カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 相原正明 ✕ パナソニックLUMIX S5Ⅱ
写真・文:相原 正明/編集:合同会社PCT
成熟、熟成そして進化へ。自分だけの世界観を表現できる、まさにフラッグシップキラー
2023年2月16日に発売するパナソニックのフルサイズミラーレス機LUMIX S5Ⅱ。日本やオーストラリアの自然風景を独自の視点で撮影し続ける写真家 相原正明さんに実写をお願いした。美しい作品と共に新型カメラの進化点とその実力をじっくり解説していただこう。
- 相原正明(あいはら・まさあき)
- 1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影以来、オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。写真展はアメリカ、韓国、ドイツ・フォトキナでも開催。2008世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在、写真家であるとともにフレンドオブタスマニアの称号を持つ。また2019年にはLUMIX 10周年LUMIX GINZA ギャラリーオープニング写真展「Earthrait」を開催。 現在、全国富士フイルムフォトサロン巡回写真展「On The Earth 超大陸オーストラリア」開催中。2023年3月17日~3月23日は富士フイルムフォトサロン大阪で開催。 写真集に、『On The Earth』(Echelle-1刊)、『ちいさないのち』(小学館刊)、『夜鉄』(玄光社刊)、他写真展・写真集多数。
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目次
パナソニックLUMIX S5Ⅱ
はじめに
成熟、熟成そして進化。この3つのキーワードがふさわしいカメラがLUMIX S5Ⅱ(DC-S5M2)。LUMIX G9 PRO(DC-G9)以来、作品作りの中核をなす機材としてLUMIXを使っている。LUMIX全体の印象は、派手さはないが確実と誠実そして堅剛なカメラ作り。その1歩1歩の成熟熟成進化がなされてきた新機種が、S5とほぼ同じサイズのS5Ⅱ。
コンパクトなボディサイズは機動力だけではなく、僕の持っているS5のハンドグリップもそのまま流用できる。お財布にも優しい。
LUMIX S5Ⅱの「成熟 熟成 進化」は次にあげる7点になる。
①像面位相差AF採用によるAF性能の飛躍的向上
②新ビーナスエンジンによる画質性能の飛躍的向上
③ハイレゾ撮影の進化
④超高感度性能
⑤色の熟成
⑥作品力をサポートする豊富なアスペクト比
⑦Lマウントアライアンスのシステムの拡大と向上
この「成熟 熟成 進化」である①~⑦を実際の作品をご覧いただきながら説明したい。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・157mmで撮影・AF-C・Avモード・絞りF6.3・1/320秒・ISO800・-1EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(千葉県 小湊鉄道 上総大久保〜月崎)
像面位相差AF採用によるAF性能の飛躍的向上
今までのコントラストAFでは一番の苦手であった動体に対するAF。AF-C+動体追随で鉄道を撮影。切通から突然に列車が現れるという、カメラにとってイヤな撮影条件を選んだ。十分なバッファ容量も手伝い、確実に列車の運転席のあたりをロックオンして追尾してくれた。今までのLUMIX Sシリーズにはない快感だった。そしてLUMIXの特色である暖色を得意とする再現力で列車の車体色の自然さも見ていただきたい。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・200mmで撮影・AF-C・Avモード・絞りF5.6・1/30秒・ISO6400・-2EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(千葉県 小湊鉄道 上総大久保)
位相差AFの強みは低輝度下でのAF性能の向上。S5ⅡのISO20000まで常用として使える超高感度性能をフル活用できる。特に夜の鉄道では無敵と言っても過言ではない。ほとんど照明もない田舎の駅。暗黒のホームに滑り込む列車を確実にAFは追い続ける。列車の車内までシャープなピントが確認できる。夜鉄で作品を作る僕にとり、最高の武器である。1日数本しかない夜のローカル線の撮影に最高のウェポンだ。
位相差AFの恩恵は動体だけではなく、風景撮影等でもとても大きい。S5ⅡはS5に比較して、数字的に言うのならば夜明けでは15分早く、日没では15分遅くまでAFが合致するようになった。わずか15分の差だが、マジックアワーと呼ばれる、淡い光の時間帯でAFがしっかり働いてくれることで、フレーミングやシャッターチャンスに集中できる。
【撮影データ】LUMIX S PRO 16-35mm F4・16mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF11・1/13秒・ISO400・-1.7EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 十勝 豊頃町)
