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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー川北茂貴 × イルミネーション撮影

写真・文:川北茂貴/編集:合同会社PCT

「冬のイルミネーション撮影に挑戦してみよう!」

色とりどりに街がライトアップされるホリデーシーズンが近づき、あちこちでイルミネーションが煌めく季節になってきました。美しいイルミネーションをキレイに捉えるには、どのように撮影したらいいのでしょうか。初歩的な注意事項から、「ボケ」、「滲み」、「光芒」など効果的な撮影方法、おすすめの撮影スポットまで、フォトグラファー川北茂貴さんがプロの視点でわかりやすく解説していきます。

川北茂貴
1967年京都市生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業。夜景写真家。 ストックフォトや海外旅行のガイドブックの撮影で世界各地を巡り、現地の夜景のポスターや絵葉書に感銘を受け、自分でもレインボーブリッジや都庁が建ち始めた東京で夜景を撮り始め今に至る。カメラ雑誌に夜景撮影関連の記事を多く執筆。

はじめに

寒さが身に染みる冬はイルミネーション夜景のシーズン。一年中撮れる通常の夜景と違い、イベントとして繁華街などに設営されるイルミネーションは、開催されていないと撮れないからだ。その期間は11月中旬からクリスマスか年末が多く、長いとバレンタインかホワイトデーあたりまで。まだまだ開催されていると油断しているとあっという間に終わってしまうので、各所の期間を調べて計画的に撮影しよう。またイルミネーションに限らず夜景写真は「肉眼よりも明るく」「ブレていないか最大倍率でチェック」が大事。帰宅後チェックしたらほとんどブレていた、とならないように現場で確認しよう。

「ボケ」を加える

主役に丸ボケを加えることで、被写体はぐっと引き立つ。その丸ボケは手前のイルミネーション越しで撮ったり、別撮りした丸ボケを合成したりして構図に組み込む。絞りは開けて(絞り値が小さい)、焦点距離が長いほうが大きな丸ボケになる。会場で近寄れるイルミネーションがあればレンズの直前まで寄り、ピントは主役に合わせてシャッターを切る。この方法は丸ボケのもとになる手前のイルミネーションが見つかれば簡単に撮れるが、近寄れるイルミネーションがなければ、百円ショップなどで売っている電池式の小型イルミネーションをレンズの前に垂らして、自分専用のセルフ丸ボケで撮っても面白いだろう。

撮影データ:キヤノンEOS R・EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM・絞りF5.0・1/250秒・ISO1500・WB:太陽光

銀座中央通りの街路樹に巻き付けたイルミネーションに触れるぐらいまで近寄り、それ越しに時計塔を撮る。狭い測距ゾーンでピントは時計塔に合わし、丸ボケを作るため絞り優先AEで開けた絞り値を選択。被写体が明るく、人通りも多いのでISO感度を上げて素早く手持ちで撮影。多くの冷たい視線が背中に刺さるが、気が付けばみんなもスマホで撮り始めていた。

撮影データ:キヤノンEOS R5 MarkⅡ・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/80秒・ISO320・WB:オート

多摩センターで開催されていたイルミネーションベントで、宙に垂らされたクマノミのオブジェを手前のイルミネーション越しに撮影した。奥のイルミネーションも小さく丸ボケになり、海の中を泳いでいるように見えた? イルミネーションのイベント会場は混んでいることが多く、人の流れが途絶えた隙に手持ちでサッと撮るのがポイント。

撮影データ:キヤノンEOS R5 MarkⅡ・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・絞りF6.3・1/80秒・ISO2500・WB:白色蛍光灯

六本木ヒルズのけやき坂のイルミネーション越しにダイヤモンドヴェールのライトアップの東京タワーを撮る。イルミネーションと東京タワーの組み合わせで撮ろうとすれば、どうしても坂の上の激混みポイントに行ってしまうが、坂の下の蔦屋の交差点あたりは空いていてストレスを感じない。ここも高感度ISOで絞りを開けて手持ち撮影で、小さな測距ゾーンで東京タワーにピントを合わせ、手前の木に巻き付いたイルミネーションを丸ボケで表現した。

撮影データ:キヤノンEOS R5・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・絞りF5.0・1/20秒・ISO800・WB:白色蛍光灯

可愛いオブジェを見つけたが手前に丸ボケのもとになるイルミネーションはなく、そんなときのために用意した100円ショップで購入した小型のイルミネーションを片手で持ってレンズのすぐ前に垂らす。カットごとに丸ボケの位置が違うので、たくさん撮ってあとから選んだ。

百円ショップで購入した単三電池2本で光る小型のイルミネーションで、どこでもマイ丸ボケが作れる。イルミネーションは点灯式と点滅式があるが、点灯式が撮りやすい。

こちらも手前に丸ボケとなるイルミネーションがなかったので、とりあえず主役だけを撮影し、あとから丸ボケを合成した。その場でカメラ内で合成しても良いし、あとからパソコンソフトで合成しても良いだろう。合成の設定は重ねる写真を比較してそれぞれの明るい方を残して合成する「比較明合成」が良い。丸ボケだけをたくさん撮り集めておけば作業は楽だ。

