カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 高桑 正義×パナソニックLUMIX S1RII
写真・文:高桑 正義/編集:合同会社PCT
LUMIX S1RⅡが描く美の世界—静と動、強さと美しさを究める

- 高桑 正義 SEIGI TAKAKUWA
- 1980年 東京 生まれ。大学卒業後、印刷会社入社。東京写真学園卒業。 アシスタントを経てフォトグラファーとして独立。Beauty Fashion Portrait 広告 雑誌を中心に活動している。フォトライティングワークショップ 高桑塾でプロからアマチュアまでと幅広い層に撮影とライティングを指導している。
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目次

はじめに:生命力と生命美を追求するカメラ
撮影の瞬間、指先から伝わるシャッターの感触。ファインダーを覗いた時の鮮明な像。そして完成した写真に宿る生命力。LUMIX S1RⅡは、そのすべてを高次元で実現するカメラだ。「生命力・生命美」の哲学を体現したプロの要求にも応えるカメラだ。約4,430万画素の新開発イメージセンサーと、ライカとパナソニックが共同開発したL2テクノロジー搭載エンジンにより、緻密で自然な質感描写が実現されている。
はじめに:生命力と生命美を追求するカメラ

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 70-200/F2.8 (144mm) ・絞りF5.6・1/125秒・ISO 80
LUMIX S1RⅡの特筆すべき特徴の一つが、卓越した肌表現能力。新たにチューニングされたカラーサイエンスは、モデルの肌色を忠実かつ美しく再現している。多様な光源環境下でも、ニュートラルかつリアルな色合いを維持し、生き生きとした肌の質感を表現できた。
広大なダイナミックレンジと高解像度センサーの組み合わせにより、ハイライトからシャドウまでの滑らかな階調再現が可能となり、立体感やリアリティのある肌表現が実現している。作例撮影時には、モデルやヘアメイクからも高い評価を得た。従来はレタッチ処理を多用していた微妙な肌のトーン調整も、撮影したままで完成形に近いクオリティを得られるようになり、作業時間の大幅短縮に繋がる。
革新的な手ブレ補正システム

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S PRO 50mm F1.4 (50mm) ・絞りF1.4・1/60秒・ISO 3200
S1RⅡが誇る革新的な機能の一つが、ボディ内手ブレ補正(IBIS)だ。中央で8.0段、周辺で7.0段という驚異的な補正効果を実現している。この手ブレ補正は、歩行時や呼吸時の「低周波ブレ」だけでなく、シャッターを押す瞬間の微細な振動などの「高周波ブレ」にも効果を発揮してくれる。
特にナイトシーンや低照度環境での撮影において、この手ブレ補正は抜群の威力を発揮する。従来であればブレを抑えるためにISO感度を上げざるを得なかったが、低感度を保ったまま手持ちでシャープな画質を実現できるようになった。今回は高感度性能も試すために、ISO3200まで上げているが高感度性能も良好でさまざまなシチュエーションでバリエーションのあるイメージに対応することができる。また、この高性能な手ブレ補正により、ナイトポートレートの撮影中にそのまま高品質なまるで三脚において撮ったかのような動画も一緒に撮影することができるのも魅力だ。
手持ちハイレゾ撮影の実現

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 85mm /F1.8 (85mm) ・絞りF8・1/40秒・ISO 400
LUMIX S1RⅡには、手持ちで高解像度な写真を実現する「手持ちハイレゾ撮影」が新たに搭載された。従来のハイレゾ撮影は三脚固定が必須だったが、S1RⅡでは高性能な手ブレ補正システムを活用し、手持ちでも精度の高いハイレゾ撮影が可能になった。(G9 Pro IIにも搭載されている)
実際の撮影現場では、手持ちのまま連続撮影を行い、その場で約1億7700万画素の高解像度画像を生成できた。撮影後の合成処理も体感3〜5秒程度と高速で、手持ち撮影とはハイレゾ合成しているとは思えないほど鮮明で緻密な描写が得られた。また、被写体ブレに対応したモードも備えているのが魅力だ。この機能のもう一つのメリットは、高解像度で撮影された画像は後工程で大胆にトリミングしても十分な画質が確保できるため、一枚の写真から複数の異なる構図を生み出せる点もある。
像面位相差AFによる精密なピント制御

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 70-200/F2.8 (136mm) ・絞りF5・1/15秒・ISO 80
LUMIX S1RⅡに搭載された新しいAI技術を搭載した像面位相差AFシステムは、従来のコントラストAFに比べ格段に進化した精度と高速性を実現している。特に動きのある被写体への人物瞳、人物顔の認識精度の向上とリアルタイム認識による追尾AFモードの性能も向上し、これまで難しかった撮影シーンでも高精度なピント合わせが容易にできるようになっている。
ポートレートやファッション撮影において、モデルの微妙な動きや表情の変化に瞬時にピントを合わせる能力は不可欠だ。S1RⅡの像面位相差AF、使用すると、モデルの目や顔に対して常に確実にピントを合わせ続けることができ、撮影の成功率が飛躍的に高まり、クオリティに重視した撮影に集中することができる。

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S PRO 50mm/F1.4 (50mm) ・絞りF1.4・1/800秒・ISO 800
逆光シーンでの動体撮影など、従来のAFシステムでは困難だったシチュエーションでも、被写体認識性能の向上により、高精度な追従が可能になった。高画素機であるほどピントの精度が写真の品質を左右するが、この新しいAFシステムのおかげで撮影時の信頼性が大幅に向上した。
Capture One対応による効率的なワークフロー