日没後、重い雲が十勝平野を覆う、その先にうっすら淡いピンクの空がのぞく。その中に主張する如くそびえる、「はるにれの木」。とてもドラマチックではあるがコントラストがない光。従来のコントラストAFではフォーカスが迷う状況でもしっかり合致してくれた。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・200mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・0.5秒・ISO400・-2EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 十勝 三国峠)
【撮影データ】LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.・227mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF10・1.6秒・ISO200・-1EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 十勝 三国峠)
大雪山系の三国峠。夜明け前の空に凛とそびえる山並み。うっすらと雪面に夜明けの紫色の光が反射する。肉眼でもやっとうっすら山並みが見える明るさだ。一番、カオスな時間帯の色。でも従来のS5ではこの時間帯はMFに頼らざるを得なかった。特に長玉では被写界深度が浅いので、淡い時間帯の撮影はマジックアワーでの撮影は神経を使い、フレーミングに集中できないこともあった。だがS5Ⅱになり、その心配は夜明け前の闇のように消え去った。この肉眼でもやっと山が見える淡い光でもAFが来ることは風景を撮る者にとり、魔法の剣を手に入れたようなものだ。
【撮影データ】LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.・300mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF14・1/50秒・ISO200・-1.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 三国峠)
【撮影データ】LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.・300mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF10・1/40秒・ISO100・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 三国峠)
S5ⅡのAFの力をお見せするためにさらに難易度の高いシーンの作品をお見せする。同じく三国峠付近で、夜明けの霧の中に1本の木が主張している。霧に包まれている木はコントラストが弱くかつ低輝度。だが夜明け前の幻想的なシーンは刻々と光と霧の形が変化する。素早いAFでより遠景の山が霧に隠れる前にシャッターが切りたかった。やはりこのシーンでも迷うことなく、心の中に描いた絵コンテ通りの作品が撮れた。難しい光、カオスな状況をS5Ⅱは確実にこなしてくれる。
新ヴィーナスエンジンによる飛躍的画質の向上
【撮影データ】LUMIX S PRO 16-35mm F4・16mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF11・1/60秒・ISO100・-0.7EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 十勝 豊頃町)
S5ⅡはS5と同じ2420万画素ではあるが、その絵作りを見るととても同じ画素数とは思えないほど、画質が向上している。十勝平野のシンボルにもなっている「はるにれの木」を狙ってみた。晩秋の木は、葉がすべて落ちて枝ぶりがしっかり現れている。その枝をどれだけ繊細に撮れるかが、新エンジンの真骨頂。言葉はいらない、見ていただきたいのは枝の先端部分の解像力。今までの2000万画素クラスの解像力を超えている。一瞬、フラッグシップのS1Rは要らないのでは?と思わせる解像力だ。S5Ⅱを持つと繊細な被写体を探すクセがついてくる。
ハイレゾ撮影の進化
【撮影データ】LUMIX S PRO 16-35mm F4・21mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF11・1/60秒・ISO400・-1.7EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 十勝 豊頃町)
同じ「はるにれの木」を、さらに木に近づき、その枝ぶりをハイレゾで撮影し、より枝の存在感のち密さを訴求した。木の中央部の枝の存在感のち密さを特に見てほしい。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・156mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF14・1/100秒・ISO100・-2.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 三国峠)
