カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! ミラーレスカメラ BEST BUY 2024 × 豊田慶記
写真・文:豊田慶記/編集:合同会社PCT
気がつけば年の瀬も間近。2024年も各社からさまざまな機種が発売されました。2024年1〜10月末に発売されたミラーレスカメラを発売順に振り返りつつ、各機の見どころを解説。年末年始のお買い物の参考になれば幸いです。

- 豊田 慶記 (とよた よしき)
- 広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。 カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
目次
はじめに
「ミラーレスカメラ BEST BUY 2024」というタイトルではありますが、本稿執筆時点(10月末)までに発売されたカメラの見どころを紹介していこう、というのが今回の企画趣旨となります。紹介順は発売日と早いものから、となっています。
1:ハッセルブラッド 907X & CFV100C

◉発売=2024年1月24日
◉希望小売価格=税込1,254,000円(実売=税込1,128,600円)
詳しくはこちら
2024年のトップバッターはハッセルブラッド907X & CFV100Cでした。
本機は1億画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載したデジタルバック「CFV100C」とカメラ部「907X」で構成されています。
CFV100Cのセンサーには像面位相差AF(以下PDAF:Phase Detection Auto Focus)に対応しており、ハッセルブラッドXシステム(X2D 100Cなど)用のXCDレンズと組み合わせることで快適なAFを、と言いたいところですが、一般的なミラーレス機用のレンズと比べてより大きなレンズを駆動させなければならず、高速かつ高レスポンスな動作が不得手である、という構造上仕方のない部分があります。ですので、実際には「実用十分」と受け止めるのが肝要です。
他にも中判デジタルカメラの特徴を挙げると、例えば1億画素のセンサーと大きなレンズが持つ描写性能の高さゆえに、被写界深度という概念があまり役に立たず、期待よりもピントが深くなりにくい、という”大きなフォーマットサイズ×高画素機”特有の難しさもあります。
こうした性能や描写に関するジレンマをGFXシリーズでも抱えていますが、キマった時の鳥肌が立つような美しい描写をぜひ体験して欲しい、と思っています。
という長い前置きにはなりましたが、最終的には「ハッセル」という体験に共感出来るかどうか?が、本機を選ぶ決め手となります。
良いところ
・描写が良い
・質感が良い
・ワクワクする使用感
気になるところ
:操作のレスポンスがややオットリ
:フルサイズミラーレス機ほどAFは速くない
:手ブレ補正が欲しい(X2D 100Cにはある)
2:パナソニックLUMIX G100D

◉発売=2024年1月26日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売:標準ズームレンズキット=税込89,100円)
詳しくはこちら
ハッセルブラッド907X & CFV100Cと同じく1月に登場したパナソニックLUMIX G100Dは2020年8月に登場したLUMIX G100のマイナーチェンジ版となるマイクロフォーサーズ規格のカメラです。
従来機からの変更点はUSB端子がMicro-BからType-C端子になったことと、EVFが約368万ドット液晶から約236万ドットの有機ELになったことです。前者については一般的なスマートフォンと同じケーブルで充電できるようになりますので、コネクタの統一という意味でメリットがあります。EVFについては、スペックだけで判断するとスペックダウンとなりますが、明るさとコントラストが良くなり実際の見え具合は新型が優れています。
本機は最新世代のミラーレス機としては、最も廉価で手に入るカメラとなり、メーカーもVlogカムのエントリーモデルとしての魅力をアピールしていますが、実際にスナップ用途で使ってみるとコレが何とも玄人好みというか、コンパクトなボディに必要十分以上の撮影性能を持つ、刮目すべき魅力を持ったカメラであることがわかります。
個人的にオススメしたいのがLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.との組み合わせ。ボディと組み合わせても500g未満と、フルサイズ用の標準ズームレンズ1本程度に収まりますし、他にない画角を持つコンパクトな1台としても魅力的です。
エントリークラスとしてオススメしているのではなく、むしろ経験者の懐刀としてであったり、撮影がメインではない旅行の相棒として良い働きをしてくれるでしょう。
良いところ
・とてもコンパクト
・スナップが楽しい
・絵作りが良い
・お手頃価格
気になるところ
:動画性能だけで言えば最新のiPhoneの方が高い
:動体を撮るのは少しむずかしい
3:ソニーα9III

