カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 水咲奈々×ストロボを使ったポートレート撮影
写真・文:水咲奈々/編集:合同会社PCT
ストロボで作るドラマティック・ポートレート
ストロボを使用した撮影は難しいイメージがありませんか。ましてやストロボを使ったポートレート撮影は、ハードルが高いと思われがちかと思います。今回はストロボを使ってドラマティックなポートレート撮影を楽しむ方法を水咲奈々さんに解説いただきました。ぜひストロボ撮影にチャレンジしてみてください。
目次
はじめに
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2・1/125秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:沙倉しずか
ストロボというと、操作や調整が難しいと思われる方もいらっしゃるかも知れません。ですが、ちょっとしたコツを掴めば、自然光だけでは作り出せない様々なムードを演出できる、楽しい機材でもあります。今回はストロボを使用して、ドラマティックなポートレートを撮る方法をお教えします。
ドラマティックなポートレートを撮るための使用機材
ストロボ撮影なので、ホットシューの付いているカメラが必要です。筆者はNikon Z8とNikon ZRを愛用しています。レンズは35〜85mmくらいの画角のレンズですと、どんなスタジオでも使いやすく、モデルとの撮影距離も近過ぎず、遠過ぎずちょうど良いです。
ライティングの調整で時間を多く使うため、メディアは交換しなくても沢山撮れる、容量の大きいものがお勧めです。最近はSUNEASTの「ULTIMATE PRO SILVER Series CFexpress 4.0 Type B Card 1TB」を使用しています。
筆者は、自然光撮影では手持ちで撮影することが多いのですが、ストロボ撮影では構図をしっかりと決めたいので、三脚を使用することがあります。手持ち撮影ではカメラの落下防止のために、必ずストラップを付けていますが、三脚使用時には、逆に邪魔になってしまうことがあるので、マグネット式のワンタッチで着脱可能な「CHI LEVO PRO ショルダーストラップ」を付けて、撮影に合わせたストラップスタイルに変更して撮影しています。
ストロボは大光量タイプと小型なクリップオンタイプがあると、2灯のライティングが楽しめます。
最大出力220Wsながら小型・軽量な、サンテックの「JINBEI バッテリーモノライト HD-250MAX」はメインライトとして、ソフトボックスを装着して使用することが多いです。「JINBEI LEDスピードライト H1」などの小型ストロボはサブライトとして使用します。
ストロボを操作するコマンダー「ワイヤレストリガー TR-Q8」は、ニコン以外のカメラ(ソニー以外)でもそのまま使用できるので、セミナーのときなどに重宝しています。
ふんわり柔らかいムードを作ってくれる「ホワイトプロミストフィルター 1/4」と、構図内にドラマティックなラインを作ってくれる「ストリークレインボーフィルター」は、ストロボ撮影でよく使用するフィルターです。H&Y Filters Japanの可変式ステップリング「REVORING(レボリング)」を使用すれば、様々な径のレンズで使用できます。
ビューティーディッシュの内部。凸型の反射鏡が付いています。
ソフトボックスは60cmの物を使用しています。内部にストロボの光を反射する凸型の反射鏡が設置されている「[SMDV]FlipBeauty24ビューティーディッシュ Softbox (60cm)」は、光の芯を和らげながら、ストロボの光を拡散してくれるのでポートレート撮影にお勧めのソフトボックスです。
斜め前からの王道ライティング
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2.8・1/125秒・ISO200・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:沙倉しずか
室内に自然光が入ってくる環境で、補助光としてストロボを使用しています。まずは、見ている人にストロボを使っていることを意識させない、自然なライティングからスタートしましょう。
ソフトボックスを装着したメインライトはモデルの左前方、斜め上に設置しています。左頬に光が当たるように調節すると、鼻筋のラインが綺麗に出ます。光量は強めから、徐々に下げていくと効果がわかりやすいです。不自然に白飛びしないくらいの光量にしましょう。
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2.2・1/125秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:沙倉しずか
メインライトはモデルの左前方、顔と水平くらいの位置から照射しています。背景に光を逃したくないのと、顔をくっきり浮かび上がらせたかったので、通常よりも正面寄りにストロボを設置しています。その分、左顔の鼻の影が少なくなりますが、周りがかなり暗い状況なので、光が当たっている箇所と当たっていない箇所のコントラストが強くなり、モデルの顔の印象が強い写真に仕上がります。
モデルの前方からのストロボは、どこかに影が生まれるようにすると成功しやすいです。この作品では、左頬の影が顔のシャープさを、左肩の影が方の丸みを強調して女性らしさを演出してくれています。
サイドからの1灯でムーディーな雰囲気に
Nikon Z5II・7Artisans Z 85mm f/1.8・絞りF2.8・1/125秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:あずりな
かなり暗い状況で撮影しています。モデルの右側に部屋があり、乳白色のすりガラス状になっていたので、モデルにはそこに寄り添うように立ってもらい、ガラス越しにソフトボックスを装着したストロボを、モデルの顔の高さから照射しています。
顔の真横からのライティングですが、ソフトボックスとガラス越しの強いディフューズ効果で、トゲのない優しい光になりました。
体には光が回らないようにしているので、光が当たっていない右半身や構図下の方は、見えるようで見えない、どきどき感のあるムードを演出しています。光量もそのどきどき感を意識して、上げすぎないようにしましょう。
隠しストロボでよりドラマティックに仕上げる
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2.8・1/125秒・ISO200・WB:4800K・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:沙倉しずか
