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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 第九弾! フォトグラファー 福田健太郎 ✕ SONY(ソニー)

写真・文:福田健太郎/編集:合同会社PCT

福田健太郎のソニー大三元ズーム+単焦点G Masterレンズで撮る自然風景

日本列島の春夏秋冬が織りなす自然美を、独自の感性と手法で撮影し続ける風景写真家 福田健太郎さんによるソニーG Master(Gマスター)レンズの実写レビュー記事をお届けします。今回は、愛用されているソニー製カメラ&レンズの魅力を美しい作品と共に解説いただこう。

福田健太郎(ふくだ・けんたろう)
埼玉県川口市生まれ。幼少期から自然や風景、その土地に暮らす人々の生活に憧れ、18歳のときに写真家を志す。写真家 竹内敏信氏の助手を経て、1997年より活動を開始。日本列島を主なフィールドに、生命に溢れる自然と万物の姿を見つめ続けている。写真集に『泉の森』、『春恋し ─桜巡る旅─ 』など著書多数。「平成・桜・福島」、「生々流転」、「Sign」、「泉の森」など、全国各地で写真展を毎年開催している。公益社団法人 日本写真家協会会員(JPS)
Instagram:kentarofukuda508


はじめに

こんにちは、写真家の福田健太郎です。かれこれ、25年ほど前からαユーザーの私ですが、ミノルタからコニカミノルタ、そしてαはソニーへと引き継がれました。ピントの山がつかみやすく、実に明るい光学ファインダーのα900。その光学ファインダーがEVFに変わり、AFが進化したα99など、αシリーズのカメラをいくつも愛用してきましたが、2013年には小型軽量のフルサイズミラーレス一眼カメラ、α7・α7Rが誕生し、翌年末には早くもα7Ⅱ。2018年にはα7Ⅲが登場と、このα7シリーズの第二世代、第三世代あたりから、αユーザーの数はグッと増えたように感じます。

私のソニー基本機材

αの強みはいろいろありますが、ミラーレス一眼カメラはもちろん、動画撮影に秀でたChinema Lineのカメラもたった一つの共通マウント、Eマウントが採用され、純正レンズが豊富に揃っていることで、撮影の楽しみを格段に広げてくれるのがひとつの強みとなっています。

撮影するジャンルや目的、予算など、レンズ選びのカギとなる部分は人により多少変わってきますが、自然や風景を撮影する私がレンズに求めている点を書き出してみましょう。

画面周辺部までしっかり解像すること

・逆光耐性が優れていること
・ヌケのよい、透明感のある描写
・AFは高速で静粛。精度が高いこと
・操作性が良好であること
・小さく、軽ければ最高

こんな感じです。いろいろな場面に対応したいですから、やはり広角域から望遠域までのレンズは揃えたいです。しかも素早く撮影を行いたく、レンズ交換の頻度は少なくしたいのが理想です。基本的に撮影は私一人で出かけますから、自分で機材を持ち運びしなければならず、撮影意欲を失わずに持ち歩ける限度として、カメラ機材は中型のカメラザックに収まる程度までと考えています。

大三元ズームと呼ばれるG Masterズームの世界

仕事道具として間違いないレンズ選びを突き詰めた結果、やはりと言いますか、基本セットに選んだのは開放絞り値F2.8の大口径ズーム、「広角・標準・望遠」を揃えた大三元ズームと呼ばれる、Gマスターレンズの組み合わせとなりました。

FE 24-70mm F2.8 GM Ⅱ[SEL2470GM2]
フットワーク軽く手持ち撮影ができる高解像標準ズーム

作品A
【撮影データ】SONY α7R Ⅴ・FE 24-70mm F2.8 GM Ⅱ・59mmで撮影・絞りF11・1/25秒・ISO100・WB太陽光・JPEG[北海道・十勝連峰]

A /紅葉と初雪が響き合う、絶妙なタイミングに出合うことが叶いました。半逆光になりますが、彩り鮮やかな紅葉の眩さを強調し、雪山部分など暗部の調子も見事、クリアに写し出すことができています。大口径標準ズームは第二世代となり小型軽量化を実現。扱いやすく、この時もフットワーク軽く、手持ち撮影を行っていますが、手ブレ補正機構が強力になったα7R Ⅴのおかげもあり、画面周辺部まできっちり解像したリアルな写真を生み出せています。

