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カメラの大林オンラインマガジン プロ写真家レビュー! 写真家 鹿野貴司 × ソニーα6700

写真・文:/編集:

次世代プレミアムAPS-Cモデルを実写レビュー!

APS-Cセンサー搭載のα6700は、α6600の後継機。これまでフルサイズ上位機で培った高画質を実現。豊富なEマウントレンズを活用できるのも大きな魅力です。ソニーαユーザーの写真家 鹿野貴司さんがレビューします。

鹿野貴司(TAKASHI SHIKANO)
1974年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、さまざまな職業を経て写真家に。広告や雑誌などを手掛けるかたわら、スナップやドキュメンタリーの作品を精力的に発表している。近年の写真展に「#shibuyacrossing」(ソニーイメージングギャラリー)、「煩悩の欠片を燃やして菩提の山へ走れ」(ナインギャラリー)など。昨年9月には『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)を出版。日本写真家協会会員。
Instagram:@shikanotakashi
Twitter:@shikanotakashi

はじめに

ソニーのαシリーズには機種名に付く数字が1桁のフルサイズ機と、長らく6000番台が割り当てられたAPS-C機があります。後者は2019年11月に発売されたα6600を最後に、しばらくニューモデルが登場しませんでした。といっても売れないからではなく、6000番台は常に売れ続けています。半導体不足などの事情もあったのかもしれませんが、それ以上にα6600や、その弟分のα6400やα6100も十分なスペックを誇るという側面もあるような気がします。α6700はそれらを上回るスペックで、満を持して登場しました。

サイズやデザインはキープコンセプトながら細かな点を改良

サイズもデザインもα6600にそっくりですが、板状の本体部分が後ろにせり出し、厚みがぐっと増しています。グリップも幅が狭く、代わりに奥行きのある形状に変わっています。これにより本体の厚さが69.3mmから75.1mmとなっています。実は幅も120mmから122mm、高さも66.9mmから69mmとわずかにサイズアップしているのですが、一方で質量は約503gから約493gとわずかに軽くなっています。手にした印象としては、厚みが増したことで高級感や安定感が上がったように感じました。

α6600から変わった点は、最近のフルサイズ機と同様、モードダイヤルから動画撮影とS&Q撮影(動画のスロー&クイックモーション)が分離したこと。モードダイヤルの下に、同軸で静止画・動画・S&Qのモード切り替えダイヤルが設けられています。動画でも露出モードを変えるのが簡単になりました。またモードダイヤルはMR(撮影設定登録)が2つから3つに増え、SCN(シーンセレクション)がなくなりました。SCNは被写体や撮影状況に合わせて「ポートレート」「風景」などのモードを選びますが、それが判断できる人はシャッター速度や絞りで調整したほうが早いだろうということなのでしょうか。

それ以外のトピックといえば、6000番台で初めて前ダイヤルが初めて採用されました。後ろにダイヤルが2つあるので、なくても操作には困らないのですが、使ってみるとたしかにこれはあったほうがいいなと実感。とくにフルサイズ機と併用するユーザーには、操作性が変わらないのでありがたい点です。一方、残念な点はAF測距点をダイレクトに選択できる「マルチセレクター」がないところ。液晶のタッチパネルを使ってくださいということなのか、はたまた測距点の選択はカメラに任せてくださいという自信の表れでしょうか。

AIプロセッシングユニットによりAF性能が向上

実はAF性能こそα6600から大きく進化した点のひとつ。425点でセンサーの約84%をカバーしていた測距点は、α6700で759点、約93%をカバーするようになりました。そんなわけで今回はほぼカメラ任せで撮影してみましたが、大きな不満はありませんでした。

そしてAIプロセッシングユニットにより、α7R Vなどに搭載されている「AF時の被写体認識」という機能が加わりました。あらかじめ認識対象を「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」から選択する必要がありますが、AIを駆使したその追従能力には驚かされます。今回は「人物」以外には「車」しか試すことができませんでしたが、正面からやってくる車を狙うと素早く認識。その後、斜めから横と角度が変わっても、しっかりと車体にピントを合わせ続けます。認識対象にあるような被写体をよく撮る人には、心強い存在だと多います。

ファインダーは約236万ドットで、倍率は約1.07倍(フルサイズ換算で約0.7倍)。α6600と変わりませんが、輝度がα7R Vと同等の約2倍にアップしています。そのおかげか、ドット数以上に精細感がありました。また背面液晶はα6600の約92万ドットから約103万ドットに増え、上下チルト式からバリアングル式に変更されました。先に触れた通り、もちろんタッチパネル式です。

また細かな点ではUSB端子がmicroUSBからUSB Type-Cに変更され、バッテリー室と並んでいたSDカードのスロットが、本体の撮影者からみて左の側面に移りました。

新しいセンサーと画像処理エンジンの恩恵は大

そして何よりα6600や以前の6000番台シリーズと明確に違うのはセンサーです。長く6000番台シリーズに採用されていた約2420万画素のCMOS「Exmor」から、約2600万画素の裏面照射型CMOS「Exmor R」にスペックアップしました。また画像処理エンジンも「BIONZ X」から、フルサイズ機にも採用されている「BIONZ XR」に進化しています。

