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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー鵜川真由子 × クリップオンストロボの使い方

写真・文:鵜川真由子/編集:合同会社PCT

「クリップオンストロボ撮影に挑戦してみよう!」

自然光での撮影も楽しいですが、逆光や暗いイベントなど、光の状態などによりストロボを使った方が綺麗に撮れるシーンがあります。今回はコンパクトで持ち運びができ、必要に応じて取り出して使用できる、便利なクリップオンストロボをご紹介。クリップオンストロボの基本から、効果的な使い方、気をつけるポイントまで、フォトグラファー鵜川真由子さんがプロの視点でわかりやすく解説していきます。

鵜川真由子
株式会社松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレイトを中心に活動している。近年は国内外の都市を巡り、様々な視点から「人と都市との関わり」をテーマに作品制作を続けている。個展やグループ展など多数開催。主な作品に、ある家族と寝食を共 _にし、日本の中の異国である基地での生活を撮影した『Out of the Garden』(キヤノンギャラリー/2013年)、NYのコインランドリーに集う人々の肖像『Laundromat』(富士フイルムフォトサロン/2021年)、浜辺での拾得物を4×5で撮影したシリーズ『Portraits』(PLACE M/2023年)などがある。また新鋭展『Wonderlaund』(入江泰吉記念奈良市写真美術館/2022年)に参加。同タイトルの写真集『Wonderlaund』を刊行。

はじめに

写真撮影においては、光をどう捉えるかが大変重要な要素になります。自然光であれストロボなどの人工的な光であれ、上手にコントロールすることで写真の仕上がりが変わってきますが、今回はクリップオンストロボについての話をしていきたいと思います。

クリップオンストロボとは?

クリップオンストロボとは、カメラ上部に取り付ける外付けタイプのストロボです。モノブロックやジェネレータータイプの大型ストロボとは違ってコンパクトで持ち運びができ、必要に応じて取り出して使用できることが特徴です。 クリップオンストロボには基本的に3つの設定があります。

①ストロボ TTL(自動調光)+ カメラ オート
②ストロボ TTL(自動調光)+ カメラ マニュアル
③ストロボ マニュアル + カメラ マニュアル

①は内蔵ストロボと同じようにカメラの露出やストロボの光量などを全て自動で調整してくれる大変便利な機能です。ある程度のパランスを調整して最適な露出に合わせてくれるため失敗することが少なく、初心者には一番使いやすい設定でしょう。
少し慣れてくると背景と人物の微妙なバランスの表現や、スローシンクロなど様々なシチュエーションでの撮影のために②や③を使う機会が増えてくるかと思います。

今回はどのように使うのが効果的なのか、作例を見て頂きながら解説してきたいと思います。まずはストロボの基本的な使い方から見ていきましょう。

使用機材
・CANON EOS R6 MarkⅡ/EOS R5
・CANON RF24-105mm F4 L IS USM
・CANON スピードライト 550EX

クリップオンでの基本的な撮影方法

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/20秒・ISO800

【ストロボなし、オート露出で撮影】
こちらは暗い室内でストロボを使わず撮影。帽子の影が出ている上に白熱灯の影響で黄色く色がかぶった写真になっています。スクリップオントロボを使うとどのように撮れるのか見てみましょう。


撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/60秒・ISO200

【ストロボTTL、オート露出で撮影】
一枚目はストロボを正面に向けてTTLで撮影しました。白熱灯の影響が消え、顔が明るく壁の模様もしっかり描写されています。顔に直接当たるためややフラットで硬い光になりますが、かえってそれが持ち味になりそうです。こういったカラフルな背景の時は適しているでしょう。


撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/10秒・ISO160

【ストロボTTL、マニュアル露出で撮影】
2枚目は白熱灯の影響を残してその場の空気感を残しつつ、顔の影になっている部分が明るくなるように調整しました。


このようにストロボの向きを横に向けて光を壁にバウンスさせたものです。それによって1枚目よりも光が優しい印象になりました。壁バウンスや、ストロボを上に向けて撮る天井バウンスは直接光を当てずにワンクッション置くことで光が柔らかくなりますが、その分光量が落ちるので調整が必要です。今回はスローシャッターにして背景の露出を上げました。


参考までに、天井バウンスとはこのように上を向けて天井にバウンスさせた光で撮りることです。バウンスさせる白い壁や天井があることが前提ですが、ストロボの光を和らげたいなと思ったらこの方法を試してみてください。

同じ場所でもストロボの使い方次第で全く違った写真に仕上がるのが面白いですね。
ストロボを使うと効果的な状況をいくつか紹介していきましょう。


ストロボの効果的な使い方

■逆光

撮影データ:キヤノンEOS R5・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF10・1/125秒・ISO100

海辺に住む人にはお馴染みのビーチクルーザー。私の愛車です。薄曇りの空を背景に撮りました。雲や空の色、向こう側に見える海もしっかりとした色で描写されています。ストロボの値はマニュアルモードで調整しながら、最終的には+1段分光量を強くしました。
被写体に適度な光が当たることで背景から浮き出たように見え、真っ黒な自転車のディテールもくっきり写っています。では、もしストロボを使わなければどうなっていたのか見てみましょう。

【BEFORE】


空色をしっかり出すために露出を空に合わせた場合。
自転車はシャドウになってしまいます。


逆に自転車に露出を合わせた場合、空も海も完全に白く飛んでしまいました。


撮影データ:キヤノンEOS R5・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF8・1/125秒・ISO100

