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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 小松ひとみ×冬景色の撮り方 『装備を整え、白銀のキャンパスへ、さあ出かけましょう!』

写真・文:小松ひとみ/編集:合同会社PCT

寒い季節になると、冬の景色に写真欲を掻き立てられる写真愛好家の方も多いかと思います。今回は秋田県を拠点に活動されている写真家・小松ひとみさんに、冬景色を撮影する際に心掛けるポイント、コツなどを解説いただきました。愛用する富士フイルムXシリーズによる作品とともにお届けします。寒い屋外へお出かけの前に、ぜひご参考ください。

小松ひとみ
1956秋田県仙北市角館町に生まれる
1974秋田県立角館南高校卒業
1974〜1982(株)ユニチカバスケットボール部に在籍
1983〜1999 黎明舎勤務 千葉克介氏に師事
1999 独立し、フリーランスのカメラマンとして活動を始める
各種雑誌、カレンダーなどで風景写真を中心に作品を発表。
主に東北の四季をテーマとし、そこに生きる人々・職人・温泉・郷土料理といったジャンルにも目を向け撮影。
JNP 日本風景写真協会 指導会員

主な写真展に「桜逢瀬」「みちのく色語り」。写真集に「光彩」カッパンプラン刊・「みちのく色語り」クレオ刊・「Harmony」秋田県町村会100周年記念写真集。 
HP 小松ひとみのフォトワールド

FUJIFILM X-H1・XF10-24mmF4 R OIS WR・10mmで撮影・絞り優先AE(絞りF11・1/420秒)ISO400・-0.7EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(青森県・八甲田)


1-機材、道具の点検からはじめよう

よし今だ!と言うときにカメラが動かず、シャッターが切れない・・・なんてことにならないように、まずは防塵防滴・耐低温使用のカメラ、レンズがあると安心です。

それでも予期せぬトラブルは撮影には付き物、サブカメラは準備しておきましょう。悪天候や厳冬期でのレンズ交換はできるだけ避けたいところ、ここの撮影はこのレンズ!と最初から一本決めて撮影に臨むスタイルがお勧め。各レンズにそれぞれ違うカメラボディを装着するのが理想的ですが、レンズ一本でも充分楽しめます。

重要なのはカメラのバッテリー。冬場は消費が激しいので予備バッテリーや外部バッテリーは準備しておきましょう。液晶画面の表示にバッテリーは大きく消費するので、設定が完了したらOFFにすることも心がけましょう。

星景や日の出の撮影時には、霜付きや結露を防いでくれるレンズヒーター、三脚には雪上撮影用のスノーシューをつけておくと便利です。

2-機材以外の装備もあらかじめ準備しておきましょう。

下着や靴下は即乾き、熱に転換してくれる吸湿発熱素材のインナーがおすすめ。靴は歩きやすさも大切ですが、私は長時間粘れる方を重視し、まずは暖かさ優先のものを選びます。

指先を守るフォトグローブ、ネックウォーマーやフェイスマスク、サングラスなどの細かい装備も忘れずに。ウェアーなどにはあらかじめ防水スプレーを塗ることも忘れずに。また、ウェアー、機材には反射板をつけておくと安心安全です。他に簡易スパイク、スノーシュー、和かんじき、アイゼン、スキー、ストックなど、無理のない範囲で準備しましょう。

撮影後の機材の取り扱いにも注意が必要です。三脚は濡れたまま、雪がついたままで車に収納せずにしっかりと拭いてから車に収納しましょう。雪落とし用にブラシがあると便利です。また、外気と車内との温度差が激しすぎるとカメラが曇ってしまいます。急激な車の暖めは禁物です。

その他、車の脱出道具、スコップ、停止板などもあると安心。ウォッシャー液も寒冷地仕様に交換を忘れずに。

3-撮影場所が決まったら現地の情報を事前に入手。

特に冬場は太平洋側と日本海側では天候が全く違います。
そのエリアの気候風土をあらかじめ予習しておくこともとても大切です。

4-季語からヒントを得て季節の移り変わりを表現してみよう

日本の季語から、撮影時のヒントをもらっています。例えば晩秋から初冬にかけては冬隣、初霜、初時雨…などという美しい言葉がたくさんあります。その中の一つをその日の撮影のお題として自分に課しても面白いと思います。

