カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 葛原よしひろ×ソニーα7R VI
写真・文:葛原よしひろ/編集:合同会社PCT
高画素に留まらない高いトータルバランスを誇るソニーα7Rシリーズ最新機
ソニーα7シリーズの高画素モデル最新機、α7R VIが登場しました。特長はなんといっても有効最大約6680万画素の高解像度ですが、それだけでないトータルバランスの高いカメラになっています。今回は写真家 葛原よしひろさんにさまざまな被写体の作例とともにレビューいただきました。ぜひ参考にしてみてください。
- 葛原よしひろ
- ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。 大阪芸術大学写真学科卒業 JPS(⽇本写真家協会)正会員 滋賀県⾼島市公認フォトアドバイザー 大阪YMCA国際専門学校 表現コミュニケーション学科特別講師 カメラグランプリ 2024,2025選考委員 SONY αアカデミー講師 SIGMA 撮影セミナー講師 EIZO ColorEdge Ambassador2017『水鳥の楽園ー水の故郷びわ湖高島ー』 ソニーストア大阪 2020 『安曇川穏景』 銀座ガレリア 2021 『いつでもどこでもαで撮ってきた』 ソニーストア大阪 2023 『Jumble』 京都写真美術館 その他 グループ展多数出展
目次
はじめに
ソニーが誇る高解像ミラーレスカメラの血統Rシリーズ。その最新鋭機となるα7R VIは、単なる画素数の追求に留まらず、新次元の画像処理エンジン、飛躍的に進化したAIプロセッシングユニット等、あらゆる面で新設計の機能を満載にして登場しました。 私はこの最新鋭機を使い、大阪のビル群、京都の夜の街、ポートレート、そしてスナップ撮影や花と鉄道まで色々な被写体を撮影してみましたので、最後まで読んでぜひご参考にしてみてください。
常に高画質の限界に挑みながら、トータルバランスも向上
ソニーのα7Rシリーズは、その時代において、常に高画質の限界に挑むという課題を背負ってきたと思います。最新のα7R VIにおいては、有効約6680万画素のフルサイズのイメージセンサーとしては圧倒的な情報量を維持しながら、カメラとしてのトータルバランスを完璧な域にまで高めています。特筆すべきは、前モデルから刷新された次世代映像エンジンBIONZ XR2と、より高度なディープラーニング技術を搭載した次世代AIプロセッシングユニットの内包です。
これにより、高画素機でありながらダイナミックレンジはさらに拡大し、常用ISO感度域におけるノイズ処理能力が飛躍的に向上しています。また、手ブレ補正機構はボディ単体で中央最大8.5段という驚異的な補正効果を達成しており、超高画素機なのに三脚を必要とせず手持ちスナップも可能という、かつては不可能だった撮影スタイルも当たり前にこなす印象です。
解像力とダイナミックレンジをチェック
ここからは実際に撮影した作例をもとに、解説させていただきます。まずは、大阪の高層ビル群を切り取った2枚の作例から、本機の最大の特徴である解像力とダイナミックレンジを表現してみました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・73mmで撮影・絞りF22・1/1000秒・ISO4000
無数に並ぶ窓枠の直線が、モアレを発生させることなく、シャープネスの高い線で描写されています。 特筆すべきは、ガラス面に写り込んだ、もう一つのビルの描写です。反射光の中にある細かなグラデーション、内部の遮光ブラインドの質感、そして微細なタイルの目地一本一本にいたるまで、拡大しても破綻することなく完全に分離して解像しています。これは、センサーの画素補間技術とローパスフィルターレス仕様が理想的に機能している証拠だと感じました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・33mmで撮影・絞りF6.3・1/160秒・ISO100
一方、ビルを見上げたローアングルからダイナミックな雰囲気の構図で捉えたこの写真は、明暗差の激しいシチュエーションにおける本機の耐性を確認することが出来ます。手前の影になったビル壁面の黒つぶれを極限まで抑え、大理石調の微細な表面を視認できるレベルに保ちつつ、中央に抜ける透き通るような青空のハイライトを白飛びさせることなく表現出来ています。α7R VIの新しい画像処理アルゴリズムは、こうした極端な輝度差があるシーンにおいても、人間の視覚に近い、あるいはそれ以上に階調豊かに表現してくれます。 建築写真家や都市スナップを好むユーザーにとって、この描写力は、他を圧倒する決定的なアドバンテージとなると思います。
夜スナップでノイズリダクションと手ブレ補正の効果を実感
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・26mmで撮影・絞りF5.6・0.5秒・ISO6400