◉発売=2024年1月26日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込841,500円)
詳しくはこちら
2024年1月に登場した最後のカメラはソニーのα9 III。コンシューマー向けのスチルカメラとしては世界初となるグローバルシャッター(以下GS)搭載機となります。
GSのメリットとして、ストロボの全速同調と被写体が読み出し速度の影響によりローリングシャッターのように歪まないことが挙げられます。本機で動きの大きな対象を撮影した際に、メカシャッターでも被写体は僅かに歪んでいたのか、と気付かされる体験は本機でしか味わえないものです。
デメリットは通常のセンサーよりも画質で不利となります。
とは言え、本機は画質を主軸としたカメラではなく、GSと高速性によってα9 IIIでしか捉えることのできない世界の扉を開くことを目的とした機種であります。
AF性能については筆者が知る限りでは現時点で「最強」です。被写体検出の速度・精度・追従性が他を圧倒しています。肩を並べる可能性があるのはEOS R1ですが、まだ製品版が発売されていませんので真の実力については言及できません。
性能やスペックばかりに注目してしまいがちですが、エルゴノミクスの観点でもソニー機で最も進歩しているのが本機です。ボディサイズをやや大型化したことでグリップ周りの窮屈な印象が無くなり、長時間の撮影でも疲労感が軽減されています。
誰にでもオススメできるといった機種ではありませんが、動体撮影をメインとする必要な人にとっての最適な1台となり、α9 IIIでしか撮れない世界に魅力を感じる人にとっては必要な1台です。
良いところ
・圧倒的なAF性能
・使い心地が良い
・超高速シャッターでも歪まない
・ストロボの全速同調
気になるところ
:一般ユースではローリングシャッター機の方がバランスが良い
4:OM SYSTEM OM-1 Mark II

◉発売=2024年2月23日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込272,718円)
詳しくはこちら
2022年に登場した「OM SYSTEM OM-1」の後継モデルが2024年2月末に発売されました。基本的なスペックは同等ながら、バッファ増設に伴う機能向上と、AFやAWBなどの制御改善、各部操作部材のブラッシュアップが施されています。
個人的に、本機ほど実際に使ってみないと良さが伝わらない機種は他にないぞ、という気持ちがあります。
例えば、マイクロフォーサーズ機としては大柄なボディですが、実際に使用してみると、カメラとしての適切なサイズ感であることがわかりますので、大きいというよりも「しっくり来る」という感覚が支配的です。またレンズが基本的にコンパクトで軽く、システムとして持ち歩く際の負担はかなり少なくなります。これはお財布への負担という意味でも同様です。
メーカーはコンピューテショナルフォトや鳥類に対するAF、過剰なまでのタフネス性をアピールしますが、スナップシーンであったり12-100mmなどと組み合わせて身軽な写真旅行に赴く際に、あらゆる被写体に対して素晴らしい万能性を発揮してくれ「さすがはフラッグシップモデル」という信頼感も心地の良いものです。
また積層センサー搭載機でありますので、マイクロフォーサーズ機としては最もAF性能に優れているということも挙げられます。被写体認識の性能については得手不得手があり、苦手シーンでは褒められないぞ、という現実もありますが、積層センサーならではの高速性によって力技で解決できる点は強みでしょう。
色々なフォーマット機を経たユーザーにこそ、オススメしたい1台です。
良いところ
・使い勝手の良さ
・ライブ撮影機能が楽しい
・強力な手ブレ補正
気になるところ
:積層センサーの世代が少し古い
:同価格帯の他社の最新機種と比べてAF精度が甘い
:実際に使わないと良さが伝わりにくいところ
5:ライカSL3

◉発売=2024年3月16日
◉希望小売価格=税込1,100,000円(実売=税込1,045,000円)
詳しくはこちら
2024年3月にはライカSL3が発売されました。PDAFに対応した60MPの裏面照射型CMOSセンサーを採用し、最新の画像処理エンジンであるマエストロIVが組み合わされます。これによって8Kの動画撮影にも対応しています。
従来機のSL2は高解像の47MPセンサーを、兄弟機のSL2-Sは高感度性能とムービーとの親和性を高めた24MPセンサーをそれぞれ採用していましたので、使い方によって適したカメラを選ぶ楽しさがありました。本機ではトリプルレゾリューションテクノロジーを採用しており、撮影時の記録画素数を60/36/18MPから選択することができます。この機能はJPEG記録だけではなくRAW記録でも選択できますので、普段使いは36MPで、細部までコダワリたい時には60MPで行こう、という使い方を本機1台で対応できるようになりました。
PDAF搭載とは言え、国産の最新フルサイズミラーレス機のような性能を実現しているわけではありませんので、過度な期待は禁物です。
使用感は素晴らしく、特にファインダーの覗き心地の良さと見え具合は格別。絞り込みやピント位置によって収差が変化する様子が詳らかに確認することができますので、特にMFレンズと組み合わせて「レンズを愛でる」ための決定打となるカメラでしょう。
気になるのはバッテリの消費がそれなりに大きなことと、予備のバッテリもお手頃とは言えないことでしょう。
良いところ
・使い心地の良さ
・撮影が楽しいこと
・実用的な手ブレ補正
気になるところ
:バグはやや多い
:AF性能はそれなり
:純正品のお値段と入手性
6:パナソニックLUMIX S9

