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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー 桃井一至 ✕ OMデジタルソリューションズ OM SYSTEM OM-5 実写レビュー

写真・文:桃井一至/編集:合同会社PCT

小型軽量ボディに高性能をギュッと詰め込んだOM SYSTEMミドル機

写真撮影からカメラ雑誌での執筆、イベント出演、そしてユーチューバーとしても大活躍中の写真家 桃井一至さんによるOM SYSTEM OM-5実写レビュー記事をお届けします。OM SYSTEMのミドル機であるOM-5の進化ポイントや、使いこなし術をわかりやすく解説していただこう。

桃井一至(ももい・かずし)
1968年、京都生まれ。 写真家アシスタントを経て、フリーランス。現在は撮影をはじめ、カメラ関係書籍の執筆やWebレポートなどを多数。イベント等への出演も多く、NHK「趣味悠々・デジタル一眼レフ撮影術入門」などでは講師を務めた。主な撮影ジャンルは人物・海外風景など。日本写真家協会会員(JPS)。
Youtube:「gizmomofreaks」


ボディカラーはシルバー、ブラックの2色。

はじめに

OMデジタルソリューションズ OM SYSTEMから登場した、OM-5。OMデジタルソリューションズ(OM SYSTEM)は聞き慣れないメーカー名かもしれないが、オリンパスのカメラ事業を引き継いだ会社のこと。マイクロフォーサーズという、小型軽量、高性能を目指したレンズ交換式デジタルカメラの共通規格を作った会社のコアメンバーでもある(当初は前身のオリンパス)。今回紹介する、OM-5もマイクロフォーサーズという、ミラーレス一眼の規格に則った製品だ。

現在、同社のファインダー付きモデルは、OM-1を筆頭にOM-5、E-M10 MarkⅣの3種類あり、数字の少ないほうが上位モデル。E-M10 MarkⅣだけ、大きく呼び名が違うのは、オリンパス時代の名残。でも、カメラの正面に大きく書かれているロゴは、OM-1とE-M10 MarkⅣが「OLYMPUS」で、OM-5のみ「OM SYSTEM」と、ちょっとヤヤコシイのだが、過渡期のラインナップのため、今後は解消されるはず。名称がいろいろ混在しているが、レンズやアクセサリー類の互換性はもちろん、購入後のケアなどもしっかり引き継がれているので安心して選んで欲しい。

OM-5+14-150mmで最強のアウトドアキットの誕生

アウトラインが長くなってしまったが、本題のOM-5。ひとことで言ってしまえば、小型軽量のボディに高機能をギュッと詰め込んだ一台だ。さかのぼることフィルムの時代から、小さくても、高性能が哲学。新会社においても、変わることなく受け継がれ、本モデルはキットレンズの高倍率ズームレンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 Ⅱ 約285g)とカメラ本体 約 414g、組み合わせで約699g。

一般的なペットボトルが500ml(約500g)なので、それよりも少し重いくらいで、広角(35mmフルサイズ換算28mm)から超望遠(同、300mm)までカバー可能で、ハイキングや登山なら、これ一本だけでかなりのバリエーションが撮れるはず。しかも、防塵防滴とマイナス10℃の低温まで対応しているので、不意の夕立や砂ぼこりなども安心だ。

今回、主に使用した製品群。レンズは左からM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO (ボディ装着製品)、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 Ⅱ、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO。それぞれ個性のあるレンズなので、自分の使用環境や手持ちのレンズなどと合わせて、総合的に選びたい。

高い防塵防滴性能が撮影を下支え

本モデルの前身から歴代使ってきたが、アウトドアでは水面すれすれの渓流や滝から跳ねる水しぶきなど、水にまつわるシーンでも、安心してレンズを向けられるのは大きな強み。ちなみにどしゃ降りの雨は、レンズを向ける以前に自分が耐えきれなかった経験あり。しずくが垂れるほどに濡れたカメラは、何事もなかったように動き、水を含んだストラップを絞って撮影を続けたほどだ。とかく自然のなかで使う方々には太鼓判を押す。

また海外取材では、肩からカメラを下げて歩くのをはばかられる場所でも、簡単にポンとバッグに入れて持ち歩けるのにも、ずいぶん救われた。航空機の前席ポケットにも入り、機上の光景を撮るのもスムーズ。小ささは、日常的に便利なこと、この上ない。

