カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 第三弾! フォトグラファー 藤村大介 × ニコンZ 9実写レビュー
写真・文:藤村大介/編集:合同会社PCT
写真家 藤村大介が指南する、ニコンZ 9極上活用術
世界中の街や民族、そして世界遺産をライフワークとして撮影し続け、日本に夜景写真ブームをもたらした写真家、藤村大介氏さんによるニコンZ 9実写レビュー記事をお届けします。発売からもうすぐ1年。いまだに圧倒的な人気を誇るニコンZシステムのフラッグシップ機の実力とその魅力に迫る。
- 藤村大介(ふじむら・だいすけ)
- 1970年香川県生まれ。日本写真芸術専門学校卒。世界の街や民族、世界遺産、風景、夜景などを撮影。これまでに取材した都市は500を超える。2002年に開催した日本初の海外夜景のみの個展「暮色情景」が大きな話題となり、夜景写真ブームを引き起こした。夜景作品は欧米でも展示され評価が高く、美術館にも収蔵されている。近年の創作テーマは「宇宙へと繋がる人の心」。全てを包む産みの親である宇宙と、人との間にある部分を表現したいと創作活動を行なっている。 著書『世界のまがとき、カメラ旅』『夜景写真マスターブック』日本写真企画
- HP: https://fujimuradaisuke.net/
- YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCNnuJ4pJD_OGiQ_A9nhU-Rw
- Twitter: https://twitter.com/masegaki
目次
- はじめに 少し違った角度から、Z 9レビューをお届けしよう
- 衝動買いしたカメラ、Z 9 誰がなんと言おうと、凄いカメラ!
- 評価が高い「Real-Live Viewfinder」 劇的に変化したファインダー(EVF)の見やすさ
- まずは建造物を撮ってみた マイナス補正とC-PLフィルターの効き具合が一目瞭然
- 野鳥を撮ってみた 一眼レフの光学ファインダーで撮っているような快適さ
- 最旬機能、被写体認識AFをチェック 「オート」で対象を自動的に選んで合焦する機能は実用度高し
- ビルの谷間を飛ぶ飛行機を狙う 優秀なAF性能のおかげでフレーミングに集中できる
- ローリングシャッター歪みは!? まったく歪みなし!超高速読み出しができるセンサーの威力絶大
- 秒間120コマの超高速連写を試す 目に見えないものも写せる!
- 動きモノと解像力重視撮影を両立 ただ速いだけじゃない。描写力も素晴らしい!
- 質感やトーンの描写はどうか!? ダイナミックレンジの広さを生かした繋がりのよいトーン描写、高い解像力を実感
- 都市夜景を撮ってみた 夜景撮影で威力を発揮、今冬はぜひニコンZ 9で傑作をものにしよう♪
- 高感度は使えるか!? 中感度より高感度のほうが低ノイズ。積極的に高感度を活用しよう
- 撮影お役立ち機能① 外回り写真家にはとてもありがたい「センサーシールド」
- 撮影お役立ち機能② 夜景やネイチャーなどの夜間早朝撮影者へ強い味方「ボタンイルミネーション」
- 撮影お役立ち機能③ 限られた場所、キツいアングルに、ニコン初の「縦横4軸チルト式モニター」は超便利!
- まとめ 私の不満点をすべて解消!フラッグシップ機の魅力を贅沢に備えたカメラ
- ニコンZ 9レビューに登場するカメラ、レンズ
はじめに少し違った角度から、Z 9レビューをお届けしよう
Nikon(ニコン)Z 9が発売されてからもう1年近くになる。すでに多くのレビューが存在し、多くの方はこのカメラの凄さをご存知だろう。中でもAF関連の性能は秀逸で、ほとんどのレビュアーはそのことに触れている。画素数や連写速度などのスペックについても同じで、素晴らしいカメラであることは、もう周知の事実として記事を書いた。
そこで今回はスペックについての説明に加え、少し違った角度から目を向けてのレビューも書いた。
衝動買いしたカメラ、Z 9誰がなんと言おうと、凄いカメラ!
