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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 第七弾! 写真家 赤城耕一 × LEICA(ライカ)

写真・文:赤城耕一/編集:合同会社PCT

赤城耕一の「名迷機・名珍玉で紐解く、ライカ小咄帳」

第一席 ライカM6復刻に想う、AE機ライカM7の独自性とプライド 2012年、ライカカメラ本社の認定を受け、日本初の「ライカブティック」となり、関西のみならず日本でのライカ人気を牽引する存在として確固たる地位を築いていたカメラの大林。そんなライカについて、写真家の赤城耕一さんに熱く語ってもらう不定期連載がスタートします。アカギ流ライカとの正しい付き合い方をご指南いただこう。

赤城耕一(あかぎ・こういち)
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアル、コマーシャルで活動。またカメラ・写真雑誌、WEBマガジンで写真のHOW TOからメカニズム論評、カメラ、レンズのレビューで撮影、執筆を行うほか、写真ワークショップ、芸術系大学で教鞭をとる。使用カメラは70年前のライカから、最新のデジタルカメラまでと幅広い。著書に『赤城写真機診療所MarkⅡ』(玄光社)、『フィルムカメラ放蕩記』(ホビージャパン)など多数。


はじめに

みなさんこんにちは。今回からこちらの「カメラの大林」さんのオンラインマガジンにお世話になることになりました写真家の赤城耕一でございます。こちらではライカ話を一席せよというご要望をいただきまして、僭越ながら、登場とあいなりました。

私自身、長いライカユーザーではあるのですが、コレクターや研究者ではなくて、あくまでも実用としてライカを使います。これはフィルム時代のライカMシリーズからライカRシリーズ、現在のデジタルMまで及びます。こちらではコレクターの皆さんのためのお話はできないというか、資料収集など私自身があまり興味がないこともあり、どのくらい読者の皆様のお役に立てるかどうかはわかりませんが、茶飲み話のひとつとしてお読みいただければありがたしです。

なぜ高いお金を出して不便なカメラを使うのか!?

国産の最新ミラーレス機を愛用の同業者などからは、「なぜライカが良いのだ」というプリミティブな疑問がよく投げかけられますが、これはわざわざ高いお金を出して、不便なカメラを使うの理由が理解できないようです。

なぜ、ライカを使うか。これ、割と単純ですね。それはまず第一に姿とカタチが美しいからです。第二に一般的に不便と思われる機能を不便とは思わず楽しく感じることができるからです。Mシリーズライカでサッカーを撮るとか、フィギュアスケートを撮る、あるいは文献の複写をする、なんてことは想像すらできないですし、誰も撮りません。

Mシリーズのライカには広角から標準くらいまでのレンズを用意して、素通しのファインダーを見ながら、ポンポンと世界から切り取るようにシャッターを押してゆくという行為が楽しいわけです。

ライカレンズの性能が優れているから、というのは間違いありませんが、国産のレンズと比較して突出して優れているのかどうかというのは、ライカを使い出してからの長年の疑問であります。しかし、ライカ設計人の独自の思想的な考え方を感じることもあることは確かです。

フィルムライカ人気が再燃。フィルムM型ライカを復刻発売

ライカ、ライカと草木もなびくではありませんが、どういうわけか理由はよくわかりませんが、いま、フィルムライカが大変な人気で特定の機種ではかなりの高騰をみせています。

しかもここにきて予想だにしない、ライカM6の復刻が話題になっています。1984年に登場してから1999年まで15年以上も現役であり、さらにマイナーチェンジされたライカM6TTLに繋がることになるロングセラー機です。一般のカメラとは別の道を歩んできたライカとはいえ、ライカM6はそれなりの数が中古市場あるいは市中にあると想像されます。ところが、それでも復刻されるということは、一定数の需要はあると考えているのでしょう。

筆者としては外装が亜鉛ダイキャストから真鍮になったこと、メーターの表示がデジタルMやMPと同様に「 ▶︎●◀︎」表示になったので、適正露光の表示が確実になったことを喜んでおりますが、フィルムライカならば同じレンズと同じフィルムを用いて撮影すれば、ライカM3であろうがM7であろうが写りは同じです。

今年、復刻版として登場した、ライカM6とズミルックス35mm F1.4。

MシリーズライカのAE化は?

