ぶ。これに続いて、背面の十字ボタンとフロント/リアダイヤルで、任意の分割箇所を選ぶのが手順だ。

左側の影になっている橋脚との境に、GND8(3EV)とハードで設定。
明暗差の激しいシーンだが、暗部が見えて両立しているのがわかる。ほかにも風景で雲だけ露出を落として陰影を見せるなど、いろいろと応用の効く機能。カメラ単体で使えるのは大きなメリットだ。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO・絞りF5.61/250秒・-0.3EV・ISO200・仕上がり:Natural・WBオート
作例

キットレンズの12-45ミリは軽量コンパクトだが、れっきとしたPROシリーズ。樹皮や壁面の質感まで、精細に描写されて、OM-3の魅力を存分に引き出してくれる。日常的に付けたままで、お散歩にもぴったりだ。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO・絞りF5.6・1/640秒・-1.00EV・仕上がり:Natural・WBオート

他社ユーザーのベテランほど信じてもらえないのだが、夜景は手持ち、さらに望遠でもけっこう撮れてしまうのがOM製品の魅力。このレンズ組み合わせでは、中央7.5段、周辺6.5段のシンクロ手ぶれ補正が有効だ。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・54mmで撮影(35mm判換算108mm)絞りF5.6・1/1.3秒・-0.7EV・ISO400・ホワイトバランス:5300K

OM-3は時間を楽しみつつ使うカメラ。カラーだけでなく、モノクロ写真もチューニングしながら楽しめる。モノクロプロファイルではデフォルトで4種類から選択可能。滑らかな味付けからザラザラとした粒状感まで自在。
OM SYSTEM OM-3・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II・25mmで撮影(35mm判換算50mm)絞りF3.2・1/250秒・+0.3EV・ISO200・仕上がり:モノクロプロファイル・COLOR:無し・Level:Off・効果:シェード効果(0)+調色(N:無し)+粒状フィルム効果(Off)・ホワイトバランス:5300K
まとめ
OMDS社のミラーレス一眼は、マイクロフォーサーズ規格で展開されている。
この規格は市場に並ぶミラーレス一眼の中では小型センサーにあたるため、マニアほど、画素数が少ない、ボケにくい、酷い人になると画質が悪いと蔑視しがちだ。
もちろん大型センサーが有利なこともあるが、小型だからこそ、専用レンズでなくても接写が得意であったり、同一画角と開放F値であればレンズ本体の小型化が見込めるほか、質量の軽い小型センサーだからこそ得られる強力な手ぶれ補正など、大型センサーではマネのできない芸当も多く、一概に優劣はつけられない。
肝心な画質も日常的に見るモニターやプリントサイズであれば、舐めるように眺めても、その差はほとんど気づけない。それならば浮いた予算でレンズを買い足したり、撮影旅行でも行くほうが、ハッピーになれるはず。
日常的に持ち歩きやすい高品位なクラシックデザインで眺めても、触れても楽しく、そしていざと言うときには、フラグシップ譲りの腕が効くのがOM-3だ。
今回のカメラ・レンズ

OM SYSTEM OM-3
◉発売日=2024年2月23日 ◉価格=オープンプライス(実売:237,600円・税込)
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M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
◉発売日=2020年3月27日 ◉価格=93,500円(実売:67,320円・税込)
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M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II
◉発売日=2025年3月1日 ◉価格=60,500円(実売:43,560円・税込)
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M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
◉発売日=2016年11月18日 ◉価格=233,750円(税込)
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