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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 曽根原 昇 × パナソニック LUMIX G100D

写真・文:曽根原 昇/編集:合同会社PCT

軽量コンパクトでありながら本格仕様のミラーレス!パナソニック LUMIX G100D実写レビュー

マイクロフォーサーズ規格のレンズ交換式ミラーレスカメラ、パナソニック「LUMIX G100D」が登場しました。「気軽さ」と「本格さ」の両輪が魅力の本機。写真家、曽根原昇さんに解説いただきました。

曽根原 昇(そねはら・のぼる)
信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し、雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「冬に紡ぎき -On the Baltic Small Island-」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「関東牛刀ここにあり」(富士フォトギャラリー銀座)など、ほか多数。

はじめに

パナソニックのLUMIX G100Dは、4/3型センサーを搭載したマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラです。気軽に使えるコンパクトなカメラだけど、レンズ交換式の本格仕様であるところが一番の特長。

2020年8月発売の前モデルLUMIX G100から、ほとんどデザインを変えずの登場ですが、リアルなユーザーのニーズに応えた魅力をもっているこのカメラ。今回は、新たに加わった望遠ズームキットのレンズも試しながらのレビューをお届けしたいと思います。

スマホより大きなセンサーサイズで高画質

LUMIX G100Dの特長は何といってもコンパクトで軽いこと。幅は約115.6mm、高さは約83.1mmで、重さは約346g(バッテリー、メモリーカード含む)と、本当に小さく軽いので、持ち歩いていても邪魔になることがありません。これって、いつも一緒にいたいカメラの必須条件ですね。

そんな、LUMIX G100Dが搭載しているイメージセンサーが、有効2030万画素の4/3型Live MOS センサーになります。いわゆるマイクロフォーサーズ規格に対応したイメージセンサーでありますが、一般的なスマートフォンやコンパクトデジタルカメラに比べて、センサーサイズが大きく高画質であるところがポイントです。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/500秒・-0.3EV補正・ISO200・WBオート・フォトスタイル スタンダード

一般的なスマートフォンやコンパクトデジタルカメラに比べて、十分に大きなイメージセンサーですので、基本的な解像性能や階調性能は抜群に高く、SNSへの投稿はもちろんのこと、写真プリントでも満足できるだけの優れた画質があります。

G100Dの常用最高感度はISO25600となっていますが、その最高感度であっても下の作例くらいに、SNSなどでは十分に通用する高感度性能があります。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/50秒・ISO25600・WBオート・フォトスタイル スタンダード

後述する「インテリジェントオート」や「インテリジェントオートプラス」といった、全自動撮影モードですと、ISO6400やISO3200といった、比較的に低めのISO感度が選択されることが多いのですが、このくらいになるとSNSはもちろん、大伸ばししたプリントでも十分に綺麗な画質が得られます。コンパクトなボディながら、大きなイメージセンサーを搭載しているメリットを実感できるところです。

【撮影データ】パナソニックG100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/15秒・ISO6400・WBオート・フォトスタイル スタンダード


コンパクトなボディながらも使いやすい操作性

LUMIX G100Dには前モデルとして、2020年8月発売のLUMIX G100がありました。LUMIX G100はVlogなどの動画撮影を意識したミラーレスカメラでしたが、そうした基本仕様はそのままに、より静止画撮影用途に比重をおいたパッケージングに変更したマイナーチェンジモデルが、本機LUMIX G100Dというわけです。

LUMIX G100Dにモデルチェンジして、一番大きな変更点がファインダー(EVF)の仕様でしょう。前モデルの液晶ディスプレイファインダー(約368万ドット相当、0.73倍)から有機ELファインダー(約236万ドット、0.74倍)に変更されています。解像度が約368万ドット「相当」から約236万ドットになっていますので、数値だけ見るとアレですが、有機ELファインダーは、暗部の締まりが良好なうえに鮮鋭性に優れていますので、実際の見え具合はLUMIX G100Dの方が良いです。静止画撮影でしたらなおのことだと思います。

また、前モデルLUMIX G100ではMicro-BだったUSB端子が、USB Type-Cになりました。USB端子といえばType-CといわんばかりにType-C化が進行している昨今ですので、コネクタを統一する意味でも便利ですし、給電規格であるUSB PD(USBパワーデリバリー)にも対応しているため、バッテリーをカメラに装着した状態での充電や、対応するモバイルバッテリーでの充電/給電も早く完了することができます。

