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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー熊切大輔× SONY(ソニー) α9Ⅲ 実写レビュー

写真・文:合同会社PCT/編集:合同会社PCT

熊切大輔(くまきり・だいすけ)
東京生まれ。東京工芸大学短期大学を卒業後、夕刊紙日刊ゲンダイ写真部に入社。その後フリーランスの写真家として独立。雑誌や広告などでドキュメンタリー・ポートレート・食・舞台など「人」が生み出す瞬間・空間・物を対象に撮影する。作品は様々なテーマ、アプローチをもってスナップ写真で東京の今を切り撮りつづけている。写真コンテストの審査や様々な写真講師なども務めており、学生への写真指導など未来の写真家の育成にも力を入れている。公益社団法人日本写真家協会会長。日本大学芸術学部写真学科 客員教授。

はじめに

ソニーのデジタルカメラの象徴でもあるα9シリーズは、高速性、連写性の進化をし続けながら最先端の機能と描画性能を実現している。そんなシリーズ最新機種α9Ⅲがいよいよ登場した。α9 Ⅲは新開発の約2460万画素メモリー内蔵フルサイズ積層型CMOSイメージセンサーExmor RSと最新の画像処理エンジンBIONZ XRを搭載し最先端の技術が詰め込まれたカメラだ。

ソニーα9 Ⅲボディ


ソニーα9 Ⅲ_ボディ背面


ソニーα9 Ⅲの「ファーストインプレッション」

まずはその容姿だが、シリーズのなかでブラッシュアップを続けてきた中で良い意味で安定したデザインは大きな変化は見られない。手に馴染みの良い程よいサイズ感で仕上がっている。全体的にわずかにサイズアップしたが、少し大きくなったグリップは握りやすくシャッターボタンを含む滑らかな形状は手にしっくりくる印象だ。

操作系、ダイヤル類は他シリーズを踏襲する形となり、統一感が生まれ特に7シリーズなど他機種と併用の場合扱いやすくなったのではないだろうか。親指側のダイヤルが露出補正ではなく割り当てができるようになったり5つ目のカスタムボタンが追加されるなど、自分流にカスタマイズできる自由度がアップした。

ファインダーはα1と同じ約944万ドットの高精細OLED採用で見えの良さに不満はない。背面液晶はα7R Vで採用された4軸マルチアングル液晶モニターで撮影の自由度が上がった。撮影で重要な「被写体をしっかり捉える」ことに関してはあらゆる最新機能のいいとこ取りで、ストレスを感じない撮影を可能にしてくれている。

世界初のグローバルシャッターが、スピード感のある撮影を可能に

そして今回最大の特徴が世界初のグローバルシャッター方式を採用したところだ。簡単に言うと従来のローリングシャッター方式だと特に電子シャッターを使用した場合、画像を上から順に読み込むため、早く動く被写体にカメラを合わせて振ると画像が激しく歪む減少が起きる。グローバルシャッターは全画素同時露光することで歪みを殆ど感じない画像を得ることができるのだ。それらを高速処理能力を持つ最新の画像処理エンジンBIONZ XRで処理することによってさらにスピード感のある撮影を可能にしてくれているのだ。

ソニーα9 Ⅲ・FE 70-200mm F4 Macro G OSS II(200mmで撮影)・絞りF13・1/400秒・ISO200・WBオート

高精度のAFも健在だ。ディープラーニングを含むAI処理を行うAIプロセッシングユニットはさまざまな被写体を認識し追随してくれる。人物はもちろん動物・鳥・昆虫・列車・飛行機・車などはドライバーのヘルメットまで新たに認識するなどなどあらゆる被写体に対応している。リアルタイムトラッキングはシャッターボタンの半押しで自動追尾ができる機能だ。間に木が入ってもまさに粘り強く被写体を捉え続けてくれた。


ソニーα9 Ⅲ・FE 70-200mm F4 Macro G OSS II(200mmで撮影)・絞りF11・1/2000秒・ISO400・WBオート

私はスナップやポートレートを主な被写体としている。素早く動く被写体を追うことは多くはないが、α9Ⅲの優秀なAFはスナップ・ポートレートのフィールドでもおおいに活躍してくれる。例えばリアルタイム認識AFだ。AIプロセッシングユニットにより被写体の骨格情報で動きを認識するという。これは姿勢を推定する技術が用いられており、作品のように後ろ向きになっても被写体の頭部を認識しピントを外すことなく被写体にフォーカスを合わせ続けてくれた。被写体が振りかえって歩き出したときに、美しく揺れるスカートに印象的な光が差し込んでいた瞬間をしっかりと捉えてくれた。


ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(70mmで撮影)・絞りF2.8・1/4000秒・ISO125・WBオート

遠方の人物も認識精度が上がり街角スナップで画面に複数の人物が入り込んでいても、意図した目標をしっかり捉える事ができる。フォーカスエリアもスポットのXSという更に小さいサイズが選べるようになり、シンプルに合わせたいところに合わせるがストレスなく行える印象だ。条件としては厳しい光と影のコントラストが強いシーンでも惑わせられることなく、一瞬の光に被写体が入った瞬間を捉えた。

ブラックアウトフリーにより、決定的瞬間を逃さない

ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(70mmで撮影)・絞りF2.8・1/4000秒・ISO125・WBオート