◉発売=2024年6月20日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込207,900円)
詳しくはこちら
6月に登場したパナソニックLUMIX S9は、LUMIX S5IIの魅力を凝縮し魅力的なデザイン仕立て直されたカメラです。EVFとメカシャッターを持たないことがデメリットと感じる人が居るかも知れませんが、特に後者についてはメカシャッターの寿命を気にせず好きなだけ撮れるというメリットと受け取ることができます。またカタログスペック的に特筆するところのないボディ内手ブレ補正の効果ではありますが、実際に使ってみるとスペックから想像するよりも高い効果を体感できるかと思います。カタログスペックでは補正量の最大値を記載しますが、手ブレ補正がそこまで頑張らなくても良いシーンというのは多く、S9ではそこまで頑張らなくても良いシーンで、しっかりとその効果を発揮できるように制御が巧みになっています。
LUMIXは絵作りの良さをアピールしていますが、作例を観ても実際のところはそれほど響かないと思います。ですが、実際に自身が普段使うシーンで撮ったデータをPCでチェックしてみると「こういう事だったのか!」と実体験として理解できますので、もし体験会などの機会があれば是非とも味わってほしいと考えています。
ネガティブな部分は、他社機と比べてAFの得手不得手がハッキリとあることでしょう。特に低照度やゴチャゴチャしたシーンは性能差を感じやすい条件となります。その一方でポートレートシーンでは非常に強力に認識追従するので信頼感がある、といった感じです
また、手の大きさによって扱いやすさが左右される形状となっていますので、本機が候補の場合には実機に触れて相性を確認してみて下さい。
良いところ
・絵作りの良さ
・充実の動画性能
・強力な手ブレ補正
気になるところ
:得手不得手のはっきりしたAF
:時折、起動が遅い
7:富士フイルムGFX100S II

◉発売=2024年6月28日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込744,795円)
詳しくはこちら
中判ミラーレスデジタルの最新機種富士フイルムGFX100S IIの登場も6月でした。強力なボディ内手ブレ補正機構(以下、IBIS)によって1億画素を誰でも扱えるようにしたことで話題となったGFX100Sの後継モデルです。約3年のスパンで外観デザインは従来機を踏襲しつつ、撮像センサーとエンジンを刷新。最新のエンジンを手に入れたこととバッファが強化されたことで、操作に対してカメラのレスポンスが良くなっています。またEVFが約369万ドット・0.77倍から約576万ドット・0.84倍へとスペックアップしており、覗き心地が良くなりましたので、使用感の良さという点で確かな進歩を遂げています。
公式ページではAF性能の進化がアピールされていますが、ハッセルブラッド907X & 100Cの項でも解説した通り、レンズ側の物理的特性によってフルサイズ・ミラーレス機のようなレスポンスを実現することは難しいという現実がありますので、過度な期待は禁物です。
そういった注意点はありますが、GFXシリーズを含む中判ミラーレスデジタルで撮影された写真は他のカメラで撮ったものと比べて明確な差があります。実際に、筆者はGFX50Rという機種でGFXシリーズの虜となり現在でも愛用しています。
良いところ
・圧倒的な描写の良さ
・強力な手ブレ補正
・気楽に使える1億画素
気になるところ
:上級機としては、LCDやEVFの表示クオリティが低い
:価格から期待するほど質感は高くない
8:富士フイルムX-T50