ボタン/ダイヤル/レバー類の配置や使用感は、共通のボディを使用しているだけに、前モデルLUMIX G100から基本的に変更はありません。しかし、限られたスペースを上手く利用しているために、コンパクトなカメラとしては上々の操作性を実現しています。

大きくてシッカリしたグリップを備えているのは、本機LUMIX G100Dが本格的なミラーレスカメラであることの証。これも前モデルLUMIX G100から変わらないところですが、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラと比べると、明らかな撮りやすさを実感できる大きなメリットだと思います。

モニターは、3.0型で約184万ドットのバリアングル式と、これも前モデルLUMIX G100から変更はありません。ただ、動画撮影での用途も大きく意識されたコンパクトボディのミラーレスカメラですので、同等の仕様の継承は妥当といえるのではないかと思います。タッチパネルを搭載していますので、スマートフォンのように目的のところをタッチするだけでピントを合わせることができます。

気軽に使える高性能な全自動撮影モード

コンパクトなミラーレスカメラのLUMIX G100Dですが、気軽に持ち出しやすいカメラだけに、気軽に撮れる優秀な全自動モードが備わっています。

モードダイヤルを「iA」にすれば、カメラを向けるだけでカメラが自動的に最適な設定で撮影してくれる「インテリジェントオートモード」になります。

「インテリジェントオートモード」は、人物、風景、マクロ、夜景&人物、夜景、手持ち夜景、料理、赤ちゃん、夕焼け、ローライト、標準設定(どのシーンにも当てはまらない場合)のなかから、シーンを自動で認識して、そのシーンに最適な設定に自動で切り換わる機能。

【撮影データ】パナソニックG100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/80秒・ISO250・撮影モード インテリジェントオート

撮影する当人は、特に難しいことを考えなくても、最適な設定をカメラが選んでくれるため、シャッターを押すだけで綺麗な写真を撮ることができます。

「インテリジェントオートモード」ではちょっと物足らない、もう少し自分の意思を写真に反映させたいという場合は、「インテリジェントオートプラス(iA+)」が便利です。モニター画面のアイコンをタッチすると、「インテリジェントオートモード」か「インテリジェントオートプラス」かの選択画面になり、どちらかをタッチ操作で選べます。

「インテリジェントオートプラス」では、カメラが自動的に選択した設定に加えて、明るさ、色合い、ボケ味を好みで調整できるところがポイントになります。上の画面は明るさをコントロールできる画面で、スライダーを左右に動かすだけで写真を明るくしたり暗くしたりといった調整が可能になります。

【撮影データ】パナソニックG100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.5・1/100秒・ISO200・WBオート・撮影モード インテリジェントオートプラス

「インテリジェントオートプラス」の「明るさ調整」を使って、写真を明るめに仕上げてみました。全自動モードで、ただ写真を撮るだけよりも自分の「もっとこういう風に写したい」という意思が反映されます。これはもう写真を手段とした、自分の表現ともいえるのではないでしょうか。

特によく活用したいクリエイティブオート

「インテリジェントオートモード」系とはちょっと異なる、「クリエイティブコントロール」もコンパクトなLUMIX G100Dを使う上で楽しい撮影モードです。

撮影時に、好みの色調に合わせた表現を選択して撮ることで、自分らしい、とても印象的な表現を楽しめます。選択できる効果は計22種類と多彩に用意されていますが、今回はそのなかから2種類を紹介してみましょう。

22種類の「クリエイティブコントロール」のひとつ「トイポップ」です。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.1・1/200秒・ISO1000・クリエイティブコントロール トイポップ

安価で素朴、だけどそこがいいトイカメラをイメージした「トイフォト」に、高彩度でサイケデリックなイメージを付加したのが「トイポップ」ですが、極端に落ち込んだ周辺光量落ちのなかにポップな画が視線の中心になる結果、何ということもない普通の光景を非常に印象的に表現できます。

さらに、22種類の「クリエイティブコントロール」のひとつ「インプレッシブアート」で撮った写真が以下の作例。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.0・1/320秒・ISO200・クリエイティブコントロール インプレッシブアート

空の雲や被写体の輪郭が強く表現されているようになり、ちょっと似た傾向の「ブリーチバイパス」とはまた違った傾向の奥深い印象の写真が撮れます。インプレッシブの名の通り、非常に印象的で強烈な表現です。