Z 9は凄い!というのは、もはや当たり前となった今日この頃。本来なら私はあまりこのカメラの性能をフルに必要としないジャンルの写真家なのだが、ずっとニコンを使って来ながらZシリーズに満足感を得ないまま過ごしていたのも事実(ここだけの話w)。以降の記事は私が衝撃を受けた性能と、D3X以来となる、めっちゃ高いカメラを衝動買いしてしまう事態となった要因を書いてみた。
評価が高い「Real-Live Viewfinder」劇的に変化したファインダー(EVF)の見やすさ
ミラーレス一眼の不得手な一面としてファインダーの見づらさがある。光学系のファインダーと違いモニターを見るミラーレスは、当たり前だがその性能次第で見え方が変わってしまう。Z 9で新採用されたのはQuad-VGAパネルを搭載した「Real-Live Viewfinder」。これは、撮影時にファインダーのブラックアウトが起きないだけではなく、被写体の動きをそのままリアルタイムで見続けることが出来るという画期的なファインダーだ。従来のブラックアウトしないというファインダーは、撮影時に同じ画像を表示しているだけだったので、なんともこれは素晴らしい!! もはや光学系ファインダーと遜色ないと言って過言ではないだろう。老眼になって久しい私の目は、モニターを見るよりファインダーのEVFを見る方が遥かに細かい部分が見える。老眼鏡をかけなくても視度補正が効いているから。写真を撮る時にEVFが見づらければ、被写体に向きあった時点でイヤになることもあるので、これは本当にありがたい。
まずは建造物を撮ってみたマイナス補正とC-PLフィルターの効き具合が一目瞭然
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・61mmで撮影・絞りF22・1/60秒・-1EV補正・ISO450・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
上の作例撮影に使用した、ケンコー・トキナー PRO1D plus WIDEBAND サーキュラーPL(W) 77mm径
価格:17,600円(税込)
快晴の空を背景に、ビルのガラスに強烈な太陽のリフレクション。光芒を美しく伸ばすには絞る必要があるが、筋の加減を見ながらF値を決めた。マイナス補正とC-PLフィルターでコントラストと空の深みを増しているが、ここにZ 9の良さが発見された。従来のEVFはC-PLの効き具合が判断しづらい場合がある。Quad-VGAパネルを採用したことにより、明るい場所でも暗部の微妙な変化が見やすくなったので、C-PLの効き具合が一目瞭然だ。
野鳥を撮ってみた一眼レフの光学ファインダーで撮っているような快適さ
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・250mmで撮影・絞りF8・1/640秒・ISO640・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
この写真は、2羽のシラサギの上を飛行するアオサギの写真だが、風景的に構図を決めようと考え、3羽の位置を瞬時に計算した。高速連写でシャッターを押し続けて撮影しているが、従来のファインダーでは3羽の位置を見ながら撮影することはほとんど不可能。1枚撮影した後、動く画像が見えた瞬間には被写体がとんでもない場所にいるということは当たり前だった。「Real-Live Viewfinder」は動体撮影でその性能を存分に発揮してくれた。鳥やプロスポーツなど早い動きのものだけではなく、スナップショットのように予期しない動きモノを撮影する際にも非常に有効だろう。AFが動作している間も解像度が落ちたり、フレームレートが変わることもない。非常に自然でまるで一眼レフの光学ファインダーで撮影しているように感じる。ミラーレスしか使ったことのない若いカメラマンには、この感覚が分からないんだろうなぁ、とオヤジの呟き…。
スナップショットでも、被写体が人物の場合、建造物の場合、車などの動体を取り入れる場合など、それぞれ撮影法も設定も異なってくる。
私がよく思い浮かべる都市スナップでのイメージとは「カッコいい」「斬新」「非人間的」などの都会的なイメージがあるが、言い方を変えれば「ええ感じやん」「おもろー」「なんや、これ」「冷たいなぁー」と言ったところだろうか。という私もウエストエリア(西側)出身の人間なので、大阪のDNAが少しばかり入っている。お堅い講演の場であっても親父ギャグを言ってしまうのは、やはり血筋なのだと思える。