モデルの右前方からソフトボックスを装着したメインのストロボを照射して、顔を中心に照らします。鼻筋のラインが綺麗に出るように光量と位置を調整すると、かわいいよりも格好良い系のライティングにできます。
ポイントとなる隠しストロボは、モデルの左脇から光が抜けるように、モデルの体と衣装で隠す場所に設置しています。ストロボの向きはカメラの方向をまっすぐ向くようにし、ソフトボックスなどは装着しないで、そのまま照射します。透け感のある白い衣装がふんわりと輝いて、自然光では作れないドラマティックさが生まれます。
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2.8・1/200秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:あずりな
ソフトボックスを装着したストロボを、モデルの斜め前に設置。メインのライトとして、光量は強めに照射します。
サブの小型のストロボは階段に設置して、構図左側の壁から前方に光が抜けるように角度を調節します。女性の体のパーツで重要度の高い、ウエストのくびれから強い光が漏れ出して、アンリアルな空間ができあがります。模様がある白壁なので、明暗の差を作ることでディティールが変わって、構図内に奥行きを出してくれる効果もあります。
カラーフィルターをプラスしてムードを演出する
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF1.8・1/200秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:あずりな
ソフトボックスを装着したストロボを、モデルの左の顔が明るくなるようにサイドに設置します。斜め前ではなく、真横に設置するのがポイントです。こうすることで、鼻筋のラインを光と影で作ることができ、顔の彫りがより深く見えます。
その反対側に、モデルの顔をサンドウィッチするように、もう1灯ストロボを設置します。こちらのストロボには、ブルーのカラーフィルターを装着します。透け感のある衣装の腕を上げてもらい、特に右顔を衣装の袖で覆うようなポーズをしてもらうことで、顔にはブルーの色味が乗らず、衣装だけブルーに染めることができて、アートなムードがぐっと強くなります。
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF2.8・1/125秒・ISO200・WB:4800K・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:沙倉しずか
こちらの作品は3灯のストロボを使用しています。メインのストロボはソフトボックスを装着して、モデルの右前方、斜め上から顔を中心に照らすように照射します。光量は3灯のなかで一番強くします。
サブのストロボはピンクのフィルターを装着して、モデルの右半身を照らします。顔に強すぎる光が乗らないように、腕の辺りを目掛けて照射しましょう。左腕に明るい部分と影の部分ができるので、腕の丸みを綺麗に見せる効果があります。普通の自然光ではありえないような色味をプラスしたことで、アンリアルなムードを倍増させます。光量はメインよりも弱くしましょう。
さらに、モデルの体の後ろに小型の隠しストロボを仕込んで、衣装のリボンを後ろから照らすことで、顔周りを華やかに演出します。こちらの光量はモデルの衣装やポーズにもよりますが、強めにするとドラマティック度が上がり、弱めにするとナチュラルなイメージになります。
Nikon Z8・NIKKOR Z 50mm f/1.8 S・絞りF1.8・1/200秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・モデル:あずりな
ソフトボックスを装着したメインのストロボを、モデルの斜め前から照射して全体の明るさを整えます。
サブの小型のストロボにはピンクのカラーフィルターを装着して、モデルの体で隠すようにベッドの上に設置しています。ストロボのヘッドを上に向けて、モデルの首筋の辺りを狙うようにすると、首と肩のS字のラインに光の筋ができて、体を縁取ってくれます。
この、モデルの体の輪郭を光で縁取るリムラインがあると、体がより立体的に見えて、奥行き感を出すことができます。
髪色が落ち着いているモデルの場合は、ストロボのフィルターカラーをピンク色にして薄く赤身をプラスすることが多いです。逆に明るい髪色のモデルには、オレンジ系のフィルターを使用してポップなイメージにすることが多いです。
フィルターをプラスしてもう一味加える
Nikon Z5II・7Artisans Z 85mm f/1.8・絞りF1.8・1/125秒・ISO160・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・アクセサリー:ホワイトプロミストフィルター 1/4使用・モデル:あずりな
メインのストロボにはソフトボックスを装着して、モデルの斜め前方から照射します。サブのストロボはモデルの背後に隠すように設置し、ヘッドを少し上に向けて首筋辺りを狙って強めの光を当てます。
レンズにはソフトフィルターを装着して、カメラに入ってくる光をふんわりと拡散させて、一枚ヴェールをかけたようなドリーミーなムードを作り出しました。
Nikon Z5II・7Artisans Z 85mm f/1.8・絞りF2.8・1/125秒・ISO100・WB:オート0・ピクチャーコントロール:スタンダード・アクセサリー:ストリークレインボーフィルター使用・モデル:あずりな
メインのストロボはソフトボックスを装着して、モデルの斜め前方から弱めに当てて、全体の暗いムードを壊さないようにします。モデルの背中側にサブの隠しストロボを仕込んで、モデルには髪を後ろに垂らすようなポーズを取ってもらい、その髪の隙間を抜けてくる光を捉えます。
レンズにはストリークレインボーフィルターを装着しています。このフィルターは、強い光源をライン形状のフレアに変えてくれるフィルターで、構図内にアクセントを作り出してくれる面白いフィルターです。イルミネーションなどで使用しても楽しいのですが、筆者はポートレートのアクセントとして使用することが多いです。
光源が大きすぎると光の筋が太くなってしまって、ちょっとムードがなくなってしまうので、強いけど小さな点光源を作り出すことがポイントです。モデルとコミュニケーションを取りながら、ストロボの光の漏れ具合を調整して撮影しましょう。
さいごに
ストロボ撮影は、見た目とはガラリと違うムードを自分の手で作り出せる、楽しい撮影手法です。ロケ撮影が難しい真夏や真冬は、ストロボデビューのチャンスです!室内でじっくり撮影できるストロボポートレートに、ぜひチャレンジしてみてください。