1984年、ライカM6が登場したのちに、すぐに次のライカはどうなるだろうかという話をカメラ雑誌で見つけました。ライカM6の次なんだからM7だろう、というネーミングの推測は当然のことにしろ、大きな問題はAE化されるか否かということでした。

Mマウント互換の絞り優先AE 機としては1981年に発売されたミノルタCLEがありましたから、ライカM7の登場は明日であってもおかしくないのではという期待はライカM6登場時からあったのです。

ニコンFMとFEの関係とかオリンパスOM-1とOM-2の関係をみればフルメカニカル機とAE機を揃えることはクルマの両輪みたいにも思えました。AE機は仕事の効率を上げるため、フルマニュアル機はバックアップ的な役割を担ってもらうわけです。ところが待てど暮らせど、ライカMシリーズからAE機は登場しませんでした。

LEICA(ライカ)M7+ライカビット+SUMMICRON(ズミクロン)M 35mm F2 2nd

2002年、満を持して絞り優先AE機、ライカM7誕生

2002年。満を持してライカM7は登場します。すでに世の中のカメラは軒並みデジタルにシフトし始めていた時期ですから、言葉は悪いですがライカM7の登場は正直、今さらなのかよと思いましたね。

この時にMマウント互換の絞り優先AE機としては、1999年に登場したヘキサーRFもありました。一部にはヘキサーRFをベースにライカM7が登場するのではという噂もあったくらいです。素人ながらにこの噂に信憑性があったのはシャッターの問題です。AE機として登場するとなれば、シャッターは金属幕縦走りのもの、すなわちコパルの既成のシャッターを使うしかないのではと考えられていたからです。そのくらい布幕横走りの電子シャッターというのは他のカメラを見ても存在しない時代に突入していたわけです。

大型のシャッタースピードダイヤルに刻まれた「AUTO」の文字。当時、ライカM6にこの文字が刻まれることをずっと待っていたんですよね。しかし、ライカM7発表時にも大きな感動がなかったのは、すでにデジタル時代が到来していたからでしょうか。少々複雑な気持ちになりました。

ライカの本気度を見た!

だからライカM7が登場した時にレトロな横走り布幕の電子シャッターを搭載したということで、これだけでも筆者には強いインパクトがありました。だって、このシャッターはライカカメラ社自らが幕張りをしたり、AEの制御を考えねばならないからです。いや、普通のカメラはいかにコストを下げて効率よく廉価に作るかばかりを考えているように見える時があるからでしょうか。それにライカRシリーズはすでにAE化されていましたが、すべて金属製の縦走りシャッターを搭載していましたので、MシリーズのライカもAE化されるときは同様のシャッターになると考えられていたわけです。

一方でカメラの機構や構造に詳しい、ライカマニアさんに言わせると、ライカMのサイズのまま、縦走りシャッターを搭載してAE化するのは難しいのではないという意見も多くありました。特にカメラの高さに余裕はないということもありました。

しかし、1999年に登場するライカM6の改良型であるM6TTLは、スピードライトのTTL制御をすること、TTLメーターの表示を「▶︎●◀︎」にするために、背が2mmほど高くなっています。

この2mmを有効活用して、金属幕のシャッターが搭載されるのかと筆者は予想していましたが、結果は異なりました。ライカM 6TTLとM7はボディの高さは同じでも、シャッターはメカと電気との違いこそさあれ、両者ともに布幕横走りのフォーカルプレーンシャッターを搭載していました。

筆者はこの時に、ライカカメラ社のM7に賭ける本気度をみた思いがしました。既成のシャッターでさっさとAE化してしまえば、ライカマニア達は少しの間は静かにしているんじゃないかと思ったからです。けどライカカメラ社はそれをやらずにシャッターを自社開発したわけです。

シャッターボタン基部にあるメインスイッチ。デジタルのMでもスイッチはこの箇所にあるわけです。赤丸が出現すると、OFFのサインです。いつも逆に記憶していて間違えてしまいます。