最旬機能、被写体認識AFをチェック「オート」で対象を自動的に選んで合焦する機能は実用度高し
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・400mmで撮影・絞りF8・1/400秒・ISO900・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・400mmで撮影・絞りF5.6・1/6400秒・ISO1000・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
9種類の被写体認識AFを搭載
9種類の動体を検出し合焦する機能は素晴らしい。対象を自分で指定する場合は従来と同じ感覚だが、「オート」で対象を自動的に選んで合焦する機能は面白い。飛ぶアオサギに焦点を合わし、3D-トラッキングで追い続けてみた。最後は建物の影に隠れるのだが、ごちゃごちゃの背景やフェンスに惑わされることなく追い続けてくれた。まれに背景にAFが抜けてしまうことがあるのは、Zシリーズの名残であろうか。私の使い方ではほぼ問題ないが、条件によっては戸惑うことがあるかもしれない。シラサギは頭を奥へと向け離れて行く飛行だが、この時はまったく問題なく追尾していた。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・400mmで撮影・絞りF5.6・1/2500秒・ISO1000・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
シラサギを被写体認識で合焦し、背景に花がある場所で撮影。連写撮影しながら常に被写体が見えている状態ならではの、ほんの一瞬のタイミングで捉えることができた。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・95mmで撮影・絞りF4・1/100秒・+0.7EV補正・ISO4000・WBオート・RAW+JPEG(東京都・自宅)
我が家の猫はおとなしいので、あまり動いてくれず作例としてイマイチだが、逆に構図的に画面下半分は前ボケにした状態で被写体認識はオートで試したところ、障害物に惑わされることなく瞬時に猫の目を認識した。
ビルの谷間を飛ぶ飛行機を狙う優秀なAF性能のおかげでフレーミングに集中できる
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・24mmで撮影・絞りF8・1/25秒・ISO1100・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・港区)
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・120mmで撮影・絞りF8・1/125秒・ISO1400・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・港区)
都市風景を撮影する私は、ビルの谷間に飛ぶ飛行機を狙うのが好き。しかし低空を飛ぶ飛行機はスピードが速く、音が聞こえてからではフレーミングと合焦が間に合わず、なかなかうまく撮れなかった。Z 9は一瞬で合焦し構図に集中できるので、作品作りが大いに楽になった。とは言え飛行機が小さい場合や、フォーカスエリアが広く対象が小さい場合など、特定の条件では外してしまうことがある。当然だがすべてのことに万能ではなく、被写体により追尾方式とフォーカスエリアなどの組み合わせを模索する必要があるだろう。
ローリングシャッター歪みは!?まったく歪みなし!超高速読み出しができるセンサーの威力絶大
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・400mmで撮影・絞りF8・1/5000秒・ISO640・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
わざと複数の電線を横切らせてみたが、3D-トラッキングは何本もの電線を物ともせずヘリコプターをガッチリとキープしていた。このくらいなら他のカメラでも大差ない。注目はミラーレスの宿敵「ローリングシャッター」問題だ。高速シャッターにし動きを止めた翼で確認。まったく歪みのないのが分かる。Z 7Ⅱに比べ約12倍という超高速で読み出しができるCMOSセンサーのおかげだ。これは直線的な造形が多い鉄道撮影などにも役立ってくれるだろう。
秒間120コマの超高速連写を試す目に見えないものも写せる!