機能や内容は、先代上位機OM-D E-M1 MarkⅢ同等

レトロチックにも見える外観だが、中身はしっかり武装。機能や内容的には、上位モデルの先代にあたるOM-D E-M1 MarkⅢ(2020年春発売)とほぼ同等と思って良い。

そのなかでも近年、同社が力を入れているのが、コンピュテーショナルフォトグラフィだ。こちらも聞き慣れない言葉だが、早い話、カメラ内で合成や画像加工を行い、従来、経験者がパソコンの画像加工ソフトウェアを使い、高度なテクニックを駆使したレベルの写真をカメラ任せで撮れるというものや、画像処理エンジンやバッファメモリーの力を借りて人の能力を補う機能のこと。

撮影者の表現をサポートしてくれる撮影機能満載

たとえば、花火や夜景撮影に便利なライブコンポジット、滝や水流などの表現が変わるライブND、接写域でも画面全体にピントが合ったように撮れる深度合成、一瞬を撮り逃したシーンでも、さかのぼった画像を残すプロキャプチャー。手ぶれ補正技術も駆使して、複数枚の写真から1枚の高画素画像に仕立てる、ハイレゾショットなど、すべてを記せば誌面が埋まるほどに、とにかく多彩だ。そのすべてが、奇をてらった機能でなく、撮影者の表現をしっかりサポートしてくれる内容のため、これらを使うために愛用し続けるファンも多い。

(右)OM-1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
(左)OM-5とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO

同クラスの一眼カメラとの比較では、決して大きくないOM-1だが、それでもOM-5と肩を並べると、体格差はごらんの通り。OM-5には旧型と言えども、フラッグシップの内容が搭載していると思えば、魅力は高い。

最大7.5段の補正効果を誇る手ぶれ補正機構

また手ぶれ補正技術も、強豪ひしめく一眼カメラの中でもトップクラス。5軸手ぶれ補正機構により、ボディ単体で最大6.5段。手ぶれ補正機能内蔵レンズとの組み合わせでは、最大7.5段と小さなボディに驚くほどの性能を秘めており、星空や花火など特殊な環境を除けば、たいていは三脚要らずの手持ち撮影が楽しめてしまう。ちなみに筆者は標準ズームくらいであれば、2秒程度は常用域。拡大率100パーセントでチェックしても、しっかりシャープな写真を残す。

気になった点…… USB-CでなくUSB-Micro B、メニュー表示が旧タイプ

良いことばかり、連ねてきたが、ちょっと気になる部分も記しておこう。

まず充電に使うUSB端子がUSB-Micro Bで現在主流のUSB-Cでない。致命的ではないものの、旅行に出かけるときにスマートフォン用充電ケーブル(Android)と共用できないのが玉にキズ。

あとは最新モデルにも関わらず、メニュー表示が旧タイプなのもあげられる。こちらはOM-D E-M1 MarkⅢと従来モデルの多くを踏襲しただけに、致し方ない点だ。しかし最新モデルのOM-1と併用しない限り、困りはしない。

逆にOM-1で廃止された、肌を美しく再現してくれるeポートレート機能が、OM-5に健在なので、肌の写りを気にする方を撮る機会が多いならぜひ試してほしい。

まとめ “ちょうどいい”ミラーレスシステムを持って撮影に出かけよう♪

いろいろ書き連ねてきたが、OM-5の血統は同社のミラーレス一眼のなかでも、初の電子ビューファインダー搭載モデルOM-D E-M5が起源。フラッグシップの1系列登場以降は、最強性能は譲ったが、当時から防塵防滴でコンパクトであるなど機動性が高く、アウトドア層やスナップシーンなどの使い勝手の良さが光る。口悪い人に言わせれば、フラッグシップの旧モデルだが、逆に言えば、一世代前であっても、大看板の性能がほぼそのままコンパクトに収まった小型軽量モデルで、値ごろ感も強みのひとつ。

ミラーレス一眼市場は、フルサイズモデルが花盛りだが、交換レンズまで含めたボリュームは、サイズと予算まで軽快とは言いがたい。多くの人にちょうどいいミラーレス一眼として、マイクロフォーサーズを見直し、そのなかでも象徴的なモデルであるOM-5を手にして、ぜひアクティブに出かけてみてはいかがだろうか。

プレミアムレンズシリーズをOM-5に取り付ければ、大人の遊び道具感が漂う。画質もよく、価格も手頃なので、一本あるといろいろ楽しめる。左から、M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0(ボディ装着製品)、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8。

