カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー 岡本 豊×飛行機写真
写真・文:岡本 豊/編集:合同会社PCT0
岡本 豊 流 ヒコーキ写真の極意
兵庫県出身で、現在、エアライン氏やカメラ専門誌、カメラセミナー等、多方面で活躍中の航空写真家岡本 豊さんによるヒコーキ撮影のハウツー記事をお届けします。今回は、美しい作品と共に撮影の秘訣とその醍醐味を解説していただこう。
- 岡本 豊(おかもと・ゆたか)
- ボーイング787に魅了され、「光と影」をテーマに、航空写真家として活躍中。航空会社の公式撮影、ほかにもCanon EOS学園や大学で講師としても登壇、フォトコンの審査員やカメラセミナーなど幅広く担当している。Canon EOS学園講師、日本大学芸術学部非常勤講師。
目次
はじめに
飛行機を撮影する上で日頃から意識をしている撮影のポイントをご紹介したいと思います。
これから飛行機撮影を始めたい初心者の方にも参考になると思いますので、ぜひご覧ください。
私の撮影機材ラインアップ
生業として写真をはじめて30年。
これまで一貫してCanon(キヤノン)のカメラを使ってきました。35mmフィルムカメラから始まり、デジタル一眼レフへと進化。時の流れは速いもので、今や時代はデジタルミラーレスとなりました。
現在、わたしの所有するカメラは「EOS R3(2台)、EOS R5、EOS R6 MarkⅡ」の4台体制。昨年、すべてミラーレス機へと移行しました。その決め手となったのは2021年11月に発売されたEOS R3の存在が大きいです。
現在の3機種のラインナップ中、飛行機撮影では、メインにEOS R3、サブ機的存在としてEOS R6 MarkⅡというポジション。
その中でも圧倒的にEOS R3の出番が多くその理由はいくつかありますが、信頼性・堅牢性・飛行機撮影に使えるハイスペックな機能が充実しているからです。
デジタル一眼レフ時代に長年使用していたEOS-1D X シリーズと同じグリップ一体型のR3は非常に持ちやすく、基本的に1D系のレイアウトに近いバランス、ホールド感はわたしにとって違和感なく使え、防塵防滴仕様のボディは様々な天候変化のなか行う飛行機撮影には安心感があります。先日、極寒の新千歳で撮影した際も、手袋をしたままグリップを持っても操作性に問題がなかったのは助かりました。
私の愛用機材
飛行機撮影でよく使うレンズはRF15-35mm F2.8L IS USM、RF70-200mm F2.8L IS USM、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 。月と飛行機の撮影ではRF400mm F2.8 L IS USMにEXTENDER RF2x を装着して800mmで撮影することもあります。
先日8年ぶりに超望遠レンズをEFからRFに変更したことで全てEFレンズからRFレンズになりました。カメラの高感度性能も日々進化しますが、それでもよりハイクオリティな画質を追求するため三脚は必須です。
私は、Leofoto(レオフォト) 「カーボン三脚LO-324C+VTR用雲台BV-15」、同「LS-284CEX+ビデオ雲台 BV-10」を撮影する被写体によって使い分け撮影することが多いです。
季節感、空や海の色をイメージ通りに仕上げるため、広角レンズ~中望遠レンズにはKANI(カニ)の77mm/82mm CPL(円偏光)フィルターを使っています。
ヒコーキ撮影のポイント①構図のセオリーを意識する
機体をバランスよく収めるため、写真を撮影する時の構図には、三分割法や対角構図、トンネル構図等色々とありますが、最初は難しく考えず、まずは飛行機全体がバランスよく画面に収まるようにシンプルに撮影しましょう
飛行機を正面から撮影する場合は、両側に伸びる主翼をしっかりと入れることが重要です。横からの場合は、機首から尾翼までの機体全体を入れて撮影しましょう。簡単なようですが、高速で飛んでいる飛行機を、狙っている構図で撮影することは想像以上に難しいです。まずはこの基本の撮影がきちんとできるようになった上で、場面ごとに画面内のどの位置に飛行機を配置するか、構図のセオリーを参考にして撮影しましょう。
ANAボーイング787-8 JA874A [大阪伊丹空港 伊丹市役所付近]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R6 MarkⅡ・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・500mmで撮影・Avモード・絞りF8 •1/2500秒・ISO 1250・電子シャッター・WBオート・RAW KANI (カニ)CPLフィルター使用
ANAボーイング787-8 JA874A [大阪伊丹空港 スカイパーク北]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R6 MarkⅡ・RF400mm F2.8 L IS USM・EXTENDER RF2x・800mmで撮影・Avモード・絞りF8・1/2000秒・ISO640・電子シャッター・WBオート・RAW
