カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 萩原れいこ × 夏の風景撮影
写真・文:萩原れいこ/編集:合同会社PCT
海、夏の風景の撮り方 in沖縄
今年も暑い夏がやってきます。夏の強い光をどのように写真に収めれば良いのか。今回は沖縄出身の写真家 萩原れいこさんに、夏の風景撮影のコツを沖縄の写真とともに解説いただきました。沖縄の撮影スポットも紹介いただいていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
- 萩原れいこ(はぎわら・れいこ)
- 沖縄県出身。京都工芸繊維大学、写真表現大学卒業。海外を放浪した後、日本の自然に魅了される。長野県志賀高原での写真修行を経て独立。現在は上信越高原国立公園や沖縄を拠点として風景や生き物などを撮影し、自然環境の”つながり”を表現することを試みている。著書は写真集「Heart of Nature」(風景写真出版)、「現代風景写真表現」(玄光社)等。日本風景写真家協会会員、石の湯ロッジ写真教室講師、富士フイルムデジタルカメラセミナー講師、嬬恋村キャベツ大使(観光大使)等。
- 萩原れいこ公式ホームページ
はじめに
新緑が日に日に濃くなり、いよいよ夏のシーズンが到来しました。冬は寒い場所へ、夏は暑い場所へ向かうのが風景写真の鉄則とも言えますが、なかでも夏らしい1枚を狙うなら常夏の沖縄がおすすめです。 今回は沖縄を舞台に、青い海や空をはじめとする「夏の風景」を美しく撮るコツをご紹介します。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF16・1/60秒・ISO100
島を取り囲むリーフ(珊瑚礁)の外側は水深が深く、浅瀬に比べて海の青色が濃く見える。手前の植物は、かつて水中眼鏡の材料に使われたモンパノキ。
夏の風景撮影おすすめの時期
夏の沖縄を訪れるなら、やはり美しい海と空を収めたいもの。おすすめの時期は、梅雨が明ける6月下旬から10月頃です。 サガリバナの花がピークを迎えるのは6月下旬から7月中旬。ドラマティックな夕焼けを狙いやすいのは7月から8月、比較的涼しく日中も活動しやすいのは9月から10月です。ただし、この時期は台風シーズンと重なるため、天気予報を注視し、晴天を狙って柔軟に動けると安心です。雨や曇りの日は、海本来の青さを引き出すのが難しくなるため注意しましょう。
ソニーα7RⅤ・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II・絞りF4・1/60秒・ISO200
水面に落下したサガリバナの花。一夜限りしか咲かず、翌朝には散ってしまう。群生地もあるが、沖縄本島の街中でも街路樹として気軽に見られる。
撮影機材について
天候や場所に合わせて画角を変えられるよう、広角・標準・望遠レンズを一式揃えておくのが理想です。荷物を軽くしたい場合は、高倍率ズームレンズも重宝します。 ダイナミックな海を撮るなら広角レンズは必携。また、強い日差しの中で海や空の青さを強調するには、PLフィルターが欠かせません。このほか、海面を滑らかに写すNDフィルター、空と大地の輝度差を抑えるハーフND、星の光や木漏れ日を柔らかく拡散するホワイトプロミストフィルターなどがあると、表現の幅が広がります。風が強い日も多いため、機材をしっかり固定できる安定した三脚も用意しましょう。
ソニーと富士フイルムのカメラを使っているが、今回はソニーの機材をご紹介。最低限持っていきたいのは、広角、標準、望遠の大三元レンズ。気軽な旅行に持って行く一本としては、タムロンの35-100mm F2.8ズームレンズもおすすめだ。
口径を自由に変えられるH&Yのレボリング式フィルターは、コンパクトで持ち運びに便利。PLと可変式NDが一体になったフィルターと、EVOシリーズのPL、ホワイトプロミストフィルターなど。ハーフNDはソフトとハードが必須だが、最近発売されたミディアムは一枚でも汎用性が高い。
服装やアイテム
沖縄の夏の気温は25~32℃ほどで、数値だけ見れば比較的涼しく感じますが、実際は強烈な日差しと高い湿度のために大量の汗をかきます。速乾性のTシャツやアームカバー、ツバの広い帽子、日焼け止めは必須です。 撮影中はスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給し、日陰を利用するなど熱中症対策を万全に。
浅瀬に入って撮影する場合は、サンダルにラッシュガードレギンス、短パンを組み合わせると、クラゲなどの外敵から身を守りつつ撮影に集中できます。 また、蚊やアブ対策の虫除けスプレーも準備しましょう。街の空き地や森には毒ヘビのハブが生息していることもあるため、むやみに草むらへ立ち入らないよう注意が必要です。
海の撮り方
