カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 岡本洋子×マクロレンズ活用術
写真・文:岡本洋子/編集:合同会社PCT
便利で万能!マクロレンズを知ろう
マクロレンズというと、花撮影や昆虫撮影のイメージが強いのではないでしょうか。今回は接写だけではないマクロレンズの魅力を、写真家 岡本洋子さんに紹介いただきました。読んだあとにはマクロレンズを一本欲しくなっているはず。ぜひ参考にしてみてください。
- 岡本洋子(おかもと・ようこ)
- 東邦大学理学部生物学科を卒業。12年間の会社勤務の後、日本写真芸術専門学校にて写真を学ぶ。卒業後は故・秋山庄太郎氏のアシスタントを務め、独立しフリーへ。現在、花や植物、風景を主に撮影。“こだわり花クラブ”主催。各種撮影会や写真教室講師を務める。2022年フジフイルムスクエア企画写真展“心模様、花もよう”東京、大阪、名古屋、札幌巡回展開催。写真集“心模様・花もよう”を日本写真企画より出版。2024年には福島市写真美術館で“ようこそ花の森へ”の企画展を開催。2026年1月にはニコンプラザ東京と大阪で“新・植物百景”写真展を開催。 日本写真協会会員(PSJ) 日本自然科学写真協会会員(SSP) 東京農業大学グリーンアカデミー植物写真講座講師
目次
はじめに
カメラを始めるときに、どんなレンズを揃えたらいいですか?と良く聞かれます。まずは標準ズーム、望遠ズームがあるといいですね。そしてカメラに慣れてきたらマクロレンズもあると表現の幅が広がりますよ。と答えます。
お花の撮影にはマクロレンズが必要ですか?お花はマクロでしか撮れないですよね?とも聞かれます。花はマクロでしか撮れないということはなく、私は望遠レンズで花を撮る事も多いですよ。と答えます。ただし、マクロレンズでないと撮れない小さな被写体やミクロな描写など、可能になる表現もあるので、マクロレンズがあるともっと写真の幅が広がって楽しめるようになります。
マクロレンズって?
マクロレンズを使うと通常のレンズ以上に被写体に近寄って撮る事ができ、小さな被写体を画面いっぱいに写す事ができます。センサーに写る被写体の大きさと実際の被写体の大きさが同じ大きさに写る等倍マクロと、1/2の大きさに写るハーフマクロが一般的ですが、最近では等倍以上に写るマクロレンズも発売されています。等倍マクロは被写体の微細な描写が得意です。ハーフマクロは等倍ほどディティールを写す事はできませんが、被写体と背景をバランスよく写す事ができます。等倍以上に写す事ができればミクロな世界も写す事が可能になりますね。
小さな昆虫、花、植物の細部、アクセサリーや食べ物などのテーブルフォト、水滴などのクローズアップ撮影もできます。また近接だけ撮れるわけではなく無限遠の遠方までピントが合うので、通常の風景を写す事が可能です。マクロ一本で様々な被写体が撮れる便利で万能なレンズです。
バラの花の花芯のアップを50mmのマクロレンズで近寄って撮りました。赤い花弁がドレープのような背景になって雄シベの一粒一粒が赤い色に映えます。マクロならではの撮り方です。
Nikon Z5Ⅱ・Z MC 50mm f/2.8・絞りF5.6・1/2000秒・ISO200
50mmの通常の単焦点レンズとして町の風景を屋上から撮りました。手前の家屋やビルも緻密に描写され、遠景の新宿のビル群やスカイツリーまでもすっきりと描写されました。
FUJIFILM X-S20・Carl Zeiss Touit 2.8/50M・絞りF14・1/200秒・ISO200
マクロの得意分野、ジュエリーを撮ってみました。窓辺の自然光を取り入れてキラキラした反射やゴールドの鈍い輝きがアンティークな雰囲気で撮れました。
Nikon D810・TAMRON SP 90mm F2.8 Di Macro VC USD(F017N)・絞りF16・1/5秒・ISO100
フルサイズ換算で90mmに相当する焦点距離の60mmマクロを使って水滴に迫りました。この60mmマクロはハーフマクロなので等倍までは大きくなりませんが、背景を画面に取り入れてフレーミングするのに使いやすい距離感です。水滴は球面なので中に写る被写体にピントが合うまで微調整しながらピントを合わせます。三脚があるとピントを合わせやすいです。
FUJIFILM X-T2・XF60mmF2.4 R Macro・絞りF7.1・1/680秒・ISO800
マクロレンズの焦点距離について
マクロレンズと一口にいっても焦点距離の違うレンズがあり、メーカーによっても焦点距離が微妙に違います。ニコンだと105mm、キヤノンだと100mmというように。