この日は「冬隣」の写真を撮りに白神山地へ。雪が降り始めた時、迷うことなく水辺の落ち葉を探し、降る雪と絡めました。テーマを絞っていたからこそ一瞬の雪も逃すことなく撮ることができたと思っています。

FUJIFILM X-E1・XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR・23.3mm(35mm判換算35mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF5.6・1/52秒)・ISO400・-0.7EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:ASTIA・(青森県・白神山地)


FUJIFILM X-E1・XF55-200mmF3.5-4.8R LR OIS・190.3mm(35mm判換算285mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF4.8・1/850秒)・ISO400・-0.7 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(秋田県・仙北市)

霧氷の中で残り柿の赤が印象的でした。早朝のキリッとした寒さを表現するために少し青よりのベルビアモードを選択。行く秋を惜しむ気持ちと冬始めの二つの季節が混在する情景を表現することができました。

5-冬の森へ

吹雪が続いた後の束の間の晴れの日は、冬の森の撮影チャンス。
①森の雪面も新雪で覆われ、その中に立つブナの木肌にはそれまでの猛烈な横殴りの吹雪の爪痕が美しく残されています。
②晴れた時には樹冠を見上げてみます。冬の貴重な青空とブナの霧氷とのコラボは寒さを忘れる美しさです。

①FUJIFILM X-H1・XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR・27.9mm(35mm判換算42mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF11・1/180秒)・ISO200・-1 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(青森県・八甲田)


②FUJIFILM X-H1・XF10-24mmF4 R OIS WR・10mm(35mm判換算15mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF8・1/280秒)・ISO200・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(青森県・八甲田)


6-氷を撮ろう

北海道、大津海岸のジュエリーアイスは人気の撮影スポット。事前の情報によると見頃を過ぎたとのことでしたが、一度は見てみたいと訪れました。砂浜に打ちあげられた面白い氷を探し、しばらくじっと見つめていると、その氷それぞれの美しい瞬間があると思いました。ある氷は波が引いて行く時(①)、ある氷は周りの砂がキラキラ光りまるでテイアラか氷のマスクのように光る時(②)。なんだかオンリーワンの氷に出会えたようで時を忘れて撮影に夢中になりました。

①FUJIFILM X-T1・XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR・71.5mm(35mm判換算107mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF8・0.13秒)・ISO200・-1.3 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(北海道・豊頃町)


②FUJIFILM X-T1・XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR・43.9mm(35mm判換算66mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF4.7・1/3800秒)・ISO200・-1 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(北海道・豊頃町)

北西の季節風が吹き荒れた後には十和田湖にしぶき氷が発生します。この日は朝から暖かく、氷には鋭さが少し足りないようにも思えましたが、やわらかな日差しと組み合わせようと、水際まで降りて氷と水平になる高さに三脚を構えました。氷の背景の水辺のキラキラの玉ボケの大きさを絞りで調節しながら仕上げていきました。

③FUJIFILM X-H1・XF100-400mmF4.5-5.6 R LM WR・400mm(35mm判換算600mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF5.6・1/8000秒)・ISO200・-1.30EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(青森県・十和田湖)

レンズに PLフィルターを装着して氷の屈折を利用し、表面に虹を出現させてみました。この時はクジラ?鹿?などと現れる様々な色彩に一人大騒ぎしながら撮っていました。氷の厚さによって表現が変わるようです。薄氷の時の方が面白い形がたくさん現れるので試してみてください。

④FUJIFILM X-T2・XF100-400mmF4.5-5.6 R LM WR・323.2mm(35mm判換算485mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF14・1/20秒)・ISO200・-1.3 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・PLフィルター使用・(秋田県・鳥海山)


7-放射冷却現象の朝は霧氷や霜に出会えるチャンス

「明日の朝は放射冷却により気温が下がり・・・」と言う天気予報が出たら、次の日の早朝は霧氷や霜の撮影のチャンス。湖、沼、川、などあらかじめ狙いを定めておきます。現場で慌てないよう、事前にロケハン、撮影のシミュレーションをしておきましょう。