作品B
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 24-70mm F2.8 GM Ⅱ・70mmで撮影・絞りF8・8秒・ISO400・WB太陽光・JPEG[長野県・松本市]

B/凍結した滝の一部分を写し出しています。惚れ惚れするほど氷柱のディテールをしっかり再現してくれました。極めて線の細い、キリッとしたシャープな描写だからこそ、細密な風景を余すところなく届けられるのです。それから、曇り日の柔らかな光の中ですが、風景に存在する濃淡を現せることで立体感のある仕上がりとなりました。私の足元も凍っていて、ポジションが限られるわけですが、キッチリとフレーミングを行うことができたのはズームレンズのおかげです。

FE 16-35mm F2.8 GM[SEL1635GM]
広角マクロもお手のもの!抜けがよいクリアな描写が得られる広角ズーム

作品C
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 16-35mm F2.8 GM・22mmで撮影・絞りF2.8・1/500秒・ISO100・WB太陽光・JPEG[山形県・秋田県 鳥海山]

C/広角ズームレンズは広い風景を撮るためには欠かせません。前景にポイントとなる被写体を置き、中景・遠景と離れた風景を組み合わせることが奥行きを誘い出すコツになります。現実感を強めたい意図があるならば状況に応じて絞り込み、画面全体をシャープに、ピントが合って見えるように再現しますが、F2.8の大口径ズームならではの、ぼかした効果も楽しんでみましょう。広角域でもぼかすことができ、花の存在を強め、清々しい印象を誘い出せたと思います。

作品D
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 16-35mm F2.8 GM・16mmで撮影・絞りF22・1/8秒・ISO80・WB太陽光・JPEG[北海道・釧路町]

D/逆光時ではフレアやゴーストの発生、コントラストの低下を気にしたりしますが、このレンズを含めてGマスターのレンズはヌケのよいクリアな描写が得られ、何も気にしなく作画に集中できるので好きです。自然や風景の撮影では、逆光やサイド光といった陰影が現れやすいこの光を積極的に利用します。紅葉の風景では透かされた葉は輝き、彩り鮮やかに写すことができるのです。ギラギラとした眩しい太陽を画面内に入れても、気持ちのよい仕上がりがお分かりいただけるでしょう。

FE 70-200mm F2.8 GM OSS Ⅱ[SEL70200GM2]
パーフェクト!素晴らしいの一言に尽きる極上望遠ズーム

作品E
【撮影データ】SONY α7R Ⅴ・FE 70-200mm F2.8 GM Ⅱ・194mmで撮影・絞りF5・1/200秒・ISO100・WB曇天・JPEG[北海道・美瑛町]

E/大口径標準ズームもそうですが、この望遠ズームも第二世代になり、私の感想はパーフェクト!素晴らしいの一言です。従来比「約435gの軽量化」は驚きで、断然軽くなったのが分かります。ほぼペットボル1本分ですから、山登りなど機材と荷物を軽くし、体力の消耗を防ぎたいときには本当にありがたく感じます。引き寄せ効果とボケ効果を利用し、ヒマワリ畑を写したこの一枚。ピントを合わせた花は極めてシャープに描写され、奥の花畑は滑らかにぼかすことができました。

作品F
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 70-200mm F2.8 GM Ⅱ・72mmで撮影・絞りF8・1/40秒・ISO160・WBオート・JPEG[北海道・足寄町 オンネトー]

F/印象的な風景を引き出すために欠かせないのが望遠ズームです。写真は原生林に囲まれた湖沼、オンネトーの紅葉風景で、夕方の暖色の光に照らされて輝いていました。この凛とした美しい佇まいを見せる風景を届けるため、こだわりたいのが画面周辺部の画質です。トリミングなしのフルフレームですが隅々まで解像し、木の一本一本をビシッと描写しています。安定感を出したいことから、上下対称に近いフレーミングで撮影しています。

自然風景撮影でオススメの単焦点G Masterの世界

レンズの基本セットは、大口径F2.8で揃えたズームレンズ3本でまとめて大満足の仕上がりを得ることができています。しかし、Eマウントのラインナップには写真の面白さをもっと味わえる素晴らしいレンズがたくさん存在し、今回は特にお気に入りの2本を紹介したいと思います。

FE 14mm F1.8 GM[SEL14mmF18GM]
星空のシーンで大活躍必須!抜群の機動力を誇る超ワイド

作品G
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 14mm F1.8 GM・14mmで撮影・絞りF1.8・10秒・ISO3200・WB電球・JPEG[三重県・御浜町]

