カメラの大林 オンラインマガジン

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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! ライター 鈴木誠×ライカQ3モノクローム

写真・文:鈴木誠/編集:合同会社PCT

“マジック”に頼れない、ストイックなモノクロ専用カメラ

フルサイズセンサーを搭載したレンズ一体型カメラとしてファンを獲得しているライカQシリーズから、カラーフィルターを排しモノクロームの表現を追求した専用機の2代目、ライカQ3モノクロームが登場。ライカQ3ユーザーである鈴木誠さんに解説いただきました。ライカを長年取材されている鈴木さんならではの興味深いお話も。

鈴木 誠(すずき・まこと)
ライター。カメラ専門ニュースサイトの編集記者として14年勤務し独立。会社員時代より老舗カメラ雑誌やライフスタイル誌に寄稿。現在は楽器やオーディオ&ビジュアルの専門誌にも関わる。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。
YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究」

はじめに「ライカのモノクロ専用機とは」

ライカのモノクロ専用機の歴史は、2012年に登場した「ライカMモノクローム」から始まる。ベースとなった「ライカM9」をはじめとする一般的なカラーセンサーの場合、センサーの1画素はRGBのいずれかの情報しか得ていない。そのため周辺画素の情報を補って、1画素の色を決定しているのだ。これがデモザイクという補間処理である。

すると、この補間処理を必要とするRGBのカラーフィルターがなければ、カラー写真は撮れないが、より鮮鋭なモノクロ写真を生み出せることに目を付けたのがライカだった。ライカ以外のモノクロ専用カメラも仕組みは同じだ。

最近になって語られた話として、ライカは初のM型デジタル「ライカM8」を発売した直後、2007年頃からモノクロ専用機のアイデアを持っていたそうだ。ただ、その頃は協業していたセンサーメーカーもあまり乗り気にならないぐらい、突飛なアイデアだったらしい。

2009年に発表した「ライカM9」の成功でライカは大復活。現在まで続く躍進のフェーズに入り、モノクロ専用機も発売にこぎ着ける。2026年現在、メインストリームのMやQがおおむね4年ごとに進化するのと並行して、モノクロームもM型が4世代目、QシリーズではライカQ2モノクロームに続き、2世代目となるライカQ3モノクロームが販売中というわけだ。

モノクロームは完全にライカのカメララインナップに浸透するとともに、ライカの写真文化に対する理解とコミットメントを示す存在にもなっている。

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF6.3・1/1250秒・ISO200・+0.3EV
35mmフルサイズセンサーならではのダイナミックレンジが、曇り空の微妙な明暗まですくい取る。ライカQ3モノクロームを手にすれば、毎日がモノクロ日和だ

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF5.6・1/50秒・ISO250・-1.3EV
マイナスの露出補正で存在感を強調。ライブビューを見ながら露出補正ダイヤルを回して好みの明るさを選べるのは、ライブビュー機ならではのクイックさ

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF5.0・1/400秒・ISO200・+0.6EV
ディテール再現をチェック。成り行き任せの絞りと撮影距離だが、拡大すると被写界深度内と深度外がはっきり存在する

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF5.6・1/800秒・ISO200・±0EV・75mm相当にクロップ
鯉のぼり。デジタルズームで75mm相当にクロップし、いわゆる圧縮感を狙う。ズームレンズのように自由な気持ちでクロップできるのは6,030万画素センサーの力だ

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF4.5・1/250秒・ISO200・-0.3EV
この猫は、目の前を泳ぐ鯉をターゲットにしているのだろうか。気になった被写体を反射的に撮れるのは、背面モニター+タッチAFの威力

ライカQ3と比較「カタチは同じ。でも、別のスイッチが入る」

ライカQ3モノクロームと、筆者のライカQ3

筆者はカラーも撮れる「ライカQ3」を3年近く愛用している。ライカQ3モノクロームはライカQ3がベースだから、使い心地はまったく同じで、ただカラーで撮れないだけだろうと思っていた。

ただ、実際は違った。

手に持った瞬間に、張り革の手触りが違う。ライカQ3はダイヤモンド模様のモダンな張り革だが、こちらはクラシックなM型ライカのようなシボパターンになっていて、しっとりとした触り心地がある。撮影時に手にするたび、ライカQ3とは別物であることを手のひらに主張してくるのだ。

左がライカQ3モノクローム、右がライカQ3。ライカQ3モノクロームの張り革には上質なしっとり感がある。Qというモダンなカメラとクラシックな手触りが融合し、不思議な感覚を呼び起こす

また、表面の塗装もマットでサラサラとした感触。ダイヤル類のハイライトも赤や黄色といった有彩色を使わず、モノトーンでまとめられている。

ダイヤル類のハイライト色もモノトーンにまとめられている。モノクロの世界観を反映したデザインだ

すでにライカQ3を使い慣れていても、手にするたびに「普段と違う、特別なカメラを手にしている」という感覚を思い出す。良し悪しとは違った“違和感”が、写真を撮る気持ちにも刺激を与えてくれた。

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF2.8・1/640秒・ISO200・-0.6EV
マクロモードで近づき、ファインアートな気分でマイナス補正。マット紙にプリントしたくなる。背景が形を保ったままボケているところに注目