半屋内のようなシチュエーションで逆光だったためストロボを使いました。Tシャツの文字もはっきり見え、背景も人物も両方がバランスよく写っています。

【BEFORE】

この日は曇り空でしたがそれでも建物の内側と外側では露出の差が生まれてしまい、ストロボ無しでは人物の顔が暗く沈んでしまいます。

■屋外イベントでの撮影

撮影データ:キヤノンEOS R5・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF5.6・1/125秒・ISO640

こちらは東の空から朝日が登り始めた時間帯。空の色が美しく、お神輿の周りにたくさんの人が集まっている様子がよくわかります。こういった動きのある場面でも活用できるのがクリップオンストロボの便利なところです。ポイントは光を強く当てすぎなこと。奥行きのある被写体では光が当たる所と当たらない所の露出の差が大きくなってしまうため、不自然になりすぎないように手動でバランスを調整します。

【BEFORE】

ストロボを使わなかった場合。美しい色を出したくて空の色に合わせると、人物の部分が真っ黒につぶれてしまって何が起こっているのかよくわからないですね。

▪️色を綺麗に出したい時

撮影データ:キヤノンEOS R5・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/125秒・ISO200

窓辺に置いてあるプリザーブドフラワーです。それぞれの花の色が綺麗に出ていますよね。このように、光がしっかりと当たることで被写体の色味が強調され、より鮮やかな写真になります。

【BEFORE】

窓辺に置いてあるので逆光気味なのもあり、部屋の照明の具合もあり、ややくすんだ色味になってしまっています。画像処理である程度は補正できますが、やはりメリハリに欠ける仕上がりになってしまうため撮る時に適切な光で撮っておきたいところです。

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/60秒・ISO1000

夜、街灯のない場所に置いてあるコンテナの黄色とブルーシートの色に引き寄せられて撮った一枚です。全く意味のない写真ですが、この色を出したくてストロボを使いました。昼間の色とも違う、周りが暗い時間帯にクリップオンストロボの光だけで撮ることで人工的な色味になりました。

機材の特徴を知っていれば自由に遊び心のある写真が撮れるようになり、表現の幅も広がっていきます。

▪️暗い屋内での撮影

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/60秒・ISO320

【BEFORE】

上からの定常光だけで撮ったので、側面が暗く沈んでしまっています。

気をつけたいポイント

撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF4.0・1/750秒・ISO32000

画面の半分が黒く潰れてしまっています。これはシャッター幕の動きとストロボ発光のタイミングがずれて画面に黒い幕が写り込んでしまっている状態です。(これを「幕切れ」といいます)ストロボを使って正常に写真を撮るためには、ストロボが発光し始めてから発光し終わるまでの時間にカメラのシャッターが完全に開いている必要があります。

シャッタースピードが早すぎると、発光し終わらないうちに幕が閉じてしまいこのように写り込むのです。同調するシャッタースピードは機種などによってまちまちですが、一般的には1/125秒~1/250秒より遅い時間であることが多いのでストロボの設定をマニュアルにして撮る際には気をつけましょう。


撮影データ:キヤノンEOS R6 MarkⅡ・RF24-105mm F4 L IS USM・絞りF5.6・1/125秒・ISO1000

こちらはまだ夜明け前のあたりが暗い時間帯からお神輿を担ぐ人たちです。
暗い場所でストロボを発光すると光量が強くなるため、チャージ(一度光ってから次の発光までに充電する時間)が遅くなり、連続してシャッターを切ることは難しくなります。また電池の減りも早いため予備のバッテリーを常備しておくことをお勧めします。

どんなストロボを選べばいいか?

さて、ここまでいろんなシチュエーションでのストロボの使い方を見て頂きました。 では一体どんなストロボを買えばいいのか?

いくつかチェックポイントを挙げてみたいと思います。

①TTL(自動調光)がついているか
TTLに対応しているストロボは露出や撮影距離が変わる度に手動で設定を変える必要がなく、カメラと連動して自動で適正な光量に調整してくれます。初心者の方には特に、もちろんそうでない方にも非常にありがたい機能です。

②ストロボが上下左右に稼働するか
最初に見て頂いたように、正面を向くだけではなく上を向いたり横を向けたりして光の質を変えることで表現の幅が広がるため、首振り可能なものを選びたい所。

③ガイドナンバー
ストロボの発光量のことです。
正確には「ISO100の時に1mの撮影距離で適正露出となる絞り値」なのですが、何のことやら…と思われる方はひとまずガイドナンバーの数値が大きいほど光量も光が届く距離も大きくなると覚えておくといいでしょう。

④ハイスピードシンクロ
ストロボの同調速度を超える高速シャッターでもしっかり光が周り、明るい屋外での日中シンクロを楽しむことも可能になります。初心者からステップアップし、表現の幅を広げたい人にはあるといい機能でしょう。

⑤ワイヤレス機能
さらにステップアップし、サイドからの光やクリップオンストロボを使った多灯ライティングに挑戦したい方にはマストな機能ですね。

最後に

クリップオンストロボ一灯だけで、こんなにも様々なシチュエーションで役立つということがおわかりいただけたかと思います。自分に合ったもの、撮りたいことを助けてくれるものを選び、写真表現をより楽しいものにしてくださいね!

今回のカメラ・レンズ

CANON EOS R6 MarkⅡ
◉発売=2022年12月15日 ◉価格=オープンプライス
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CANON EOS R5
◉発売=2020年7月30日 ◉価格=オープンプライス
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CANON RF24-105mm F4 L IS USM
◉発売=2018年10月25日 ◉価格=オープンプライス
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スピードライト 550EX
◉販売終了品