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/500秒・ISO320・WB:白色蛍光灯

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/60秒・ISO320・WB:白色蛍光灯

同じ被写体に別の丸ボケを重ねてみたらこれもいい感じに。撮りだめた丸ボケは重ねる際に主役の写真と縦横のピクセル数を同じに調整。また縦横、上下を変えて重ねても良い。

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/60秒・ISO320・WB:白色蛍光灯

「滲み」を加える

高性能のレンズで写りすぎるイルミネーションをあえて滲ませて、ウルウルした目で見た感じに近づけて表現するには二つの代表的な方法がある。その一つはソフトフォーカスフィルターをレンズの前に取り付ける。これは使用するレンズ径に合ったソフトフォーカスフィルターを取り付けるだけなので作業は簡単。滲みの度合いがいくつかあるので好みで使い分けよう。夜空の星を綺麗に撮りたいときも、これで星を滲ませるとより一層星がはっきりと写る。二つめはレンズ面に直接息を吹きかけて曇らせる方法だ。乾燥した冬だとシャッターを切るタイミングで毎回乾いてなかなか思い通りに撮れないが、毎回描写が変わるのが楽しい。描写に癖があって人気のオールドレンズで撮っても良いだろう。

撮影データ:キヤノンEOS R5 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF5.6・1/80秒・ISO2500・WB:白色蛍光灯

ソフトフォーカスフィルターでけやき坂のイルミネーションを滲ませてみた。これにより武骨なLED電球は光の滲みに包まれキラキラ感が増す。左側は実在のイルミネーション並木で、右側はビルのガラスにそれが反射したもの。通行人が多く構図的に邪魔な場合は、構図下辺を通行人の頭の上あたりにすると自然な感じに切り取れる。

撮影データ:キヤノンEOS 5D MarkⅢ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF5.0・1/50秒・ISO800・WB:白色蛍光灯

以前に撮ったものだが私のお気に入りの1枚。イルミネーションのカーテンをソフトフォーカスフィルターで滲ませて、その前を横切る人たちをシルエットで切り取った。この場合写真が語る物語を膨らませやすいように、年齢に関係なくカップルや家族連れなどを狙う。一人や大勢の人、おじさんおばさんだけなどで物語を膨らますのはちょっと難しいかな。

撮影データ:キヤノンEOS R5 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF5.6・1/100秒・ISO250・WB:白色蛍光灯

息を吹きかけたレンズで六本木のけやき坂のイルミネーション並木を撮る。曇らせても数秒で乾くので時間との勝負。毎カットごとに曇の感じが違うので、納得がいくまでチャレンジしよう。

「光芒」を加える

イルミネーションから四方に光の筋が広がる光芒は、クロスフィルターを使えば簡単に得られる。各メーカーから数多く発売されているこのフィルターは、光芒の本数が4本、6本などいろいろあるので好みで使い分けよう。写真が光芒だらけでうるさい場合は、構図の1/4にだけその効果が表れるものを選べば良い。これは回転できるので、任意の位置に光芒を発生させられるので便利だ。(*ケンコー Rパーシャルクロススクリーンは現在製造中止。効果は異なるが、クロスフィルターなどで代用できる。)

撮影データ:キヤノンEOS M100・EF-M18-150mm f/3.5-6.3 IS STM・絞りF6.3・1/40秒・ISO3200・WB:白色蛍光灯

通常の全面光芒のクロスフィルターで撮ったクリスマスのオブジェ。光芒の多さはぎりぎりOKで、これ以上だとうるさく感じるかも。イルミネーション会場だけでなく、店頭などで偶然見かけるこれらのオブジェは出会った時が撮影のチャンス。来年はなかったり、違う雰囲気で写欲が湧かなかったりと、たとえイルミネーションでも写真は一期一会だからだ。

撮影データ:キヤノンEOS R5 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF8.0・1/25秒・ISO5000・WB:白色蛍光灯

六本木のけやき坂のイルミネーション並木を、構図の1/4にだけ光芒が現れるフィルターを使い、左側にだけクロスをかけてみた。右側のガラスに反射したイルミネーションには光芒が現れていない。左側の並木だけでなく、右側のガラスの反射を構図に入れることで、単純計算でイルミネーションが二倍となり一層賑やかになった。ガラスや水溜りなど、被写体が反射するものがあればチャンスだ。

撮影データ:キヤノンEOS R5・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・絞りF5.0・1/20秒・ISO800・WB:白色蛍光灯

別項と同じ被写体、構図で1/4だけ光芒が現れるクロスフィルターを使用し、上部だけキラキラさせてみた。このクロスフィルターをはじめとする各種フィルター類は、イルミネーションだけでなく通常の夜景写真でも手軽に使えるので、常にカメラバッグに入れておきたい。

まとめ

というわけでイルミネーションを綺麗に撮る方法として「ボケ」「滲み」「光芒」と3つの裏技をお伝えしたがまだまだあるかもしれません。写りすぎないように工夫すればどのような方法でもOKなのです。最後にイルミネーションが綺麗に撮れる場所としていくつか紹介しましょう。もちろんこの他にもたくさんあるのですが、書ききれないので代表的なところばかりです。では今夜も冷えるので、厚着をして撮影に行ってらっしゃい!

おすすめの撮影スポット

東京ドームシティ
https://www.tokyo-dome.co.jp/illumination/

西武園ゆうえんち
https://www.seibu-leisure.co.jp/amusementpark/news/illumination_2024/index.html

よみうりランド
https://www.yomiuriland.com/jewellumination/

丸の内仲通り
https://www.marunouchi.com/pickup/event/4830/

マザー牧場
https://www.motherfarm.co.jp/information/illumination2024/

なばなの里
https://www.nagashima-onsen.co.jp/nabana/illumination/index.html

ハウステンボス
https://www.huistenbosch.co.jp/event/xmas/

今回のカメラ・レンズ

キヤノンEOS R5 MarkⅡ、RF24-105mm F4 L IS USM 、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM


キヤノンEOS R5 Mark II
◉発売=2024年8月30日 ◉価格=オープン(実売 ボディ:589,050円・税込)

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RF24-105mm F4-7.1 IS STM
◉発売=2020年4月9日 ◉価格=オープン(実売 :65,835円・税込)

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RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
◉発売=2020年8月27日 ◉価格=オープン(実売 :374,220円・税込)

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