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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 藤井智弘×ライカD-LUX8

写真・文:藤井智弘/編集:合同会社PCT

ライカの伝統を受けついだ、写真を撮る楽しさと所有する満足感の高さを両立させたコンパクトカメラ

ライカの伝統を受けついだ、写真を撮る楽しさと所有する満足感の高さを両立させたコンパクトカメラ

藤井智弘(TOMOHIRO FUJII)or(ふじい・ともひろ)
東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年に写真展を開催後、写真家になる。カメラ専門誌、WEBでの撮影や執筆、各種撮影や写真講師等で活動。作品では、国内や海外の街を撮影している。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。デジタルカメラグランプリ(DGP)審査員。
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はじめに

ライカのコンパクトというと、ライカQシリーズを思い浮かべるかもしれません。コンパクトカメラながら35mmフルサイズの撮像素子を搭載し、ライカファンならずとも大きな注目を浴びています。そしてもうひとつ、ライカのコンパクトカメラがあります。それがライカD-LUXシリーズです。フルサイズではありませんが、一般的なコンパクトカメラとしては大型の撮像素子を搭載し、携帯性と高画質を両立させたモデルです。そしてライカD-LUX7ではライカD-LUX6までの1/1.7型から3/4型センサーに大型化。より高画質になりました。

まさにライカらしいカメラとして登場したライカD-LUX8

ライカD-LUXシリーズは、協力メーカーのカメラをベースにしています。操作性やメニュー画面等も協力メーカーのカメラに近く、他のライカカメラとは異なっていました。ところが、ライカD-LUX8はまさにライカカメラという形で姿を現しました。一見すると、まるでライカQ3のようです。しかもセンサーは4/3型なので、ライカQ3よりはるかに小さく、携帯性の高さが感じられます。

ボディのシルエットだけでなく、操作部もライカQ3のようになりました。背面はライカQ3と同じくPLAYボタン、十字のセレクターボタンと中央のセンターボタン、MENUボタンが並び、ファインダー横にもファンクションボタンが2つ。上面のサムホイールとサムホイールボタンもライカQ3と同じです。そして質感の高さもライカクオリティ。ボディ表面やレザーの感触はライカらしさが伝わってきて、手にする満足感が味わえます。

CAP-12
本体側面には、HDMI端子とUSB端子があります。USBは現在カメラだけでなくスマートフォンなど様々な機器で主流となっているType-C。ケーブルを接続して充電が可能です。

メニュー画面や操作性もライカの合理性を継承

ライカQ3と同じなのは外観だけではありません。メニュー画面もライカQ3と同様の仕様になりました。MENUボタンを1度押すとホーム画面が表示され、現在の設定がひと目で確認できます。そのまま変更したい機能のアイコンをタッチすれば、スピーディーな設定も可能です。そしてもう1度MENUボタンを押すと、メニュー項目が表示され、各種設定が行えます。文字のフォントもライカQ3と同じ。ライカそのものです。

RAWはライカD-LUX7までの拡張子「RWL」から、ライカQシリーズやM型、SLシリーズなどと同様に「DNG」を採用。もちろんDNG+JPEGの記録も可能です。JPEGは仕上がり設定「フィルムモード」もライカQ3やライカM11、ライカSL3など現行ライカと統一されました。標準、鮮やかなビビッド、落ち着いた色調のナチュラル、滑らかな階調のモノトーンが表現できるモノクロ、メリハリのモノトーンのモノクロHCが選べ、さらに「設定」からカスタマイズも可能です。長い歴史を持つライカはモノクロ写真にも精通しているので、カラーだけでなくモノクロやモノクロHCも活用すると、よりライカの画作りが楽しめるでしょう。

カメラを操作する楽しみと本格的な撮影を両立

撮像素子やレンズなど、基本スペックはライカD-LUX7を踏襲。4/3型CMOSセンサーを搭載し、総画素数は2177万画素。有効画素数は1700万画素になります。マルチアスペクトを採用し、4:3、1:1、16:9、3:2のどれを選んでもレンズの画角変化が少ないのが特徴。特に4/3型では標準の4:3から、他のライカでは標準の3:2に合わせた場合に、4:3と画角変化が少ないのが嬉しい。

レンズはライカDCバリオ・ズミルックスf1.7-2.8/10.9〜34mm ASPH.。35mm判換算すると、24〜75mm相当になります。電源オフのときはレンズの鏡筒が収納されていますが、オンにすると伸びてきます。シャッターボタン周囲のズームレバーを「T」に回すとテレ側にズーミング。動きは滑らかです。またワイド端からテレ端にズーミングしても鏡筒の伸びはわずかなので、どの焦点距離でもバランス良く構えられました。

本体上面にはシャッターダイヤル、レンズ鏡筒には絞りリングを装備し、アナログ感覚の操作が楽しめます。それぞれのクリック感も適度。シャッターダイヤルも絞りリングも「A」にセットするとプログラムAE、絞りリングは「A」のままシャッターダイヤルを任意のシャッタースピードにセットするとシャッタースピード優先AEに、シャッターダイヤルは「A」にして絞りを任意の絞り値にセットすると絞り優先AEに、どちらも「A」から外すとマニュアル露出になります。とてもわかりやすく、カメラを操作している感覚も楽しめます。またサムホイールを露出補正に割り当てれば、AE撮影時の露出コントロールも迅速に行えて便利です。さらにEVFも装備。解像度236万ドットのOLEDファインダーです。ファインダー倍率は0.74倍。さすがにライカQ3の576万ドットには届きませんが、十分快適な視認性を持ちます。EVFはカメラをしっかり構えられることにより、スローシャッターに強く、明るい屋外でも活躍します。コンパクトカメラではEVFを省略したり、装備していても十分な視認性を持たない機種もありますが、ライカD-LUX8は本格的なスタイルで撮影できます。