ヒコーキ撮影のポイント②撮影したいものを明確にする
人それぞれ、撮りたい機体も違い、撮りたい情景や撮影目的によって「これが正解だ」という構図やアングルはないと思います。
まずは、自分自身が何をどう撮りたいのかを、明確にすることが大切です。
季節の花や夕焼けを絡めたり、空港周辺の山や海を入れて撮影する場合は、三分割法の線の交差した部分に飛行機を配置してみましょう。
三分割法とは、画面の左右を三等分したところと、上下を三等分したところに引いた線の4つの交点に被写体を配置する方法。
どの交点に配置するのかは、背景や情景によって変わってくるので、色々と試してみると良いでしょう。
飛行機を主役にするのか脇役にするのかを考えることも大切です。
三分割法(三分割法)
また、動きモノは飛んでいく方向の空間を開ける方が良い、と言われますが、雨の日の逆噴射や、ベイパー(ひこうき雲)を出している機体の場合は、後方の空間を開けた方が動感を表すことができます。
思い切った切り取り方で航空機に迫る構図もあります。機体を部分的にアップで撮影する場合は、一番輝いているところ、一番伝えたい部分以外は、思い切って切り取ってみると良いと思います。
ANAボーイング787-8 JA812A [大阪伊丹空港周辺 ふれあい緑地芝生広場]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R3・RF15-35mm F2.8 L IS USM・20mmで撮影・Avモード・絞りF8・1/1250秒・ISO 1250・電子シャッター・WBオート・RAW KANI(カニ) CPLフィルター使用
ヒコーキ撮影のポイント③季節は夏と冬がいい、変化する光線で撮る
春夏秋冬、航空機撮影はどの季節も美しいですが、私のおすすめの季節は夏と冬です。
冬は、日の出の時間が遅く、飛行機が動き出す時間と朝陽が昇る時間が重なり、多くの劇的な瞬間に巡り会えます。冬の朝の低い光線を浴びた機体は、独特の輝きを放ちます。機体はシルエットになりますが、綺麗な朝焼けの時は、朝陽をバックに逆光で撮影してみると良いでしょう。冷え込む季節の早起きはツライですが、冬の朝はぜひ空港に通って欲しいと思います。
夏は太陽の日差しが強く、特に夕陽が傾き始めてから沈むまでの時間帯は楽しいです。トップライトの時には見えない影が長く伸びたり、雲の反射によって光が映り込む機体の質感は想像を超えた美しさ。目を細めたくなるような眩しい瞬間に、思い切ってアンダーにして撮影してみると、機体の輝きが一層美しく見えるだろう。
もうひとつおすすめの撮影が、夏の日没後のマジックアワー。最近のカメラは、日没後もISO感度を上げて撮影できるので、三脚を持たずに撮影に行く人も多いですが、幻想的なマジックアワーを撮影するのには三脚は必須でしょう。駐機している機体にピントを合わせて、少し色温度を下げて、2~4秒の長秒で撮影してみると、まったく違う世界が見えてきます。順光撮影を基本に逆光・斜光にも挑戦してみよう。
どんなに綺麗な光やタ焼けの時間に空港に行っても、撮影する場所によってまったく違う絵になってしまいます。どの位置で撮影したら一番キレイな光が捕まえられるのか、経験も必要です。何度も空港に通って、いろいろな場所で撮影し、美しい光に出会って欲しいと思います。
JALボーイング787-8 JA849J [大阪伊丹空港 千里川]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R3・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・500mmで撮影・Avモード・絞りF8 • 1/2000秒・ISO1000・電子シャッター・WBオート・RAW KANI (カニ)CPLフィルター使用
飛んでいる飛行機の機首やエンジンをアップで撮ろうと思った時、シャッターを早く押し過ぎて、思い描いている絵よりも小さくなってしまうことが多い。画面からはみ出してしまっても、失敗を恐れずに、ぎりぎりまで待って撮影した方が上達への近道でしょう。
JALボーイング787-8 JA848J [大阪伊丹空港 展望デッキ]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R3・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・500mmで撮影・Avモード・絞りF8・1/1600秒・ISO200・-2EV補正・電子シャッター・WBオート・RAW
斜光線に輝く機体のメタリックな質感を狙いました。
B787の造形美を狙い、夕暮れ時の光が機体を黄金色に輝かせる瞬間を伊丹空港のターミナルデッキから撮影。ハイライトからシャドウ部への階調を意識して撮影していますが、ミラーレス機を使うことで、飛行機に光が当たる一瞬をファインダーを現きながら露出確認をして撮影。機体が最も輝く一瞬をイメージどおりに表現できました。ハイライト部分が飛ばないように、「―2」の露出補正で撮影しています。
