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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 農と食のジャーナリスト 山本謙治 × 料理写真の撮り方

写真・文:山本謙治/編集:合同会社PCT

おいしい料理写真を撮るために必要なこと(前編)

スマートフォンの普及によって、今では料理写真はとても身近なものとなっています。目の前にある美味しそうな料理をもっと美味しそうに撮りたいと思う方も多いでしょう。それならスマートフォンからステップアップして、ぜひデジタルカメラでの撮影にチャレンジしてみてください。今回は「農と食のジャーナリスト」山本謙治さんに料理写真をもっと美味しそうに撮るアドバイスをいただきました。前編、後編にわたってご紹介します。

山本謙治(やまもと・けんじ)
1971年 愛媛県生まれ・埼玉県育ち 三度の飯より食べることが好き。幼い頃からNHK「きょうの料理」テキストを愛読し、大学時代に雑誌「dancyu」に夢中になり、料理と料理写真に興味を持つ。農畜産物流通のコンサルタントを職業とするのと併行して、農と食のジャーナリストとして活動。全国の農林水産業の現場を巡り、すばらしい郷土の食材や料理、そして生産者と出会う。これらの鮮烈な光景を撮影し、写真と文章の双方を担当する連載を多数執筆してきた。
■これまで撮影・執筆した主な連載: 週刊FRIDAY 「感動の出張メシ」 きょうの料理 「食材見聞録」 週刊現代 「奇跡の食材」 専門料理 「牛を飼う、日本の食を考える」「やまけんが聞く!」 おかずのクッキング 「産地と店頭をつなぐ_やまけんレポート」 家の光 「やまけんのニッポン郷土食遺産」 そばうどん 「やまけんが行く 麺と郷土」
■主な撮影機材: Nikon Z9、Z6Ⅲ OMDS OM-1MarkⅡ、OM-3 SIGMA fp、dp3 QUATTRO
ブログ:やまけんの出張食い倒れ日記

Nikon Z9・PC-E Micro NIKKOR 85mm f/2.8D・絞りF7.1・1/125秒・フラッシュ2灯、レフ板使用

はじめに

インターネットのブログやSNSを見ると、多くの人が自分で撮影した料理の写真をアップしています。食べるという行為は誰もが365日関わることですし、自宅や飲食店、そしてお弁当などを外で食べるなど、変化にも富んでいます。つまり、料理はスマートフォンやデジカメで撮る被写体として理想的な対象なのです。

近頃のスマホは、何も考えずに被写体にレンズを向けてシャッターを押すだけで、いい具合の絵になるように撮ってくれます。なんでしたら、内蔵されているAIが判断して、画像処理までやってくれるようです。でも、自分が「このように写したい」という意志通りになるとは限りませんし、何より優れたカメラとレンズによる圧倒的な写りはまだまだ期待できません。

そこでこの記事では、デジタルカメラで料理をおいしそうに撮るために必要ないくつかのポイントを解説します。重要なのは、適切な撮影機材を用いて、良い光を料理にあてて、どのように撮るかということです。ネットに溢れる多くの記事とは違うことを言うかもしれませんが、ぜひ実際に撮って試していただければお分かりになると思います。

デジタルカメラでライティングをして撮影した料理写真
Nikon D800・AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR・66mmで撮影・絞りF8・1/100秒・フラッシュ1灯、レフ板使用

料理写真を撮るための基礎的なこと

・カメラの選び方

料理を本格的に撮るなら、専用のデジタルカメラを購入することを強くお薦めします。スマホのカメラは基本的に「広角レンズ」が搭載されています。広角レンズは広い範囲を写すためのレンズ。スマホで撮る被写体は友人やパートナーと一緒にいる記念写真であることが多いため、広角レンズが採用されているのです。ただ、広角レンズで料理を撮るとお皿が変な形にゆがんで写ってしまいます。また、余計な背景まで写り込んでしまい、間延びした写真になりがちです。レンズが複数枚あり、望遠側も写るというスマホもありますが、どうせこのコラムを読むなら、ぜひカメラ専用機の購入を検討して欲しいです。

ではどんなカメラがよいか。私はレンズ交換可能なミラーレス一眼カメラをお薦めします。しばらく前まで主流だった一眼レフカメラに比べて軽く小さいため、持ち運びが苦になりません。ミラーレス一眼には、センサーのサイズの違いでフォーマットがいくつかあります。35mm版フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズといったところが主流で、フルサイズを超える中判もあります。どれを選ぶかについては、正直言って「気に入ったものや予算に応じて買えばいい」と思います。いまどき「このメーカーはダメ」ということはほぼありません。私は仕事で料理写真を撮るので、様々なカメラを使ってきましたが、例えばセンサーがフルサイズの半分程度の面積であるマイクロフォーサーズ機も使用し、写真をA4変形サイズの週刊誌のカラーページいっぱいに載せたこともありますが、それでクレームがついたことなど一切ありません。いまも、被写体や撮影条件によって、カメラやフォーマットを変えて撮影しています。