僕は以前、サブ機として「Exmor」を搭載したα6000(2014年3月発売)を使っていましたが、抜けるような青空を撮っても霞みがかかったような画質で、満足のいく仕上がりを得るにはレタッチが必須でした。そのためサブ機としても出番がなくなってしまったのですが、α6700はさすがにそんな不満はなく、撮ってだしのJPEGでも十分にクリア。サブ機どころかメインのカメラとして使えるポテンシャルを持っています。

なお連写速度は最高で秒11コマ、連続撮影可能コマ数がRAWで59枚、RAW+JPEGで44枚となっていますが、JPEGではLのスタンダードで1000枚以上と、ほぼ無限に撮り続けることができます。数値もさることながら、レスポンスがよくシャキシャキと小気味よく撮れる点は好印象です。APS-C機ということで高感度がフルサイズと比べてどうかなぁと思いましたが、ISO6400は十分使えるレベル。ISO12800ではさすがにディテールが崩れてきましたが、実際そこまで上げることは稀だと思うので、不満を感じることは少ないように思います。

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・53mm(80mm相当)で撮影・絞りF5・1/30秒・ISO200・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・20mm(30mm相当)で撮影・絞りF5.6・1/500秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・110mm(165mm相当)で撮影・絞りF5.6・1/40秒・ISO640・WBオート

多種多彩なレンズを活用できる

今回の試写は主にキットレンズのE18-135mmF3.5-5.6 OSSを使用しましたが、ソニーEマウントのメリットはフルサイズ機とAPS-C機でレンズを共用できること。またサードパーティーを含めてそのラインナップが充実していることです。僕は普段αのフルサイズ機を使っているので、さまざまなEマウントレンズを所有しています。そこで少しだけシグマ製やタムロン製のEマウントレンズも使ってみました。

たとえばシグマではArtラインの単焦点やズームレンズのほか、「iシリーズ」として9本の単焦点レンズがラインナップされています。サイズやデザインもα6700にマッチしており、フルサイズ対応のレンズではありますが、α6700にもおすすめです。たとえば20mmF2 DG DNや24mmF2 DG DN、35mmF2 DG DNは、α6700に装着したときの焦点距離がそれぞれ30mm・36mm・52mm相当になり、常用レンズとしてぴったりです。また65mmF2 DG DNが98mm相当の明るい望遠レンズになったり、1.5倍相当に伸びることでフルサイズ機とは違った楽しみ方ができます。

【撮影データ】ソニーα6700・シグマ24mmF2 DG DN・絞りF2・1/40秒・ISO1000・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・シグマ20mmF2 DG DN・絞りF2.8・1/200秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・タムロン50-400mmF4.5-6.3 Di III VC VXD・174mm(261mm相当)で撮影・絞りF8・1/1000秒・ISO100・WBオート

まとめ 小型軽量かつ高画質で、動画撮影にもぴったり

今回は静止画のみのレビューですが、α6700は動画機能も強化されました。耐荷重1kgほどの手頃なジンバルやスタビライザーにも載せることができるので、これから本格的に動画を撮影しようという人にもよさそうです。ちなみにα6600ではXAVC Sの4K 30pが記録可能でしたが、α6700ではXAVC HS/XAVC Sそれぞれで4K 60pの記録が可能になっています。

フルサイズ機で静止画、α6700で動画といった使い分けもアリだと思いますし、僕個人は日頃ちょっと出掛けるときに、α6700と小さな単焦点レンズがあるといいなぁと思いました。すでにαでシステムを揃えている人にも、初めてαを手にするという人にも勧められる一台だと思います。

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・34mm(51mm相当)で撮影・絞りF4.5・1/80秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・84mm(126mm相当)で撮影・絞りF5.6・1/800秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・92mm(138mm相当)で撮影・絞りF6.3・1/200秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・54mm(81mm相当)で撮影・絞りF8・1/640秒・ISO100・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・61mm(92mm相当)で撮影・絞りF5.6・1/100秒・ISO400・WBオート

【撮影データ】ソニーα6700・E18-135mmF3.5-5.6 OSS・43mm(65mm相当)で撮影・絞りF5・1/80秒・ISO200・WBオート

今回のカメラ・レンズ

ソニーα6700
◉発売日=2023年7月28日 ◉メーカー希望小売価格=オープン(ボディ実売197,010円税込)
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E 18-135mmF3.5-5.6 OSS
◉発売日=2018年2月2日 ◉メーカー希望小売価格=96,800円(実売65,691円税込)
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シグマ24mmF2 DG DN
◉発売日=2021年9月24日 ◉メーカー希望小売価格=オープン

シグマ20mmF2 DG DN
◉発売日=2022年2月25日 ◉メーカー希望小売価格=オープン

タムロン50-400mmF4.5-6.3 Di III VC VXD
◉発売日=2022年9月22日 ◉メーカー希望小売価格=195,800円税込(実売148,500円税込)
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