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF1.7・1/640秒・ISO200・-0.6EV
何を伝えたいわけでもないが、“ズミルックスの絞り開放”という眼で撮りたくなってしまうシーン。ガラスの向こうとこちら側で、距離と明暗が入り交じる

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF4.5・1/320秒・ISO200・-1.6EV
中庸な絞りでも、奥行き方向の空気感にハッとさせられる。気品あるシャープさとコントラストは、まさしく現代のライカレンズだ

新旧ユーザーに馴染む「シンプルかつ機能的な操作性」

ライカはいま、昔を知らない若い世代にも好まれている。その理由の一つに「シンプルな操作性」がある。ボタンの絶対数を減らしつつ、それらを好みにカスタマイズできるため、わかりやすく不便さがないという評判だ。

世代ごとにボタンが減っているライカQシリーズ。機能やボタンを減らすのは、増やすよりも難しい

撮影画面の一例。ライカQ3シリーズは2025年12月提供のファームウェアVer.4.0で、ライカSL3と共通の新UIに一新された

情報表示画面。画面下に並ぶアイコンをタッチすると、それぞれの設定画面が開く。静止画と動画は別モードに分離されており、それぞれで最後に使った設定値が記憶される

背面右手親指付近のボタン。それぞれ、長押しすることで機能割り当てを選ぶ画面に移る。筆者はデジタルズームとAF枠のセンタリングを割り当てている

ライカQシリーズの独特の操作についても解説しておきたい。ピントも露出もフルオートで撮れる一方、どちらもマニュアルで操作することも可能だ。

特にマニュアルフォーカスはM型に慣れた人には嬉しい方式。ピントレバーのロックを外して近距離側に動かすと、Mレンズと同じ操作感でフォーカシングできる。初心者にもベテランにも馴染みやすい、シンプルゆえに懐の深いカメラなのである。

ロック解除ボタンを押しながらレバーを動かすと、AFからMFに移行する

AFの状態。レバーのロックを解除すると、無限遠~近距離方面にレバーを動かせる。あとはM型と同様、距離と被写界深度スケールを使えばファインダーを覗かなくてもスナップできる

レンズ根元を回転させるとマクロモードに。連動して距離指標が切り替わるメカニズムには、遊び心すら感じる

背面モニターは上下方向にチルトできる

高精細で見やすい電子ビューファインダー

側面USB Type-C端子からカメラのバッテリーへの充電・給電が可能

まとめ「道具で自分を触発できる、贅沢なカメラ」

ライカQ3モノクロームを例えるなら、変速がオートマチックのスポーツカーだ。楽しさを求めつつ、ちゃんと速さを追及している。カメラそのものに耽溺しないストイックさと言うべきか。それでいてモノクロ専用機なので、世間一般でいう実用性がないところが美しい。

あえて“色”という大きな情報を削ぎ落とすことで、それは純粋に自分の心を満たすための写真になる。それを、そもそもモノクロしか撮れないカメラで撮っているという事実が最高に贅沢だ。

レンズ固定式のライカQ3モノクローム

せっかくのモノクロ専用機だから、レンズを交換できたほうが面白いと考えるのは自然だろう。仮にこれがライカMモノクロームであれば、近接撮影ができなかったり、とっさのスナップに鍛錬が必要というハードルはある。その一方で、表現に行き詰まりを感じたらレンズを交換することで、マンネリやスランプを打破するきっかけが得られるかもしれない。

Qでは、それが不可能だ。固定されているズミルックス f1.7/28 ASPH.で勝負する他にないのである。そしてこのレンズは優秀ときた。逆光でもフレアやゴーストは目立たないし、どんな条件で撮影してもシャープに写る。レンズで生じる“マジック”に逃げられない、厳格な先生のようなカメラなのだ。

写真制作には「制約」が欠かせないと語る写真家は多い。あえて特定のレンズを選ぶ、あえてフィルムで撮る、といったシバリを設けることで、クリエイティビティが刺激されるという話である。この先生、もといカメラと過ごした時間の先には、きっと強靱な写真眼が身についているに違いない。

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF6.3・1/1250秒・ISO200・+0.6EV
わざわざ派手なシーンを探さなくても、明暗の織りなす立体感を味わえる描写力。日常に潜む美しい陰影をコレクションしたい

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF2.8・1/500秒・ISO800・-1EV
風が強かった日。拡大しなければわからないほどの微ブレが、描写に柔らかさを与えている。M型では得がたいクローズアップも、マクロモードを備えるQシリーズの楽しさだ

ライカQ3モノクローム・ズミルックス f1.7/28 ASPH.・絞りF13・1/1600秒・ISO200・-1.6EV
大胆なシルエットを描くのもモノクロの醍醐味。これほど太陽を画面に入れてもフレアやゴーストは目立たない。描写的にも性能的にも、レンズのマジックに頼れないストイックなカメラだ

今回のカメラ・レンズ

ライカQ3モノクローム
◉発売日=2025年11月21日 ◉メーカー希望小売価格:1,199,000円(税込)(実売:1,139,050円税込)

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