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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー コムロミホ ✕ 旅写真におすすめの高倍率ズームレンズ

写真・文:コムロミホ/編集:合同会社PCT

高倍率ズームレンズ1本で沖縄旅行2泊3日の旅へ!

標準ズームレンズだけでは望遠側がもの足りず、望遠ズームレンズでは広角側が足りないので広い範囲を撮影できない。2本を持ち歩くのは重いし…。そんな時に便利なのが、高倍率ズームレンズだ。高倍率ズームレンズなら、広角から望遠まで幅広い範囲を一本で撮影することができ、旅の機材としても重宝する。今回はそんな高倍率ズームレンズを写真家のコムロミホさんにを使ってもらい、旅写真での使いこなしを教えていただいた。

コムロミホ
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。

はじめに

旅に一本だけレンズを持っていくとするなら、どんなレンズを選ぶだろうか。旅先によって出会える被写体は大きく変わるが、風景やスナップ、料理、ポートレートなど、さまざまな被写体を一度に撮影できるのが旅写真の魅力だろう。そのため、欲張っていろんなレンズを持ち歩きたくなるが、荷物が増えてしまい、機動力が落ちてしまう可能性がある。そこでおすすめしたいのが、広角から望遠まで一本でカバーできる高倍率ズームだ。

Nikon(ニコン) Z fcにNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを組み合わせて、沖縄旅行へと行ってきた。2泊3日で撮影した旅写真をご覧いただきながら、高倍率ズームの魅力やシーンに応じた使いこなしをご紹介したい。

今回の撮影に使用したNikon(ニコン) Z fcとNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRのセット。

高倍率ズームレンズなら、同じ場所でもいろんな表現を楽しむことができる

高倍率ズームレンズはズームしたときの画角変化が大きいため、広角端と望遠端を使いこなすだけでも、同じ場所でいろんな表現を楽しむことができる。自然風景や都市風景など遠景を撮影するときは広角側と望遠側でバリエーションを撮影してみよう。

こちらは広角端の18mmで撮影を行った。35mm判換算27mm相当の広角で撮影できるため、その場の広がりをしっかりと活かしながら撮影できる。夕日の美しさだけでなく、雲の広がり、青のグラデーションを表現することができた。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・18mm(35mm判換算27mm)で撮影・プログラムAE(絞りF8・1/1600秒)・ISO 500・WB 晴天

同じ場所から望遠端の140mmで撮影。35mm判換算210mm相当の画角を得ることができるため、夕日を画面いっぱいに配置し、真っ赤に焼けている空を表現することができた。また桟橋やボートに乗る人物を強調することができている。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF8・1/4000秒)・ISO 500・WB 晴天

こちらの写真も同じ場所から撮影している。着陸前の飛行機が通過したので、望遠端の140mmで撮影を行った。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/2000秒)・ISO 500・WB 晴天

こちらも望遠端で撮影。縦で切り取ることで、ボートに撮る人物と軍用機を一緒に切り取るこができた。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/2500秒)・ISO 100・WB 晴天

夕日が沈みかかったので、再度広角側の18mmで撮影。ホワイトバランスを曇天にし、少しマゼンタを追加して、幻想的な夕日のグラデーションを演出した。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・18mm(35mm判換算27mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/125秒)・ISO 100・WB 晴天

ズームレンズの広角側で撮るときは一歩前に近づこう

ここからは沖縄で出会った被写体の色の深みを表現したいと思い、Z fc内に搭載されているクリエイティブピクチャーコントロールの「トイ」という効果を使用して撮影している。青や緑、赤など鮮やかな色の深みが出るため、撮って出しでも街並みを印象深く表現することができる。クリエイティブピクチャーコントロールはNikon Zシリーズに搭載されており、20種類の効果から選択できる。旅先で出会った被写体のイメージに合わせて絵作りができるため、撮影が楽しくなる。