①広めの景色を撮り終えたら、②まだ日が入らない日陰や土手などを散策し光の陰影の小さな被写体探しをしましょう。あちこちに宝物が潜んでいます。


①FUJIFILM X-T3・XF10-24mmF4 R OIS WR・20.5mm(35mm判換算31mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF13・1/640秒)・ISO200・-0.7EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(秋田県・大仙市)


②FUJIFILM X-H1・XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR・55.6mm(35mm判換算83mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF5.6・1/3000秒)・ISO400・-1.3EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(秋田県・北秋田市)


8-雪の色再現を自分流に

私が富士フイルムのカメラを使う最大の理由が、フィルムシミュレーション。種類の違うフイルムがカメラに無数に入っているように色を操れるのがお気に入り。設定次第では3枚同時に撮ることもできます。(JPGのみ)
後で冷静にセレクトしてもいいのがありがたいところです。

FUJIFILM X-E1・XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR・128mm(35mm判換算192mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF5・1/1200秒)・ISO400・-1EV補正・WB太陽光・(秋田県・仙北市)
左からPROVIA、Velvia、モノクロモード


9-冬の形を探す

①ダム湖の水辺には自然が作り出した模様が描き出されていました。やわらかな冬の日差しが一瞬差し込んだところを狙ってみました。雪面や湖面などで様々な造形を見つけ出すのも冬の撮影の楽しみです。

FUJIFILM X-H1・XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR・115.3mm(35mm判換算173mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF14・1/110秒)・ISO200・-1EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:PROVIA・(秋田県・上小阿仁村)

②林道を走っていると除雪された道の上にブナの森の影が映し出されていました。タイヤの痕跡が見えないようにローアングルにし、陰影が作る線のみでシンプルな構成になるよう、余分なものを削ぎ落としてみました。

FUJIFILM X-H1・XF100-400mmF4.5-5.6 R LM WR・196.6mm(35mm判換算295mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF11・1/550秒)・ISO400・-1 EV補正・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(青森県・八甲田)


10-樹氷は日本の宝

樹氷といえばちょっとハードルが高いようですが、蔵王、八甲田、森吉山などはゴンドラなどを利用して一気に樹氷原までアクセスすることができます。吹雪の時は歩き回らず、天気が良い日を狙ってください。

写真はどちらも森吉山、
①吹雪の後にできた小さなシュカブラを前景に入れて運よく晴れた山頂を捉えることができ、気持ちの良い作品となりました。
②ワイドレンズでグッと近づき、時々見え隠れする太陽を樹氷と重ねてシルエットとし、
背景には森吉山の山頂を少しだけ入れて遠近感を強調してみました。吹雪の後のダイナミックな樹氷の造形を表現できたと思います。

①FUJIFILM X-T1・XF10-24mmF4 R OIS WR・25.4mm(35mm判換算38mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF14・1/250秒)・ISO200・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(秋田県・森吉山)


②FUJIFILM X-T1・XF10-24mmF4 R OIS WR・10mm(35mm判換算15mm)で撮影・絞り優先AE(絞りF16・1/640秒)・ISO400・WB太陽光・フィルムシミュレーション:Velvia・(秋田県・森吉山)


まとめ

もしかして冬撮影の一番の敵は面倒臭いと思う自分かもしれません!

お家でヌクヌクしていては良いシーンと出会うことはできません。冬装備をしっかり準備して出かけると、思ったよりも意外と快適に撮影に臨むことができます。

そして、人とは違った作品を生みだすことができる最大のチャンスの季節です。思い切ってトライしてみましょう。

小松ひとみさん愛用のカメラ・レンズ

小松ひとみさんが愛用しているのは富士フイルムXシリーズ。
X-H2のプロモーションビデオにも出演されています。

富士フイルム X-H2
◉発売=2022年9月29日 ◉価格=オープンプライス(実売276,210円・税込)
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フジノン XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR
◉発売=2014年11月20日  ◉価格=289,850円(税込)
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フジノンレンズ XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
◉発売=2016年 2月18日 ◉価格=344,850円(税込)
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フジノンレンズ XF10-24mmF4 R OIS WR
◉発売=2020年11月26日 ◉価格=161,150円(税込)
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フジノン XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR
◉発売=2014年7月5日 ◉価格=124,000円(税別)
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