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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! フォトグラファー コムロミホ ✕ ニコン Z f

写真・文:コムロミホ/編集:合同会社PCT

ニコン Z fを片手に、チェコのプラハの旅へ!

コムロミホ
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。

はじめに

新登場したばかりのNikon Z fを使用しながらスナップ撮影をしてきました。Nikon Z fcのヘリテージデザインを引き継ぐカメラとして登場したNikon Z fですが、クラシカルな見た目とは違って、中身は最新の技術を詰め込んだカメラに仕上がっています。今回はNikon Z fに新搭載された機能に触れながら、スナップ撮影におけるNikon Z fの使いこなしをご紹介します。

フィルムカメラを彷彿させるようなヘリテージデザインを採用したNikon Z f。軍艦部分の塗装の美しさや革張りのような質感に高級感があります。ダイヤルには真鍮を採用しているので、Z fcよりもクリック感がしっかりとあって、カメラ操作を行う楽しさへと繋がっていきます。見た目は高級感と重厚感がありますが、フルサイズとしては軽量コンパクトなボディに仕上がっていて、機動力を活かして撮影を楽しむことができます。街を歩くときはいつも首からカメラをぶら下げるようにしているので、カメラのデザインはとても大切です。高級感のある美しいデザインなため、Nikon Z fを持ち出す頻度が高くなりそうです。





今回の撮影に使用したNikon(ニコン) Z fとNIKKOR Z 40mmf/2のセット

Z fならおしゃれにカメラをカスタマイズできる

Nikon Z fはカスタマイズすることで、さらにオリジナリティーのあるカメラに仕上がることができます。今回のプレミアムエクステリアには6種類のバリエーションが用意されています。モスグリーン、ストーングレー、セピアブラウン、インディゴブルー、サンセットオレンジ、ニコンダイレクト限定のボルドーレッドから選ぶことができます。Nikon Z fcの時にも好評だった革の張り替えサービスですが、Nikon Z fからモニターの背面も張り替えができるようになっています。



「プレミアムエクステリア」張り替えサービス
セピアブラウン、インディゴブルー、ストーングレー、モスグリーン、サンセットオレンジの5色から選べる。(ほかにニコンダイレクト限定のボルドーレッドがある)







「プレミアムエクステリア」張り替えサービス(カラー:モスグリーン)

そして、シャッターボタンにはレリーズボタンがつけられるようにネジ穴があります。ニコン純正のソフトシャッターレリーズAR-11などを組み合わせると、見た目のかっこよさだけでなく、シャッターフィーリングが向上します。また、グリップ感を向上させたい方にはNikon Z f専用のエクステンショングリップZ f-GR1がおすすめです。グリップしやすくなるだけでなく、ボディーと同じ革張りのような素材を採用しているため、デザインに統一感があります。革のストラップなどと合わせていただいたり、ぜひおしゃれにカメラをカスタマイズしてみてください。

◉ソフトシャッターレリーズ AR-11
メーカー希望小売価格=2,750円
詳しくはこちら

◉Z f用エクステンショングリップ Z f-GR1
2023年10月27日発売予定 価格=オープン
詳しくはこちら

エクステンショングリップ Z f-GR1装着時のZ f

瞬時にモノクローム撮影に切り換えられる専用レバーを搭載

Nikon Z fにはさまざまな新機能が搭載されていますが、個人的に一番嬉しい進化は新たにモノクロの効果を2つ追加したことです。ピクチャーコントロールには「モノクローム」というモノクロの効果が搭載されていましたが、そこに「フラットモノクローム」と「ディープトーンモノクローム」が追加になりました。さらに静止画と動画を切り替えるレバーに新たに「B&W」という項目が追加になっています。レバーを「B&W」に合わせると、モノクロ写真のみ撮影できるカメラへと切り替わります。カラーで撮影しているときと、モノクロで撮影するときでは被写体の見え方や捉え方が変わるので、レバーを切り替えることで、頭の中もモノクロに切り替えることができます。

「モノクローム」で撮影。スタンダードなモノクロの効果で、ハイライトからシャドウまでバランスよく表現してくれます。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/3200秒・ISO 100・WB 晴天・モノクローム

「フラットモノクローム」で撮影。コントラストが低くなって、全体的に柔らかく優しい印象のモノクロ写真に仕上がります。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/3200秒・ISO 100・WB 晴天・フラットモノクローム

「ディープトーンモノクローム」で撮影。ディープトーンという名前の通り、深みのあるモノクロ写真に仕上がります。ハイライトを引き立てながらも、グレーからシャドウにかけての諧調を豊かに表現してくれます。フィルター効果のR(レッド)がデフォルトで設定されているので、青い被写体は深いグレーになり、赤い被写体は明るく表現されます。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/3200秒・ISO 100・WB 晴天・ディープトーンモノクローム

