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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー 金森玲奈 ✕ キヤノンEOS R6 Mark II

写真・文:金森玲奈/編集:合同会社PCT

幅広いユーザー層に対応する、正統進化のハイエンドモデル

EOS R6 の発売から約2年。さらに向上したトラッキングシステムや、クリエイティブフィルターなどの機能を備えて新たに登場したEOS R6 Mark IIの魅力を、写真家の金森玲奈さんに解説していただきます。春ならではの風景や身近な心温まるシーンを捉えた作品とともに、EOS R6 Mark IIの世界をじっくりとご堪能ください。

金森玲奈(かなもり・れいな)
東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年よりフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や、怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。 2009年個展「街猫の肖像」 キヤノンギャラリー銀座・福岡 2013年個展「日々を 紡ぐ」 オリンパスギャラリー東京・大阪 2019年個展「ハレとケ」 ソニーイメージングギャラリー銀座 2022年個展「20110701_20210701」 Jam Photo Gallery 他、個展・企画展多数

はじめに

キヤノンEOS R6 Mark IIは、約2420万画素の新しい35mmCMOSセンサーを搭載しており、新シャープネス処理によって約3040万画素のEOS 5D Mark IVを凌ぐ解像性能を実現したといわれています。

枝垂れ桜を見上げて撮影。F1.8のやわらかく大きなボケとピントの合った部分のシャープな描写のバランスが絶妙でした。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF135mm F1.8 L IS USM・AVモード・絞りF1.8・1/500秒・+2.3EV補正・ISO100・WBオート

より精度の上がったAF性能と被写体検出機能

キヤノン独自のAFシステム「デュアルピクセルCMOS AF II」を使用していることで、被写体検出時に画面上のほぼ全域で測距が可能となり、フレーミングの自由度は格段に向上しました。さらにディープラーニング技術によって被写体の特徴を素早く認識し、トラッキングを開始してくれます。「瞳」を検出するスピードも申し分なく、不意に訪れるシャッターチャンスを逃しません。

2匹でくつろいでいた我が家の猫。不意に顔を上げた瞬間、EOS R6 Mark IIは瞬時に瞳を捉え、モニター上でしっかりと視線が合ったタイミングでシャッターを切れました。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・70mmで撮影・絞りF2.8・1/100秒・-0.3EV補正・ISO1250・WBオート

ハイエンドモデル初となる多彩な撮影モードを搭載

スタンダードな撮影モードに加えて、新たにいくつかの撮影モードがプラスされました。これまでエントリーやミドルモデルに搭載されていた「SCN(スペシャルシーン)モード」や個性的な10種類の世界観を楽しめる「クリエイティブフィルター」、静止画撮影と同時に撮影直前の動画を記録し、その日1日のダイジェスト動画も作れる「プラスムービーオート」など、機種の垣根を超えていろいろなカタチで写真を楽しめる要素が加わったことは率直に嬉しい進化だと思います。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・56mmで撮影・絞りF6.3・1/320秒・ISO100・WBオート・撮影モード:クリエイティブフィルター(水彩風)

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・24mmで撮影・絞りF4・1/80秒・ISO320・WBオート・撮影モード:クリエイティブフィルター(ラフモノクロ)

満開の桜をふたつのクリエイティブフィルターで撮影しました。淡い色彩の中に輪郭のラインをしっかりと浮かび上がらせてくれる「水彩風」は、細い枝や桜の一輪一輪を繊細に表現してくれました。もう1枚は、雨で散った花びらに埋め尽くされた地面を這う桜の根の白と黒の対比を強調するために「ラフモノクロ」を使いました。同じ被写体のそれぞれの表情をより鮮烈に印象づけるのに、クリエイティブフィルターがひと役買ってくれたように思います。

EOS R6との比較

EOS R6 Mark IIのサイズや重量は、前モデルのEOS R6とほぼ同等です。大きく変わった点はスイッチの配置変更でしょう。ボディ右上面にあるモードダイヤル横のサブ電子ダイヤル2と同軸に電源スイッチがあり、撮影時の設定変更などはほぼ右手だけで完結できるようになりました。これまでモードダイヤルに組み込まれていた動画撮影機能は、前モデルの電源スイッチの位置に独立して配置されたことで、スチールと動画の切り替えの煩雑さが軽減されたように思います。

