カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 こばやしかをる × 富士フイルムX-T30III実写レビュー
写真・文:こばやしかをる/編集:合同会社PCT
「日常を作品に変えるカメラ」
軽量コンパクトでエントリー機としての位置付けながら、上位機に迫る高性能さも兼ね備えた人気の富士フイルム「X-T30」シリーズ。その新世代X-T30IIIが登場しました。今回はX-T30IIIの魅力と、相性抜群な2本の単焦点レンズを、たくさんの作例とともに写真家 こばやしかをるさんに紹介いただきました。
- こばやしかをる
- 東京都北区出身。写真プリントのデジタルデータ制作を現場で習得。のちに商品・製品企画、フォトギャラリー、写真教室アシスタントなどを経て講師に。撮影・プリント指導を行う他、展示・イベント企画、プロデュース、コンテスト審査員まで、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。カメラ・写真雑誌、WEBへの寄稿などライターとしても活動中。主宰するPhotoPlus+にて写真塾、ワークショップも開催している。 日本作例写真家協会(JSPA)会員
- https://linktr.ee/kobayashi.kaworu
目次
はじめに
2025年11月に発売された、富士フイルムの人気シリーズ「X-T30」最新モデル「FUJIFILM X-T30III」。その名のとおりX-T30IIの後継機として登場しました。
単なるマイナーチェンジではなく、心臓部が新世代に置き換わったことで、AF、動画、色表現のすべてが最新レベルになったX-T30 IIIは、これからカメラを始めてみたいと思っていた人や、手頃なサブ機を求めていた人にとって待ち望んでいた機種の一つといえます。
正統派スタイルと低価格帯はそのままに、最新準拠のスペックへとアップデートされた「FUJIFILM X-T30 III」の魅力を、日々の撮影で活躍しそうな単焦点レンズ2本で撮影した作例とともに紹介します。
X-T30 IIIのスペック&新機能
小型軽量が特徴のX-T30シリーズですが、今回登場したX-T30Ⅲの魅力も、本体だけで約378g(バッテリー、メモリーカード含む)と軽く、ボディの幅118.4mmというコンパクトさです。小さなレンズと組み合わせればポケットインサイズで気軽に持ち出すことができます。
ボディカラーはブラックとシルバー、チャコールグレーの3色があります。X-T2桁シリーズらしさを継承した、ひと目で富士フイルムのカメラだと分かるクラシックなデザインです。
天面には「X-T50」や「X-M5」などと同様に、フィルムシミュレーションが瞬時に切り替え可能なフィルムシミュレーション専用ダイヤルを搭載しています。フィルムカメラを思わせるダイヤル操作で直感的に設定を行うことができます。
いざというときに心強いポップアップ式の内蔵フラッシュも搭載。記録写真や記念写真を撮るときなどに活躍してくれます。
0.39型約236万ドットの有機ELファインダーと、上下チルト式の3.0型162万ドットのタッチパネルを採用。こちらはハイ&ローアングル撮影に欠かせない機能です。
<高い描写力と新世代エンジン>
コンパクトなサイズ感とは裏腹に、カメラの心臓部には最新エンジンのX-Processor 5を搭載し、上位機種(X-T50、X-H2など)と同等の機能が備わっています。
センサーはAPS-Cサイズの約2610万画素。上位機種などに見られる4000万画素超えではないものの、十分高精細な描写を体感でき、裏面照射タイプで高感度にも強く、常用最高感度もISO12800となっています。
ボディ内手ブレ補正は非対応ですが、DIS(Digital Image Stabilization)による手ブレ補正を搭載しています。レンズ内手ブレ補正の入っているレンズと組み合わせたり、高感度への強さを活かしてシャッタースピードを稼ぐ設定にすれば不便さを感じることはほとんどありません。
常用最高感度ISO12800と思えない高画質な仕上がり。夜のスナップも軽快に撮影できます。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF5.6・1/300秒・ISO12800・WB太陽・-0.7・フィルムシミュレーション:PRO Neg.Hi
<多彩な色表現が可能に>
富士フイルム最大の魅力である「フィルムシミュレーション」もさらに充実しました。今回新たに「REALA ACE」と「NOSTALGIC Neg.」の2つが加わり20種に。デジタルでありながら銀塩フィルムのような深みのある質感を見事に再現してくれます。〝撮って出し〟のクオリティは非常に高く、編集の手間をかけずに印象的な作品を生み出すことが可能です。
デジタルながらフィルムを入れ替えるような感覚で、イメージする色味がダイヤル操作だけで瞬時に反映されるので、被写体に合わせたり、気分で変えてみたりできる気軽な操作感も魅力です。
さらに、お気に入りのフィルムシミュレーションを割り当てることのできる、FS=フィルムシミュレーションレシピ(カラークローム・ブルーや粒状感など)を設定して、自分の好みのオリジナルフィルムのように作り上げることもできます。
「FS1」~「FS3」では、「FSレシピ」としてフィルムシミュレーションと各種パラメーターを調整した設定を保存することができる
<頼りになる被写体検出AF>
前機種までにはなかったAF予測アルゴリズムで、高精度なAFと被写体検出AFが搭載されています。人物の顔・瞳の他にも、動物、鳥、車、バイク、自転車、電車などを自動で認識し、高精度に追い続けることができるようになりました。
複雑なAF操作なしに高い精度でピントを合わせ続けることができるので、これまで動く被写体を撮る機会が少なかった方でも、気軽にいろいろな撮影に挑戦しやすくなっている点には頼もしさも感じられます。
人慣れしているのでかなり至近距離まで近づいての撮影です。被写体認識AF「鳥」+瞳認識も働いて、カメラ目線をもらいました。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF5・1/750秒・ISO160・WBオート・フィルムシミュレーション:クラシッククローム
被写体認識「電車」追尾機能で安定した撮影ができます。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF4.5・1/140秒・ISO12800・WBオート・-0.3・フィルムシミュレーション:REALA ACE
X-T30IIIと相性抜群な2本の単焦点レンズ