ヒコーキ撮影のポイント④背景との距離感が圧縮される超望遠レンズの効果
航空機撮影では、超望遠レンズが必要だと思われる人が多いですが、広角や中望遠でも十分に楽しめます。広角を使用して、背後の景色を入れての撮影が面白いです。
その場合は、背後の絵に飲み込まれないよう、機体に光が当たっている状態の時が良いです。また、機体や背景などで三角の部分を作ると、画面が安定します。いわゆる三角構図です。中望遠の少し明るいレンズは、空港の展望デッキでの撮影や、夜景撮影の時に威力を発揮してくれます。
望遠レンズの圧縮効果を利用しての撮影は、背後の山や月、建物等が離れている時に有効。例えば、遠くの富士山や月を飛行機と絡めて撮影すると、圧縮効果によりぐっと引き寄せられ、まるで機体のすぐ後ろに富士山や月があるように写せます。
羽田空港や伊丹空港など、便数が多い空港で練習をすることをお勧めします。
ANAボーイング787-8 JA808A [大阪伊丹空港 千里川]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R3・RF50mm F1.8 STM・Avモード・絞りF2.5・1/1000秒・ISO1600・電子シャッター・WBオート・RAW
大阪国際空港(伊丹空港)の有名撮影スポット「千里川の土手」で撮影。この日は夕焼けになるいくつかの気象条件を満たしており、予想どおり一面オレンジ色に染まり出しました。滑走路のライトが点灯し、ベストなタイミングで飛来したB787を軽量でコンパクトなRF50mmF1.8 STMで撮影しました。このレンズは逆光に強く、フレアが出にくいのが特徴です。
岡本 豊フォトギャラリー
JALボーイング787-8 JA849J [大阪伊丹空港 スカイパーク中央]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R5・RF70-200mm F2.8 L IS USM・70mmで撮影・Avモード・絞りF8・1/1600秒・ISO800・電子シャッター・WBオート・RAW KANI (カニ)CPLフィルター使用
この日は上空5500メートルに強い寒気が流入し、広い範囲で大気が不安定。こんな日は劇的な場面に出合えることがあります。突然の豪雨があれば気象が目まぐるしく変化し、虹が出ると予想。見事B787の背後に美しい虹がかかりました。ポイントは飛行機が順光になる位置で待つこと。また、早朝と夕方は比較的、虹の出る確率が高くなります。
ANA787-9 JA936A[羽田空港外周]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R3・RF70-200mm F2.8 L IS USM・Avモード・絞りF3.2・1/30秒・ISO 200 (フォーカスブラケット機能使用)・電子シャッター・WBオート・RAW 三脚Leofoto(レオフォト) LS-284CEX・雲台BV-10使用
航空機の撮影は、ターミナルの展望デッキや、空港周辺で撮るには、フェンスや柵が邪魔になることがありますが、その場合は、望遠レンズを使うと可能となる場合もあります。柵に接触しないように注意して、レンズを近づけ、絞りを開放気味にして撮影すると柵を消して撮影することができます。
ANA787-8 JA821A[羽田空港外周]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R6 MarkⅡ・RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM・Avモード・絞りF8・25秒・ISO200・電子シャッター・WBオート・RAW 三脚Leofoto(レオフォト) LS-284CEX・雲台BV-10使用
長秒露光撮影による光の筋で夜の空港の「動き」を表現。
夜の賑やかな羽田空港を表現するため、三脚を使って25秒露光。光で「動き」を表現する、夜の撮影手法です。
TOKI Air ATR72-600 JA01QQ [新潟空港]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R5・RF70-200mm F2.8 L IS USM・Mモード・絞りF22・25秒・ISO 200・メカシャッター・WBオート・RAW 三脚Leofoto(レオフォト) LS-324C・雲台BV-15使用
光を利用した飛行機の撮影としては、夜間の駐機している飛行機の撮影もおすすめです。
高感度設定を利用して、手軽に駐機している機体を美しく撮ることも可能ですが、この撮影では三脚を使って長秒露光を行いました。光の筋による写真表現、25秒といった長秒撮影で静止している飛行機の後方を通過した光跡が鮮やかに浮かび上がります。
ANAボーイング787-8 JA810A
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R6 MarkⅡ・RF70-200mm F2.8 L IS USM・Mモード・絞りF3.2・1/10 秒・ISO2500・電子シャッター・WBオート・RAW 三脚Leofoto(レオフォト) LS-284CEX・雲台BV-10使用