【撮影データ】LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.・300mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF14・1/60秒・ISO100・-0.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 三国峠)
朝日に輝く森をハイレゾで撮影した。輝く枝のち密さ、森の立体感や奥行き感を見ていただきたい。まるで手で触れるようなリアルな質感だ。さらに別のシーン。
ここでハイレゾ撮影って?読者の方にご説明。LUMIX Sシリーズでは1回の撮影で複数回シャッターを切り、カメラ内合成で超高画素画像を生成することができる。S5Ⅱでは9600万画素相当の絵作りが可能だ。そしてS5Ⅱではよりハイレゾ撮影の設定が簡略化され、かつ、簡単に撮影に入れるようになった。S5ではメニュー画面で選択してハイレゾを開始したが、S5Ⅱではボディ左のMODEダイヤルにハイレゾ設定が独立して存在する。このため通常撮影とハイレゾ撮影の切り替えが瞬時に簡単にできる。ただし複数回シャッターを切り合成するために三脚でのカメラの固定が必要となり、動いている被写体はぶれてしまい撮ることはできない。この点だけは注意してもらいたい。そしてハイレゾの高画質のデータはぜひお店できちんとしたプロによるプリントをしてもらいたい。ハイスペックのデータはハイスペックなプリンターも要求する。もういくつかハイレゾをお見せしたい。
【撮影データ】シグマ 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art・105mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF16・1/100秒・ISO800・-1EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 オンネトー)
冬枯れの森にはフォトジェックな落ち葉がたくさんある。これもハイレゾ+マクロレンズでの撮影で素晴らしい作品を撮ることができる。特に落ち葉の葉脈あるいは点在する葉脈の表現はハイレゾならではである。ただ実はこの作品、レンズがSIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Artである。S5Ⅱの便利な点はLマウントアライアンスによる膨大な数のレンズ群が選べること。LUMIX以外にSIGMA&LEICAのLマウントレンズが選択できる。自分なりのチョイスの世界が広がる。他のマウントシステムと大きく異なる点だ。さらにハイレゾのち密さはモノクロームとの組み合わせでより明確になる。色がないことにより、被写体のち密さがより理解できる。
ハイレゾのち密さの効果がより明確に感じられるのが、モノクロームの作品。色がない分、より明確に繊細さがわかるとともに、画素数が上がることにより、白から黒への階調が豊かになる。モノクロこそハイレゾの真骨頂だ。特にS5Ⅱは4つのモノクロモードを搭載している。ノーマル、L.モノクローム、L.モノクロームD、L.モノクロームSと4つの表現が選べる。これはライバル機にはない選択数だ。個人的にはL.モノクロームDが好きだ。フィルムのKodakのTri-Xに近い階調表現。きりりとしまるシャドー部の表現が好きだ。以前、開発者に話を聞くと「セバスチャン・サルガドの作品が好きで、彼の世界観を表現できるモードを開発した」と話していた。そしてサルガドが多用していたフィルムがTri-Xだった。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・90mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF11・1/40秒・ISO400・+0.7EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 十勝 三国峠)
三国峠眼下に広がる原生林。初冬に降った雪で森がまるで氷砂糖細工のようだ。1本1本の木をち密に表現したかったので、ハイレゾを選択して撮影した。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・194mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF14・1/30秒・ISO100・-2.3EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 十勝三俣)
ハイレゾ+L.モノクロームDの特徴を生かしてきりりとしまったシャドー部と硬い表現のハイライト部をいかして冬の光できりりとした白樺の幹や枝を狙った。イメージとしてアンセル・アダムスのアスペンの木の作品を頭に描いた。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・70mmで撮影・AF-S・ハイレゾ撮影・Avモード・絞りF10・1/160秒・ISO100・WB白熱灯・RAW+JPEG(長野県 上田市)