ピント合わせ時に大活躍のジョグダイヤルは、その形状がより丸みを帯びたものに変更されました。さらにピント位置を微調整したい時の、ほんのわずかな指の動きにもしっかりと応えてくれるので、地味ですが大きな進化といえるでしょう。

画素数が2010万画素から2420万画素に増えたことで、より高精細で繊細な描写を得られています。410万画素の違いがどれほどかと思われるかもしれませんが、旧モデルから乗り換えた私が使った実感としては、キヤノンらしいやわらかさの中にある芯の部分がよりクリアになったという印象です。レンズの性能を最大限に生かしたボケ味はあくまでもやわらかく、質感の描写の深みが増したように感じました。このボケ感とシャープさのバランスが絶妙で、EOS 5D Mark IVを凌ぐ描写力というのも頷けました。

地面にびっしりと敷き詰められたドングリの、雨に濡れてツヤツヤと光る表面がとても美しかったです。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・105mmで撮影・絞りF5・1/160秒・-1.3EV補正・ISO1250・WBオート

雨で枝に張り付いた桜の花びらや枝のクリアな描写を、前ボケのやわらかさが優しく包んでくれました。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・105mmで撮影・絞りF4・1/125秒・+1.3EV補正・ISO640・WBオート

画素数が上がると高感度性能を気にする人もいると思いますが、EOS R6 Mark IIはISO6400程度までならほぼノイズ感がなく、解像感が損なわれることもない滑らかな描写を実現しています。

影の部分にノイズが乗ることもなく、焼き菓子のそれぞれの質感も忠実に再現できました。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・70mmで撮影・絞りF2.8・1/80秒・ISO2500・WBオート

長男猫の背中にあごを乗せてくつろぐ次男。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・70mmで撮影・絞りF2.8・1/100秒・-1EV補正・ISO5000・WBオート

撮影頻度の高い「人物」・「動物」・「乗り物」に特化した被写体検出性能は、ジャンル内でさらに細分化されて「動物優先」に新たに「馬」が、乗り物優先に「鉄道・飛行機」が追加されました。また、これまでは被写体に合わせて逐一変更する必要があったため、設定していた被写体ではないものとの突然の遭遇時には被写体検出が機能せず、シャッターチャンスを逃してしまうことも。EOS R6 Mark IIはこれらの全検出対象をカメラが判別する「自動」が加わったことで、その時々の撮影の瞬間を逃しません。

さらにEOS R6ではシーンインテリジェントオート時のみ対応していた、被写体の動きに応じてワンショットAFからサーボAFに自動で切り替わる「AlフォーカスAF」がAF設定に追加されたことで、シビアにピントを合わせたい被写体から動きモノまで、AF方式を気にせず撮影に集中できるようになりました。

滑り台に大喜び。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・70mmで撮影・絞りF4.5・1/1000秒・+0.3EV補正・ISO640・WBオート

庭の木に刺したリンゴを、ついばみにやってきた鳥をブラインド越しにパチリ。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/2000秒・+0.3EV補正・ISO100・WBオート

EOS R6 Mark IIと日々を紡ぐ

シンクロ兄弟。当たり前と思えるしあわせな時間。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・26mmで撮影・絞りF2.8・1/200秒・+0.3EV補正・ISO320・WBオート

困った時はいつも招き猫頼り。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・70mmで撮影・絞りF2.8・1/100秒・+1.3EV補正・ISO100・WBオート

カフェラテに桜咲く。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-70mm F2.8 L IS USM・41mmで撮影・絞りF2.8・1/60秒・+1.3EV補正・ISO640・WBオート

子供の頃から大好きだった公園。雨降りのおかげで満開の桜を独り占めできました。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF24-105mm F4 L IS USM・88mmで撮影・絞りF4・1/100秒・+1.7EV補正・ISO800・WBオート

水面に映った桜と水面を流れる花びらを撮影。多重露出をしたような1枚に。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF135mm F1.8 L IS USM・絞りF1.8・1/1250秒・+1.7EV補正・ISO1250・WBオート