120コマ/秒の高速連写
120枚の中から、ベストカットをチョイス。
【撮影データ】(共通)Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・84mmで撮影・絞りF7.1・1/1000秒・ISO360・WB晴天・JPEG(東京都・豊島区)
小さくて分かりづらいかもしれないが、これはけん玉をしている少年の動きを撮影したもの。上下に激しく動くので、合わせてアングルも上下している。連写中でも常時リアルな動きが見えるので楽勝だ。けんの中皿の部分を玉で弾き回転させ、けんを持ち直し玉をさす、この動作は画像を再生するまで分からなかったが、職人技のような動きは、1秒間120コマの超高速連写で撮影できた。JPEGのみだが11メガピクセルあるので、Webでは十分、プリントにも耐えられるサイズだ。その神業のような動きにしばし釘付けになり夢中で撮影していたが、少年の動きに合わせて身体を上下するオジサンの動きに、背後のカップルの視線が痛かった…。
動きモノと解像力重視撮影を両立ただ速いだけじゃない。描写力も素晴らしい!
これまでの高速レスポンス機は、画素数は少なめにされていることが多かった。そのため動きモノを撮影する場合と、風景など解像力重視の場合ではカメラを変えて撮影することが普通だった。Z 9はD850に匹敵する4571万画素もありながら、高速レスポンスで動体にも強いのだ。もちろん動物撮影などで望遠が足りずクロップするような場面でも、画素数が多いことは有利である。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S・140mmで撮影・絞りF11・1/160秒・ISO200・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
美しく反逆光で輝く葉を撮影。高画素機ならではの解像力は、Zレンズの良さの裏付けでもある。画総数が高くてもレンズの解像力が悪ければかえって逆効果。レンズの癖が顕著に表れてしまう。Zレンズもかなりの本数が揃って来ており、一部特殊なレンズを除けばほぼラインナップは揃ってきた。個人的にはシフトレンズとフィッシュアイズームを待ちわびているのだが、果たしていつになることやら…。
(左)積層型CMOSセンサー (右)EXPEED 7
質感やトーンの描写はどうか!?ダイナミックレンジの広さを生かした繋がりのよいトーン描写、高い解像力を実感
すでにいろいろなサイトで機械的に検証されているので、数値やグラフで表される測定データは一旦横に置いておこう。ここでは実写レビューを記載する。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 17-28mm f/2.8・17mmで撮影・絞りF7.1・1/125秒・+0.3EV補正・ISO250・WBオート・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
個人的に高画素機はトーン描写や高感度特性に弱いものが多いと感じている。日陰での逆光撮影では空などの白飛びに注意が必要。ピクチャーコントロールなどの仕上げ設定にもよるが、ここでは「オート」を使用。LOVEの赤色の質感は見た目に近く、よく表現されている。光が当たっている場所のテカリ具合も微妙な明るさが再現できており、青空の青も僅かではあるが残っている。トーンに粘りがあるということ。昼の撮影では優秀なトーン描写を再現した。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・50mmで撮影・絞りF2.5・1/2000秒・ISO64・WBオート・RAW+JPEG(東京都・多摩市)
公園の遊具。木目とロープの繊維質な感じがよく表れている。左奥には日陰になっているが、黒の中にも僅かに物体の形が見える。ダイナミックレンジの広さが活き、完全に黒ツブレせずに済んだ。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・24mmで撮影・絞りF11・1/25秒・-1.7EV補正・ISO220・WB晴天・ピクチャーコントロール「ソンバー」・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・33mmで撮影・絞りF11・1/125秒・-0.3EV補正・ISO400・WBオート・ピクチャーコントロール「グラファイト」・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
