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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! ガンダーラ井上×ライカM11+ズミクロンM f2 50mm

写真・文:ガンダーラ井上/編集:合同会社PCT

ガンダーラ井上×ライカM11+ズミクロンM f2 50mm

ライターのガンダーラ井上氏による、Leica(ライカ)M11とLeica Summicron(ズミクロン)M f2 50mmの実写レビューです。1954年発売M3からはじまるM型ライカの系譜を辿りながら、M11の実力とズミクロンM f2 50mmの描写力を、作例とともにご紹介します。

ガンダーラ井上(がんだーら・いのうえ)
ライター。1964年、東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、『monoマガジン』『Pen』『ENGINE』などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは、幼馴染みの父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmf2.8。著作『人生に必要な30の腕時計』(岩波書店)『ツァイス&フォクトレンダーの作り方』(玄光社)など。

はじめに

皆さまこんにちは。ライターのガンダーラ井上と申します。今回はライカM11とズミクロンM f2 50mmのインプレッションと作例をお届けしようと思いますのでお付き合いのほどよろしくお願いします。まず、ライカM11というのはどんなカメラなのでしょう?

ライカM11

ライカM11ってどんなカメラ?

ライカM11は、2022年に登場したレンジファインダー式デジタルシステムカメラです。レンジファインダーとは距離計のこと。ライカM11は光学式の距離計を搭載していて、撮影者がファインダーの中心部で二重に見える小さな矩形をひとつに合致させることでピントが合わせられます。この実像式の距離計を搭載したライカの初号機が、1954年に登場したライカM3というカメラです。

ライカM3

ライカM3(1954年)からの系譜

ライカM3の光学式のファインダーの倍率は約0.91倍で、ほとんど肉眼で見た大きさと変わらない視界の中に50ミリレンズの撮影範囲が角丸の縁取りでクッキリ見えることに加え、実像式の距離計像の先鋭さには驚くべきものがあります。ここで採用されたバヨネット式のライカMマウントは、現在のデジタル化されたライカMシステムまでずぅーっと受け継がれていくことになります。

ライカM4

こちらはライカM4。登場したのは1967年で、写真のカメラはライカ50周年を記念して1975年に製作された後期のモデルです。ライカM3と比較してフィルム巻き上げがクランク式になっていたり、外付け式のファインダーを用いなくても35mm広角レンズが使えるようにファインダー倍率が0.72倍になっているなど、使い勝手の上ではクラシックライカの完成系とも呼べる機体です。

ライカM11

その後ライカM5、ライカM6、ライカM7などのフィルム機が市場投入され、デジタル初号機のライカM8が2006年に登場。順調に進化しながら現行品のライカM11に至る。というのが駆け足のライカM型ストーリーであります。ところで、ここに登場したライカに装着されていたレンズが何かお気づきでしょうか? それらはすべてズミクロンという名称のついた50mmの標準レンズです。

歴代のズミクロン標準レンズとライカM11

王道レンズ「ズミクロン」

ズミクロンというのは、開放f値2のレンズに付けられた名称で、ライカM3より1年前の1953年が初発のレンズです。マウントはM型以前のφ39mmのスクリューマウントで、ライカM3の登場とともにMバヨネット化。それ以来、多少の光学的な設計変更や外装変更などの世代交代を繰り返しながら、ずぅーとM型ライカの標準レンズといえばコレ。という定番中の定番として君臨しています。

ライカM11の天面

見た目はクラシック、機能はコンテンポラリー

ということで、ライカM11とズミクロンM f2 50mmという組み合わせで撮影に出かけることにしましょう。1954年以来、ずぅーとM型ライカはマニュアルフォーカスの仕様です。だから自分の目で見て、自分の脳で判断して、自分の手で操作しないとピントは合いません。露出に関しては、絞り優先オート機能が搭載されているので絞り値さえ決めればシャッター速度はカメラが決めてくれます

ライカM11の背面

ライカM11の背面は、2.95型のタッチパネル液晶モニターがあるのがフィルム機との大きな違いですね。正面から見るとクラシックカメラみたいだけれど、裏に回ればコンテンポラリーなデジタルカメラでもある。というのがライカM11のユニークな点です。物理スイッチの数は絞り込まれたシンプルなもので、機能の数だけボタンをカメラの表面に配置しようとする日本製カメラと一味違う部分です。