高速道路の橋であるが、マーガレット・バークホワイトのダムのようなイメージを狙ってみた。超高画素による表現でコンクリートの質感そして重量感が表現できた。ハイレゾ+L.モノクロームDでの豊かな階調表現は、写真をアートの世界に昇華させてくれる。ネットでの”映え”ばかりを狙った画像があふれる現代。そのアンチテーゼとして、じっくり重厚感あふれる画像ではなく作品が撮れるハイレゾ+モノクロームの表現は、他者の画像と差別化し、あなたの画像を作品に昇華させるだろう。
超高感度性能
S5ⅡはS5から超高感度性能も引き継ぎ、さらにノイズ感も新ヴィーナスエンジンにより低減している。ISO20000というとんでもない世界が常用できる。肉眼で見ることができる以上の世界を見せてくれる。
【撮影データ】LUMIX S 18mm F1.8・18mmで撮影・AF-S・Mモード・絞りF2.5・6秒・ISO20000・+4.3EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 オンネトー)
【撮影データ】LUMIX S 18mm F1.8・18mmで撮影・AF-S・Mモード・絞りF2.5・3.2秒・ISO20000・+4EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 オンネトー)
いずれも北海道・オンネトーで深夜に撮影した。どちらもISO20000での撮影。超高感度にすることで、露光時間を短くし、星が流れることを防ぎ、肉眼で見た夜空に近づける。また短い露光時間で、国内での星景撮影では、飛行機の航跡など余分な光が入る危険を低減することもでき、かつ一晩あたりの撮影のバリエーションも稼げる。
色の熟成
LUMIXはご存じPanasonicのカメラ。バックグラウンドとして、テレビ、ビデオ等の豊富な映像での色のプロファイルデータを持っている。今回の新ヴィーナスエンジンになり、よりそれが生かされているのを感じる。特に暖色系の発色に関してS5Ⅱも得意とする。暖色の中でも赤や黄色の発色は豊かな色数を確保しながらも、飽和しない色再現。秋の紅葉あるいはテーブルフォトでいうならばトマトソースの料理の発色が得意だ。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・70mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・1/200秒・ISO100・-3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(東京都文京区 六義園)
都内六義園の紅葉。逆光で輝く紅葉。赤の表現が際立つ。この場合、赤が飽和してしまうカメラが多いがS5Ⅱはしっかり表現してくれる。アンダー目に表現した赤がある中で、緑の発色も濁らない。これが新ヴィーナスエンジンの再現力。色に関して過去のデータのプロファイリングが大きくものをいう。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・200mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5・1/1600秒・ISO400・-0.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 上士幌町)
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・142mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・1/200秒・ISO200・-0.3EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 上士幌町 ナイタイ高原牧場)
再び北海道。晩秋のきりりとした光が大地を包む。撮影には最高に美味しい時間。黄色に輝くカラマツの葉。きりりとした色再現はレンズのシャープさと相まって、黄金色に輝く枝葉の立体感がすばらしい。指で葉っぱがつまめそうだ。午後の光に包まれてのどかに牛が草を育む丘陵。紅葉の色も濁りなく再現されているが、ここで見ていただきたいのが牛の白。実は白が白としてぬけが美しい。これはフードフォトの現場でも強い。なぜならば料理のお皿の白が、白としてきれいに表現できる。あと和食の場合はごはんの白のグラデーションが確実に表現できるからだ。白が濁って表現されるとほかの色も濁ってしまう。だから白の再現は大切である。
作品力をサポートする豊富なアスペクト比
S5ⅡにはS1Rから引き継いだ6種類のアスペクト比(4:3 、3:2、16:9、1:1、65:24、2:1)が搭載されている。これが今まで述べた①~⑤の機能と相まって豊かな作品表現を提供してくれる。でもアスペクト比なんか3種類もあれば十分、あとはトリミングして作画すればよいと思っている方も多いと思う。それは大きな間違えであり、危険な落とし穴だ。なぜならば、最初からきちんとフレーミングして撮影した作品と、あとからトリミングあるいは画像処理で合成した作品では、画面から伝わる緊張感がまるで違う。やはり撮影時にきちんと追い込んだフレーミングは独特の美しさと緊張感を持つ。
【撮影データ】LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.・137mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5・1/1000秒・ISO100・WB白熱灯・RAW+JPEG(北海道 十勝三俣)