プロフェッショナルにとって嬉しいアップデートの一つが、Capture Oneを用いたテザー撮影への正式対応だ。これまでLUMIXシリーズは公式にCapture Oneテザー撮影をサポートしていなかったが、S1RⅡの対応により、プロの撮影現場での効率性や利便性が格段に向上した。
撮影と同時にリアルタイムでパソコン上に写真が転送され、細部まで拡大して肌の質感や色再現性をその場で確認でき、その場で現像作業をした仕上げの状態で撮るため、クライアントとのコミュニケーションが円滑かつ齟齬をしないで済む。また、撮影後もCapture Oneの優れた色調整機能を活用して現場でカラープロファイルや細かなトーンの調整を行うことで、撮影後のレタッチ作業を効率化できる。さらに、撮影したRAWデータを即座にパソコンや外付けSSD、メモリーカードにダブルバックアップ保存ができるため、大量のデータを安全かつ迅速に管理運用することが容易になった。
プロフェッショナルの現場を支える機能性
S1RⅡは、デュアルカードスロットを搭載し、同時記録やバックアップ記録が可能。さらにUSB Type-C端子を利用した外付けSSDへのダイレクト記録にも対応しており、特に8K動画や高解像度RAW撮影のような大容量データを扱う現場で便利だ。 カメラのインターフェースもプロの現場を想定し、カスタマイズ可能なボタン配置や直感的なメニュー設計により、撮影中の設定変更もスムーズに行える。現場で求められる迅速かつ柔軟な対応がストレスなく可能になり、撮影者のパフォーマンス向上につながっている。
表現力を引き出す撮影事例
・白の多彩な階調表現

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 70-200/F2.8 (137mm) ・絞りF5・1/200秒・ISO 80
白という一見単調に見える色は、実際には豊かな表情と多彩な階調を秘めている。S1RⅡの高解像度センサーと広いダイナミックレンジは、その繊細な表現力を余すところなく引き出した。
純白の衣装と背景を用いた撮影では、通常なら白飛びで潰れてしまう微細な刺繍やパールのディテールまでも鮮明に記録することができた。ソフトライトと素材だしの点光源のライトでの撮影では、肌の微妙な色合いや質感もさら硬調になりすぎず、美しく描写され、白の中にも立体感や奥行きを感じる作品に仕上がった。
モノクロームでの光と影の表現

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 70-200/F2.8 (164mm) ・絞りF3.5・1/125秒・ISO 80
モノクローム表現の魅力は、色彩情報を削ぎ落とすことで、光と影、質感や階調という写真の本質的要素を際立たせる点にある。S1RⅡのモノクロームモードは、単なるカラー写真の脱色ではなく、階調表現や質感再現に特化したチューニングが施されている。
背景が黒く落とした条件下での撮影では、エッジライトと背景のコントラストで通常ならハイライト部分が視覚効果で白飛びしたように見えやすく、シャドウ部分が黒つぶれしやすい状況だが、S1RⅡは広大なダイナミックレンジと優れた画像処理能力により、光の明暗を絶妙なバランスで表現できている。透け感のあるシルク素材と光沢のあるレザー素材を使用した衣装の質感の違いも、モノクロームモードによって克明に描写できた。
赤と黒による情熱と力強さの表現

LUMIX S1RⅡ・LUMIX S 70-200/F2.8(109mm) ・絞りF5・1/15秒・ISO 80
「情熱」と「力強さ」を赤と黒の大胆な配色で表現した撮影では、S1RⅡの高速かつ精密なAF追従性能が活かされた。赤い布をダイナミックに動かす演出でも、動くモデルの目や表情にピントを合わせ続けることができた。LUMIXカラーである赤と黒のコントラストがすごく美しく、特に赤は飽和することなく自然かつ大胆に表現ができた。
このイメージはスローシンクロ撮影をしているが、手ブレ補正性能が高すぎてブレなかったため、ブラすために手ブレ補正機能をOFFにしなければいけないほど、S1RⅡの手ブレ補正機能は優秀だ。背景の布の動きを流れるような美しい軌跡として描写しつつ、モデル本体はシャープに保ったまま撮影することが可能。「静」と「動」の両面を一枚の写真に同時に表現するという高度な撮影が容易に実現できた。
技術の先にある表現力
LUMIX S1RⅡを実際に使用して感じたのは、このカメラがもたらす新たな表現の可能性だ。「静と動」「強さと美しさ」といった相反する要素を同時に高次元で表現できる点が最大の魅力だ。
手ブレ補正や手持ちハイレゾ撮影、像面位相差AF、Capture Oneとの連携など、先進的な技術が盛り込まれているが、それらは単なる高性能追求ではなく、プロフェッショナルの創造性を引き出し、撮影者を機材の制約から解放することを目的としているのだろう。
最も理想的なのは、カメラの存在を忘れて被写体と表現に集中できる状態だ。LUMIX S1RⅡは、その境地に最も近づくことができるカメラの一つといえるだろう。技術の進化によって日々拡張される写真表現の可能性に、このカメラは確かな扉を開いてくれた。
Hair&Make up:原田忠 (SHISEIDO)
Dress Designer:照井智己
model :川辺優紀子