ファインダーが見やすいということは、極端な絵作りにも対応しやすいということ。私はよくアンダーで高コントラストな写真を撮影するが、見づらいEVFでの撮影は本当に大変。しかしZ 9では思うように見え撮ることができるので、撮影がとても楽しい。優れたファインダーは良い作品作りに必須なのだ。
クリエイティブピクチャーコントロールで絵作りを楽しむのは面白い。
都市夜景を撮ってみた夜景撮影で威力を発揮、今冬はぜひニコンZ 9で傑作をものにしよう♪
藤村さん愛用のニコンZ 9セットアップ。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S 、SmallRig Nikon Z9 専用 L型プレート 3714 (価格:9,699円・税込)
OP/TECH USA(オプテック) ユーティリティストラップスリング XL クイックアジャスト ブラック(価格:5,060円・税込)
昼間の撮影では機材の良さは分かるものの、厳しい面は分かりづらい。私の撮影ジャンルの中で、トーンの描写にこだわらなければならないのは何と言っても「夜景」だ。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・110mmで撮影・絞りF5.6・1/3秒・-0.7EV補正・ISO1000・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・港区)
ISO感度を上げ手持ちで夜景。一昔前なら非常識極まりない夜景撮影法であるが、今では普通に撮影できる。特に5軸ボディ内手ブレ補正機能はとても優秀なので、ちょっとした夜景なら簡単に手持ちで撮影できてしまう。画面下部でブレているのはモノレールの光跡。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・102mmで撮影・絞りF7.1・1/8秒・-0.7EV補正・ISO1000・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・港区)
VRユニット
明暗差の大きい夕景・夜景撮影では、RAWデータにどれだけの情報量が豊富にあるかで仕上げのレタッチが変わる。このような逆光夕景撮影では特定の場所以外は黒く潰れることが多く、その部分の色と明るさ情報が欠如する。
この写真は手持ち撮影で、ISO1000で撮影している。まったく使えない程ではないが、中感度によるノイズ発生は認めざるを得ない。
高感度は使えるか!?中感度より高感度のほうが低ノイズ。積極的に高感度を活用しよう
高感度でのテスト。
ISO3200、ISO6400、ISO12800で撮り比べをしてみた。
これは積層型裏面照射型CMOSセンサーの特徴だろうか。中感度よりも高感度の方がノイズが少ないという現象が起きた。もちろん条件が違うのでまったく同じように比較はできないが、案外高感度撮影には強いのではないかという結果になった。
◎ISO3200で撮影
◎ISO6400で撮影
◎ISO12800で撮影
【撮影データ】(共通)Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・52mmで撮影・絞りF4・AE・-0.3EV補正・WBオート・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・57mmで撮影・絞りF11・20秒・ISO64・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・千代田区)
◯上の作例撮影に使用した藤村さん愛用アイテム
KANI(カニ) Premium Soft GND 1.2 100×150mm
価格=オープンプライス(実売19,800円・税込)
KANI(カニ) サンシェードフード for HT100mm
価格=オープンプライス(実売17,800円・税込)
RRS(リアリーライトスタッフ)中型自由雲台 BH-40 LRⅡ
価格=オープンプライス(実売100,650円・税込)
GITZO(ジッツオ) 2シリーズ4段 バサルト三脚 GT2941(販売終了品)
夜景撮影時はなるべく低感度での撮影が基本。三脚を使いトワイライトの時間を狙う。その頃は微妙な色とほんの僅かな明るさで画面を構成する。自分の目では細かい部分までは見えないので、ある程度は勘に頼ることも大切。水面の写り込みの美しさは、幅広いダイナミックレンジによるトーン描写によるもの。刻一刻と変化するこの時間帯を逃さず捉えなければならない。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 17-28mm f/2.8・17mmで撮影・絞りF22・60秒・ISO32・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・新宿区)