スクエア(1:1)のフォーマットは写真に独特の力強さを与えてくれる。何か自分の主張を強くしたいときに有効だ。この作品では冬の朝に自分の存在を主張するかの如く、立つ木の存在を表現したくてスクエアにした。木をセンターに配置し、背景の林が木を中心としてシンメトリーになるポイントを選んだ。これにより画面の整理ができた。
【撮影データ】LUMIX S PRO 16-35mm F4・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF11・1/25秒・ISO100・-2EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 オンネトー)
晩秋のオンネトー。連なる二つの山と広がる湖水は、16:9の横長のアスペクト比が無駄なくかつ、流れるような視線の動きを取り入れることができる。16:9で空の部分を減らすこと、画面全体が間延びして緊張感が抜けることを防いだ。
【撮影データ】LUMIX S PRO 24-70mm F2.8・39mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF11・1/25秒・ISO200・-0.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(北海道 十勝 三国峠)
三国峠の広がる原生林。眼で眼下の風景を追う視線を表現したくて65:24のパノラマにした。特にトリミングや画像処理で合成したパノラマでは画面の緊張感がまるで得られず、どこかちぐはぐな感じになってしまう。広い見渡す風景や、あるいは展望台からの眺望撮影、都市の夜景に最適なアスペクト比だと僕は考える。僕はよく不動産広告の撮影でパノラマをクライアントから求められる。特にタワーマンションからの夜景の眺望ではクライアントは必ずパノラマを要求してくる。あともう1つS5Ⅱには2:1のパノラマも搭載されている。16:9とわずかな差だが、まるで異なる世界観となる。フィルム時代にこの2:1を搭載したカメラは世界でもリンホフパノラマしかなかった。ぜひ試してほしい。
Lマウントアライアンスシステムの拡充と向上
前出したSIGMA 105mm F2.5 Macro|Artによる作品でも話したが、3つのメーカーのリンクにより各メーカーの得意とする設計、あるいは味付け。さらに言うならば価格帯により、自分独自のレンズシステムを構築できる。
例えばの話だが、スナップ系レンズはライカで選び、マクロや超望遠系はシグマで選ぶ。そして標準レンズはLUMIXで選ぶなどできる。つまり自分の絵作り、あるいは使用のコンセプトを立てることで有効なレンズシステムが構築できる。僕の場合はスナップ・マクロ系がシグマ、大三元ズームと標準レンズはLUMIXだ。その中でも個人的に大好きでかつ作品作りの主要レンズがLUMIX S PRO 50mmF1.4。
個人的には神レンズと呼んでいる。狙ったポイントが浮かび上がる描写力、独特な再現力はオンリーワンの存在。作品を作り上げるレンズ。やはり写真の基礎は標準レンズでいかに撮るかだ。しかもモノクロ。これはグローバルスタンダードだ。いまだに世界の多くの写真学校が最初の1~2年間は標準レンズでモノクロをみっちり撮らせる。その理由は基準となる画角を頭の中に叩き込むこと。それにより自分の好みを画角の方向性が見いだせるのだ。だからぜひLマウントアライアンスのレンズの海の中からLUMIX S PRO 50mmF1.4を選んでほしい。
【撮影データ】LUMIX S PRO 50mm F1.4・50mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF13・1/000秒・ISO100・-1EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(名古屋市)
【撮影データ】LUMIX S PRO 50mm F1.4・50mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・1/000秒・ISO100・+0.3EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(名古屋市)
【撮影データ】LUMIX S PRO 50mm F1.4・50mmで撮影・AF-S・Pモード・絞りF1.4開放・1/000秒・ISO800・+1EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(名古屋市)
名古屋での朝の斜光でのスナップ。光と影をしっかり表現してくれる。1枚目の建築の作品。金属の球体部分の質感、立体感が優れモノだ。2枚目のビルに街路樹の影が落としこまれているが、線が素直にきれいなので、複雑な影の形だがうるささがない。3枚目の中華丼の作品。とある晩の僕の夕飯。寒い街を歩き回った後で食べた熱々の中華丼。食べる前にご飯の真ん中にあるうずらの卵がかわいかったので、開放F1.4で狙った。浮き出るようなうずらの卵の立体感が秀逸だ。ぜひともLUMIX S PRO 50mmF1.4をあなたのLマウントアライアンスのベースとして選ぶべきだと考える。
新型レンズ、LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACROを緊急実写!!