流し撮り撮影。最近使っているCanon EOS R6 MarkⅡの被写体検出、「乗り物優先」がとても有効で撮影が楽になりました。
フォーカス位置はカメラに任せて、飛行機の動きに合わせてスイングするのが被写体(飛行機)をブラさないコツ。
Canon EOS R6 MarkⅡは高感度にも強く、ISO2500に設定することでファインダー内でも飛行機が明るく見ることができ、カメラのスイングスピードと飛行機の動きを合わせやすくなりました。
まとめ自分が信頼できるカメラや道具を使ってヒコーキ写真を満喫してほしい
私は日々、ボーイング787の劇的で美しいシーンを撮影したい、そんな気持ちで日本全国を飛び回っていますが、やはり自分が信頼できるカメラや道具を持つことで安心感が増し、撮影時の心の余裕が生まれると思います。万が一の場合も機材がフォローしてくれることが多々あります。また新しい機材を購入した時のワクワク感はいつになっても嬉しく、撮影へ出かけたい気持ちにさせてくれます。
今回、ご紹介させていただいた記事をご覧いただき、気になった機材があれば、是非、気軽にカメラの大林で相談してみてはいかがでしょうか。最後までご覧いただきありがとうございました。空港で見かけた際は声をかけてください!!
私の愛用機材
JALボーイング737-800[羽田空港 浮島公園]
【撮影データ】Canon(キヤノン)EOS R6 MarkⅡ・RF400mm F2.8 L IS USM・EXTENDER RF2x・800mmで撮影・Mモード・絞りF5.6・1/1000秒・ISO8000・電子シャッター(40コマ)・WBオート・RAW 三脚Leofoto(レオフォト) LS-284CEX・雲台BV-10使用
新たに導入したキヤノンEOS R6 MarkⅡとRF400mm F2.8 L IS USM・EXTENDER RF 2×の組み合わせで満月と飛行機を狙った。
この撮影では、EOS R6 MarkⅡの電子シャッター秒間40コマの連写で撮影後に細かく飛行機の位置を選択可能。RF400mmのF2.8の明るさを生かし、RF2x(800mm)装着でも開放F5.6のため、シャッター速度を稼げました。
岡本さんご愛用のカメラ、レンズ、アクセサリー
キヤノンEOS R3
◉発売=2021年11月27日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンEOS R5
◉発売=2020年7月30日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンEOS R6 MarkⅡ
◉発売=2022年12月15日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンRF15-35mm F2.8 LIS USM
◉発売=2019年9月27日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンRF70-200mm F2.8 L IS USM
◉発売=2019年11月21日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンRF100-500mm F4.5-7.1 LIS USM
◉発売=2020年8月27日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンRF50mm F1.8 STM
◉発売=2020年12月24日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンRF400mm F2.8 L IS USM
◉発売=2021年7月15日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
キヤノンEXTENDER RF2x
◉発売=2020年7月30日
◉価格=オープンプライス詳しくはこちら
KANI Challenger set for 100mm Airplane-photo version 100mmチャレンジャーセット
(Premium Soft GND 0.9 100×150mm、HT3 100mm Holder + CPL、ステップアップリング 67-82mm、72-82mm、77-82mmがセット)
◉発売=2020年6月9日
◉価格=38,800円(税込)
Leofoto(レオフォト)レンジャーシリーズ カーボン三脚 LS-284CEX+ビデオ雲台BV-10
◉発売=2019年11月12日
◉価格=108,680円(税込)
Leofoto(レオフォト)Mr.Oシリーズ レベリング機能付きカーボン三脚 LO-324C
◉発売=2021年10月21日
◉価格=85,250円(税込)
Leofoto(レオフォト)VTR用雲台BV-15
◉発売=2022年4月28日
◉価格=53,680円(税込)