夜の京都の祇園界隈にて、夜スナップをしてみました。夜間の手持ち撮影は、特に高画素機において、古くからアキレス腱とされてきました。それは、センサーの画素ピッチが狭いため、ノイズが発生しやすいという物理的制約があるからです。しかしα7R VIにおいては、撮影してみてその常識を覆されました。この写真は、祇園界隈の石畳の路地をローアングルで1/2秒のスローシャッターで撮影したショットです。通り過ぎる自転車や歩行者が被写体ブレとなって画面左側に写り込むように撮影しました。背景の伝統的な京町屋や、画面上部を覆う柳の葉は無風だったことも幸いして、驚くほど精緻に描写されています。 超高画素でありながら、強力なボディ内手ブレ補正がカメラの微小な揺れを完全に相殺し、スローシャッターを意図的に使用した表現を、手持ちで容易にコントロールして撮影することができました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・35mmで撮影・絞りF4.5・1/6秒・ISO6400
京都の祇園町を象徴する辰巳大明神の作例では、その色再現性と暗部ノイズの少なさに驚かされました。 夜闇に浮かび上がる朱色の鳥居と灯籠、そして石造りの鳥居。灯籠の光源は非常に強い輝度を持っていましたが、その光源に近い枠まで白飛びすることなく表現され、その下の献灯と書かれた文字の滲みは最小限に抑えられています。ライトアップされた瑞々しい緑の葉と、葉の間から除く背景の深く青い夜空とのコントラストが、非常に艶やかに表現されていることがわかります。 通常、高画素機で夜間撮影を行うと、暗部にザラついたカラーノイズが乗り易いのですが、α7R VIの裏面照射/積層型構造と進化したセンサーのノイズリダクションは、ディテールを消し去ることなく、すっきりとヌケの良い夜景を描き出してくれます。質感の残った濡れた石畳の踏み心地まで伝わってくるかのような描写に驚きました。
被写体認識AF、オートホワイトバランスの精度の高さはポートレート撮影でも効果的
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・51mmで撮影・絞りF4.0・1/500秒・ISO400
ポートレート撮影におけるα7R VIのパフォーマンスもまた、極めて高いレベルだと思いました。駅のホームで電車のドアからステップへと降り立つイメージで撮影したショット。優しい自然光の中で、ボタニカル柄のワンピースを纏ったモデルの風に揺れる髪の質感、そして何よりも窓ガラスに反転して写り込んだもう一人の彼女の姿まで、全てをシャープかつ立体的に描写することが出来ました。ここで特筆すべきは、被写体認識AFの圧倒的な精度です。電車のドアや窓枠といった、直線的でカメラのフォーカスを惑わせやすい構造物が画面の多くを占めている撮影状況にもかかわらず、次世代AIプロセッシングユニットは瞬時にモデルの瞳を検出し、一度掴んだら離さない強固な追尾力でピントを合わせ続けてくれるので、私の思う一瞬のイメージタイミングでシャッターを切ることが出来ました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・97mmで撮影・絞りF4.0・1/500秒・ISO500
被写体が斜めに大きく傾き、かつ手前に金属のフレームがボケて重なるという、従来のAFシステムであれば手前の障害物にピントが引っ張られがちな、きわめて難易度の高い構図でのショット。しかしα7R VIは、傾いた顔の瞳を正確に認識し、完璧なピントを合わせ続けてくれました。まつ毛の一本一本、瞳に映るキャッチライト、そして唇の瑞々しい質感までディテールを克明に再現しつつも、肌のトーンは硬くなりすぎず、柔らかく滑らかに描写することが出来ました。高画素=硬い描写という過去の先入観はすっかり置き去りにされ、女性ポートレートにおいても一級品の美しさを優しく表現することが可能でした。
ソニーα7R VI・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II・絞りF2.8・1/500秒・ISO1000
このショットは、先の二枚が素直な自然光での撮影に対して、屋内で少し意地悪な光源下で撮影してみました。α7R Ⅵには随所にAI機能が盛り込まれており、AWB(オートホワイトバランス)においても使用されているという事です。その実力を知りたいと考え、白色蛍光灯の元、青緑のバック布を使用して、前からは5300KB 80wのLEDを当ててミックス光で撮影してみました。結果はこの通り、モデルの肌は緑カブりすることなく、鮮やかな紫の衣装と背景布も含め、肉眼で見たままに近い自然な発色で表現することが出来ました。先の自然光でのポートレートも含め、従来機と一線を画す肌表現に魅了されました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF4.0・1/500秒・ISO12800
モノクロームのポートレートで光のドラマをより強く感じさせる為に、明暗を極端に活かした表現をしてみました。縦格子の壁を背景に、スポットライトのような光を浴びて上を見上げるモデルの横顔。あえてISO感度12800と高めに設定してみた結果、非常に粒状感のある美しいモノクローム表現になったと思います。流石に少しノイズは乗りますが、モデルや背景のディティールは失われる事無く、暗部を潔く切り捨て、ハイライトに浮かび上がるモデルのラインと肌の質感だけを強調しました。高画素機でありながら、α7R Ⅵには、こうしたシャドーとハイライトの階調の粘りがあるからこそ、大胆な露出コントロールが可能になります。