そして最後にもう1つ。新たに発売されたLUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO。個人的には広角マクロの世界は大好きだ。広角レンズにはすべてマクロ機能が欲しいと思うほど大好きだ。なぜならば理由は2つ。
広角で接写することで、よりデフォルメされることで自分が主張したい世界が明確になる。もう1つは旅系、フード系の広告&エディトリアルの撮影で、フードが写りながらお店の雰囲気も出せる。広角の深い被写界深度を利用して、接近しながらもあまり背景がボケずに、食べ物自体をしっかり見せられることだ。もう1つは食べ物もデフォルメできるからだ。
先日 新たに届いたばかりのLUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACROを持ち2泊3日の旅に出た。行き先は長野。キリリとした冬の空気感を狙いたかった。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・14mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5・1/500秒・ISO100・-0.7EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(長野県)
冬の朝の斜光で竹の幹が、自分を撮れと主張していた。摩天楼のごとくそびえるイメージで撮りたかった。竹の節目の質感を表現したかったのでなるべく近づき、かつ天まで伸びが如く竹をデフォルメしたかったので14mmで接近した。斜光による存在感を強調するためにあえてL.モノクロームDでコントラストをさらに強調した。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・14mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・1.3秒・ISO320・-1EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(長野県)
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・2.5秒・ISO3200・+1.7EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(長野県 上田市)
次の2枚は広角レンズならではのダイナミックな空間を生かし、かつS5Ⅱの強みである高感度性能と位相差AFを活用した作品。1枚目は薄暮の池の彼方に山並みが続く。2枚目は夜明けの月と上田市の街並み。高感度を使いなるべく露光時間を短くした。理由は、1枚目は星、2枚目は月が写っている。長秒露光で星や月の形が流れないようにするためだ。また広角レンズで空間の「間」を撮ることで、風景の広がりを感じさせる狙いもある。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・15mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF8・1/100秒・ISO100・+0.7EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(長野県 美ヶ原)
そして広角の画角を使った真骨頂といえばパノラマ。普段撮影している広大なオーストラリア。あの風景を生かすには、いかにパノラマモードを使いこなすかにかかっている。美ヶ原からの、富士山遠望。手前の草原から山並みの広がり、そして富士山をセンターに置くことで、視点の流れを生み出し、ひろくても散漫なフレーミングにならないようにした。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF11・1/80秒・ISO100・+1.3EV補正・WB白熱灯・RAW+JPEG(長野県)
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・23mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5・1/60秒・ISO400・+0.3EV補正・WB晴天・RAW+JPEG(長野県)
広角レンズで風景を狙うとついつい、ダイナミックな風景ばかり狙いがちだが、じつはちいさな宇宙が足元にもある。そんな足元の風景を狙った作品。広角ズームの接写能力と、デフォルメを使った。モノクロは広角のデフォルメで影を強調した。花の作品は接写能力の限界まで寄ってみた。1本のレンズでダイナミックと繊細な世界と2つが狙える優れモノだ。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・19mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF7.1・1/60秒・ISO100・+2EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県)
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5.6・1/60秒・ISO2000・+0.7EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県)
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5.6・1/50秒・ISO6400・+1.3EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県)
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5.6・1/60秒・ISO1250・+1.7EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県)