キットレンズとして、使い勝手の良い広角域メインの標準ズームレンズXC13-33mmF3.5-6.5が付属しているモデルもありますが、今回はキットレンズよりも表現を楽しみたい方にふさわしい単焦点レンズ、XF23mmF2.8 R WR(35mm判換算5mm)と、XF30mmF2.8 R LM WR Macro(35mm判換算50mm)2本の単焦点レンズとともに撮影を楽しんできました。
どちらのレンズも、X-T30IIIにふさわしいサイズ感で、どこへでも一緒に行ける、連れ出せる快適さがあります。
<X-T30 III+XF23mmF2.8 R WRの作例>
街歩きにピッタリなXF23mmF2.8 R WRはパンケーキレンズということもあり、23mmという厚みで、X-T30 IIIとの組み合わせとしてふさわしく、コンパクトカメラのようにポケットインして歩きたくなります。
35mm判換算35mmの焦点距離は、人の視界に近く、見たままの光景を切り取ることができるため、スナップ撮影では定評のある画角です。また、「薄くて軽い」だけではなく、最新の光学設計により開放から清々しいほどの解像性能を誇り、防塵・防滴・-10℃の耐低温構造も備えているなど、雨や風雪の中、砂浜などのタフな環境でも安心して撮影ができます。
単焦点レンズらしい画面の隅々までシャープな描写。物音のしない静かな室内の空気まで写し込んでいるよう。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:クラシッククローム
近接することでボケを生かした立体的な表現も楽しめます。長い時を経た金属の質感がしっかりと伝わりました。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:クラシッククローム
庭園に立ち寄り優雅なひとときを満喫。しっとりと静かに流れる時間を感じられました。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:REALA ACE
写り込んだ木々の上を泳ぐ鯉は黄金のように光って見えました。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:Velvia/ヴィヴィッド
光が眩しく輝く、新緑と色とりどりの花の季節。路地を歩けば花壇や鉢植えが目を楽しませてくれます。春から初夏への移り変わりを感じながら、フィルムシミュレーションをいろいろと試したくなります。
曇りの日は、あえてハイキーに撮影して葉の透け感を表現
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:REALA ACE
モッコウバラもかわいらしい。ほっこりとした雰囲気にクラシックネガをチョイス
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:クラシックネガ
鉢植えのシクラメンの鮮やかな色が植込みの緑色に映えます。背景の奥行き感がよい雰囲気。
FUJIFILM X-T30III・XF23mmF2.8 R WR・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:REALA ACE
<X-T30 III+XF30mmF2.8 R LM WR Macroの作例>
標準レンズとして、マクロとして、一粒で二度おいしいXF30mmF2.8 R LM WR Macro。最短撮影距離 10cm・最大撮影倍率1倍(等倍)の標準マクロは、焦点距離も35mm判換算約45mmと標準レンズに近い画角で、寄れる標準レンズとしての使い勝手が抜群です。
レンズ本体の長さ69.5mm、重さ195gと軽量コンパクトで、普段使いのレンズとしてボディに付けっぱなしにしておいても困らないこのレンズは、リニアモーターで駆動させるインナーフォーカス方式を採用しているので、最短約0.002秒の高速・高精度AFを実現して高い機動力を持っています。狙った場面を確実に写してくれる頼もしい相棒です。
この日は童心にかえって動物たちとふれ合えるこども動物園へ。自転車置き場では、青空とマッチするかわいい看板が出迎えてくれました。
コントラストも高いのに、滑らかでねばりのある柔らかなトーンが美しい。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:REALA ACE
小動物たちの撮影では、ふんわりとかわいらしい雰囲気を表現したくて、フィルムシミュレーション「ETERNA/シネマ」をチョイス。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:ETERNA/シネマ
ウサギも動きまわるとかなり俊敏。高精度の「顔検出/瞳AF」機能と、被写体認識AF「動物」で撮影。お子さんやペットのいる方にはうれしい機能だ。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:ETERNA/シネマ
「さぁ小屋に戻るよ」と飼育員さんに追われて急ぎ足のヤギ。被写体の動きを検出してピントを合わせる速さはかなり的確。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:REALA ACE
園内の休憩スペースにあったガチャガチャ。カラフルなプラスチックの透明感、ツヤ感、子どもたちがワクワクする気持ちが分かるような気がしました。
FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:Velvia/ヴィヴィッド
花壇に咲いていたパンジーは、背景に色とりどりの花々が咲き、カラーパレットのよう。等倍マクロ撮影時はレンズフードがぶつかるくらいの距離が最短撮影距離の目安になります。
?FUJIFILM X-T30III・XF30mmF2.8 R LM WR Macro・絞りF2.8・1/13秒・ISO6400・WBオート・+0.7・フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
まとめ
カメラらしいポジショニングのダイヤルやファインダーも、表現が楽しくなるフィルムシミュレーションも、軽量コンパクトなボディに凝縮され、エントリー機というカテゴリーでありながら、小型軽量さを活かしたサブ機としてもふさわしい「FUJIFILM X-T30 III 」。
携帯性が高く、性能も十分で、使っていると馴染んでゆくこなれた感じも所有欲を満たしてくれます。手頃な価格のカメラを求める方にとってX-T30 IIIは候補の最上位に置くべき存在でしょう。
楽しく使えて、安定して美しい写真を生み出す「FUJIFILM X-T30 III 」
本格的な撮影から日常のスナップまで、幅広い層に「写真を撮る楽しさ」を提供する一台になっています。