身近なスナップや旅の写真も、豊かな階調表現によって情緒的に描き出す
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF5.0・1/320秒・ISO125
日常の一瞬や旅先のスナップにおいて、本機は撮影者の「眼」そのものとなってくれます。屋根の上に佇む一匹の白黒の猫を捉えたこのショットもモノクロームで表現してみました。この写真が示すのは、様々な色を取り除いたときに浮き彫りになる純粋な階調と質感に他なりません。古びたモルタル外壁のひび割れや、スレート屋根の質感、窓の奥に干された衣服の陰影が、白から黒への滑らかなグラデーションによって美しく表現されています。猫の鋭い視線と、その毛並みの柔らかさの対比が、このカメラのモノクローム表現の高さを示してくれました。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF4.0・1/500秒・ISO12800
シャッターが閉まった、静まり返るレトロな雰囲気のアーケード街を歩くカップルの後ろ姿を捉えたショット。薄暗い通路の先から差し込む光が、二人をシルエット気味に浮かび上がらせています。 画面全体を覆うシャドーの中に、ノイズによる不快なカラーバランスの崩れがなく、空気感そのものを高い解像力でパッケージングしています。α7R VIでの撮影は、単に綺麗に写すという事だけでなく、撮影者がその場で感じた空気感や静けさのような、情緒的な要素までをも豊かな階調表現によって描き出すことができる ことを確信しました。
ソニーα7R VI・FE 100mm F2.8 Macro GM OSS・絞りF2.8・1/2500秒・ISO250
FE 100mm F2.8 Macro GM OSSを装着して、アジサイを撮影してみました。GMシリーズのマクロとして高い解像感を誇るレンズでの撮影ですが、6680万画素のセンサーは、そのレンズ性能を高次元で見事に受け止め、草花の生命観を繊細に表現することを可能としています。
ソニーα7R VI・FE 24-105mm F4 G OSS・絞りF5.0・1/1250秒・ISO320
最後に、私が好きな南海電鉄の特急ラピートを撮影しました。ラピートの最大の特徴である、航空機をモチーフとした独特なラウンド形状の先頭車両と、深みのあるラピートブルーの塗装。この光沢感のある濃紺のボディは、デジタルカメラにとって非常に色飽和を起こしやすく、そこに周囲の景色が複雑に写り込むため、正確な描写が難しい被写体の一つだと思います。
α7R VIは、このラピートブルーを濁りのない、極めて深く鮮やかな青として忠実に再現してくれました。車体に写り込む白い雲と青空のコントラスト、丸窓から覗く車内のわずかな陰影、そして車両のリベットのパーツ一つ一つまで解像感高く描写することが出来ました。AIプロセッシングユニットの鉄道認識アルゴリズムは、車両の先頭部を正確にロックオンし、ホームに滑り込んでくる動体に対しても一切ピントが迷う事なく、運転席の窓にピンポイントでフォーカスを合わせ続けてくれました。Rシリーズが、もはや静物専用機ではなく、最高連写可能枚数が秒間30コマに進化した点も含め、鉄道や航空機といった動体撮影においても非常に優秀なカメラに進化したと実感することが出来ました。
まとめ
α7R Ⅵはα7R Vの後継機ですが、単なる後継機ではなく、Rシリーズを次の領域に押し上げたカメラだと思います。それは、被写体認識に留まらないAIの活用とイメージセンサーの積層化による大幅な進化、それらの膨大な情報を大量且つ高速に処理する映像エンジン、全てが進化しており、撮影者のイメージを高次元に現実の物として表現してくれる素晴らしいカメラです。レスポンスも向上しており、Rシリーズでは今まで少し苦手と感じていた動体撮影も充分こなせる程に進化しています。中でも私が一番驚いた点はダイナミックレンジの広さとノイズの少なさでした。これも高画素機の宿命と諦めていたのですが、本当に暗部から細部まで階調広く記録することができ、高感度撮影においてのノイズの少なさも信じられないほどです。
α7R Ⅵは、Rシリーズのゲームチェンジャーと言えるカメラに進化を遂げていました。是非お手に取って実感していただきたいと思います。
今回のカメラ・レンズ
α7R Ⅵ
◉発売日=2026年6月5日 ◉メーカー希望小売価格:オープン(実売:666,270円税込)
詳しくはこちら
FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
◉発売日=2025年11月21日 ◉メーカー希望小売価格:オープン(実売:179,550円税込)
詳しくはこちら
FE 24-105mm F4 G OSS
◉発売日=2017年11月25日 ◉メーカー希望小売価格:188,100円(実売:153,450円税込)
詳しくはこちら
FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
◉発売日=2021年11月16日 ◉メーカー希望小売価格:オープン(実売:346,500円税込)
詳しくはこちら
