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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 南しずか×屋外スポーツ写真の撮り方

写真・文:南 しずか/編集:合同会社PCT

野外スポーツの撮影に出かけよう!

今回は、屋外でのスポーツ写真を撮影する際の機材選びやおさえておきたいポイントを、第一線で活躍する写真家 南しずかさんに解説いただきました。南さんの作品をご覧いただきながら、ぜひスポーツ撮影にチャレンジする際の参考にしてみてください!

南 しずか
1979年、東京都生まれ。米女子ゴルフツアーをはじめ、主にプロスポーツイベントを撮影。ゴルフ・渋野日向子選手の全英女子オープン制覇、大リーグ・イチロー選手の米通算3000安打達成の試合、東京五輪のゴルフ競技など。米国で最も人気のあるスポーツ雑誌「Sports Illustrated」の撮影の実績がある。米女子ゴルフツアーに関する記事をスポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number Web」、ゴルフ雑誌「Waggle」、「ALBA Net」などに寄稿。2023年より雪印メグミルク「「ガセリ菌SP株ヨーグルト」のCMに出演中。 スポーツ総合サイトThe Answerの部活生応援企画「青春のアザーカット」の被写体を随時募集中!

はじめに

「試合の決定的シーンを逃さずに撮るコツはありますか?」と質問されることがありますが、残念ながらそんなコツはありません。

なぜかというと、試合中は目まぐるしく状況が変わるため、試合が終わり、振り返ってみて「あのプレーが勝敗を分けたね」と分かってきます。つまり、試合中はどのプレーが決定的な瞬間になるのか分からないため、“ひたすら撮り続けること”が重要となります。たとえ、ある場面を撮り逃してもションボリ落ち込むのではなく、すぐに気持ちを切り替え、次に起こりそうなことを予測しながら、試合が終わるまで集中して撮り続けること。それが、決定的シーンを撮る確率を上げる唯一の方法だと思います。

そのためにしっかりと準備し、良いコンディションで試合に臨むことが理想です。その準備の一環として、私の体験談が少しでも参考になってくれたら嬉しいです。

2022年。全米女子プロゴルフ選手権3日目、ショットを放つ笹生優花

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF6.3・1/3200秒・ISO800・JPG・WB曇り


スポーツ競技の撮影に適したカメラ機材とは?

アスリートの俊敏な動きに対応する機能が備わったデジタル一眼カメラの活用が主流です。どんな機能かというと「速いシャッタースピード」、「高速連写」、「AFのトラッキング」など。

私は米女子ゴルフツアーの撮影が多いため、ソニーのミラーレス一眼カメラSONY α9 II (以下α9 Ⅱ)を使っています。

上記の機能以外にも「サイレントモード」は無音で撮影できるため重宝しています。ゴルフの試合では、選手のプレーの妨げにならないようスイング中のシャッター音は禁止だからです。また、カメラ本体がたったの約593g!とすごく軽いのも魅力です。ゴルフ場を一日中歩き回りながら1000枚〜3000枚を撮るため、機材が少しでも軽い方が体の負担が軽減するためです。

南さんの主な使用機材。

スポーツ撮影に適したレンズは?

まずはメインの戦力。400mm相当からの「超望遠レンズ」です。

試合時は、試合の妨げにならないよう指定されたエリアから撮影することになります。たとえ被写体との距離が離れていても近寄ることはできません。つまり、スポーツ撮影には、遠方のものを撮るのに適した「超望遠レンズ」が必須です。私は”重量と使いやすさ”をふまえ「FE200-600mm F5.6-6.3G OSS」を使っています。最近は機材が軽量化しているため、終始手持ちの方もいますが、初心者の方は、手ブレやピンボケを気にせず撮影するため、一脚または三脚を付けることをオススメします。

他にも近距離から中距離の被写体をカバーできるように「FE24-105mm F4 G OSS」、「FE70-200mm F2.8 GM OSS」を携行しています。スポーツは一瞬で状況が変わるため、カメラボディ3台に広角、中距離、超望遠の各レンズをつけて、パッと持ち替えて撮影します。時には、スタジアムの全景を撮る時に超広角ズーム「FE12-24mm F4」を活用したり、ボケがキレイな「FE135mm F1.8GM」を使ったりと、撮影の目的によってレンズを使い分けています。ちなみに、カメラボディが1台という場合、まずは超望遠レンズで撮影し、余裕があれば他のレンズと変えてもいいかもしれません。

2013年。ニューヨーク・レッドブルズ対シカゴ・ファイヤーFC

CANON EOS-1D Mark III・EF24-70mm F2.8L USM・絞りF4.0・1/400秒・ISO2000・JPG・WBオート


ピタッと止めたいんです!

スポーツ選手はダッシュしたり、ジャンプするなど、俊敏に動くため、設定を間違えれば、ピンボケ、ぶれぶれの写真となります。意図的ではない限り、被写体がブレるのは避けたいところ。ピタッとシャープな写真を撮るため、私の中の優先順位は、シャッタースピード>絞り>ISO。シャッタースピードは遅くても1/1250秒に設定しています。絞りは撮影の目的によって変更し、ISO感度は成り行きです。

シャッタースピードが1/1000秒より遅くなる場合、手元がブレないよう、深呼吸しながら撮影するよう心がけています。ピンボケを防ぐためには、動いている被写体にピントを合わせ続ける「AFのトラッキング」(α9 Ⅱの場合、コンティニュアスAF)が有効です。

天気とお友達になろう!