OM-5フォトギャラリー

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO・20mm(35mm判換算40mm)で撮影・絞りF2.5・1/4000秒・-0.7EV補正・ISO6400・WB太陽光

瞬間的に変わる水のかたちを、ひたすら連写。複数枚を撮って、あとから選ぶしか方法はない。高速シャッターを得るためにISO感度は6400。水面すれすれで、カメラもレンズもビショビショ。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8・25mm(35mm判換算50mm)で撮影・絞りF5.6・1/800秒・-0.7EV補正・ISO200・WBオート

面白いシーンを見つけると同時に、自然な流れでサッとレンズを向ける。OM-5は仰々しい威圧感もなく、街中でも使うにもぴったり。悩みがちな露出はAEブラケットにお任せ。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO・36mm(35mm判換算72mm)で撮影・絞りF5.6・1/6秒・ISO200・WBくもり

コンピュテーショナルフォトグラフィの一種、ライブND。本来、レンズ前に取り付けるサングラスふうの光量減少フィルターの役割を、画像の重ね合わせ技術で行う機能。最大4段分、ND16まで可能。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・21mm(35mm判換算42mm)で撮影・絞りF5.6・1/1000秒・+0.7EV補正 ・ISO200・WB晴天・アートフィルター:ネオノスタルジー

簡単にアーティステックな写真が撮れると爆発的ヒットをしたアートフィルター。ここではインスタントカメラふうの懐かしい雰囲気を演出できる、「ネオノスタルジー」を選択。全16種類から選択可能。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO・61mm(35mm判換算122mm)で撮影・絞りF8・1/640秒・-1.7EV補正 ・ISO200・WB晴天

高倍率ズームの12-100mmはスーパー万能レンズ。少々大きめだが広角から望遠までをPROレンズ基準の高画質で撮れて、しかも手ぶれ補正機構も内蔵し、接写も強い。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO Ⅱ・40mm(35mm判換算80mm)で撮影・絞りF4・1/6400秒・-0.3EV補正 ・ISO200・WBオート

12-45mmのキットレンズとベストマッチな、コンパクト望遠。レンズの明るさ、画質の良さとのバランスも高く、フットワークよく楽しめる。最大撮影倍率0.41倍(35mm判換算)のマクロ機能も強み。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO・25mm(35mm判換算50mm)で撮影・絞りF5.6・1.6秒・-0.3EV補正・ISO1600・WBオート

超高感度でも、5ケタ域は得意でないが、優れた手ぶれ補正がサポート。ここではISO1600でシャッター速度は1.6秒。個人差はあるものの、セオリーさえ押さえていれば、手持ち撮影は十分可能な速度域。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 Ⅱ・150mm(35mm判換算300mm)で撮影・絞りF5.6・1/2500秒・-1.0EV補正・ISO200・WB晴天

レンズ本体は細身で平凡に見えがちだが、フルサイズ換算28-300mm、最大撮影倍率0.44倍相当の広角から望遠&接写域までカバーする便利さにやみつき。葉脈までしっかり描写する、性能も十分なもの。

【撮影データ】OM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO・45mm(35mm判換算90mm)で撮影・絞りF4・1/80秒・-0.3EV補正・ISO200・WBオート

雪化粧した古びた日本家屋に目を奪われてレンズを向けた。悪天候下では、カメラが防塵防滴なだけでも心理的負担はかなり軽減される。もちろん、濡れたあとのお手入れは忘れずに。

【撮影データ】OMデジタルソリューションズOM SYSTEM OM-5・M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8・25mm(35mm判換算50mm)で撮影・絞りF5.0・1/1600秒・-0.7EV補正・ISO200・WBオート・仕上がり:モノトーン

小さくて明るい単焦点レンズ プレミアムシリーズもOM-5によく似合う。質感と画質もよく、良いものを持つ所有感にも浸れる。ただし、防塵防滴は非対応なので要注意。

今回の使用カメラ、レンズ

OMデジタルソリューションズ OM SYSTEM OM-5
◉発売=2022年11月18日
◉価格=オープンプライスシルバーはこちらブラックはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
◉発売=2020年3月27日
詳しくはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
◉発売=2021年6月25日
詳しくはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
◉発売=2016年11月18日
詳しくはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 Ⅱ
◉発売=2015年2月20日
詳しくはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
◉発売=2021年12月10日
詳しくはこちら

OMデジタルソリューションズM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
◉発売=2014年2月28日
シルバーはこちらブラックはこちら