広角の特徴としては「広い範囲が写る」、そして「遠近が強調され、奥行きが出る」の2つがあげられる。風景の広がりを表現したいときや、狭い路地を広く表現したいときに活用できる。そして、被写体に近づけば近づくほど、手前に被写体が大きく写るため、遠近を強調することができる。そうすることで、奥行きが出たり、被写体の迫力を表現することができる。

広角端で撮影すると、広い範囲が写るため、風景の壮大さを表現することができる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・18mm(35mm判換算27mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.0・1/2000秒)・ISO 100・WB オート

撮影している自分と木の影が面白いと思ったので、一枚撮影。広い範囲が写るため、目の前にある情報を多くフレーミングすることができる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・18mm(35mm判換算27mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.0・1/1600秒)・ISO 100・WB オート

被写体にぐっと近づいて撮影すると、遠近を強調することができる。そうすることで、迫力のある写真に仕上げられる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・18mm(35mm判換算27mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.0・1/2000秒)・ISO 100・WB オート

背景をぼかしたり、ポートレートを撮影したいときは望遠側がおすすめ

そして、望遠の特徴としては「遠くのものを大きく写す」、「圧縮効果」、そして、「被写界深度が浅くなる」の3つがあげられる。遠くの動物や乗り物などを離れた場所からでも大きく切り取れるため、簡単に迫力のある写真を撮ることができる。それだけでなく、背景も引き寄せられ、圧縮効果が起こり、情報量の多い写真に仕上げられる。また望遠になるほど、ぼけやすいのも特徴だ。背景をぼかしてポートレートを撮影したいときは広角側よりも望遠側の方がおすすめだ。

望遠端で撮影すると、遠くに見えた船を引き寄せて大きく切り取ることができる。それと同時に背景も引き寄せされるため、圧縮効果が生まれ、船だけでなく背景も伝わりやすい写真になった。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/640秒)・+0.33EV補正・ISO 100・WB オート

望遠になるほど、ぼけやすいのも特徴だ。背景をしっかりとぼかすことで、見せたい被写体が際立ちやすくなる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/400秒)・+0.33EV補正・ISO 100・WB オート

ハイビスカスのしべにピントを合わせると、花びらはぼけているのがわかる。被写界深度が浅くなるため、どこにピントを合わせたら美しく見えるのかを考えながら、ピント合わせを行いたい。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/400秒)・–0.33EV補正・ISO 500・WB オート

望遠端の140mmの最短撮影距離付近で撮影。本レンズの最短撮影距離は広角端で0.2m、望遠端で0.4mまで寄ることができるため、望遠端の最大撮影倍率は0.33倍になる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・14mm(35mm判換算21mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/400秒)・+0.33EV補正・ISO 100・WB オート

ズームレンズならではの、場面ごとの使いこなし

広角端、望遠端のみだけでなく、被写体に合わせてズームすれば、いろんな表現を楽しめるのが高倍率ズームの魅力だ。沖縄の街並みをスナップした写真をご覧いただきながら、場面ごとの使いこなしをご紹介したい。

28mm(35mm判換算42mm相当)で撮影。警戒心のない人懐こい猫だったが、ある程度まで近づいて、逃げてしまわないようにズームをしながら構図の微調整を行った。広がりを持たせながら、猫の表情を際立てられている。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・28mm(35mm判換算42mm)で撮影・プログラムAE(絞りF6.3・1/3200秒)・ISO 100・WB オート

23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影。建物の質感ときれいに並んだ鉢のバランスがおもしろと思って撮影した一枚。建物と鉢全体をフレーミングしながら、空のバランスが気持ちいいところまでズームした。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・23.5mm(35mm判換算35mm)で撮影・プログラムAE(絞りF3.8・1/1000秒)・–0.67EV補正・ISO 100・WB オート