◉発売=2024年6月28日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込221,760円)
詳しくはこちら
6月に登場したカメラの3台目は富士フイルムX-T50。上位モデルの性能をコンパクトなボディに凝縮したX-Tふた桁シリーズの最新モデルは、装いも新たにIBISを搭載し、さらにX-T5やX-H2と同じ40MPセンサーとエンジンが採用され、撮影性能面で大きな進歩を遂げています。
このセンサーの魅力を誰でも味わえるようにするためにはIBISが必要だった、という視点で本機を眺めてみるのも面白いでしょう。
本機の特徴はX-T5の撮影性能がコンパクトなボディで楽しめるところです。EVFの覗き心地などは上位モデルに及びませんが、バッテリとメディア込みで約120g軽く仕上げられていることは、日常的に持ち歩きたいユーザーにとっての大きなアピールポイントとなります。ちなみに大きさについては幅で約5mm、高さは7mm、グリップ部の厚みで15mm、X-T5と比べてコンパクトになっています。見た目の印象でもカメラボディだけで言えばひとまわりコンパクトですが、実際の運用中に最も出っ張るのはレンズ部なので、バッグへの収納性を左右するほどサイズ差があるというワケではありません。約120gの差をどう捉えるか? X-T5と迷っている場合の最大の焦点となりそうです。マニュアルのレンズと組み合わせたいという欲望や、使用感の良さを求める場合にはEVFの覗き心地の良いX-T5かX-H2をオススメしますが、そうではない場合には本機で十分に満足できそうである、というのが率直な感想です。
良いところ
・気軽に持ち歩けるサイズ感
・とても強力な手ブレ補正
・本気に応える撮影性能
気になるところ
:お値段に質感が追い付いていない
:フルサイズ機も狙える予算感
9:ニコンZ 6III

◉発売=2024年7月12日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込392,040円)
詳しくはこちら
今年の夏はアツかった、それはカメラについても当て嵌まります。
撮像センサーの構造を部分的に積層構造とすることで、読み出し速度の高速化を実現した新型センサーを採用するニコンZ 6IIIが登場しました。組み合わせる映像エンジンはZ 9などと同じEXPEED7となり、従来機での不満を一気に解消することを狙っただけでなく、EVFではZシリーズ最高のスペックを持つ約576万ドットかつDCI-P3相当の広色域表示対応の高輝度パネルを採用したことで、HLG撮影時にはHDRモニタに近い再現性を得たことが特徴です。通常のRAW+JPEG記録などではこれまで通りのSDR表示となりますが、覗き心地にこだわるZシリーズの長所にさらに磨きをかけていますので、ファインダーを覗く都度気持ちの良い表示が待っていると思うだけでも楽しくなりそうです。
評価が難しいのは、立派な価格へと成長されたこと。Z 6シリーズは20万円台なかばで登場し、Z 6IIについてもマイナーチェンジ版とは言え内部の電装パーツには大工事が施されつつもその志は引き継がれていました。ところが、本機は一気に40万円が目前に迫る勢いです。その理由がパッとわかれば良いのですが、インプレする際にもその理由探しには少し苦労しました。
カメラとしては非常に完成度が高くAF性能含めてあらゆるシーンに対応できる高い撮影性能に十分以上の満足感が得られるマルチロール機となっています。ここまでの性能であれば、将来的にも例えば5年後に性能に大きな不満を感じてしまう、ということも無いかと思いますので、長く使えるカメラと言って良いでしょう。
良いところ
・安心して勧められる性能
・覗き心地の良いEVF
・長く使えそうな感触
気になるところ
:勧めにくい価格
10:パナソニックLUMIX GH7

◉発売=2024年7月26日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込274,230円)
詳しくはこちら
LUMIX Gシリーズのハイエンドモデルかつ、動画性能が自慢のGHシリーズ最新機種GH7もZ 6IIIと同じく7月に登場しました。名称の「H」印は動画記録時間無制限に対応する証でもあります。
本機は動画特化型のマイクロフォーサーズシステム機という印象が強いかも知れませんが、実はスチル機としての実力も非常に高いことはもっと知られて欲しい事実であります。まず手ブレ補正が非常に強力で、とにかく手ブレさせないカメラとなっています。スペック的にはLUMIX G9Ⅱが一歩リードしていますが、本機の方が約150g重く、体力十分な状態では物理的にブレ難いという一面もあります。G9Ⅱとの違いとしては、対応メディアが本機はSDとCFexpress Type-Bとなっていますので、大量に撮影する場合には本機の方がPCへの転送時間を短縮できます。また大柄のボディではありますが、大柄なだけあって操作が窮屈ではありませんので、手袋のサイズがLLよりも大きなユーザーで、G9Ⅱと悩んでいる場合は本機の方が扱い易く感じるのではないでしょうか。またフラッグシップモデルらしい質感の高さや格の違いを随所に感じることができるという点も魅力です。
その一方で、自身のスタイルが静止画メインかつバランス優先であればG9Ⅱが間違いなく有利です。カメラを構える都度、約150gの重量差による負担が発生しますので、長時間の撮影では無視できない疲労感の差として影響することは記憶にとどめておいて欲しいポイントです。
良いところ
・マイクロフォーサーズと思えないほどの描写再現性
・使い心地の良さ
・強力な動画性能
気になるところ
:G9M2の存在
:センサーダストが取れにくい
:少し大きい
11:ソニーZV-E10Ⅱ