上の作例撮影に使用した、Manfrotto(マンフロット)テーブル三脚 雲台付き MTT2-P02。(販売終了品)
シャッター速度が60秒とかなり長めの設定だが、長時間露光によるノイズの発生はまったく見られなかった。夜景撮影において長時間露光に強いというのは、とても安心して撮影できる。近年流行りのNDフィルターによる長時間露光でも同じ結果が求められる。
撮影お役立ち機能①外回り写真家にはとてもありがたい「センサーシールド」
私は国内外問わずほとんどが屋外での撮影で、埃っぽい場所や風が吹いている場合でのレンズ交換は、かなり神経を使う。センサーシールド機能を使えば、かなりの確率でホコリがセンサーまで届くのを防ぐことができる。もちろんシールド自体に付着したホコリが撮影時にセンサーまで移動することもあるだろうが、ダイレクトにセンサーが丸出しになっている場合よりは確実に少ないはずである。無いよりは合った方が絶対に良い機構だ。
撮影お役立ち機能②夜景やネイチャーなどの夜間早朝撮影者へ強い味方「ボタンイルミネーション」
Z 9には「ボタンのイルミネーター点灯」が付いている。スイッチONにするレバーをONよりさらに回すことにより点灯する。シャッターボタン周りの電源スイッチは、どんな状況でもすぐに分かる位置にあるため、この操作は全暗でもできる。写真のように夜景など暗い場所での撮影時は各ボタンの位置が見えなくなる。複数のカメラを所持している人は、ボタン配置の違いで戸惑うこともあるだろう。私もカメラによって違うボタンにたびたび惑わされる。そんな問題は、ボタンが見えさえすれば解決するのだ。星景撮影時には「赤色画面表示」機能も付いているので、暗闇に慣れた目をビックリさせなくて済む。これらはZ 9が高感度特性も良いことを裏付けるものであり、高感度で撮影する状況とはどのような場面かということを、撮影者側に立って設計された機能と言える。一つ残念なのは、「レリーズモードダイヤル」が点灯しないこと。シングルやセルフタイマーなどを変更したい場合に迷ってしまう。
撮影お役立ち機能③限られた場所、キツいアングルに、ニコン初の「縦横4軸チルト式モニター」は超便利!
高所低所のみならず、壁沿いや障害物がある場合など、ファインダーやモニターを真っ直ぐに見られないシチュエーションは、外回りの撮影をする者にはよくあることだ。昔は超ローアングルで撮影する場合、よく地面に腹這いになって撮影し服を汚していたが、もうそんな心配はないどころか、崖っぷちのフェンスギリギリで手を伸ばせば、崖にはみ出たような写真も撮れてしまう。これがチルト式モニターの魅力。くれぐれも崖っぷちでは、カメラだけは落ちないよう、身を呈して注意してほしい。
まとめ私の不満点をすべて解消!フラッグシップ機の魅力を贅沢に備えたカメラ
ニコンZが登場してもう4年。当時ミラーレス一眼市場では完全に出遅れてしまったニコンは、「社運を掛けて開発したカメラ!」と声高々にZ 7、Z 6を発売した。しかし、これらは私のカメラ欲を満足させるものではなかった。ここだけの話、私はZ 6以外購入していない。役得と言うか、立場上機材は借りることができるので仕事が滞ることはないのだが、多数のメーカーを所持し扱う私にとって、自腹で買うまでには至らなかったと言うのが本音。しかしZ 9はようやく私の重い腰を上げた。しかも思い切りジャンプしそうなぐらい腰を上げた。それまでの私の不満を見事にほとんど解消し、D6やD850など両極端なフラッグシップの魅力を贅沢に備えたカメラとなった。
価格が高くても問題ない。それはこの機材が必ず元手を回収してくれることが予想できたからだ。当然ニコンも好景気になり仕事依頼もガッポガッポと増えるだろうと期待も込め、発表後すぐに予約を入れた。
Z 9の性能をうんぬんカンヌン言っても、すごいカメラだ!ということに変わりはない。ニコンがやっと古き良き世界のトップカメラメーカーの威信を取り戻すための、激アツなアイテムを所持したと言うことだ。
いやはや、何と素晴らしいカメラを作ってしまったんだろう…。
【撮影データ】Nikon(ニコン)Z 9・NIKKOR Z 24-120mm f/4 S・24mmで撮影・絞りF8・1/25秒・ISO2800・WB晴天・RAW+JPEG(東京都・港区)