23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影。標準域を含む高倍率ズームや標準ズームレンズを使用していると、無意識に自分の好きな焦点距離で撮影していることが多い。私は35mmや50mmが好きだが、今回の写真を振り返ってみると、その近辺の焦点距離で撮影していることが多かった。一本目にどんな単焦点レンズを購入したらいいのか迷っている方は、一度ズームレンズで自分の好きな焦点距離を探ってみるのもよいだろう。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・35mm(35mm判換算52mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.2・1/1600秒)・–0.67EV補正・ISO 100・WB オート

23mm(35mm判換算35mm相当)で撮影。35mmは主題を引き立てながらも背景を広く切り取れるため、その場の状況が伝わりやすい。軽トラックと背景の建物と生い茂る植物のバランスが好きな一枚。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・23.5mm(35mm判換算35mm)で撮影・プログラムAE(絞りF3.8・1/1000秒)・–0.67EV補正・ISO 100・WB オート

35mm(35mm判換算52mm相当)で撮影。道が続いていく様子と電線と青い空が素敵だと思ったので、縦で切り取った。標準域は目で見た遠近感と近いため、より自然にその場を切り取ることができる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・35mm(35mm判換算52mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.2・1/2000秒)・–0.67EV補正・ISO 100・WB オート

28mm(35mm判換算42mm相当)で撮影。裏路地に入り込むと、ひっそりと咲くハイビスカスを見つけた。生活の一部の中にハイビスカスが咲いているように見せたかったので、ハイビスカスを大きく撮るのではなく、プロパンガスも一緒に切り取った。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・28.5mm(35mm判換算42mm)で撮影・プログラムAE(絞りF3.8・1/640秒)・–0.33EV補正・ISO 100・WB オート

39mm(35mm判換算58mm相当)で撮影。黄色の積み上がったケースにピントを合わせて撮影。背景を程よく整理したいと思ったため、やや画角を狭くして撮影を行った。望遠側になるほど背景の写り込む範囲が狭くなるため、背景を整理したいときは望遠側にしてみよう。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・39mm(35mm判換算58mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.5・1/2000秒)・ISO 100・WB オート

39mm(35mm判換算58mm相当)で撮影。シーサーが笑いかけているような可愛らしい表情をしていたので、撮影した一枚。シーサーの下に敷いてある沖縄らしい模様と組み合わせたかったので、ハイアングルで撮影している。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・23.5mm(35mm判換算35mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.5・1/1250秒)・–0.33EV補正・ISO 500・WB オート

おしゃれなカフェで撮影。被写体に合わせて少しずつ焦点距離を変えながら撮影しているが、レンズ交換しなくても一本でバリエーションが撮れるのが嬉しい。

ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・35mm(35mm判換算52mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.2・1/1600秒)・−0.33EV補正・ISO 1600・WB 晴天

ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・29.5mm(35mm判換算44mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.0・1/100秒)・–0.33EV補正・ISO 1600・WB 晴天

ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・38mm(35mm判換算57mm)で撮影・プログラムAE(絞りF4.5・1/1600秒)・+0.33EV補正・ISO 1600・WB 晴天

まとめ

高倍率ズームレンズNIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRを持って沖縄へ行ってきたが、一本でいろんな焦点距離をカバーできるため、さまざまな表現を楽しむことができた。旅だけでなく、登山や日常のスナップなど、荷物を減らしたいときやレンズ交換をしたくないシーンで活躍してくれる高倍率ズームレンズ。春から夏にかけて旅行シーズン到来前に、ぜひ一本、手に入れてみてはいかがでしょう。

夕暮れ時に揺れている波をぶらしたいと思い、シャッター速度を1/4に設定。本レンズにはレンズシフト方式手ブレ補正(VR)機構が搭載されているため、スローシャッターでの撮影も手持ちで楽しめる。

【撮影データ】ニコンZ fc・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR・27.5mm(35mm判換算41mm)で撮影・プログラムAE(絞りF3.8・1/4秒)・ISO 100・WB晴天日陰

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