撮影で冷えた体を温めにカフェに入ると、良い光が外から差し込み、お店の中でも、ついつい撮影戦闘モードで、14-28mmのマクロ機能と高感度性能、そしてLUMIXならではの暖色系の発色の良さを生かして撮影。2月とは言えもう立春。お店に注ぎこむ光にも春を感じた。
1枚目のボトルの作品、その光の温かさを背景に生かして、ボトルを思い切り寄ってデフォルメし存在感をアピール。
次の3枚はケーキとフォーク&スプーン。ちょっとした空間と光があればLUMIX14-28mmとS5Ⅱのコンビネーションはどこでも無限に作品を生み出せる。このシーンでは高感度性能、手ブレ補正、接写性能のコンビネーション。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・24mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5.3・1/40秒・ISO6400・-1EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県 軽井沢)
軽井沢でおいしいパンを見つけたので、撮影の合間に古民家でコーヒーブレイク。やはりパンに近寄りつつ、広角ならではの被写界深度と画角を利用して、食べた部屋の雰囲気も見せられる。暗い古民家の雰囲気を生かす撮影では、ISO6400の高感度性能と、手ブレ補正に助けられた。
【撮影データ】LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO・28mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF5.6・1/40秒・ISO6400・+0.7EV補正・AWB・RAW+JPEG(長野県)
ロケ旅の夕ご飯。ちょっとお刺身。彩が美しく食欲と写欲がそそられた。ここでも14-28mm&S5Ⅱのコンビネーションが光った。色再現性、すぐれたWB AUTO、接写性能、高感度性能、手ブレ補正。中でもLUMIXは撮って出しで使える。テレビやビデオで鍛えられた、色再現がある。特に暖色系が美しいので貝と背景のサーモンの赤がナチュラルで美しい。そしてイカも白く再現されかつ緑も自然だ。ミックス光源の室内でも安心して使えるWB AUTOだ。そしてこの写真はなんとISO6400であることを伝えたい。超高感度でありながらとても美しい画質だ。個人的にはこの14~28mmと24~105mmの2本があれば旅の撮影は完璧にこなせると感じる。
まとめ
このようにLUMIX S5Ⅱの位相差AF、新ヴィーナスエンジン、ハイレゾ撮影、超高感度、色の熟成、豊富なアスペクト比、Lマウントアライアンスシステムの組み合わせと相乗効果により新たな撮影の領域と、ライバルたちと一味違う世界を構築することができる。S5Ⅱはミドルクラス機でありながらフラッグシップの存在を脅かすマシンである。そして確実かつシンプルな構成はエントリーモデルとしても初心者にも使いやすい。
さらに将来、フラッグシップ機を購入した場合にも、サブ機としての機能も十分果たせる。S5Ⅱは万能機であるとともに、自分だけの世界を構築したい、作品をしっかり仕上げたい、そんな方にお勧めだ。僕はフラッグシップキラーと呼びたいのがLUMIX S5Ⅱだ。そして何よりもカメラで写真を楽しむハードルを、操作性も予算も下げてくれたカメラだ。心眼で見えた世界を間違いなく写真としてアウトプットしてくれるカメラがLUMIX S5Ⅱだと僕は断言する。
【撮影データ】LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6・27mmで撮影・AF-S・Avモード・絞りF3.9・1/60秒・ISO2000・AWB・RAW+JPEG(自宅)
最後は我が家のご主人様、猫のヤマトクン。転寝中にそっと近寄りパシャリ。AFを動物認識モードにした。そして広角レンズを使うことで、安心しきって寝ている、伸び切った脚を強調した。同時に深い被写界深度も動きやすい猫さん撮影におすすめだ。
相原さんの使用機材
パナソニックLUMIX S5Ⅱ(DC-S5M2)
◉発売=2023年2月16日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S5ⅡX(DC-S5M2X)
◉発売=2023年6月29日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO(S-R1428)
◉発売=2023年3月16日
◉価格=107,800円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S PRO 16-35mm F4(S-R1635)
◉発売=2019年12月25日
◉価格=209,000円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S PRO 24-70mm F2.8(S-E2470)
◉発売=2019年9月25日
◉価格=302,500円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.(S-R70200)
◉発売=2019年3月23日
◉価格=231,000円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.(S-R70300)
◉発売=2021年4月22日
◉価格=160,600円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S 18mm F1.8(S-S18)
◉発売=2022年10月20日
◉価格=121,000円(税込)詳しくはこちら
パナソニックLUMIX S 50mm F1.4(S-X50)
◉発売=2019年3月23日
◉価格=313,500円(税込)詳しくはこちら
シグマ105mm F2.8 DG DN MACRO | Art(ライカLマウント)
◉発売=2020年10月23日
◉価格=104,500円(税込)