スポット測光に準じた独自のAE方式を確立

さて、ライカM7のAEは絞り優先AEになります。Mシリーズライカは、一眼レフのように自動絞りを組み込む必要がないわけですから、実絞りで動きます。

AEにかかわらず、機構的にもシンプルにできるしTTLメーターの精度を上げるためでも開放測光方式より有利ですね。

ただライカM7に搭載されたAE方式は少し変わっていました。もちろん設定した絞りに対して適正になるシャッタースピードが自動制御されるわけですが、多分割測光が搭載されているわけでもなくて、M6やM6TTLと同様にスポット測光に準じたものになっています。

測光範囲は装着レンズによって変化しますが、基本的には各レンズを装着した時に出現するブライトフレームの短辺の2/3を直径とした円内が測光部分になります。したがって、長焦点レンズになるほどスポット性は強くなります。

ボディ背面にあるフィルム感度ダイヤル。これまでのフィルムの覚書と違い、実用箇所ですね。DXコードにも対応します。周囲は補正ダイヤル、内側にあるのがISO感度ダイヤルです。これはかなり軽く回るのですが、勝算はあるのかしら。

まさに撮影者参加型のAE機

ライカM7のシャッターは2段階にて機能します。シャッターボタン周りにあるメインスイッチを入れた後、絞りを決めて、シャッターボタンを半押ししますと、絞り設定に応じたシャッタースピードが表示されますが、AEロックはシャッターボタン半押し状態で必ず機能してしまうのがライカM7ですね。

常にシャッターボタンを一気押しする人ならば別でしょうが、多くの人はシャッターボタン半押しをしてチャンスを待ち構えることになります。つまり、常にAEロックをかけて撮影に挑むことになります。AEロック機能時には表示シャッタースピードにドットが加わります。

人物撮影などで顔にフォーカシングして、その都度AEロックすれば常に人物の顔に対しては理想的な露出になりますが、撮影手順が異なれば面倒なことになりますし、街中のスナップでは、必ずしも理想的な露出になるとは限りません。

ライカM7は撮影者参加型のAE機なのかもしれませんね。次回はまた具体的な使いこなしについてお話をしようかと思います。

バッテリーはDL1/3Nを使用します。最近では量販店でも入手しづらいですね。ネットだと容易です。どうしても用意できない場合はSR44を4個入れるという手段もありますが、少々手間がかかります。

撮り下ろし!リバーサルフィルムで楽しむ、ライカM7

反射率の高い被写体なのでそのまま撮影すると露出はオーバーになります。露光補正を+1にして対応しました。露光補正量というのは勘になります。

【撮影データ】LEICA(ライカ)M7・ズミクロンM 35mm F2 2nd・絞りf8・AE・+1EV補正・RDPⅢ

木漏れ日の当たるオブジェ。光の複雑さに露光決定を迷うところですが、カメラ任せにして問題ありませんでした。
【撮影データ】LEICA(ライカ)M7・ズミクロンM 35mm F2 2nd・絞りf4・AE・RDPⅢ

全体には黒っぽいものが多い被写体なので露出オーバーになることを恐れてマイナス補正してみたが、これで問題はないようです。迷った時は潔くマニュアル露出に切り替え、露光量を変えて撮影した方が効率が良いかもしれません。

【撮影データ】LEICA(ライカ)M7・ズミクロンM 35mm F2 2nd・絞りf2.8・AE・RDPⅢ

夕暮れに一筋の飛行機雲。カメラ任せのまま撮影。手前に街灯を入れたりして少々複雑な光線状態になりましたが、予想通りの露出になりました。AEの読みが当たったわけです。

【撮影データ】LEICA(ライカ)M7・ズミクロンM 35mm F2 2nd・絞りf5.6・AE・RDPⅢ

RDPⅢ(フジクロームPROVIA 100Fプロフェッショナル)
●発売=2013年4月3日 ●価格=オープンプライス(実売2,160円・税込)

今回のカメラ、レンズ

LEICA(ライカ)M7 ※旧製品
発売=2002年3月

LEICA(ライカ)M6 (現行品)
発売=2022年11月12日 詳しくはこちら

LEICA(ライカ)ズミクロンM f2/35mm ASPH.(現行品)
◉発売=2016年3月15日 詳しくはこちら