その他にも多くの独特な表現が楽しめる「クリエイティブコントロール」は、撮影時にモニターやファインダーで効果を確かめながら選択できるので、操作方法はまったく難しいものではありません。パナソニックのGシリーズカメラの多くが搭載する機能ですが、気軽に持ち運べるLUMIX G100Dでこそ楽しんでもらいたい機能だと思います。

本格的な撮影にももちろん対応

LUMIX G100Dは、マイクロフォーサーズ規格のレンズ交換式ミラーレスカメラですので、気軽な小型・軽量なカメラとはいっても、本格的な撮影に対応できるのが優れどころです。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/60秒・ISO320・WBオート・フォトスタイル スタンダード

絞り優先AE(モードダイヤルのA)でお稲荷様の並びを撮影しました。キットズームのLUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.で、広角よりの焦点距離18mm(36mm相当)での撮影ですが、センサーサイズの大きさに助けられて程よいボケ感でピントを合わせた被写体の存在感を浮き上がらせてくれています。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF5.6・1/320秒・ISO640・+0.7EV補正・WBオート・フォトスタイル スタンダード

枯れた水草を押し分けて進むカモをシャッター速度優先AE(モードダイヤルのS)で撮りました。画面に写るすべての被写体との距離を瞬時に算出する空間認識技術のAFを採用しているとの頃。実際に、コンパクトなミラーレスカメラながらもAFの合焦性能と追随性能は十分に満足できるレベルにあります。ピントを合わせたい被写体にタッチするだけでトラッキングを開始してくれます。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF6.3・1/60秒・ISO3200・-0.3EV補正・WBオート・フォトスタイル L.モノクローム

パナソニック独自の色仕上げ設定である「フォトスタイル」が使えます。スタンダードをはじめとしたヴィヴィッドやナチュラルなど、12種類から選択できますが、なかでも通常のモノクロームより本格的な「L.モノクローム」は、大変に高品質なモノクロ画像で使いでがあると感じました。銀塩フィルムの階調特性を研究したとのことで、デジタル感が少ない自然な心地良さはかなり病みつきになります。

【撮影データ】パナソニックLUMIX G100D・LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.・絞りF3.5・1/15秒・ISO3200・WBオート・フォトスタイル スタンダード

1/15秒と比較的スローシャッターでの手持ち夜景撮影ですが、ブレを起こさずシャープに撮ることができました。LUMIX G100D自体は手ブレ補正機能を搭載していませんが、キットズームの「LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.」と「LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.」はいずれも光学式手ブレ補正を搭載しており、これが存外に良く効果を発揮してくれます。写りも良いレンズですので、最初の交換レンズとして信頼感が高いといえるでしょう。

LUMIX G100Dならではのパッケージングを紹介

LUMIX G100からLUMIX G100Dになって、標準ズームキット(LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.)のセット販売の他に、望遠ズーム(LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.)を加えたダブルズームキットも用意されるようになりました。これも静止画撮影用途の需要に応えたパッケージングといえるでしょう。カメラボディにマッチする小柄な望遠ズームながら、35mm判換算で300mm相当の超望遠域にまで届く優れものです。

とはいっても、動画撮影への対応も進化しています。カメラ本体のUSB端子がUSB Type-Cに変更されたことにともなって、オプションのトライポッドグリップ「DMW-SHGR2」もUSB Type-Cに対応しました。こちらもセットでのお得な販売が用意されていますので、Vlogなどの動画撮影を目的とする人にはお勧めです。

まとめ

Vlogなどの動画撮影を意識して誕生したLUMIX G100でしたが、静止画撮影用途の需要が高いといった、ユーザーのニーズに合わせて細部を見直したのがLUMIX G100Dです。

いわゆるマイナーチェンジの範疇に入ると思いますが、見え具合の良いファインダーへの変更や、普及率を急激に広めているUSB Type-C端子の搭載は、地味ながらも実際の撮影や使用において、思ったよりも利便性の高さを感じさせてくれるものだと思います。

パッケージングの変更も的を得ているもので、特に望遠ズームキットとして用意された「LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.」の存在価値の高さには、かなり眼を引くものがあります。このサイズ感で300mm相当の望遠撮影ができるというのは、ミラーレスカメラならではの恩恵があるというものではないでしょうか。

普段使いのカメラとして、また、旅のお供のカメラとして、素晴らしい相棒となってくれるのは間違いのないことだと思います。

今回のカメラ・レンズ

パナソニック LUMIX G100D 標準ズーム・望遠ズーム Wキット
◉発売=2024年1月26日 ◉価格=オープン(実売 Wレンズキット:106,920円・税込)
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