「これぞ常夏」という青い海を撮るなら、太陽が高くなる10時〜13時頃がベストです。PLフィルターを強めに効かせると、目が覚めるような発色を再現できます。海の色は上空の雲の影に左右されるため、雲の動きを観察しながら、ベストな輝きを待つのがポイントです。 逆光では海の色が出にくいため、太陽を背にする順光や、真上から光が注ぐトップライトでの撮影がおすすめ。岬などの突き出した場所でさまざまな角度にレンズを向けてみると、太陽の位置と海の発色の関係がよく分かります。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF11・1/500秒・ISO400
膝下ほどの浅瀬に入って撮影。広角レンズにPLフィルターを装着し、海面にカメラを近づけて透明な水中を見せつつ、遠近感を演出するように撮影した。海の面積を大きく配分することと、雲を丁寧に配置することが大切だ。
朝夕には、ドラマティックな色合いの空を楽しむことができます。風が止んで海面が凪(なぎ)になる時間帯に入江などで撮影すると、空が水面に映り込む幻想的なリフレクションを狙えます。特に台風前など天気が崩れる直前は、空が劇的に染まる爆焼けが起こりやすいのも特徴です。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF16・2.5秒・ISO50
朝夕の時間帯では、陸と海の温度差が小さくなり、凪になる瞬間がある。西向きの遠浅の海や、入江で撮影すると良い。水面を滑らかに表現するため、NDフィルターで減光し、数秒かけて露光した。
天気が良い日は夜の撮影も楽しみましょう。潮溜まりへの星空の映り込みや、奇岩を背景にした天の川などが狙えます。沖縄本島は街灯りや基地の照明が強いため、より暗い夜空を求めるなら離島もおすすめ。星の瞬きを華やかに引き立てるには、ホワイトプロミストフィルターが効果的です。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF2.8・20秒・ISO1600
岩が立ち並ぶ海岸で、東雲の星空を撮影。海辺にはハブがあまりいないため、暗い夜でもゆっくり撮影ができる。夜風が涼しく適温で、長時間の撮影でなければレンズが曇ることも滅多にない。
森の撮り方
あいにくの天気でも、森へ足を運べば夏らしい写真が撮れます。亜熱帯の沖縄は、本州とは異なるジャングルのような独特の植生が魅力です。 北部の山々に見えるブロッコリーのような樹冠は「イタジイ」の森。恐竜時代を彷彿とさせる大型のシダ植物「ヘゴ」も沖縄ならではの風景です。
ソニーα7RⅣ・FE 12-24mm F2.8 GM・絞りF11・1/8秒・ISO100
ヘゴの木を見上げるように森を撮影した。四辺四隅を幹や葉で埋めるようにし、木々が中央へ伸びる求心力を高めている。絞り値は手前から奥までパンフォーカスするように、F11以上に絞り込むと良い。
また、各地で見られる「ガジュマル」にはキジムナーという精霊が宿ると言われ、その巨木は神秘的なオーラを放っています。横に大きく枝を広げるため、焦点距離12〜16mmほどの超広角レンズで見上げて撮影するのがおすすめです。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF11・1/25秒・ISO400
ホワイトプロミストフィルターを装着し、木漏れ日をふんわりと拡散して幻想的に仕上げている。
雨が続く日は、鍾乳洞での撮影も一案です。光のコントラストが弱まることで、雨に濡れた緑がしっとりと輝き、晴天時より魅力的に撮影することができます。
ソニーα7RⅤ・FE 16-35mm F2.8 GM II・絞りF16・0.6秒・ISO100
鍾乳洞から外を眺めるように撮影した。なるべく白飛びと黒つぶれをしないよう、ヒストグラムを見ながら慎重に露出を決めることが大切だ。
町並みの撮り方
直射日光や湿気を和らげ、台風から家を守る工夫が凝らされた「赤瓦屋根」は、沖縄の象徴的な風景です。近年は鉄筋コンクリート造の住宅が増えましたが、竹富島などの伝統的な集落では、今も美しい町並みが守られています。
ソニーα7CR・FE 50mm F1.4 GM・絞りF2.2・1/160秒・ISO100
赤瓦屋根を背景にぼかしつつ、アカバナー(ハイビスカス)を主役にして撮影。ボケ味を活かしつつ、赤瓦屋根の存在が伝わるように絞り値を開放から少し絞ってF2.2で描いた。
屋根の上のシーサーは、職人が余った瓦と漆喰で作り始めた魔除けの守り神で、一体ごとに表情が異なります。また、T字路の突き当たりにある石敢當(いしがんとう)からは、中国から伝わった文化の息吹を感じられます。シーサーを撮る際は、サイドからの光で立体感を出しつつ、背景に青空を添えると色彩の対比が際立ちます。
ソニーα7CR・FE 24-70mm F2.8 GM II・絞りF16・1/400秒・ISO400