夕焼けにポカリと雲が浮かんでいるような不思議なお菓子。テーブルへの映り込みも美しかったです。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・RF70-200mm F2.8 L IS USM・115mmで撮影・絞りF2.8・1/60秒・+1EV補正・ISO500・WBオート

金森流EOS R6 Mark IIの楽しみ方

撮りたいと思った瞬間を、その場の空気ごと閉じ込めてくれるような描写力がEOS R6 Mark IIの一番の魅力だと思います。RFレンズとの組み合わせがその良さを最大限に引き出してくれるのはもちろんですが、1900年代に製造されてRFマウントで復刻した、ちょっと風変わりなボケ味を持つレンズも魅力的です。このレンズが見せてくれる私の心が揺れた瞬間を拾い集めるのも、最近の楽しみのひとつになっています。

満開の河津桜と。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・New Petzval 55mm f/1.7MKII・絞り値データなし・1/60秒・+2.7EV補正・ISO200・WBオート
※こちらのレンズはキヤノンとライセンス契約を結んでおらず、レンズ側で設定する絞りの情報は画像に記録されないため、絞り値データなしとしています。

レトロな喫茶店の雰囲気をもう一段深めてくれるような描写もお気に入りです。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・New Petzval 55mm f/1.7MKII・絞り値データなし・1/60秒・ISO800・WBオート
※こちらのレンズはキヤノンとライセンス契約を結んでおらず、レンズ側で設定する絞りの情報は画像に記録されないため、絞り値データなしとしています。

実家に置かれた姪っ子たちのおもちゃ。なんだか懐かしい気持ちになりました。

【撮影データ】キヤノンEOS R6 Mark II・New Petzval 55mm f/1.7MKII・絞り値データなし・1/125秒・+2EV補正・ISO100・WBオート
※こちらのレンズはキヤノンとライセンス契約を結んでおらず、レンズ側で設定する絞りの情報は画像に記録されないため、絞り値データなしとしています。

機材について

今回ご紹介したEOS R6 Mark IIは、RF24-105mm F4 L IS USMとRF24-105mm F4-7.1 IS STMのふたつのレンズキットがあります。両レンズともに手ブレ補正機能を搭載しているので、ボディ側との協調ISを考えればどんな撮影シーンにも充分対応可能ですが、RF24-105mm F4-7.1 IS STMは開放F値が可変タイプとなっており防塵防滴も非対応のため、さまざまな撮影条件で撮影する人やボケにこだわりたい人にはRF24-105mm F4 L IS USMの方がオススメといえるでしょう。他にも EOS R6 Mark IIの解像感を生かせる、明るい開放F値を持つ単焦点レンズもオススメです。

キヤノンEOS R6 Mark II
◉発売=2022年12月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

キヤノンRF24-105mm F4 L IS USM
◉発売=2018年10月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

キヤノンRF24-105mm F4-7.1 IS STM
◉発売=2020年4月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

キヤノンRF135mm F1.8 L IS USM
◉発売=2023年1月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

キヤノンRF24-70mm F2.8 L IS USM
◉発売=2019年9月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

キヤノンRF70-200mm F2.8 L IS USM
◉発売=2019年11月 ◉価格=オープン価格詳しくはこちら

New Petzval 55mm f/1.7MKII
◉発売=2019年5月 ◉価格=44,800円(アルミニウムブラック)/59,800円(真鍮ブラック)/52,800円(真鍮ゴールド)

まとめ

前モデルの発売から約2年という短いスパンでの登場となったEOS R6 Mark II。画素数のアップによる解像感の大幅な向上だけでなく、AFや被写体検出機能などをより細分化して利便性を高めた機能面の進化に加え、新たにSCNモードやクリエイティブフィルターを搭載するなど、エントリーユーザーにも訴求できるポイントを組み込む柔軟さは、ハイエンドモデルとしては初の試みといえるのではないでしょうか。そういったキヤノンの新たな挑戦を具現化したEOS R6 Mark IIは、幅広いユーザー層に受け入れられる一台だと思います。