階調豊かな画質と高感度にも強い解像力

画質もコンパクトカメラであることを感じさせません。レンズの解像力も高く、特にワイド側の画面中心部はF1.7の絞り開放からシャープ。F2.8に絞ると、画面周辺部までほぼ均一の描写になります。テレ側はワイド側と比べると絞り開放の描写がやや柔らかですが、1段絞っただけでシャープさがグンと上がります。画面に太陽が入るような強い逆光ではさすがにゴーストは発生しますが、フレアは抑えられていてメリハリのあるクリアな写り。逆光にも強いレンズだと言えます。最短撮影距離は50cm。ですが鏡筒横のフォーカスモード設定リング(切り替えスイッチ)をマクロモードにすると、ワイド側で3cm、テレ側で30cmのクローズアップ撮影が可能になります。

そして、やはり1/1.7型より大きい4/3型は階調が豊か。被写体に近づいて絞りを開ければ、ボケを生かした写真も撮れます。さらに高感度に強いのも見逃せません。拡大してみるとISO800からわずかに高感度らしさは感じてきますが、被写体のディテール再現性は良好。個人的にはISO6400でもノイズが少なく細かい部分も解像し、実用になると感じました。

ライカD-LUX8の作例

ライカD-LUX8・絞りF4・1/1000秒・ISO100・WBオート
ワイド端24mm相当で撮影。細かい部分まで解像していて、レンズの性能の高さが感じられます。また4/3型CMOSセンサーによる階調再現も豊かです。

ライカD-LUX8・絞りF2.8・1/125秒・ISO100・WBオート
テレ端75mm相当で撮影。中望遠は、街中で狙ったモチーフのクローズアップに使いやすい焦点域です。絞りはF2.8開放。背景のボケが自然で、立体感のある仕上がりになりました。

ライカD-LUX8・絞りF2.8・1/250秒・ISO100・WBオート
EVFや4/3型の撮像素子を搭載したズームコンパクトながら小型軽量。いつも持ち歩いて街を軽快にスナップできます。個性的な形の自転車を見つけて、とっさにライカD-LUX8を構えて撮影しました。

ライカD-LUX8・絞りF4・1/80秒・ISO100・WBオート
滑らかな動きのズーミングにより、微妙な構図決定もスムーズに行えます。壁や窓、標識のバランスを考えてズーミングしました。フィルムモードは標準のSTD。派手さを抑えた色調がヨーロッパのメーカーらしさを感じます。

ライカD-LUX8・絞りF5.6・1/160秒・ISO100・WBオート
壁に映る植物の長い影に惹かれました。4/3型では標準のアスペクト比4:3から、レンズ交換式に多く採用されている3:2に切り替えて、影の長さを強調しています。

ライカD-LUX8・絞りF5.6・1/2000秒・ISO100・WBオート
画面に太陽が入る逆光。建物にも強い光が反射しています。わずかにゴーストは出ましたが、フレアはほとんど発生せず、コントラストの高い写真が撮れました。ライカDCバリオ・ズミルックスレンズの性能の高さがわかります。

ライカD-LUX8・絞りF4・1/15秒・ISO100・WBオート
ライカD-LUX8は、タッチ操作もスムーズ。ライブビューで植物にタッチしてピントを合わせました。多機能ながら操作がシンプルなので、初めてライカを手にする人にも使いやすいカメラです。

ライカD-LUX8・絞りF1.7・1/60秒・ISO100・WBオート
マクロモードに設定し、小さな葉をクローズアップ。24mm相当なら、なんと3cmまで近付けます。また75mm相当でも最短30cmなので、お気に入りのアイテムや外出先での食事など、テーブルフォトにも対応します。

ライカD-LUX8・絞りF2.8・1/160秒・ISO6400・WBマニュアル
ISO6400に設定して撮影。拡大すると高感度らしいザラっとしたところもありますが、ラベルの文字も解像していて実用的な画質と言えるでしょう。暗所でも安心して高感度が使えます。

ライカD-LUX8・絞りF5.6・1/200秒・ISO100・WBオート
JPEGのフィルムモードをモノクロHCに設定しました。メリハリはありますが硬すぎず、空の階調やシャドー部の階調も申し分ありません。さすがライカの画作り。ライカD-LUX8でモノクロ作品にチャレンジもオススメです。

まとめ

毎日持ち歩けて、写真を撮りたいシーンに出会ったらすぐ取り出せる軽快さ。24〜75mm相当の焦点距離も、日常をとらえるのにピッタリです。しかも4/3型の撮像素子の高い画質。そしてデザインや操作性がライカそのもの。RAWの形式が他のライカと共通のDNGを採用し、JPEGの仕上がり設定(フィルムモード)も協力メーカーとは異なるので、ライカならではの写りが味わえます。ライカと言えば、高級カメラの代表であり、高価というイメージが強いでしょう。たしかにライカD-LUX8もコンパクトカメラとしては、決して安価ではありません。しかしライカQ3やライカM11等と比べると、とても購入しやすい価格。しかもボディの質感や操作性、写りもライカのクオリティ。ライカD-LUX7をベースにしながら大きく進化しました。すでにライカを愛用しているユーザーだけでなく、初めてライカを手にしたいと考えている人にもイチオシできます。デイリーユースのカメラとして、写真を撮る楽しさと、所有する満足感の高さを見事に両立させたカメラだと言えるでしょう。

今回のカメラ・レンズ

ライカD-LUX8
◉発売=2024年7月20日 ◉価格=286,000円(税込)(実売・271,700円税込)
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