マクロレンズは単焦点のレンズです。以前ニコンでズームのマクロを出していましたが今はありません。焦点距離は広角から望遠側まであります。広角側は室内での小物撮影に、望遠側は少し距離をとりたい被写体、花や昆虫などに向いています。また単焦点レンズということは小型軽量で持ち運びに便利です。スナップなどの街歩きや、旅行のお供にも装備を軽くしたいときに一本持っていくと、料理やスイーツの写真の記録やもちろん街並みのスナップや風景も撮る事が出来て何倍も楽しめます。ただしズームレンズのように画角を合わせるのに焦点距離を調整する事ができないので、自分が動いて距離を調整してフレーミングすることになります。
室内でスイーツを頂くときにきれいな盛り付けだったので30mmマクロ(35mm判換算で45mm)の広角側のマクロで撮りました。部屋などの狭いスペースで撮るときには広角側のマクロレンズが重宝します。手前のスイーツの後ろにもう一つ置いて浅いF値でぼかす事によって奥行を演出しました。F2.8の開放F値で柔らかく優しい背景のボケになりました。
FUJIFILM X-S20・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/210秒・ISO1600
5月に咲くチョウジソウという青い花にカタツムリがいたので、珍しいなと思い望遠側のマクロレンズで狙いました。あえて絞りは開放の浅めにして手前の青い花びらを前ボケにしてカタツムリがあまりリアルにならないように写してみました。
FUJIFILM X-T4・XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro・絞りF2.8・1/250秒・ISO400
明るいF値(絞り)
マクロレンズの絞り開放値はF2.8スタートが多いです。ズームレンズの開放値は明るいもの暗いものなど様々ありますが、多くのマクロレンズはF2.8が多く、近接撮影で良好な画像が得られるように設計され、さらに手前から遠方まできちんとピントが合うように作られています。
F値が明るいということは、背景がボケやすく主役が背景から浮かび上がって印象的な写真を撮る事ができます。花の写真では被写体の花の背景をぼかして浮かび上がらせると美しい写真になります。一点だけにピントを合わせて手前と背景をぼかすことによって、視点をそこに集中させたりメリハリの効いた写真を撮る事もできます。またF値が明るいということは暗いところでもシャッタースピードが稼げるので暗所での撮影、水族館や室内、手持ちの夜景スナップなどが可能になり撮影の機会が広がります。最近では三脚が使えない場所も増えているので、三脚を使わずに撮影できるのもメリットです。単焦点レンズの解像度の高さ、明るいF値を活かして写す事ができ、被写体の幅が広がります。
カラフルに塗られた古いタイヤの遊具が廃校の校庭にありました。赤い色の後ろの青いタイヤにピントを合わせてF値を開放にして前後をぼかすことでタイヤのひび割れた古さが際立ちました。時の経過を表しているようで、センチメンタルな気分になって、にぎやかだっただろう子供たちの声を想像してみました。
Nikon Z5Ⅱ・NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・絞りF2.8・1/500秒・ISO500
揺れる歩道橋の上から手持ちのスローシャッターで車のライトを流してみました。F値が明るいので1/7秒でもブレないカットを撮る事ができました。
小さくて軽い明るいマクロレンズならではでした。
FUJIFILM X-S20・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/7秒・ISO200
浅い被写界深度
マクロレンズは「被写界深度=ピントの合う幅」が浅いため、近接撮影の時はピントの位置をどこにするか決めてしっかりと合わせる事が必要です。被写体に近づいて撮影する時のF値が小さければ小さいほど被写界深度が浅いので、手持ちだとピントの位置がずれる可能性があり三脚の使用をおすすめしますが、温室など三脚が使えない時には何カットも撮ってピントが合っていることを確認します。F値を変えて被写界深度をコントロールして、背景から主役が浮かび上がるような雰囲気のある写真を撮ることができます。お花の写真だけでなく風景的なカットでも背景をボカして見せる撮り方も素敵です。
道端に赤い衣装のお地蔵さんが祀られていました。住人の方々が大切に守っているのでしょう。桜を手前に入れることで季節感を出し、ピントもあえて桜に合わせてリアルさを和らげてイメージカット的に撮りました。
Nikon Z5Ⅱ・NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S・絞りF4.0・1/400秒・ISO200
パンフォーカスにしたい場合は深度合成という方法も
マクロレンズでの撮影は被写界深度が浅いので、F値を最大に絞ってもピントがすべてに合わないということがあります。花撮影ならば花芯から花びらまで、昆虫の触覚から後足まで、アクセサリーや工業用品など、絞りを絞っただけでは被写体全部にピントが合わない場合、あるいは絞りによる回折現象を回避するために、ピントの位置を変えて撮って、後で編集ソフトで合成するという深度合成によってピントが合ってほしい部分を広げることができます。