◉発売=2024年8月2日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込137,590円)
詳しくはこちら
本稿の評価対象となるカメラが発売された最後の月となる8月に発売されたソニーZV-E10Ⅱは、α4桁シリーズと同じくAPS-Cフォーマットセンサーを搭載し、レンズ交換も可能なVLOGカムということでVloggerやYoutuberなどから指示を集めたモデルの後継機。VLOGCAM ZV-1シリーズに属するモデルの中核を担うZV-E10の後継モデル。
α6700と同じ最新の26MPセンサーと最新の画像処理エンジンBIONZ XRという構成となるが、α6700と異なるのはボディ内手ブレ補正を持たないという点。αシリーズに明るいファンであれば、本機はかつてのα6600に対してα6400が担っていたポジションに対応するカメラであるとピンと来るかも知れません。
本機は最新エンジンの採用で従来機からAF性能が大きく進化。α6400や従来型のZV-E10でも必要十分以上の撮影性能は有していましたが、被写体認識の精度と追従性が大きく改善され、「モニタ上では合焦表示されているのにどうもピントが微妙に甘い」といったネガな部分が払拭されています。
α4桁シリーズとZV-E10Ⅱの違いは、Vlogに特化した操作デザインが採用されていること。具体的にはモードダイヤルを持たずタッチ操作との親和性を高めることでビギナーでも戸惑うことなく撮影を楽しめるようになっています。裏を返せば、これまでのカメラの様に自分の意図を折り込みたい場合には操作に慣れが必要ということでもあります。
スチル派にとってはVlogカムに食わず嫌いが発動してしまいそうですが、動画機能も充実していますし、α6700と同等の撮影性能ということでスチル機としても高いポテンシャルを持つ1台になっている点は無視できないでしょう。
良いところ
・基本性能の高さ
・軽量かつコンパクト
・強力な動画性能
・なんだか動画を録りたくなるようなワクワクがある
気になるところ
:スチル派には操作性が良くないところ
12:キヤノンEOS R5 Mark II

◉発売=2024年8月30日
◉希望小売価格=オープンプライス(実売=税込589,050円)
詳しくはこちら
最後に紹介するのはキヤノンEOS R5 Mark IIとなります。
R5の万能性とEOS R3の高速性を合体させたモデル、と表現するのが最も適しているかと思います。というのも、45MPセンサーは積層化され読み出し速度を大幅に高速化。さらに視線入力AFとEOS R1と同じAFシステムを持ち、連写速度はR3とイーブンです。R3が優れているのはファンクションボタンがひとつ多いことと、大容量バッテリを使用する点、背面モニタのドット数が多いことですが、本機はR5とほぼ同等のサイズが維持されています。視線入力については、EVFの覗き心地が良くなり、さらに検出精度が高まった印象ですが、あくまでも撮影補助の機能であるという立ち位置は変わりません。
積層センサーのデメリットとして、ややノイズが多いという画質上の懸念点があります。が、大前提として高感度画質の進化はRAWレベルでは現状で劇的に改善することが難しい領域に達したという状況にあります。これに対して後処理による画質強化を行うことで、より柔軟に撮影シーンに対応するという手段が採用されています。本機は高画素機となり、1画素当たりの受光面積は元々小さく、画質方向ではなく高速化による性能アップに舵取りをしています。実際にカメラボディでニューラルネットワークノイズ低減という機能が実装されています。
本機は、現在発売されているカメラとしては最も守備範囲の広い機種であり、スナップシーンから高解像が必要なお仕事やスポーツ撮影まで対応できる稀有な存在です。しかも8K60pの動画記録もイケる、まさに万能機。R1ほど高速特化ではないという点も踏まえて、一般用途での実質的なフラッグシップモデルとなっています。
良いところ
・現時点で最高のマルチロール機
・使い心地が良くなっている
・強力な動画性能
・とても強力な手ブレ補正
気になるところ
:R5 Mark IIを楽々ペイできるような仕事が減ってしまったこと
:像面位相差AFがクロス検出対応であって欲しかったこと