柔らかな印象の「フラットモノクローム」と、被写体の存在感を引き出す「ディープトーンモノクローム」

モノクロ作品を撮影するためにチェコのプラハへ行ってきました。今回、二つのモノクロの効果を撮りたいイメージに合わせて使い分けをしています。「フラットモノクローム」は柔らかな印象になるので、プラハで出会ったドラマを映画のワンシーンのように仕上げたいときに使用しました。

そして、「ディープトーンモノクローム」は程よいコントラストが光と影を強調してくれるので、ドラマチックに仕上がります。プラハの街並みや被写体に存在感を出したいときには「ディープトーンモノクローム」を使用しました。

「フラットモノクローム」で撮影。公園でヌートリアにエサあげていた男性に声をかけて撮影させてもらいました。左から強めのサイド光が当たっていますが、光を和らげてくれるため、表情が伝わりやすい一枚に仕上がりました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF2.5・1/400秒・ISO 100・+2/3EV補正・WB 晴天・フラットモノクローム

「フラットモノクローム」で撮影。柔らかいモノクロが女性の優雅な雰囲気にマッチしました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2.8・1/1000秒・ISO 100・+2/3EV補正・WBオート・フラットモノクローム

「ディープトーンモノクローム」で撮影。コントラストが高くなるため、光や影を強調することができます。路地にできた影を活かして構図を決定して、歩行者が通り過ぎるのを待ちました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2.8・1/2500秒・ISO 100・−1/3EV補正・WBオート・ディープトーンモノクローム

「ディープトーンモノクローム」で撮影。青い空が深いグレーになって、風景に重厚感が生まれます。壮大に広がる風景と、絵を描く2人の姿を強調したいと思い、縦位置で構図を決定しました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2.8・1/1600秒・ISO 100・WBオート・ディープトーンモノクローム

「ディープトーンモノクローム」は方向性がしっかりとしているため、撮って出しで完成度の高いモノクロ写真を撮ることができます。一方、「フラットモノクローム」はそのままの柔らかさを活かして撮影することも、「フラッドモノクローム」をベースにして、露出補正やコントラストを調整して自分好みのモノクロへとカスタマイズすることもできます。

「フラットモノクローム」にし、露出を-2/3EVに設定して撮影しました。全体を暗めにすることで、木や走っている人をシルエットにして、朝日の光の美しさを強調しました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2.8・1/1600秒・ISO 100・WBオート・ディープトーンモノクローム

「フラットモノクローム」にして、コントラストを+1、露出を-1/3EV暗くしています。それによって、手前に映り込んだ窓が程よくシルエットになり、奥にいる3人へと視線誘導される写真に仕上がりました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF2・1/1250秒・ISO 100・−1/3EV補正・WB晴天・フラットモノクローム

撮って出しで作品レベルの写真を撮ることができる

モノクロの効果だけでなく、Nikon Z fにはピクチャーコントロールやCreative Picture Controlなど、さまざまな絵づくり機能が搭載されています。被写体のイメージに合わせて設定することで、撮って出しで作品レベルの写真を撮ることができます。軽快にスナップを楽しめるのがNikon Z fの魅力です。

ピクチャーコントロールを「スタンダード」に設定して撮影しています。犬の背景に見えるカラフルな街並みを見た目通り美しく表現してくれています。こちらはキットレンズを使用して撮影していますが、ピント面の犬や柵をシャープに表現してくれています。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/4000秒・ISO 100・−1/3EV補正・WB晴天・スタンダード

クリエイティブピクチャーコントロールを「ピュア」を使用して撮影しています。緑や青の発色が美しく、幻想的な一枚に仕上がりました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF2.5・1/1600秒・ISO 100・+2/3EV補正・WB晴天・ピュア

こちらは「セピア」という効果を使用して撮影しています。全体的に褐色に染まり、ノスタルジックな印象で写真をまとめることができます。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/1000秒・ISO 100・−1/3EV補正・WB晴天・セピア

私が一番好きな効果は「トイ」です。被写体の色を誇張しすぎずに、深みのあるトーンで表現してくれます。美しい光の中、男性がベンチで一休みしている様子をドラマチックに表現できました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2,8・1/800秒・ISO 160・−1EV補正・WB晴天・トイ

こちらも「トイ」で撮影しています。芝生の緑がとてもきれいだったので、上から撮影して背景には芝生だけが写るように背景を整理しています。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2,8・1/160秒・ISO 100・−1EV補正・WB晴天・トイ

こちらも「トイ」で撮影。カラフルな建物を背景に散歩をする女性の姿を印象的にまとめることができました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 40mmf/2・絞りF3.5・1/2500秒・ISO 100・−1EV補正・WB晴天・トイ