2024年。シェブロン選手権2日目、11番へ向かうジャスミン・スワンナプラ

SONY α9 II・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF4.0・1/2000秒・ISO1600・JPG・WB曇り

曇ったり、雨が降ったり、暑かったり、寒かったり。。。野外スポーツの撮影と天気は切っても切り離せない関係です。特に雨天の場合、機材を守るためのレインカバーの着用は大前提として、傘、レインギア、タオルなど、快適な撮影ができるかどうかは装備次第になります。

私は天気アプリ「Accurate Weather」も活用しています。「20分後に雨が降り始め、8分降ったら止みます」など、現在時刻から2時間以内の天気予報が表示されます。レインギアを着た方がいいのかどうかなど事前の準備の判断材料となるため、すごく助かっています。

日の出や日の入りの時間帯は、強烈な太陽光を利用したコントラストの強い写真が仕上がるかもしれませんし、どんよりとした曇り空だと大会独特のピリッとした緊張感を表現できるかもしれません。

刻々と変わる天気は野外撮影ならではの醍醐味。臨機応変に楽しみましょう!



仕事の必需品。雨の日用、晴れの日用シューズと、シューズに入れるカスタムインソール。


2022年.全米女子プロゴルフ選手権1日目、パットの行方を見る笹生優花

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF6.3・1/32000秒・ISO1600・JPG・WBオート


予習して、予習して、予習することでゴールが見えてくる

スポーツの試合は、複数の選手が色んなプレーをしています。一人の選手にピントを合わせているということは、その間、他の選手は撮れないということ。では、どの選手をいつ撮ればいいのか?どういう構図で撮るのか?どのレンズで撮るのか?など、試合中は様々な決断しながら撮影することになります。

決断する材料として、“予習すること”が大事だと思います。まずは競技の特性を学ぶこと。次に、最近の試合の結果やチーム/選手の状態を知ること。最後に、現場についたら、試合前にどこから撮っていいのか、など撮影場所(球場やゴルフ場など)について学ぶこと。入念に予習をすることで、どうやって撮るか判断しやすくなると思います。たとえば「この選手は次のヒットで記録更新となるから、必ず打席の写真を撮ろう」、または「(ゴルフの場合)このホールは難易度が一番易しくて、バーディが出る確率が高いかもしれないから、バーディを取った時/外した時の選手の表情を撮り逃さないように気をつけよう」など。

冒頭でお伝えしたように、試合はナマモノなので、予測が外れることは多々あります。撮り逃したーと思った次の瞬間、大事な場面を撮れることもスポーツカメラマンあるあるです。

2024年。ロサンゼルス・ドジャース対アトランタ・ブレーブス戦の1回、本塁打を放つドジャースの大谷翔平

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF6.3・1/4000秒・JPG・WBオート


中級編:夜間の撮影では光源を探そう

夜間の撮影において、プロスポーツの方がナイター照明がきちっと設置されているため、光量を気にすることなく撮影できます。その一方で、アマチュアスポーツは工夫が必要です。放課後のグラウンドで部活生を撮影したいんだけど、“陽が落ちて暗すぎるー!”ということはよくあります。そんな光量が足りない中でも、シャープな写真を撮る工夫を共有させていただければと思います。

2021年。女子ラグビー・アルカスユース熊谷の練習。*スポーツ総合サイトThe Answerの「青春のアザーカット」に掲載

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF6.3・1/160秒・ISO25600・JPG・WBオート

光量が足りなければ、シャッタースピードを遅くし、絞りを開放し、ISO感度を上げてみましょう。シャッタースピードが遅くなればなるほど、被写体がブレる可能性が高くなりますが、ブレても仕方ないです。そもそも暗い中で、シャープな写真を撮ろうとするのが無理ゲーです。そこで、少しでも光量を得られるように、グラウンドの照明や通路の街灯など、使えそうな光源があるなら利用してみましょう。構図にバックライトが入れば、被写体の輪郭がシャープに見えます。あとは、いつも以上に撮り続けることが大事です。選手は終始動いているわけではなく、走ったり、止まったりするので、運が良ければピタッと躍動感の一瞬を捉えられることもあります。光量が足りない場合、1000枚撮ったうち5枚でもシャープな写真があれば、その日の撮影は成功だと思います。


2008年。ニューヨーク・ジャイアンツ対カロライナ・パンサーズ

CANON EOS-1D Mark III・EF400mm F2.8L USM・絞り優先(絞りF2.8・1/1000秒)ISO1600・JPG・WBオート


試合の前後もシャッターチャンスがある!

リラックスしてたり、笑ったり、悔しがったりするなど、選手は試合中とは異なる表情を試合の前後で見せることがあります。試合中だけが撮影の時間ではありません。試合の前後もシャッターチャンスがたくさんあります。

2024年。シェブロン選手権練習日、中継局の質問に笑顔で答える渋野日向子

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF5.6・1/1250秒・ISO3200・JPG・WBオート

2024年。シェブロン選手権4日目、優勝してトロフィーを掲げるネリー・コルダ

SONY α9 II・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF4.0・1/6400秒・ISO800・JPG・WB曇り


2024年。ロサンゼルス・ドジャース対アトランタ・ブレーブス戦、ベンチで打席に備えるドジャースの大谷翔平

SONY α9 II・FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS・絞りF5.5・1/3200秒・ISO3200・JPG・WBオート


最後に

基本的にスポーツ撮影は体力勝負です。日の出から夕暮れまで撮影を続けることもあります。よく食べて、よく眠って、良いコンディションを整えること。撮影中に小腹がすきそうなら、オヤツを持参しても良いですね。

今回のカメラ・レンズ

ソニーα9 Ⅱ
◉発売日=2019年11月1日 ◉メーカー希望小売価格=オープン


FE 24-105mm F4 G OSS
◉発売日=2017年11月25日 ◉メーカー希望小売価格=181,500円(税込)(実売148,131円税込)
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FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
◉発売日=2019年7月26日 ◉メーカー希望小売価格=321,200円(税込)(実売262,350円税込)
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