G/超広角14mmの単焦点レンズで、開放絞り値はF1.8。大変ワイドで明るいレンズにもかかわらず、約460gの小型軽量の設計で抜群の機動力を誇ります。暗い中で撮影を行わなければならない星空のシーンでは大活躍の一本です。MFのリング操作も心地よく、しっかりとピントを合わせやすいのでストレスがありません。東の空が明るみ出した時間帯で撮影した星空とヤシの木で、手前の木に近寄っても広い範囲を写し出し、ダイナミックな動きを出すことができました。

作品H
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 14mm F1.8 GM・14mmで撮影・絞りF11・2秒・ISO100・WB太陽光・JPEG[兵庫県・新温泉町 シワガラの滝]

H/兵庫県新温泉町のシワガラの滝です。洞窟内部にある神秘的な滝で、季節を変えて毎年訪ねていますが、岸壁に囲まれていますからこれ以上は下がることができなく、広い範囲を写し出すには超ワイドのレンズが絶対必要になります。ワイド側の焦点距離1mm、2mmの違いは写る範囲がだいぶ変わるものです。画面上部に包み込む洞窟の様子を伝え、暗い色の要素を加えることで、青白い滝の印象を強める画面構成で撮影しています。

FE 50mm F1.2 GM[SEL50mmF12GM]
とろけるようなボケ味をもつ超大口径標準。独特な写真表現も堪能できる

作品I
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 50mm F1.2 GM・50mmで撮影・絞りF1.2・1/1600秒・ISO100・WB太陽光・JPEG[神奈川県・相模原市]

I/自然風景の撮影では現実感を意図したならば、絞り込んで画面全体がシャープに、ピントが合っているように再現することが多いです。その逆、私たちの目で見た世界とは乖離する、レンズを通して見えてきた世界を楽しむことも写真の面白さです。F1.2の大口径標準単焦点レンズはとろけるようなボケ味が得られる最高のレンズで、春に咲くミツマタに近寄り撮影すると大きくぼけます。麗らかな春の陽気に誘われた心地よさを表現してみました。

作品J
【撮影データ】SONY α7R Ⅳ・FE 50mm F1.2 GM・50mmで撮影・絞りF1.2・1/100秒・ISO100・WB太陽光・JPEG[大分県・由布市]

J/すっかり葉を落とし、冬の準備を整えた樹木の風景がとても気になり、その林をぶらぶらと歩きながら撮影をすることにしました。地衣類など植物が付着した一本の木に目が止まり、ファインダーを覗きながら前後に移動して撮影した中の一枚で、開放絞り値で撮影するとぼかされた背景からスッと浮き上がって見える、不思議な感覚を覚える写真が生まれました。これもF1.2の大口径レンズならではの特長で、F2.8の明るい標準ズームでもこの仕上がりは難しかったりします。

まとめ
信頼できる最高峰のレンズ群を相棒に、撮影を楽しみましょう♪

自然風景の写真を撮るフォトグラファーとして、高次元の性能を誇る大三元ズームは信頼できる道具といえますし、明るい単焦点レンズはより写真の楽しさを味わうことができます。ソニーEマウントのGマスターは、AF性能、細部の作りに質感まで、最高峰レンズに相応しく徹底しています。そして、EマウントはGマスターのレンズ以外にも、魅力溢れる多数のレンズが存在します。正直、選ぶのが悩ましかったりもしますが、お気に入りのレンズに巡り合い、これからも撮影を楽しみましょう。

登場したカメラ、レンズ

SONY α7R Ⅴ[ILCE-7RM5]
発売=2022年11月25日 詳しくはこちら

SONY α7R Ⅳ[ILCE-7RM4]
発売=2021年6月4日

ソニー FE 24-70mm F2.8 GM Ⅱ[SEL2470GM2]
発売=2022年6月10日 詳しくはこちら

ソニーFE 16-35mm F2.8 GM[SEL1635GM]
発売=2017年7月28日 詳しくはこちら

ソニーFE 70-200mm F2.8 GM OSS Ⅱ[SEL70200GM2]
発売=2021年11月26日 詳しくはこちら

ソニー FE 14mm F1.8 GM[SEL14F18GM]
発売=2021年5月28日 詳しくはこちら

ソニー FE 50mm F1.2 GM[SEL50F12GM]
発売=2021年4月23日 詳しくはこちら