個性的かつ繊細な描写力

Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f2・1/125秒)・EV-0.67補正・ISO800・AWB

ライカって、博物学的な検証をしたくなるカメラだなぁと思います。そんなわけで博物学的な標本を、絞り開放f2で撮ってみました。「私は、この骨を見た」という感じでモチーフだけを浮き上がらせる効果が、明るい標準レンズにはあります。発色は見栄えを不自然に強調することなく、しかも印象的。現行品のズミクロンM f2 50mmは初めて使いましたが、歴代モデルと同様の個性を感じます。

【撮影データ】
Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f4・1/90秒)・EV-0.67補正・ISO6400・AWB

初代のズミクロンが登場した直後に日本のカメラ雑誌がテストした結果、恐るべき解像力であると評価したことが伝わっています。解像感という観点で本レンズを味わうべく、すこし絞ってf4にて撮影。ライカM11は最大解像度の60Mの設定です。もりもりと湧き上がるようなディテールにシビれます。でも、カリッカリな先鋭さとも違うので、写真を見つめ続けても疲れない感じです。

【撮影データ】
Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f2・1/750秒)・EV-0.67補正・ISO3200・AWB

丸いものを丸く撮れるか? これが良いレンズを見極める際に参考になる視点ではないかと思います(このモチーフは、丸というよりタマゴ形ですが)。ピントの合っている部分のテクスチャーと立体感がいい感じです。ちなみに現行品のズミクロンM f2 50mmの最短撮影距離は70cmで、それ以上は近づけません。それにしては大きく写っているのは、ものすごく大きなタマゴだからです。

ライカのモノクロームを味わう

【撮影データ】
Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f2・1/1000秒)・EV-0.67補正・ISO800・AWB

ライカM11には、jpgの設定にモノクロームが2種類入っています。こちらはモノクロHC(ハイコントラスト)にて撮影。プリセットから更に自分好みに調整することも可能で、このカットではシャープネスを少々強調するセッティングにしています。明暗差の強い被写体なので露出決定が難しいですが、ここでは背面モニターで確認しながらマイナス2/3段にセットしています。

【撮影データ】
Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f2・1/350秒)・EV-0.33補正・ISO800・AWB

モノクロNAT(標準)のjpgセッティングもなかなか良いのですけれど、今回はついついモノクロHCでばかり撮ってしまいました。ハイコントラストという設定名ですが、程よくトーンが残っていて押し付けがましい感じがしないですね。球面レンズだけを使ってナチュラルかつ解像感のある描写を真骨頂とするズミクロンM f2 50mmとの相性も抜群だなぁと思います。

【撮影データ】
Leica(ライカ)M11・Summicron(ズミクロン)M 50mm f2・絞り優先(f2・1/250秒)・EV-1補正・ISO3200・AWB

こちらはモノクロ(NAT)でしっかりとトーンを残して撮影した後で、明暗の調整をして仕上げていったカットです。撮影時にもマイナス1段で撮影していますが、そこから更に暗めにしながら黒のグラデーションが残るギリギリのところを狙ってみました。こういう微妙な追い込み方をしても、思っている以上にトーンが残っているのがライカレンズの魅力なのだと感じた次第です。

まとめ

ということで、今回はライカの屋台骨としての歴史を持つ定番の標準レンズであるズミクロンM f2 50mmと、最新のライカM11との組み合わせで撮影を楽しまさせていただきました。余計なことはせず、標準レンズ1本で撮影をするという目的を果たすには、これほど好適な組み合わせはないと思います。

おまけ

ガンダーラ井上が企画、主筆を務めたライカM11ムック『LEICA M11 Book 進化するMシステム、その写りと使い方』(玄光社)が発売中です。撮影Tipsや豊富な作例など見応え十分の内容になっていますので、ご興味のある方はぜひ。

詳しくはこちら

今回登場したカメラ・レンズ

Leica(ライカ)M11 ブラックペイント
◉発売=2022年1月21日詳しくはこちら

Leica Summicron-M(ライカ ズミクロン-M)f/2 50mm
◉発売=2016年7月23日詳しくはこちら