フォーカスエリア、カバー範囲は撮影画像のほぼ全域、約95.6%759点でカバーしている。スナップ写真において瞬間を捉えるのは重要だが、私は背景・周辺情報を重要視するタイプだ。例えば街が写れば時代性が見えてくる。逆に面白い背景であればその要素が活き、ストーリーを見る人感じさせるものになる。その場合人物が入っていなくても画になる構図バランスが取れていれば、あとは最高のタイミング人物のシャッターチャンスに集中できる。フォーカスポイントを思った場所に配置ができることが重要だ。


ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(70mmで撮影)・絞りF9・1/1250秒・ISO640・WBオート

決定的瞬間の面白さは偶然と必然が重なることによって更におもしろいストーリーを生み出してくれる。遠方のビルで窓拭きの作業が見えた。そこに飛行機の機影が重なることに気づく。しかし窓に写るその機体は歪み、しっかりと姿を確認できるのはほんの一部だ。そのタイミングと窓拭きの作業をしている方の重なりワンチャンスしかなかった。α9シリーズの代名詞的機能にブラックアウトフリーがある。連写中も被写体を確認することができて決定的瞬間を逃さない。


最新の画像処理エンジンBIONZ XRと画像処理アルゴリズム、可視光+IRセンサーそしてAIプロセッシングユニットを使用して露出精度や階調再現の精度も上がったようだ。日陰での撮影でも安定したホワイトバランスが得られた。肌色が特に美しく再現されており、加えて桜の花や葉の色も自然に美しく描写してくれた印象だ。木々の美しい後ボケ、前ボケ味で柔らかい表現で被写体を囲んでみた。


ソニーα9 Ⅲ・FE 70-200mm F4 Macro G OSS II(200mmで撮影)・絞りF4・1/6400秒・ISO1600・+0.3EV補正・WBオート


α9Ⅲの高速性能をフルに引き出してくれた2本のレンズ

美しい表現にはレンズ性能も当然必要になる。FE 70-200mm F4 はGレンズシリーズの高い描写性能を持っている。しかし小型軽量でスナップで長時間街歩きしても負担にならない。高度非球面AA(advanced aspherical)レンズを採用し周辺まで美しい描写力を感じられる。ボケ味も柔らかく自然に溶け込んでいくような美しいボケ味も特徴の一つだ。ゴツい橋の鉄骨も優しく柔らかいリズムに変えてくれる。光学式手ブレ補正機構はボディの手ぶれ補正と連動し強力に望遠での撮影のサポートしてくれる。

ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(37mmで撮影)・絞りF2.8・1/200秒・ISO125・+0.3EV補正・WBオート

もう一本のレンズ、FE 24-70mm F2.8 GM IIも約695gと従来機にくらべ役20%、191gも軽くなり最小・最軽量を達成した。サイズも小さくなり、スナップ撮影にはもってこいのレンズだ。日常はシャッターチャンスに溢れている。ボディを含め日々持ち歩ける携行性はシャッターチャンスをおのずと増やしてくれる。いつも何気なく通る道の古着屋から鋭い麺線を感じ瞬間的にシャッターを押した。


ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(26mmで撮影)・絞りF2.8・1/16000秒・ISO200・WBオート

レンズのAF駆動は滑らかでスピーディだ。4基のXDリニアモーターとフローティングフォーカス機構でズーム中のフォーカス追随性能が従来比約2倍にあがった。α9Ⅲの高速性能をフルに引き出してくれる。被写体が光に入るタイミングは一瞬だ。その瞬間をしっかり捉えてくれた。


ソニーα9 Ⅲ・FE 24-70mm F2.8 GM II(24mmで撮影)・絞りF2.8・1/125秒・ISO200・−0.7EV補正・WBオート

レンズ性能の高さは表現を後押ししてくれる。昨今超大口径レンズが充実しているが、全域F2.8通しでも十分、ボケ味を楽しむことができる。作品のように強い逆光状態での撮影もナノARコーティング IIでコーティングされたレンズが、抜けの良い描写をしてくれた。最短撮影距離最短 0.21mと近接撮影も強く、よりの画のボケ味を強調した表現も柔らかく写し出してくれた。


まとめ

ソニーのミラーレス機の代名詞でもある高速性。その象徴的存在であるα9シリーズは常に驚くべき進化をし、デジタルカメラ界を常にリードしてきている。そんなシリーズ最新作α9Ⅲはやはり革新的技術が投入され、現時点で最高峰のカメラと言っても過言ではない。特に高速で瞬間を捉える圧倒的なスペックはジャンルを問わず様々なフィールドでシャッターチャンスを捉えくれる。加えてレンズも含めたコンパクト化も進みよりフットワークの良い総合的なシステムは撮影フィールドをさらに広げてくれるだろう。デジタルカメラを次の次元に押し上げる、そんな未来を魅せてくれるカメラなのではないだろうか。

今回のカメラ・レンズ

ソニーα9 Ⅲ
◉発売=2024年 1月26日 ◉価格=オープン(実売:792,000円税込)
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FE 24-70mm F2.8 GM II
◉発売=2022年 6月10日 ◉価格=オープン(実売:277,200円税込)
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FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
◉発売=2023年7月28日 ◉価格=オープン(実売:224,730円税込)
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