最近ではOM SYSTEMなど、カメラ内で合成までしてくれるカメラもあります。背景のボケを残しながら被写界深度を広げられるので立体感が生まれます。ただし、複数の画像を一枚に合成するのでズレがないように三脚でしっかり撮ったり、被写体が風などでブレない事、被写体に当たる光が変わらないように、シャッタースピードも遅くならないようになど、撮影時に注意が必要です。
最大絞りF25まで絞っても手前の青い缶から後ろの赤い缶までにピントが合いませんでした。
Nikon Z8・NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・絞りF25・1/3秒・ISO400
絞りF25で撮影
絞りF5.6だと手前の青い缶のみにしかピントが合わないのでボケの多い写真になりました。
Nikon Z8・NIKKOR Z MC 50mm f/2.8・絞りF5.6・1/3秒・ISO400
絞りF5.6で撮影
絞りをF5.6にして手前の青い缶から背景の赤い缶までピントの位置を少しずつずらしながら45カット撮ったものをPhotoshopで合成しました。カメラ内で撮影のカット数やピントの合う幅をセットできるので一度撮ってみるといいでしょう。絞りF5.6にして45回で手前の青い缶から後ろの赤い缶までピントが合った写真になりました。
Photoshopで深度合成した写真
マクロレンズを使う時の注意点
マクロレンズの場合、近寄って撮ると被写界深度が浅くなるので、ピントの位置を考え、三脚を使ったり手持ちだったらピントがずれないように注意して撮ります。絞りもいくつがいいのか?自分の撮りたいイメージをしっかりと持って、開放にしたり絞ったりと絞りもコントロールして撮る事によってボケ味を生かした写真が撮れます。通常のレンズより気を使って撮る事も多いですが、慣れれば手前の小さな被写体から無限遠の被写体まで撮る事ができる万能レンズですので、ぜひ使いこなしてください。
マクロレンズをもっと楽しもう!
マクロレンズと言えば花のアップの写真というイメージですが、小さな被写体だけではなく街歩きなどのスナップ的な使い方や、荷物を減らしたい旅行の時など、一本あったらとても便利なレンズです。旅行先での料理やスイーツの写真まで撮れて遠景の風景まで撮れる、1本のレンズで手前から無限遠までカバーできるという万能なレンズなのです。また明るいF値を生かして夜景の撮影も得意なので、夜景まで様々な被写体を撮る事ができて表現の幅も大きく広がります。マクロレンズをつけてどんどん撮り歩いて様々な被写体の撮影に挑戦してください。
今回のカメラ・レンズ
Nikon Z5Ⅱ
◉発売日=2025年4月25日 ◉希望小売価格=オープン(実売:232,650円税込)
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Nikon Z8
◉発売日=2023年5月26日 ◉希望小売価格=オープン(実売:539,550円税込)
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NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
◉発売日=2021年6月25日 ◉希望小売価格=オープン(実売:84,150円税込)
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NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
◉発売日=2021年6月25日 ◉希望小売価格=オープン(実売:128,700円税込)
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XF30mmF2.8 R LM WR Macro
◉発売日=2022年11月25日 ◉希望小売価格=オープン(実売:84,360円税込)
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XF60mmF2.4 R Macro
◉発売日=2012年2月18日 ◉希望小売価格=128,150円(実売:92,070円税込)
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XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
◉発売日=2014年12月19日 ◉希望小売価格=235,400円(実売:169,290円税込)
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