左:豊かな表現力と機動性を両立した35mmフルサイズのNikon Z6Ⅲ。
右:レンズも含めて圧倒的に小型軽量に持ち運べるマイクロフォーサーズのOM-SYSTEM OM-3。

・レンズの選び方

カメラよりも重要なのはレンズかもしれません。まず一般論から言いますが、料理撮影には中望遠から望遠域のレンズが適していると言われます。先にも述べましたが、レンズが広角になると、周辺が引き延ばされたように遠近感が強調され、四角形や円形のものがそのままの形に写りません。正方形の豆腐を撮ったつもりが、台形に写ってしまうのです。反対に、望遠レンズは広い範囲を撮ることはできませんが、代わりに被写体の形を正確に描写する特性があるのです。

広角レンズで遠近感が強調された写真
左:35mm判換算で広角の35mmで撮影すると、お弁当箱の四隅が引っ張られて台形に写っているのがわかる。
右:35mm判換算70mmで撮影すると、お弁当箱が自然な見え方に。 

「ズームレンズを持っているから、望遠端で撮ればいいよね?」と言われるかもしれませんが、その際の望遠端の焦点距離がいくつかにもよります。24-70mmという焦点域のズームレンズは標準ズームとして最も一般的ですが、その望遠端である70mmという焦点距離は被写体が歪まないで写るギリギリの焦点距離で、料理写真には個人的には90mmから105mmくらいのレンズが料理写真に向いていると思います。これはあくまで好みの問題です。私が尊敬する料理写真家には、60mmレンズや50mmレンズで単品料理の撮影をこなす方もいて、ホレボレする出来の写真を撮っておられます。ただ、それはプロの技があってのことですから、可能な限り望遠で撮ることを心がけてください。

料理に適した中望遠レンズの例

Nikon D800・TAMRON SP 90mm F2.8 Di Macro VC USD・絞りF5.6・1/100秒・ISO280
料理写真に適した焦点距離のTAMRON 90mm F2.8マクロ。気に入っていたので新旧持っていた。右は、このレンズで贅沢にキャビアたっぷりの冷製パスタを撮影。ピント部のシャープさとボケの美しさが両立している。

また逆に、望遠すぎるのも考えものです。アメリカの料理写真家の著書を読んだことがありますが、その方はなんと200mmで料理を撮ることがあると書いていました。確かに200mmレンズであれば、料理のディティールまで正確に表現できるでしょう。でも、アメリカのように住宅が大きく広く、また撮影する人の体格も大きいことで、実現できることだと思います。例えば人が立って斜め45度に見下ろした角度で料理を撮る時、日本人の平均的な身長だと90mmや100mmでテーブルから少し離れたところから撮影して、ちょうどよい画角になると思います。それを200mmレンズで撮るためには、2倍の距離と高さが必要になるのです。日本の家屋や飲食店でそんなに後ろに行けるかという問題もさることながら、二倍の高さが必要になると、脚立を立てて登らねばなりません。ちょっと現実的ではありませんね。作例はオリンパス(現OM SYSTEM)の超望遠レンズで料理写真と撮ったらどうなるか? と興味本位で、お店に協力してもらって撮影したものですので、ご覧下さい。

超望遠レンズでの料理写真撮影
M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5の400mmで料理撮影。お店の端っこのテーブルを、入り口から高伸長の三脚を立て、脚立に上って撮影した。こんな苦労に見合った写りかどうかはわからない。

ということで、もしこれからレンズを揃えるなら、24-70mmあたりの標準ズームを持った上で90mmや100mm、105mmといった中望遠のマクロレンズと呼ばれるものを購入すると間違いないと思います。料理以外にポートレートもこなし、ボケも綺麗であることが多いですよ。

料理写真に三脚は必要か!?

雑誌掲載する写真やメディアに配布する商品写真の撮影で、カメラマンが三脚を立てて撮影しているのをよくみますよね。クライアントのために撮る写真の場合、どのような構図で撮るかをガッチリと決めて、仕上がりをデザイナーやクライアントに「これでいいですね?」と確認をしながら撮影する必要があるからです。ただ、商業的な写真でなければ、特に三脚は必須ではありません。パンフォーカスにするためにグッと絞っても、最近のカメラであればISO感度を上げれば、手持ちでもブレないシャッター速度で撮ることができ、それほど画像が荒れません。ノイズが載ったとしても、ノイズリダクションをかけたり、画像処理ソフトでノイズを消すこともできるようになっていますしね。

ただし、ビシッと構図を決めて、小道具も使ってあれこれと撮影するのであれば、三脚に据えて試行錯誤する必要があります。そのときどきの条件で判断して下さい。

後編へ続く

ということで、まずはカメラとレンズと、あとはちょっとした小道具があれば料理写真は撮れます。他に細々と必要になるものは、後編で説明していきたいと思います。

今回のカメラ・レンズ

Nikon Z9
◉発売日=2021年12月24日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:694,980円税込)

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Nikon Z6III
◉発売日=2024年7月12日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:356,400円税込)

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OM SYSTEM OM-3
◉発売日=2025年3月1日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:191,979円税込)

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