新機能「フォーカスポイントVR」がすごい

Nikon Z fは最大8段のボディ内手ブレ補正効果を実現しています。それにより、暗いシーンや三脚が必要になるシーンも手持ちで撮影を楽しむことができます。そして、VRの進化によって「フォーカスポイントVR」という機能を新搭載しています。従来手ブレ補正は画像中央のブレを抑制するように動きます。しかし、手ブレが起こるときは画像中央と周辺ではブレの量や方向が異なります。そのため、画像中央のブレを補正できたとしても、周辺のブレを補正できない可能性がありました。「フォーカスポイントVR」はフォーカスポイントを置いた部分のブレを抑制してくれます。そのため、構図を気にすることなく、スローシャッター撮影を楽しむことができるようになりました。

1/13秒というスローシャッターでシャッターを切っていますが、強力な手ぶれ補正のおかげでしっかりと止まっているのがわかります。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 26mmf2.8・絞りF2.8・1/13秒・ISO 100・−1EV補正・WB晴天・スタンダード

1/13秒というスローシャッターでシャッターを切っていますが、強力な手ぶれ補正のおかげでしっかりと止まっているのがわかります。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 26mmf2.8・絞りF2.8・1/13秒・ISO 100・−1EV補正・WB晴天・スタンダード

こちらの写真も三分割構図を意識して、被写体を配置しています。手ぶれ補正がしっかりと効いてくれるため、夜のショーウィンドウも最低感度のISO100で撮影することができました。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 26mmf2.8・絞りF2.8・1/15秒・ISO 100・−1EV補正・WB晴天・スタンダード

次に高感度性能についてご紹介したいと思います。Nikon Z fは上位機種のZ 9やZ 8と同じ画像処理エンジンEXPEED7を採用しています。それによって、高感度性能も上位機種譲りとなっています。下記の写真はISO5000で撮影していますが、光が当たっているレンガの部分を拡大してみて、ノイズが目立たなく、鮮明に表現してくれているのがわかります。

ディテールがない平坦な部分はノイズが目立たないようにしっかりと除去し、解像感が必要なディテールがある部分は鮮明に表現してくれています。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 26mmf2.8・絞りF2.8・1/160秒・ISO 5000・WB晴天・トイ

こちらの写真はISO12800で撮影しています。ノイズが細かいため、モノクロと組み合わせると、ノイズがほとんど気になりません。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 26mmf2.8・絞りF3.5・1/100秒・ISO 12800・WB晴天・カーボン

AF性能に関しても上位機種譲りとなっています。Z 8やZ 9同様に人物や動物だけでなく、乗り物や飛行機も認識してくれます。また3Dトラッキングも搭載されているので、動き物を撮影する方にも便利なカメラに仕上がっています。またNikon Z fはMF時の被写体検出を行ってくれます。ヘリテージデザインに合わせてオールドレンズやマニュアルフォーカスのレンズを組み合わせたいという方も多いのではないでしょうか。例えば、人物を撮影しているときは瞳や顔を検出してくれるため、拡大ボタンを押せば、ピントを合わせたい箇所を瞬時に拡大することができます。また再生時のピント確認も瞬時に行うことができます。

動物の目を検出してくれるため、被写体の表情や構図などに集中しながら撮影することができます。AF-Cに設定すると、3Dトラッキングを使用できるので、遊んでいる犬の一瞬の表情を逃さずに撮影することができます。

【撮影データ】ニコンZ f・NIKKOR Z 28mmf/2.8・絞りF2.8・1/500秒・ISO 100・−2/3EV補正・WB曇天・スタンダード

まとめ

新機能としてはピクセルシフト撮影が搭載されています。数枚撮影して、後から合成することで、高解像度な写真を残すことができます。最大32ショット撮影することができ、約9600万画素の画像を生成することができます。解像度だけでなく、発色の向上や偽色、ノイズ低減も期待することができます。カメラの中では合成ができないので、後から純正ソフトNX Studioで合成していただく必要があります。その場で合成できないことをデメリットとして捉える方も多いと思いますが、カメラの中で合成しない分、次の一枚をすぐに撮影できるメリットがあります。撮影することに集中して、後から必要なカットだけを合成することができます。

今回、Nikon Z fを使っていろいろスナップしてみましたが、見た目のおしゃれさとは裏腹に中身は最新の技術を詰め込んだカメラに仕上がっています。飽きのこないヘリテージデザインと、上位機種さながらのスペックを持ち合わせているので、長く愛用できるカメラに仕上がっています。私も発表と同時に予約しましたが、これからどんな写真を撮影できるか楽しみです。ぜひNikon Z fの表現力を体感していただきたいです。

今回のカメラ・レンズ

ニコン Nikon Z f
◉発売=2023年10月27日発売 ◉価格=オープンプライス
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Nikon Z 40mm f/2
◉発売=2021年10月1日発売 ◉価格=オープンプライス
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NIKKOR Z 26mm f/2.8
◉発売=2023年3月3日 ◉価格=オープンプライス
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Nikon NIKKOR Z 28mm f/2.8
◉発売=2021年12月10日 ◉価格=オープンプライス
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