ひょうきんな表情が可愛いシーサーを標準レンズで捉えた。あえて手前に木の影を入れて額縁構図にすることで、画面にコントラストを生み出して夏の強い日差しを演出している。
琉球石灰岩の石積みも沖縄特有の景観です。自然石を積んだ「野面積み」、加工した石を並べた「布積み」、亀の甲羅のように噛み合わせた「相方積み」などがあり、各地の城跡(グスク)や古い町並みなどで見ることができます。
ソニーα7CR・FE 50mm F1.4 GM・絞りF16・1/30秒・ISO100
多角形に加工した石を積んだ相方積みの石積み。高度な技術を要するため、城壁や高貴な屋敷の石垣に用いられている。中央の植物は、生命力の強いガジュマル。
また、アカバナーやブーゲンビレア、ゴールデンシャワーなど、南国らしい原色の花々も外せません。色が潰れるように見える色飽和を防ぐため、露出を少し暗めに設定するのがコツ。画作りモードは「風景」よりも「スタンダード」や「ポートレート」、「ニュートラル」などを選ぶと、より自然な色合いを再現しやすくなります。
ソニーα7RⅣ・FE 24-70mm F2.8 GM・絞りF2.8・1/800秒・ISO200
キャプション:ゴールデンシャワーの名前で親しまれるナンバンサカイチの花。遠くにある花を望遠域で引き寄せつつ、黄色を目立たせるように暗い背景で撮影した。
なお、町並みを撮影する際は十分にマナーに配慮し、じっくり撮影したい場合は、沖縄の伝統集落を再現したテーマパークなどを利用するとよいでしょう。
沖縄の撮影スポット
最後に、いくつかの撮影スポットをご紹介します。
青い海なら沖縄本島の古宇利大橋や知念岬公園、離島なら石垣島の川平湾や宮古島の与那覇前浜ビーチがおすすめです。伝統的な風景が見られるテーマパークは、おきなわワールドや琉球村が魅力的です。
なお、屋内外に関わらず、三脚使用やドローン撮影、商用撮影については、事前に自治体や施設の許可が必要な場合があります。訪れる前に公式サイトなどでルールを確認しておきましょう。
おわりに
猛暑が続く夏ですが、暑いからこそ出合える風景があります。エネルギーに満ち溢れた夏を五感で楽しみ、その一瞬をぜひカメラに収めてみてください。撮影の合間には沖縄そばやチャンプルー、冷たい沖縄ぜんざいでパワーを補給し、夜はオリオンビールや泡盛でリラックス。沖縄のスローな時間とともに、素晴らしい撮影行になることを願っています。
今回のカメラ・レンズ
ソニーα7RⅤ
◉発売日=2022年11月25日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:466,360円税込)
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ソニーα7CR
◉発売日=2023年10月13日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:404,910円税込)
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FE 50mm F1.4 GM
◉発売日=2023年4月21日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:192,060円税込)
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FE 12-24mm F2.8 GM
◉発売日=2020年8月7日 ◉メーカー希望小売価格=480,700円(税込)(実売:393,030円税込)
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FE 16-35mm F2.8 GM II
◉発売日=2023年9月22日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:322,740円税込)
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FE 24-70mm F2.8 GM II
◉発売日=2022年6月10日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:287,100円税込)
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FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
◉発売日=2021年11月26日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(実売:346,500円税込)
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